ゲスト
(ka0000)
ボラ族、反逆者現る
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/03/27 07:30
- リプレイ完成予定
- 2016/04/05 07:30
オープニング
辺境では誰もが家族だった。
今日訪れた旅人ですら、兄弟であり親でありまた子供である。
大地ですらも大きな母と敬愛し、そのいただきものに感謝した。
レイアはぽつりぽつりと幼子のウルと共に港町を歩いていた。
春めいた陽気は過ごしやすく、散歩をするのには最適であったが、彼女の辺りは閑散としているばかりであった。
この町が寂れている訳ではない。現にいくつも視線は背中に飛んでくるし、話声も時折耳には飛び込んでくるくらいには人はいるのだ。
いないのは、自分の周りだけ。
「ここは、難しいところね」
周りに隠れている人間には聞こえないようにレイアはそっとウルに語り掛けたが、ウルはそんな彼女を不思議そうに見返すばかりであった。
「きっとまた不幸を呼び込むわ」
「辺境民ってみんなあんな感じなのかしらね。歪虚に狙われているんじゃないかしら」
「知ってる? ボラ族って歪虚に追われて辺境の他の民族とも迎合しなかったんだって。きっと疫病神なのよ」
「そうよね。ここもボラ族が来て海賊が来たりとか、歪虚も絡んでいたらしいの」
聞こえていないと思っているのだろうか。
レイアはちらりとそちらに視線を向けると、話の主たる町の女共は恐れをなして逃げていく。
「かあか。うみ いこ」
ウルはこちらを見上げると、しっかとした顔でそう言った。平時の自分と同じ顔をして。
●
レイアはウルを遊ばせてぼんやりと町から随分と離れた海辺に座りこみ、ずっと静かな海を眺めていた。
海は果てはないが、視線を遠くに北に寄せれば地続きの辺境が見える気がする。
命に対して厳しい世界ではあったが、優しい世界でもあった。
血を流し命を失う危険とは常に隣り合わせだ。夜中に狼の群れに囲まれないよう、地面に耳を付けて眠ることも普通だ。
しかし血以外のものを失うことはなかった。仲間が、例え親兄弟が死んだとしてもその魂はずっと引き継ぐと思えていたから。
ここは違う。血は流れない。だが、それ以外の全てが遠くにあるような気がする。
「遠い……」
族長スィアリが死んで、母なる大地は北荻に呑まれて草木も生えなくなった。族長を引き継いだイグは大同の義を果たし、歪虚と戦うには手を取り合うべきと帝国に下ることを決意した。それが一石となったかはわからないが連合軍というものが成り立ち、歪虚に盛んに抵抗しているのだから決して悪いものではなかったのだろう。
名もなき部族を率いた偉大なシバの功績に寄っててパシュパティ条約が結ばれ、辺境と帝国の関係も変わりつつある。
その先駆けになったのだとすれば、イグの判断はきっと英断だ。
だけど、無性に帰りたくなる。
「ここは、狭い……」
誰にともなく呟いた言葉だった。
だが、それに対して不意に返答が来たとき、レイアは臓腑が鷲掴みにされるような戦慄に襲われた。
「お ウ。北風ノ一族 ニ ココハ セマカロウ」
「!!!」
振り向いたそこにいたのは鉄の塊だった。錆びついた鉄にはフジツボがつきまとい、原型を明らかに変じている。
そしてそれとは対照的な鮮やかな紅の剣と、泣き叫ぶウルをそれぞれの手に持つ姿。
「レーヴァ!!」
瞬間的に跳ね上がり、レイアは指輪の魔術発動体を手にしたが、それ以上何もできなかった。ウルに刃を突き付けられていてはいくら情け容赦を知らぬ女戦士と呼ばれる身であっても。
それはレーヴァと呼ばれる歪虚だとレイアは知っていた。忘れるはずもない。
辺境を荒らした悪魔だ。
こいつのせいで辺境の大地は恵みを失い。スィアリは変わり果てた姿になり、故郷を追い出され。
この帝国に来てから出会った海賊のノト族を皆殺しにし。
そして。
仲間と共に、先日討ち取ったのだから。
何故生きている? 私はどうすればいい?
思考がハテナばかりでぐちゃぐちゃに埋まる中、遠い故郷に想いふけり、風の囁きに気付かなかった自分を心底後悔した。
「放しなさい!」
「ナラ コノ童ト 同量ノ血ヲ サシダセ」
ギンギンと金属的な音を響かせた後、レーヴァは腰元につけていたもう一振りの小さな短剣をレイアの足元に放り投げた。その短剣も砂浜に埋もれてなお気味悪い黒金のままだ。
「血ヲナガセ。 解放サレルゾ」
囁くようにそいつは言った。
自分の心を見透かすように。己の欲求を震わせるように。
「偽善ヲ 生贄ニシテ トリモドセ」
●
「おぁぁぁ、腹減ったぞ。飯。飯!!」
ボラ族のゾールはハンマーを振るうのを止め、手ぬぐいの鉢巻きを取り払うとそう叫んだ。一際野太く大きな声は鉄火の響く鍛冶場全体に轟き渡ると、仲間達も次々と手を止めて伸びをしたり、汗をふき取ったりした。
今日はもうすぐハンターが遊びに来るのもあり、いつも以上に作業に熱がこもっていた。
「んあ、レイアとロッカはどこだ?」
「ロッカは細工部屋で船の内装の作業だ。ハンターに見せるんだとさ。レイアはウルを連れて散歩したんじゃないか」
今日の食事準備担当の二人がいないことにゾールはむっとした。
彼は人一倍働き、人の三倍の力を出す。その為には人の五倍の飯を食べければならないのだ。何よりも楽しみな飯がないということは大いに大問題なのだ。苛立つ彼は颯爽と立ち上がり、自らの嫁であるレイアの姿を探し、そしてそれはすぐに見つけた。
彼女はゆっくりと鍛冶場の敷居をまたいでいた。
「レイア。飯っ。ンまい飯どこだ? いつもすぐ用意してくれるのに珍しいな」
「……クセに」
ゾールのいつもの豪放な微笑みに対して、レイアはぼそりと呟いた。
「レイア?」
「一族の誇りを忘れたクセにっ!!」
ゾールの腹部に燃え盛るような痛みと、冷たさが同時に襲い掛かる。
レイアは気迫と共にそれを捻じり弧を描くようにして引き抜いた。腹膜をえぐられたゾールは派手に中に収まっていたものをさらしながらも、目の前の紅の刃を見て、口をパクパクとさせるばかりであった。
慌てて部屋から飛び出してきたロッカがその刃に愕然とした叫んだ。
「それ、レーヴァの……魔剣?」
そんなロッカの言葉にもレイアはきつく睨みつけると叫び、剣の切っ先を向けた。
「お前らなど、ボラの名を穢す反逆者だ。その血を捧げてボラの誇りを取り戻させてもらう!」
返り血なのか。
レイアの頬を真っ赤なものが伝わせながら、鍛冶場の中を駆けはじめた。
今日訪れた旅人ですら、兄弟であり親でありまた子供である。
大地ですらも大きな母と敬愛し、そのいただきものに感謝した。
レイアはぽつりぽつりと幼子のウルと共に港町を歩いていた。
春めいた陽気は過ごしやすく、散歩をするのには最適であったが、彼女の辺りは閑散としているばかりであった。
この町が寂れている訳ではない。現にいくつも視線は背中に飛んでくるし、話声も時折耳には飛び込んでくるくらいには人はいるのだ。
いないのは、自分の周りだけ。
「ここは、難しいところね」
周りに隠れている人間には聞こえないようにレイアはそっとウルに語り掛けたが、ウルはそんな彼女を不思議そうに見返すばかりであった。
「きっとまた不幸を呼び込むわ」
「辺境民ってみんなあんな感じなのかしらね。歪虚に狙われているんじゃないかしら」
「知ってる? ボラ族って歪虚に追われて辺境の他の民族とも迎合しなかったんだって。きっと疫病神なのよ」
「そうよね。ここもボラ族が来て海賊が来たりとか、歪虚も絡んでいたらしいの」
聞こえていないと思っているのだろうか。
レイアはちらりとそちらに視線を向けると、話の主たる町の女共は恐れをなして逃げていく。
「かあか。うみ いこ」
ウルはこちらを見上げると、しっかとした顔でそう言った。平時の自分と同じ顔をして。
●
レイアはウルを遊ばせてぼんやりと町から随分と離れた海辺に座りこみ、ずっと静かな海を眺めていた。
海は果てはないが、視線を遠くに北に寄せれば地続きの辺境が見える気がする。
命に対して厳しい世界ではあったが、優しい世界でもあった。
血を流し命を失う危険とは常に隣り合わせだ。夜中に狼の群れに囲まれないよう、地面に耳を付けて眠ることも普通だ。
しかし血以外のものを失うことはなかった。仲間が、例え親兄弟が死んだとしてもその魂はずっと引き継ぐと思えていたから。
ここは違う。血は流れない。だが、それ以外の全てが遠くにあるような気がする。
「遠い……」
族長スィアリが死んで、母なる大地は北荻に呑まれて草木も生えなくなった。族長を引き継いだイグは大同の義を果たし、歪虚と戦うには手を取り合うべきと帝国に下ることを決意した。それが一石となったかはわからないが連合軍というものが成り立ち、歪虚に盛んに抵抗しているのだから決して悪いものではなかったのだろう。
名もなき部族を率いた偉大なシバの功績に寄っててパシュパティ条約が結ばれ、辺境と帝国の関係も変わりつつある。
その先駆けになったのだとすれば、イグの判断はきっと英断だ。
だけど、無性に帰りたくなる。
「ここは、狭い……」
誰にともなく呟いた言葉だった。
だが、それに対して不意に返答が来たとき、レイアは臓腑が鷲掴みにされるような戦慄に襲われた。
「お ウ。北風ノ一族 ニ ココハ セマカロウ」
「!!!」
振り向いたそこにいたのは鉄の塊だった。錆びついた鉄にはフジツボがつきまとい、原型を明らかに変じている。
そしてそれとは対照的な鮮やかな紅の剣と、泣き叫ぶウルをそれぞれの手に持つ姿。
「レーヴァ!!」
瞬間的に跳ね上がり、レイアは指輪の魔術発動体を手にしたが、それ以上何もできなかった。ウルに刃を突き付けられていてはいくら情け容赦を知らぬ女戦士と呼ばれる身であっても。
それはレーヴァと呼ばれる歪虚だとレイアは知っていた。忘れるはずもない。
辺境を荒らした悪魔だ。
こいつのせいで辺境の大地は恵みを失い。スィアリは変わり果てた姿になり、故郷を追い出され。
この帝国に来てから出会った海賊のノト族を皆殺しにし。
そして。
仲間と共に、先日討ち取ったのだから。
何故生きている? 私はどうすればいい?
思考がハテナばかりでぐちゃぐちゃに埋まる中、遠い故郷に想いふけり、風の囁きに気付かなかった自分を心底後悔した。
「放しなさい!」
「ナラ コノ童ト 同量ノ血ヲ サシダセ」
ギンギンと金属的な音を響かせた後、レーヴァは腰元につけていたもう一振りの小さな短剣をレイアの足元に放り投げた。その短剣も砂浜に埋もれてなお気味悪い黒金のままだ。
「血ヲナガセ。 解放サレルゾ」
囁くようにそいつは言った。
自分の心を見透かすように。己の欲求を震わせるように。
「偽善ヲ 生贄ニシテ トリモドセ」
●
「おぁぁぁ、腹減ったぞ。飯。飯!!」
ボラ族のゾールはハンマーを振るうのを止め、手ぬぐいの鉢巻きを取り払うとそう叫んだ。一際野太く大きな声は鉄火の響く鍛冶場全体に轟き渡ると、仲間達も次々と手を止めて伸びをしたり、汗をふき取ったりした。
今日はもうすぐハンターが遊びに来るのもあり、いつも以上に作業に熱がこもっていた。
「んあ、レイアとロッカはどこだ?」
「ロッカは細工部屋で船の内装の作業だ。ハンターに見せるんだとさ。レイアはウルを連れて散歩したんじゃないか」
今日の食事準備担当の二人がいないことにゾールはむっとした。
彼は人一倍働き、人の三倍の力を出す。その為には人の五倍の飯を食べければならないのだ。何よりも楽しみな飯がないということは大いに大問題なのだ。苛立つ彼は颯爽と立ち上がり、自らの嫁であるレイアの姿を探し、そしてそれはすぐに見つけた。
彼女はゆっくりと鍛冶場の敷居をまたいでいた。
「レイア。飯っ。ンまい飯どこだ? いつもすぐ用意してくれるのに珍しいな」
「……クセに」
ゾールのいつもの豪放な微笑みに対して、レイアはぼそりと呟いた。
「レイア?」
「一族の誇りを忘れたクセにっ!!」
ゾールの腹部に燃え盛るような痛みと、冷たさが同時に襲い掛かる。
レイアは気迫と共にそれを捻じり弧を描くようにして引き抜いた。腹膜をえぐられたゾールは派手に中に収まっていたものをさらしながらも、目の前の紅の刃を見て、口をパクパクとさせるばかりであった。
慌てて部屋から飛び出してきたロッカがその刃に愕然とした叫んだ。
「それ、レーヴァの……魔剣?」
そんなロッカの言葉にもレイアはきつく睨みつけると叫び、剣の切っ先を向けた。
「お前らなど、ボラの名を穢す反逆者だ。その血を捧げてボラの誇りを取り戻させてもらう!」
返り血なのか。
レイアの頬を真っ赤なものが伝わせながら、鍛冶場の中を駆けはじめた。
解説
●目的
レイアが仲間であるボラ族に向かって攻撃し、数人が大怪我をしている状況です。突然の出来事でボラ族は戸惑いつつ対処していますが、レイアを止めるには至っていません。
この凶行を止めてください。
●場所その他
とある港町にある船部品用の鍛冶場です。30人が作業できるほど大きい建物です。ハンター全員が入っても自由が制限されることはありません。
足元には各種鍛冶道具が散らばっています。
時間は正午過ぎ。窓がいくつもありますが、出入りするのは不便です。
●敵情報
レイア 魔術師
辺境より移民したボラ族の一人で、周りの被害を無視して容赦なく魔法を叩きこむことで有名な人です。
怪しい短剣を装備。血を抜き取る作用がありますが、特に回復できないなどの事項はありません。
魔法は各種使い、近接戦も厭いません。
●初期位置
レイアは鍛冶場の中央におり、族長のイグ(霊闘士)が主に対峙しています。周りには同族の仲間(ほぼ非覚醒者、ロッカという機導士も紛れています) が入り乱れています。
ゾールは入り口のあたりで倒れています。重体です。他何名か怪我をしています。
ハンターは入り口からスタートします。
●補足
このシナリオではハンターはボラ族の元に遊びに来てほしいというお願いの元でやってきています。
その為報酬は寸志となっていますので、ご了承ください。
レイアが仲間であるボラ族に向かって攻撃し、数人が大怪我をしている状況です。突然の出来事でボラ族は戸惑いつつ対処していますが、レイアを止めるには至っていません。
この凶行を止めてください。
●場所その他
とある港町にある船部品用の鍛冶場です。30人が作業できるほど大きい建物です。ハンター全員が入っても自由が制限されることはありません。
足元には各種鍛冶道具が散らばっています。
時間は正午過ぎ。窓がいくつもありますが、出入りするのは不便です。
●敵情報
レイア 魔術師
辺境より移民したボラ族の一人で、周りの被害を無視して容赦なく魔法を叩きこむことで有名な人です。
怪しい短剣を装備。血を抜き取る作用がありますが、特に回復できないなどの事項はありません。
魔法は各種使い、近接戦も厭いません。
●初期位置
レイアは鍛冶場の中央におり、族長のイグ(霊闘士)が主に対峙しています。周りには同族の仲間(ほぼ非覚醒者、ロッカという機導士も紛れています) が入り乱れています。
ゾールは入り口のあたりで倒れています。重体です。他何名か怪我をしています。
ハンターは入り口からスタートします。
●補足
このシナリオではハンターはボラ族の元に遊びに来てほしいというお願いの元でやってきています。
その為報酬は寸志となっていますので、ご了承ください。
マスターより
移民に対する感情は喜びだけではないのも事実です。ボラ族のような天衣無縫で厄介事の塊であるような存在は特に。
恐らくレイアを捕まえるのはあっという間でしょう。そこから先は自由行動です。そもそもハンターは遊びにきたという立ち位置なのでレイアを止める以上の目的をどうするかは自由です。皆様でよりよい手を考えてくださいね。
ただし、レイアにとってはこうした戦場は得意な部類なので、下手しすぎると返り討ちをくらう可能性があるのでお気をつけて。
恐らくレイアを捕まえるのはあっという間でしょう。そこから先は自由行動です。そもそもハンターは遊びにきたという立ち位置なのでレイアを止める以上の目的をどうするかは自由です。皆様でよりよい手を考えてくださいね。
ただし、レイアにとってはこうした戦場は得意な部類なので、下手しすぎると返り討ちをくらう可能性があるのでお気をつけて。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/03/31 16:48
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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事態収拾に向けて【相談卓】 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/26 22:39:28 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/23 00:07:37 |