• 戦闘

【王国始動】学術都市 古都アークエルス

マスター:ユキ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/06/17 07:30
リプレイ完成予定
2014/06/26 07:30

オープニング

「皆さま、我がグラズヘイム王国へようこそ」
 グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。
 謁見の間に集められたハンターたちは、正面、二つ並べられた椅子のうち右の椅子の前に立った少女に目を向けた。
 落ち着いた、けれど幼さの残る声。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
 やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
 …………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
 唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
 だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
 マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
 王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
 大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、とハンターはぼんやり考えた。
「改めて」
 グラズヘイム王国へようこそ。
 王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。
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 首都イルダーナにも劣らない歴史ある堅牢な城壁。石畳の大通りの左右に立ち並ぶレンガ造りの家々。広場には出店がいくつか軒を連ね、近くの石段では小腹を満たしながら本に目を落とす学者たちの姿が見える。聖ヴェレニウス大聖堂ほどではないが荘厳な聖堂や膨大な蔵書を抱える巨大図書館も目に入る。自由な研究が許された学術都市、『古都アークエルス』の姿がそこにあった。

「気をつけられよ、お客人。この街は広い。外敵の侵攻を防ぐために道はひどく入り組んでいる。外の者が興味本位で裏通りに足を踏み入れれば、出てくるのに1日かかるやもしれませんぞ」

 右へ左へと視線を向ける君たちに気づいた衛兵が釘を刺す。なるほど、たしかに大通りから続く細い石畳は、昼間にもかかわらずその先を見通すことが出来ない。気のせいだろうか。暗がりの向こうから何かの鳴き声が聞こえた気がし、幾人かは背筋が寒くなるような感覚を覚えたかもしれない。衛兵はそのまま君たちを、街の奥に聳える城壁の中、そこに立つひときわ豪奢な屋敷へと誘う。




――――椅子に座すお方が、我らが主。……驚かれるかも知れぬが、くれぐれも領主様に失礼の無いように。

 先の衛兵の言葉がなかったならば、君たちは事態が飲み込めなかったかもしれない。目の前の『領主』と言われた男はそれくらい、事前に知らない者がイメージする『古都を治める領主』とは、かけ離れていたことだろう。

「ようこそ、同胞たち。そしてマテリアルを秘めた遠くの隣人たちよ。ハンターは王家の客人。アークエルスもきみたちを歓迎するよ」

 目の前の華美な椅子に座るその男は、外見に似つかわしくない口調と態度で君たちハンターを出迎えた。その双肩はこの街を治めるにはあまりにも小さく、けれどハンターを値踏みするように見据える瞳は、不敵な笑みは、その幼い容姿には似つかわしくない雰囲気を湛えていた。千年王国の中でも長い歴史を持ち、学術都市としても名高いこの街にあって、その領主は異質ということで街同様、あるいはそれ以上に有名だった。

『フリュイ・ド・パラディ』

 古都の領主を務めているこの人物の経歴は、王国の民の中でも謎に包まれている。その容姿は10歳かそこらの少年にしか見えない。しかし、実はあの容姿は魔術か何かの実験をした結果であり、本当は60も越えた老人なのではないかという噂が実しやかに流れている。その噂を耳にし実際に彼を目にすればなるほど、たしかに10代の子どもが格式あるこの街を束ね、あのように慇懃無礼に配下や客人と相対するなどできるだろうか、噂が事実か、あるいはよほどの自信家か傾奇者か、ただの世間知らずかと思うかもしれない。しかし、当然の如くだが所詮は噂。その出処も今ではわからない。全ては謎のまま。ただひとつ皆が知っていることは「古都は頭のいかれた領主が治めている」という事実だけだ。

「見聞を広めるため、数ある街や砦の中からこの街を選んだきみたちは実に賢明だよ。この街ではあらゆる研究が許される。僕が許すからだ。君たちが今日この街の何処を歩き、何を見ようと、それら全てを僕は咎めはしない。自由にしてくれたまえ」

 困惑する客人を気にもとめず、領主フリュイは言葉を続ける。その変声期も迎えていないだろう高くよく通る声には、少年らしい活発さはなく、どこか不遜な印象すら感じられた。

「失礼致します。フリュイ様。領内でいささか問題が発生したようにございます」

 扉を開け入ってきた近衛兵と思われる青年は自分よりも二回り以上小さい少年の傍にひざまづき、耳打ちをする。その報告に、皺など一つも刻まれていない少年の額の眉が小さく動く。

「そこの学者は確か、ユグディラのテレパシーで遠方との交信を試みるとか言うくだらん研究をしていたはずだな」
「報告ではそのように。ですがその実、ユグディラを用いてキメラ研究を行い、その際に雑魔が発生したものかと」

 ふん……と、小さく鼻を鳴らす少年は、あるはずのない顎鬚を撫ぜるような不思議な仕草を数秒した後、にっ、っと口元に笑みを湛えると、君たちの方へと向き直る。その笑みは、どこか少年らしい純粋な笑顔ともとれたかもしれない。新しいおもちゃを、おもしろそうなものを見つけた時のソレと。

「聞こえたとおりだ。そこで、ハンター諸君には一つ仕事をしてもらおうと思う。この街での自由の対価としてね」

 そういいながら立ち上がる少年の背は、大人の腰程の高さ。だが、大人のハンターを見上げているはずのその瞳は、あたかも君たちを見下しているかのようだった。

「この街での自由を、僕は許そう。だが、自由とは権利だ。権利を行使するには、義務を全うする必要がある。報告の義務を行った者に自由はない。勝手は許さない。それがこの街の法。僕の法だ。全ては僕の知る所になければならない。この街、そしてこの世界全てが、僕の手の中にあるんだよ」

解説

●概要
発生した雑魔の討伐
街の秩序の維持

●場所
古都アークエルスの裏通り、その外れの外れにある古びた民家の地下。

●討伐対象
キメラ合成実験の素材だった狼が転化し雑魔となったモノx2。
(あくまで研究者が逃走する前に確認した数)

●現地状況
近隣の住人は衛兵の対応により避難しているが、学術的興味から群がる野次馬も多く、衛兵はそちらの対応に負われている。
発端となった研究者はいち早く逃げ出しており無事。小さな民家の裏手にある地下室への階段の先に研究室がある。逃げ出す際に入り口の鍵を締めているが古い木の扉に錆びた錠前で、いつでも壊せるだろう。
地下への入り口はその1つのみ。大人二人が横に並ぶのも難しい石階段を降りると1フロアの研究室があり、そこに雑魔がいると思われる。
研究室には魔法の灯りが灯っているが薄暗く、長机や動物の檻、固定する台や鎖などの物が煩雑に散らばっており死角が多いと予想される。
階段では長い武器をふるうことは難しいだろうが、研究室内はかなりのスペースがあるらしく、その限りではないだろう。

研究室にはユグディラを始め、キメラの材料やその餌として集められた動物が大小数匹おり、雑魔の影響でマテリアルの喪失が進めばその中から新たな雑魔が発生する恐れもある。

●ユグディラ
妖猫。妖精とはいっても王国の至るところで目にすることができる身近な存在。どうやら人語を解するのではないかと言われているが、実際に喋る姿を見た者はいない。
微弱ながら魔術的な力を持っていると思われるが、正確な能力は不明。また言葉ではなくイメージそのものを相手に伝えるテレパシー能力を持っていることが分かっている。

●その他
フリュイは君たちに「住人以外はいくら殺しても構わない。現場や実験動物がどうなろうとも一切不問とする」と約束している。

マスターより

はじめまして、この度MSとして皆様の1ページ1ページを綴るお手伝いをさせていただくこととなりました、ユキと申します。宜しくお願い致します。

王国にも様々な街があり、様々な人が生きています。幼少より科学ではなく魔法に触れて育った世界の人々。リアルブルーでは当然のものがそうではなかったりするのかもしれません。
ですがクリムゾンウェストにおいてもキメラ研究は人道的・動物愛護的に非難され表立ってやることを良しとはされていません。

変わり者の領主の依頼ではありますが、皆様ハンターのお力をお貸し下さいませ。

※参加される皆様へ
プレイングの提出忘れにはご注意下さい。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/06/25 00:19

参加者一覧

  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士

  • サキ トレヴァンツ(ka0341
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • 小さなプリトウェン
    アレックス・マクラウド(ka0580
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人

  • スノウ・ティア(ka0759
    人間(蒼)|23才|女性|機導師
  • デュラハン刈りの乙女
    アーシェ・ネイラス(ka1066
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 天に届く刃
    クリスティン・ガフ(ka1090
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人

  • 鴉(ka1675
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン プレ板(確認用
クリスティン・ガフ(ka1090
人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/06/17 07:00:56
アイコン 相談卓
ルスティロ・イストワール(ka0252
エルフ|20才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/06/17 07:03:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/12 15:12:00