ゲスト
(ka0000)
屍の恋人、偕老同穴の誓い
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/06/23 07:30
- リプレイ完成予定
- 2016/07/07 07:30
オープニング
これはお守り。貴方が無事に帰って来れますように。
青年の長い髪の毛を自分で織ったリボンでくくってあげると、彼は何度もそのリボンの感触を確かめていた。
このリボンにかけて必ず帰って来るよ。帰ったら……一緒になろう。袂を分かつのはこれが最初で最後。
共に老い、死んでもずっと一緒に。
ぼんやりと鏡の前に座る女は、そんなことを思い出していた。
鏡に映る自分は真っ白な絹を幾重ものレースにした豪華なウェディングドレスに包まれていた。滅多にしない化粧も施して、口には紅を。
そんな花嫁衣装に身を包むことは小さいころからの憧れではあった。だから今幸せかというと……そうではなかった。
肝心の彼は北に向かって。帰って来たのは死亡通知だけだった。歪虚の攻撃を受けて、散り散りになって。遺品すら見つからないという状況だったらしい。
死んだ人を待つわけにはいかない。そこそこの器量であった彼女を求める声は多かったし、親もいつまでも待ち続けることを許してくれはしなかった。そしてそれは正しいことなのだろうと、彼女も漠然とは思っていた。
「準備はいいか? ……おぉ」
父親が背中から声をかけた。
鏡越しに彼女の姿を認めると、そんな時間の都合をも一種忘れて息を飲んで感慨にふけってくれているのはわかった。
「……はい」
介添えを得て立ち上がった彼女は清ました顔で頷くと式場へと歩を進めた。
●
荘厳なる式場から悲鳴が上がった。
花嫁が歩んだバージンロードの真後ろからそれは上がった。振り返れば気持ちの悪くなるような空気と逆光を背にして立つ影は風になびいていた。
「ゾンビだ!!」
「逃げろっ」
「誰か兵士を、ハンターを」
式場は蜂の巣をつついたような状態だった。兵士やハンターなど都合よくいるわけもなく、戦いに慣れた者もいない。参列者は叫び逃げ惑うばかりであった。
もちろん花嫁を守ろうと花婿を始め、何人もの人間が彼女を必死に庇おうとしてくれた。が、彼ら彼女らよりずっと花嫁は冷静だった。
軍服姿。ボロボロになって袖や襟、傷口となった部分は糸がほつれていたが、布地はしつらえたばかりの風合いを残している。一等兵の勲章はそのままに。その身を最期まで守り通しただろう朽ちた小盾は左腕に通したままだ。
土色の皮と骨ばかりの腕。もはや生前の区別などつきもしないシャレコウベに申し訳程度についた肉と皮は微かな腐敗臭を漂わせる。
そして。やせ細った髪はまだそれに付き従っており。これもまたボロボロになったリボンでまとめられた房はゆら、ゆら。と亡者の衝動と、危機を煽り吹く風に揺られていた。
リボン。
あのリボン……。
家族と知人に押し込められようとするその中でそれはっきり見えていた。
なにか声をかけようと手を伸ばすよりも早く。花婿たる男の言葉が先に突き刺さった。
「ちくしょう、送り出したのに戻って来たのか!?」
送り出した……?
泡を食った花婿の一言に女は愕然とした。
花婿と彼に接点はなかったはずだ。今日の結婚だって彼が死んだと聞かされ、周囲の声に押されるようにして花婿を紹介されたのだ。
なのに。送り出した。ですって?
花嫁はすべてを理解した瞬間、庇う花婿を全力で突き飛ばした。
幾重にもなる家族や知人の壁をすり抜けて花嫁は忍んで歩んだ道を、走って戻った。
「止めろ。危険だ!」
掴んで引き留めようとする父親の腕は、花嫁のヴェールを掴んだだけだ。
「最低よ、あなたたち!!」
商人の花婿。
貧乏を嘆いていた父。
嘆く彼女に口をそろえて幸せとはなんたるやを唱え続けた家族と知人。
彼女は吐き捨てるようにそう言うと、生ける亡者となった彼の横を走った。ゾンビに知能はない。ただただ妄執と餓鬼にも等しい食欲が全てだ。新鮮なる命の香りに、妄執の根源たる自分に彼は振り向いて追いかけてくる。
「ダメだ。殺されちまう!」
「それはもうお前の知っている彼じゃない。身体だけ借りた、中身は歪虚なんだぞ」
「……だから? 貴方たちも同じようなものじゃない」
共に老い、死んでもずっと一緒に。
その誓いがあったからこそ彼は戻って来たのだ。死んでもひたすらに想い続けて来たのだ。それをどうして反故にしてまで生きることに拘泥することがあろうか。
花嫁は冷徹な瞳を彼らに向けるとそのままゾンビをおびき出すように走っては止まりを繰り返した。
「ハンターを、すぐにハンターを」
花婿は悲痛な声を上げ続けた。
青年の長い髪の毛を自分で織ったリボンでくくってあげると、彼は何度もそのリボンの感触を確かめていた。
このリボンにかけて必ず帰って来るよ。帰ったら……一緒になろう。袂を分かつのはこれが最初で最後。
共に老い、死んでもずっと一緒に。
ぼんやりと鏡の前に座る女は、そんなことを思い出していた。
鏡に映る自分は真っ白な絹を幾重ものレースにした豪華なウェディングドレスに包まれていた。滅多にしない化粧も施して、口には紅を。
そんな花嫁衣装に身を包むことは小さいころからの憧れではあった。だから今幸せかというと……そうではなかった。
肝心の彼は北に向かって。帰って来たのは死亡通知だけだった。歪虚の攻撃を受けて、散り散りになって。遺品すら見つからないという状況だったらしい。
死んだ人を待つわけにはいかない。そこそこの器量であった彼女を求める声は多かったし、親もいつまでも待ち続けることを許してくれはしなかった。そしてそれは正しいことなのだろうと、彼女も漠然とは思っていた。
「準備はいいか? ……おぉ」
父親が背中から声をかけた。
鏡越しに彼女の姿を認めると、そんな時間の都合をも一種忘れて息を飲んで感慨にふけってくれているのはわかった。
「……はい」
介添えを得て立ち上がった彼女は清ました顔で頷くと式場へと歩を進めた。
●
荘厳なる式場から悲鳴が上がった。
花嫁が歩んだバージンロードの真後ろからそれは上がった。振り返れば気持ちの悪くなるような空気と逆光を背にして立つ影は風になびいていた。
「ゾンビだ!!」
「逃げろっ」
「誰か兵士を、ハンターを」
式場は蜂の巣をつついたような状態だった。兵士やハンターなど都合よくいるわけもなく、戦いに慣れた者もいない。参列者は叫び逃げ惑うばかりであった。
もちろん花嫁を守ろうと花婿を始め、何人もの人間が彼女を必死に庇おうとしてくれた。が、彼ら彼女らよりずっと花嫁は冷静だった。
軍服姿。ボロボロになって袖や襟、傷口となった部分は糸がほつれていたが、布地はしつらえたばかりの風合いを残している。一等兵の勲章はそのままに。その身を最期まで守り通しただろう朽ちた小盾は左腕に通したままだ。
土色の皮と骨ばかりの腕。もはや生前の区別などつきもしないシャレコウベに申し訳程度についた肉と皮は微かな腐敗臭を漂わせる。
そして。やせ細った髪はまだそれに付き従っており。これもまたボロボロになったリボンでまとめられた房はゆら、ゆら。と亡者の衝動と、危機を煽り吹く風に揺られていた。
リボン。
あのリボン……。
家族と知人に押し込められようとするその中でそれはっきり見えていた。
なにか声をかけようと手を伸ばすよりも早く。花婿たる男の言葉が先に突き刺さった。
「ちくしょう、送り出したのに戻って来たのか!?」
送り出した……?
泡を食った花婿の一言に女は愕然とした。
花婿と彼に接点はなかったはずだ。今日の結婚だって彼が死んだと聞かされ、周囲の声に押されるようにして花婿を紹介されたのだ。
なのに。送り出した。ですって?
花嫁はすべてを理解した瞬間、庇う花婿を全力で突き飛ばした。
幾重にもなる家族や知人の壁をすり抜けて花嫁は忍んで歩んだ道を、走って戻った。
「止めろ。危険だ!」
掴んで引き留めようとする父親の腕は、花嫁のヴェールを掴んだだけだ。
「最低よ、あなたたち!!」
商人の花婿。
貧乏を嘆いていた父。
嘆く彼女に口をそろえて幸せとはなんたるやを唱え続けた家族と知人。
彼女は吐き捨てるようにそう言うと、生ける亡者となった彼の横を走った。ゾンビに知能はない。ただただ妄執と餓鬼にも等しい食欲が全てだ。新鮮なる命の香りに、妄執の根源たる自分に彼は振り向いて追いかけてくる。
「ダメだ。殺されちまう!」
「それはもうお前の知っている彼じゃない。身体だけ借りた、中身は歪虚なんだぞ」
「……だから? 貴方たちも同じようなものじゃない」
共に老い、死んでもずっと一緒に。
その誓いがあったからこそ彼は戻って来たのだ。死んでもひたすらに想い続けて来たのだ。それをどうして反故にしてまで生きることに拘泥することがあろうか。
花嫁は冷徹な瞳を彼らに向けるとそのままゾンビをおびき出すように走っては止まりを繰り返した。
「ハンターを、すぐにハンターを」
花婿は悲痛な声を上げ続けた。
解説
結婚式場にゾンビが1体現れました。
花嫁がゾンビを引きつけて森へと移動しているようです。
●目的
ゾンビの退治
花嫁の保護
●敵情報
ゾンビ
元帝国兵士のような衣服を纏っていますが、それらを有効に利用することはありません。
噛みつき、ひっかくなどの攻撃を行います。
自爆はしません。
基本的には花嫁を狙うように動きます。
花嫁
一般人
ゾンビを攻撃しようとする場合に妨害してくる可能性があります。
●場所
町はずれの雑木林です。時間は夕刻からスタートします。
スタート地点からゾンビと花嫁の位置は把握できないため、探索して探す必要があります。
遠距離攻撃は視界が遮られる場合があり、制限を受けることがあります。
花嫁がゾンビを引きつけて森へと移動しているようです。
●目的
ゾンビの退治
花嫁の保護
●敵情報
ゾンビ
元帝国兵士のような衣服を纏っていますが、それらを有効に利用することはありません。
噛みつき、ひっかくなどの攻撃を行います。
自爆はしません。
基本的には花嫁を狙うように動きます。
花嫁
一般人
ゾンビを攻撃しようとする場合に妨害してくる可能性があります。
●場所
町はずれの雑木林です。時間は夕刻からスタートします。
スタート地点からゾンビと花嫁の位置は把握できないため、探索して探す必要があります。
遠距離攻撃は視界が遮られる場合があり、制限を受けることがあります。
マスターより
結婚式で時折「偕老同穴の誓い」という言葉を聞くことがあると思います。一緒に老いて同じ墓穴に入り死んでも共に。という誓いです。
その誓いを乗り越えて、これからを生きるとは。そんな言葉を皆様から伝えていただければと思います。
なお、ゾンビは登録して初めての方でも簡単に退治できるかと思われます。
意図的にオープニングでは名前をつけておりません。
名前がないと不便と感じる場合は花嫁はネル。ゾンビの彼はエイン。花婿はレンドとお使いください。
その誓いを乗り越えて、これからを生きるとは。そんな言葉を皆様から伝えていただければと思います。
なお、ゾンビは登録して初めての方でも簡単に退治できるかと思われます。
意図的にオープニングでは名前をつけておりません。
名前がないと不便と感じる場合は花嫁はネル。ゾンビの彼はエイン。花婿はレンドとお使いください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/07/02 14:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/06/23 00:28:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/18 19:38:16 |