• 戦闘

『血の厄災』 希求

マスター:葉槻

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在10人 / 4~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/04/22 07:30
リプレイ完成予定
2016/05/01 07:30

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。

●エンスリン病院にて
「先生、父の容態ですが……」
「えぇ、今は安定されておられますよ」
 死の淵にいる資産家の息子に声を掛けられ、アダム・エンスリンは穏やかに告げる。と、男は「えぇそれなんですが」とこそりと耳打ちをする。
「相続の件、上手く行きましたので……もう父の延命は不要になりました。今まで有り難うございました」
 アダムが眼鏡の奥のまなじりを上げて男を見るが、男は「死んだら、連絡を下さい」と下卑た薄ら笑いを残して去って行く。

 速歩で自室へと戻ると、扉を閉めて深い溜息を吐く。
「……なんて、欲深い」
 金持ちの言う事は大概いつも同じだった。特に、入院し、出来うる限りの延命を望む者ほどその地位や名誉、財産に固執する者が多い。
 一方で、不要となった途端こうやって切り捨てる。
 アダムは二度目の溜息を吐いた。
 机の上には、一通の手紙が置かれている。先日『自主退院』をやってのけた少女の置き手紙だ。
 あの日、覚醒者の賊が2名ほど入ったが、これといって盗まれた物も無かったため、軍へ不法侵入の届け出をし、警備の強化に努めている。
 せめてあの賊を捕らえることが出来れば良かったのだが、暗がりだった上に2名共仮面で顔を隠していた為、体格からしておそらく女性であること以外は分からない。
 少女のカルテの住所欄を見て、眉を顰める。住所にはかつて旧帝国軍諜報機関最高責任者だった男が治める地名が書かれていた。
「……まさか、今頃あなたが動くとも思えませんが」
 そう、彼は王に見放され領地以外の全てを失ったはずだ。その彼が、今頃になって何かを成そうと動き出すとは思えなかった。
 だが、もしも帝国がこの病院の秘密に気付いて動き出したのだとしたら……アダムはこめかみを親指の腹で圧迫しながら思案にふけるのだった。

●白亜宮にて
「わざわざ足労頂いて申し訳無いわ」
 ハンターオフィスの説明係の女性は、『アダム・エンスリンをよく知る者』だとフランツから紹介を受けて、盲目の老女の前に座していた。
 静々と目の前に用意された紅茶を「特製のブレンドハーブティなの」と紹介すると、カサンドラは静かに一口口に含んだ。
「フランツから話しは聞いているわ。本当は私が行くのが筋だったのでしょうけれど、この目では遠方への外出は厳しくてね」
「あぁ、いえ。我々としては情報を頂けるのであれば、行ける所まで出向きます」
 ……そのくらい隙が無いのだ、あのエンスリン病院という場所は。
 彼女の言葉にカサンドラは満足そうに微笑み返すと、膝の上で両手を組んだ。
「……さて、まず何から話しましょうか。私の知る情報が、お役に立てば良いのですけれど」
 静かに語られた物語は過去20年以上前の旧帝国時代に遡った。


 アダム・エンスリンは、非常に優秀な聖導士だった。
 彼の中の治療優先順位は【指揮官>軽傷者>重傷者>致命傷負傷者】という点においてまったくぶれることが無く、その為に上の覚えは非常に良かった。
 助けられたかも知れない者を放置し、上官から治療するという選択に周囲からは酷いやっかみや妬み恨みをぶつけられることも多かったが、彼は意に介さず肩で風を切り、足音高らかに出世街道を歩いて行った。
 当時、彼の上官としてカサンドラは何度彼と衝突したかわからない。顔を突き合わせれば啀み合いを始めると言われる程、彼とはソリが合わなかった。
 それでも、彼は自分の意思を――正義を――曲げること無く戦場に立ち続けた。
 その後、カサンドラが視力の低下を理由に退役。最終的には衛生機関の最高責任者にまで名を上げ、王の忠臣として名を連ねた。そして革命が起き……彼は、戦場に姿を現さなかった。

「革命後、発見された彼は戦いに参加しなかったという事で命だけは救われたけれど、それ以外の物全て……爵位も軍医としての地位も名誉も全て失って……それで彼はただ一人の医者として開業すると言ったわ」
 カサンドラは革命後、開業するためハーブを学ばせて欲しいと現れた彼を見て驚いたのを今も覚えている。
「革命前のとげとげしさが消えて、雰囲気が優しくなっていたのよ。彼はきっと良い医者になると思ったわ」
 リアルブルーから伝わる医術や薬学を学ぶ為に何度もロッソへ行き、向こうから転移してきた医者に話しを聞き、教えを請う。
「そうして出来たのがエンスリン病院よ」


 カサンドラの語るアダム・エンスリンの人柄は高潔な印象があった。
 説明係の女性は紅茶で喉を潤した後、ハンター達からもたらされた情報を問う。
「ミス、カサンドラ。『体内マテリアルの循環不全による奇形細胞増殖症』という病名にお心当たりは?」
「……昔は『不治の病』で一括りにされていた病の一つね。発症部位によって色々な呼び方があるけれども、原因を病名に当てはめるとそれね」
「では、これを治療する薬の副作用で『死亡した患者の亡骸は骨さえ残らずに消失する』というのはあり得ますか?」
 そう問われて、カサンドラは首を傾げた。
「どれほど強い薬を使えばそうなるのかしら……? リアルブルーの薬には骨を脆くしてしまう副作用の物があるとは聞いたことがあるけれど、消失するなんて……」
 薄いレースのベールの向こうでカサンドラは柳眉を寄せた。


●ある薄暗い室内にて


 どうして彼女が捕まったのか、その経緯は知らない
 ただ、王は言った
「これを調べることが我々の繁栄に繋がるのだ」


 彼女は小さな口を戦慄かせて涙声で囁いた
「私を助けて下さい」


 革命が起き、私は彼女の手を取って逃げた


「馬鹿な男。地位も栄誉もどぶに捨てて!」
 妻は私の理解者とはなり得ず、職も何もかもを失い私は茫然自失となった

 だが、彼女は言った
「私がおそばにおります」



 ――懐かしい夢を見て目が覚めた。

 あれからもうすぐ14年。
 人と歪虚との戦いは終わらず、それでも革命後はリアルブルーから持ち込まれた科学と情報により随分と人々は進化し発展した。
 それでも、まだまだ足りない。彼の国では高度な腫瘍摘出手術を始め、生体移植や、全血交換輸血に無菌室での骨髄移植などが行われるというのに、この国の技術ではそれらにはまだ対応出来ないのだ。
 悔しい。もっと国が落ち着けば? そう言い続けて14年なのだ。私ももう随分歳を取ってしまった。
「アダム……」
 気遣うように彼女がそっと私の節くれ立った手に、白い陶器のようななめらかで冷たい手を置いた。
 ここ数日、大量の血液を強制的に抜かれ続けていたが、それも先日、無事終わった。
 病的なまでに色を失っていた白皙の肌には少しずつ赤みが戻りつつある。
「……大丈夫だよ、ペレット。さぁ、行こうか」
 私はあの日のように彼女の手を取り、穏やかに微笑み返した。

 ……まだ、終わるわけにはいかない。こんなところで、終わらせない。
 私の願いは、望みは、この手で必ず果たしてみせる。

「ペレット、君さえいれば……」

解説

【目的】エンスリン病院にて不正な医療行為が行われていた証拠を集める帝国軍兵士をフォローする。

 過去の依頼結果により、エンスリン病院に通院していた者の失踪が明らかになった。
 その為、帝国軍による家宅捜索を行うこととなったが、相手が元軍医であり、覚醒者でもあるアダム・エンスリンである為、抵抗された場合を想定し、ハンター達と突入を行うこととなった。

 本日は休診日であり、突入は早朝。
 病院内にはアダム以外に当直の医師1名と夜勤の看護師が3名、厨房の職員2名と、警備が5名いるのが判明している。
 入院患者は推定38名。

 突入部隊は帝国軍一般兵10名(非覚醒者)。装備は皮鎧と長剣。
 彼らは主に資料やカルテの押収などを担当する。

【注意事項】
 基本的に病院職員達に危害を加えてはならない。ただし、抵抗する場合には自己防衛の為の攻撃は可。
 入院患者のほとんどが元貴族、現在の資産家・富裕層などの上流階級であり、彼らの身を脅かすことはあってはならない。

 不正医療が真実であった場合、暴食系歪虚や今まで目撃されてきていたスライム型歪虚などが襲ってくる可能性がある。
 各自、室内戦闘となっても良いように準備を怠らないこと。

【病院施設情報】※情報から判明している施設のみ
・1階:総合受付、薬剤所、待合室、一般外来(2部屋)、特別外来(1部屋)、処置室、緊急処置室
 入口は正面玄関、裏口、救急出入口の3つ

・2階:看護師詰所、職員休憩室、厨房、手術室、中央材料室、資料室、個室病室40床

【敵】
・スライム
 赤黒いゼリー状の歪虚で形状を自由に変えられる
 能力はウィンドスラッシュの様な物理攻撃(単体・範囲)、マテリアルドレイン 他不明

・アダム・エンスリン(50歳)
 禿頭、白衣、丸眼鏡の高レベル聖導士

【PL情報】
 戦闘は待合室や病室、詰所や手術室など病院の各場所で行われる可能性があります。
 帝国兵士達を守りながら戦って下さい。

マスターより

 初めまして、もしくはまたお目にかかれて光栄です、葉槻(はづき)です。
 『望郷』『ダイエット』と皆さんの今までの行動の結果により、このような依頼となりました。
 こんな依頼が出る時点で真っ黒です。なので、ジャンル:『調査』ではなくて『戦闘』になっています(※重要)。
 もちろんこの依頼から参加されても問題ありません。知っている人、知らない人で見る視点が違うと思いますので、無理に全てを知ろうとしなくても大丈夫です。
 どうぞ、あなたの『正義』に沿った行動で解決に導いて下さい。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/04/29 03:23

参加者一覧

  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 一人二役
    マリル(メリル)(ka3294
    人間(紅)|16才|女性|疾影士
  • 不撓の森人
    リュカ(ka3828
    エルフ|27才|女性|霊闘士
  • 燐光の女王
    ドロテア・フレーベ(ka4126
    人間(紅)|25才|女性|疾影士
  • 正秋隊(紫龍)
    劉 厳靖(ka4574
    人間(紅)|36才|男性|闘狩人
  • DTよ永遠に
    水流崎トミヲ(ka4852
    人間(蒼)|27才|男性|魔術師
  • 緑青の波濤
    エリオ・アスコリ(ka5928
    人間(紅)|17才|男性|格闘士
  • 細工師
    金目(ka6190
    人間(紅)|26才|男性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/19 04:34:03
アイコン 相談卓
エリオ・アスコリ(ka5928
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/04/22 07:09:53