ゲスト
(ka0000)
ボラ族、仇敵と再会する。
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/01/27 09:00
- リプレイ完成予定
- 2016/02/05 09:00
オープニング
「……風がイヤな臭いを放っている」
鍛冶屋にいる女は曇り空の向こうに目を細めた。
しかし近くにいた他の誰もが女の言葉を聞き流したり、聞いたとしても首を傾げるばかりだった。
海から吹きつける潮風はいつも通りで、鼻先をヒリヒリとはさせる冷たさではあるものの、潮の香りがなんら変わることもない。
だが、女には海から吹きつける風はひどく汚れ、胸を悪くさせるような感覚を付きまとわせるのだ。それも間近から吹きつけられるような。だから阿子が退屈に他の物に気を取られたとしても海から目を離すことができずにじっと海を見つめ続けていた。
そんな彼女が、木切れに掴まり海をさまよう男を見つけたとしたら、それは当然のことだったかもしれない。
「ゲール?」
この凍てつくような寒さの海に飛び込み、救い出した男の顔を女はよく知っていた。辺境から袂を分かち、海賊として暴れていたノト族のリーダーだ。何者にも縛られぬというノト族の信念は、辺境部族の結束が進む中、独立独歩をこじらせ、ついには法にも縛られぬ海賊業に移った。ついでに先日、女が住んでいた港町で大暴れした人間の一人だ。
だが、先日、頭に血を登らせて大暴れしていた男とは見ただけではほとんど同じとは判別できなかった。
痩せこけ眼窩は落ちくぼみ、頬はこけていた。丸太のような腕も枝といっても大差ないほどに肉はしぼんでいた。衣服もすべて血のどす黒い赤に染まり果てて、たゆとう海風の紋様を刻んだ帯をつけていなければ、もしかするとゲールだとは思わなかったかもしれない。
そしてそんな様子を前にも見たことがなければ。
「レイア……来たぞ。厄災だ」
海の上で、抱きしめられたゲールは胡乱げな目を救いの主に向けると、まるで呟くようにそういった。
「北の大地の恵みを奪い去り、いくつもの部族を死に追いやったあいつだ……ちくしょう。どこに潜んでやがったのか、オレんとこの船に現れたぞ」
「今喋ると海水を飲むわ。食いしばって」
声もしゃがれていた。一部はかすれて聞き取るのも難しい。
レイアは胸の動揺を抑えつつ、浮き輪代わりの木切れを掴んで岸まで泳ぎだした。町の岸まで行けば阿子が呼びに行った仲間が待っているはずだ。
「みぃんな、闇討ちだ。ちくしょう……チクショウ」
「私達が仇を討ってあげる。でも厄災への恨みをこれ以上増やさせないで」
ゲールの手が一つ木切れから外れたのを見て、レイアはゲールの後ろに回り抱きかかえるようにして泳ぎ始めた。
「絶対、仇とって、く、れナ」
「もちろんよ。あいつには私達の族長を殺された恨みもある。北の大地を追われた悲しみもある。絶対に無に帰すわ」
励ますように何度も何度もゲールにそう言い聞かす。自分が彼に言った通り海水が口の中に入ってくるが、それも気にせずレイアは語り続けた。
だが、ゲールはついにもう一つの手も外れてしまった。濁った虚ろな瞳がぼんやりとレイアを見つめ返すだけだ。
「ゲール!」
岸にたどり着くまでの間、レイアは何度も叫んだ。
だが、結局ゲールはそれ以上、何も返すことはなかった。
「闘わねばならぬ。厄災、歪虚レーヴァは我々の宿敵だ」
「ここは帝国なのよ! 勝手に戦って死なれるわけにはいかないのよ!!」
レイアが今は帝国に下り暮らしている町。
彼女が辺境の一族として暮らしていた時からのつきあいである長のイグは決然と立ち上がったが、移民政策の活動を請け負う帝国の役人メルツェーデスは真っ向からそれを食い止めていた。
「歪虚が相手なら、兵士の仕事なの。全員で立ち向かうのが帝国の流儀。海上の船に現れたんなら第四師団が担当なの! あんた達は帝国住民。それを支えるのが仕事。戦うのは仕事じゃないから!!」
「その第四師団はいつ来るのだ」
「連絡すりゃ数日のうちに来るわよ!!」
「厄災は名の通りマテリアルを奪い去り、恵みを奪うのだ。我々の元にいつやってくるかもしれん。大地という名の母を奪い、そして母たる前族長を殺した相手でもある。それを何日も黙って見ておれというのか」
「そうよ。一度負けた相手に準備もなく再戦するなんて馬鹿のやることよ!」
メルツェーデスはとにかく扉にしがみついて頭1つ分も高いイグやさらにもっといかつい体の男などを通らせないように、そしてとにかく勢いに呑まれないようにと噛みついたが、収まる気配はどこにもない。
「ふーん、準備、ねぇ。じゃあハンターに手伝いを頼むよ。それでいいよね?」
こまっしゃくれた少年にそう言われて一瞬だけメルツェーデスは固まったのを見計らって、レイアがメルツェーデスを扉から引きはがした。メルツェーデスのつけ爪がはじけ飛んだが、それでも彼女は扉にかじりつくようにして外に出るのを塞いだ。
「レーヴァだけはそうはいかない。あれを何日も放っておいたらきっと帝国も大きな被害を負うわ」
「いい加減言うこと聞いてよ! 厄災だかなんだか知らないけど、無理してもし死んだらどうするのよ。すっごい強かった前の族長ですら勝てなかったんでしょ!? 死にに行くのをどうぞって通す馬鹿がいるのよ!! 鍛冶屋っていう仕事見つけたんだからさぁ。大人しく歪虚を倒す武器を作っててよ!」
メルツェーデスは涙声だった。
常識知らずで、頭の痛いことばかりを起こしていた。最初はさっさと兵士にでもなって帝国の最前線に立って盾代わりになればいいと思っていた。
快活で、人が良くて、知らず知らずに笑顔になった。帝国の人ではもらえなかった気持ちにさせてもらった。
もうメルツェーデスの髪も顔も、頭の中もぐちゃぐちゃだった。
「何を言っている。わざわざ死にに行くわけじゃない」
そんな彼女の頭を大きな優しい手で包まれ、軽く撫でられた。
イグだ。
「レーヴァはずっと我々の気持ちに尾を引かせていた。あれを倒すことは辺境への想いを断ち切ることでもある。それにメルツェーデス。お前がそれだけ我々を想ってくれているのに、無駄死できるわけもない。必ず帰って来る」
そのセリフにメルツェーデスは言葉にならない唸りを上げて泣きじゃくった。
鍛冶屋にいる女は曇り空の向こうに目を細めた。
しかし近くにいた他の誰もが女の言葉を聞き流したり、聞いたとしても首を傾げるばかりだった。
海から吹きつける潮風はいつも通りで、鼻先をヒリヒリとはさせる冷たさではあるものの、潮の香りがなんら変わることもない。
だが、女には海から吹きつける風はひどく汚れ、胸を悪くさせるような感覚を付きまとわせるのだ。それも間近から吹きつけられるような。だから阿子が退屈に他の物に気を取られたとしても海から目を離すことができずにじっと海を見つめ続けていた。
そんな彼女が、木切れに掴まり海をさまよう男を見つけたとしたら、それは当然のことだったかもしれない。
「ゲール?」
この凍てつくような寒さの海に飛び込み、救い出した男の顔を女はよく知っていた。辺境から袂を分かち、海賊として暴れていたノト族のリーダーだ。何者にも縛られぬというノト族の信念は、辺境部族の結束が進む中、独立独歩をこじらせ、ついには法にも縛られぬ海賊業に移った。ついでに先日、女が住んでいた港町で大暴れした人間の一人だ。
だが、先日、頭に血を登らせて大暴れしていた男とは見ただけではほとんど同じとは判別できなかった。
痩せこけ眼窩は落ちくぼみ、頬はこけていた。丸太のような腕も枝といっても大差ないほどに肉はしぼんでいた。衣服もすべて血のどす黒い赤に染まり果てて、たゆとう海風の紋様を刻んだ帯をつけていなければ、もしかするとゲールだとは思わなかったかもしれない。
そしてそんな様子を前にも見たことがなければ。
「レイア……来たぞ。厄災だ」
海の上で、抱きしめられたゲールは胡乱げな目を救いの主に向けると、まるで呟くようにそういった。
「北の大地の恵みを奪い去り、いくつもの部族を死に追いやったあいつだ……ちくしょう。どこに潜んでやがったのか、オレんとこの船に現れたぞ」
「今喋ると海水を飲むわ。食いしばって」
声もしゃがれていた。一部はかすれて聞き取るのも難しい。
レイアは胸の動揺を抑えつつ、浮き輪代わりの木切れを掴んで岸まで泳ぎだした。町の岸まで行けば阿子が呼びに行った仲間が待っているはずだ。
「みぃんな、闇討ちだ。ちくしょう……チクショウ」
「私達が仇を討ってあげる。でも厄災への恨みをこれ以上増やさせないで」
ゲールの手が一つ木切れから外れたのを見て、レイアはゲールの後ろに回り抱きかかえるようにして泳ぎ始めた。
「絶対、仇とって、く、れナ」
「もちろんよ。あいつには私達の族長を殺された恨みもある。北の大地を追われた悲しみもある。絶対に無に帰すわ」
励ますように何度も何度もゲールにそう言い聞かす。自分が彼に言った通り海水が口の中に入ってくるが、それも気にせずレイアは語り続けた。
だが、ゲールはついにもう一つの手も外れてしまった。濁った虚ろな瞳がぼんやりとレイアを見つめ返すだけだ。
「ゲール!」
岸にたどり着くまでの間、レイアは何度も叫んだ。
だが、結局ゲールはそれ以上、何も返すことはなかった。
「闘わねばならぬ。厄災、歪虚レーヴァは我々の宿敵だ」
「ここは帝国なのよ! 勝手に戦って死なれるわけにはいかないのよ!!」
レイアが今は帝国に下り暮らしている町。
彼女が辺境の一族として暮らしていた時からのつきあいである長のイグは決然と立ち上がったが、移民政策の活動を請け負う帝国の役人メルツェーデスは真っ向からそれを食い止めていた。
「歪虚が相手なら、兵士の仕事なの。全員で立ち向かうのが帝国の流儀。海上の船に現れたんなら第四師団が担当なの! あんた達は帝国住民。それを支えるのが仕事。戦うのは仕事じゃないから!!」
「その第四師団はいつ来るのだ」
「連絡すりゃ数日のうちに来るわよ!!」
「厄災は名の通りマテリアルを奪い去り、恵みを奪うのだ。我々の元にいつやってくるかもしれん。大地という名の母を奪い、そして母たる前族長を殺した相手でもある。それを何日も黙って見ておれというのか」
「そうよ。一度負けた相手に準備もなく再戦するなんて馬鹿のやることよ!」
メルツェーデスはとにかく扉にしがみついて頭1つ分も高いイグやさらにもっといかつい体の男などを通らせないように、そしてとにかく勢いに呑まれないようにと噛みついたが、収まる気配はどこにもない。
「ふーん、準備、ねぇ。じゃあハンターに手伝いを頼むよ。それでいいよね?」
こまっしゃくれた少年にそう言われて一瞬だけメルツェーデスは固まったのを見計らって、レイアがメルツェーデスを扉から引きはがした。メルツェーデスのつけ爪がはじけ飛んだが、それでも彼女は扉にかじりつくようにして外に出るのを塞いだ。
「レーヴァだけはそうはいかない。あれを何日も放っておいたらきっと帝国も大きな被害を負うわ」
「いい加減言うこと聞いてよ! 厄災だかなんだか知らないけど、無理してもし死んだらどうするのよ。すっごい強かった前の族長ですら勝てなかったんでしょ!? 死にに行くのをどうぞって通す馬鹿がいるのよ!! 鍛冶屋っていう仕事見つけたんだからさぁ。大人しく歪虚を倒す武器を作っててよ!」
メルツェーデスは涙声だった。
常識知らずで、頭の痛いことばかりを起こしていた。最初はさっさと兵士にでもなって帝国の最前線に立って盾代わりになればいいと思っていた。
快活で、人が良くて、知らず知らずに笑顔になった。帝国の人ではもらえなかった気持ちにさせてもらった。
もうメルツェーデスの髪も顔も、頭の中もぐちゃぐちゃだった。
「何を言っている。わざわざ死にに行くわけじゃない」
そんな彼女の頭を大きな優しい手で包まれ、軽く撫でられた。
イグだ。
「レーヴァはずっと我々の気持ちに尾を引かせていた。あれを倒すことは辺境への想いを断ち切ることでもある。それにメルツェーデス。お前がそれだけ我々を想ってくれているのに、無駄死できるわけもない。必ず帰って来る」
そのセリフにメルツェーデスは言葉にならない唸りを上げて泣きじゃくった。
解説
●目的
海賊ノト族の船に現れた歪虚レーヴァの討伐
●舞台
ノト族が使っていた船。あまり大きくなく甲板もフルに暴れるとするなら少し手狭に感じるでしょう(一応人数制約はありません)
その他船長室、船員室や船倉など合計6部屋があります。
●味方NPC
イグ 霊闘士
ゾール 聖導士
レイア 魔導士
ロッカ 機導士
●制約
レーヴァの討伐には必ずNPCと共闘することになります(危ないから下がってと指示しても彼らは前に出てきます)
レーヴァの討伐が依頼達成の条件ですが、成功段階の判定はNPCの生命力によって判定されます。
●敵情報
レーヴァ 歪虚
真っ赤に染まった剣を持った鎧騎士ということです。
その他能力・強さなど詳細は一切不明です
●その他
レーヴァによって村や集落を滅ぼされたという設定をすることが可能です。
海賊ノト族の船に現れた歪虚レーヴァの討伐
●舞台
ノト族が使っていた船。あまり大きくなく甲板もフルに暴れるとするなら少し手狭に感じるでしょう(一応人数制約はありません)
その他船長室、船員室や船倉など合計6部屋があります。
●味方NPC
イグ 霊闘士
ゾール 聖導士
レイア 魔導士
ロッカ 機導士
●制約
レーヴァの討伐には必ずNPCと共闘することになります(危ないから下がってと指示しても彼らは前に出てきます)
レーヴァの討伐が依頼達成の条件ですが、成功段階の判定はNPCの生命力によって判定されます。
●敵情報
レーヴァ 歪虚
真っ赤に染まった剣を持った鎧騎士ということです。
その他能力・強さなど詳細は一切不明です
●その他
レーヴァによって村や集落を滅ぼされたという設定をすることが可能です。
マスターより
ボラ族は基本お馬鹿ですが、割と暗い過去も持ち合わせています。
そしてそれが目の当たりになるとそうそうお馬鹿なことだけやってられないわけで。
辺境と帝国の関係を帝国サイドで片鱗を描いていけたらなと思います。
そしてそれが目の当たりになるとそうそうお馬鹿なことだけやってられないわけで。
辺境と帝国の関係を帝国サイドで片鱗を描いていけたらなと思います。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/02/04 01:07
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/01/27 09:07:30 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/22 21:59:54 |