ゲスト
(ka0000)
過去との戦い、悪意への抗い
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/07/02 09:00
- リプレイ完成予定
- 2016/07/16 09:00
オープニング
●
「仕事はちゃんとやってるんじゃろうなぁ?」
「もちろんよ。ファルバウティちゃんが這いつくばって靴を舐めて、玄関先の飾りになってくれるっていうものだから張り切っちゃったわ」
「誰もそんなこといっとらんわ!!」
薄暗い。そこにいる者の姿も影法師としか思えない部屋の中でそんな会話が漏れた。
「エルフ共の死骸なら飾るのも好いなぁっつったんじゃ。あいつらの容姿はお前さん好みのようだしの」
そうして薄ら闇の中、僅かな光を集めて真っ赤に輝く瞳がぐるりと闇を見渡した。
彼女の部屋の趣味は相変わらず最高に最悪だ。ファルバウティが持ち寄った人間の残骸を美しく飾り付けられている。人間で作った帽子掛け。四つん這いにして薔薇のツタで固定された椅子。壁掛けの動物のように飾られた男女の首。頭蓋骨で作ったワイン入れ。
「あーあー、もったいねぇなぁ。ゾンビにするんじゃなかったのか」
「ふふふ、愛でていたら途中でバラバラになっちゃったんだもの。この脆さがたまらないのよね」
身じろぎもしない愛玩用の少年の胸をつう、と撫でて女は嗤った後、思い出したかのようにパンパン。と手を打ち鳴らした。
やおら後ろの扉が開いて、物言わぬ下僕が運んでくるのは棺桶だ。上蓋はなく、中身はすぐ見える。長い耳、痩身の男だ。
「これも脆くて肉付けは大変だったわ。仕上がりはいかが?」
「ひゃははは。さすがの造形眼してんなぁ。ワシが想像していた生前そっくりそのままじゃ」
ファルバウティはそれを間近に覗き込んで、満足そうな声を上げた。
「こんなの何に使うの?」
「いひひ、意趣返しってやつじゃ。歪虚許さざる、死すべしとうるせぇのがいてよぉ」
「ははぁ、関係者の遺骸なのね。解ってて自分たちの手で分解させる。ファルバウティちゃん。素敵だわ。シャンデリアに吊るしたいくらい」
「こいつが細切れになっても痛むのは相手の胸ばかりじゃ。あひゃひゃ。何回やれば心砕けるかのぉ。抗うことをやめるかのぉ。観念違えて手下になるかなぁ」
げたげたと笑いながらファルバウティは屍の口に不気味に光る機械を滑り込ませた。
●
「よく頑張っているね」
エルフハイムの長老であるヨハネからの一言は、浄化の巫女としての修行に励むサイアにとっては最大の賛辞であった。
「エルフハイムは多くの精霊に守られている土地。不浄と戦うには外も良く知らねばならない」
かつては外など危険と歪みに満ちていると思い込んでいたサイアであったが、ピースホライズンでハンター達と誤解を解き、新たな交流ができるようになった。
その上で奇遇にも言葉を受ける機会のあったヨハネからいただいた言葉は、ちゃんと壁を乗り越えられるよう精霊が導いてくれているのかもしれない。
「私、頑張ります」
サイアは初めて独りで森の外へ。浄化の巫女として森の外へ出ることになった。
せっかくの外を旅する機会だ。ハンターに警護をお願いしつつ、ついでに外の事をもっと教えてもらおうと彼女は決めていた。
が。
目の前に現れたそれに、サイアは運命や精霊の試練というものの過酷さをかみしめるしかできなかった。
「サイア……サイア……」
雑木林の中。
その屍の呼び声はサイアの胸を打った。
樹に手をかけて、苦しそうに。それでもしっかりとこちらを向いて呼ぶその姿は父親であった。
違う。父親は死んだ。
歪虚病に冒されて、体内のマテリアルのバランスを崩してもう何年も前に。サイアがまだ小さいころに森の一部に戻ったのだ。
ここにいるわけがない。いるとするならそれは、歪虚によって眠りを暴かれ、その手先に堕とされた、命のなれの果てだ。
よくよく見れば、肉を貼り付けて、人間の皮でつぎはぎしているのがわかる。風貌が父親に似ているだけで詳細は醜悪極まりない。
「歪虚よ、不浄なる存在よ!」
サイアはぐっと歯をかみしめて、ポシェットから浄化用の楔を取り出した。まだ1点浄化の、しかも初歩しかできないが、それでも今彼を浄化しないという選択肢はない。彼こそ浄化が必要な人物だ。
「サイア……サイア……」
だが、そんな固い決意も。
名前を呼ばれるだけで胸が苦しくなった。
周りが眩しくなり、楔を持つ手が震える。息が苦しくなる。
「お父さんはもういない。居たとしても、居たとしても……」
相手はゾンビだ。声はどこかで作り上げた音を魔導機械で再生しているだけ。躊躇する理由はどこにもない。
「コロシテ……コロシテ……」
「!!?」
金属的な声が響いた。改めて声のする方向を見れば、木立の向こうから別のエルフの姿が見える。それもまたサイアの知った顔だ。
また草むらから、また横から。
ずるりずるり。
次々と姿を現す故人たち。
「ああ、あ、ああああ!!!! 消え去れ、不浄よっ!!!」
サイアは弾かれたように楔を投げつけると、大地に力を集中させた。
「じょう……」
パァァァン。
それより先に一人が爆ぜた。
楔の間近にいたそれは楔を吹き飛ばし、投げつけたサイアの腕に叩き返すと同時に、枯れ枝のような頭の一部を浴びせかけられた。
苦しいを通り越えて、息が詰まる。呼吸ができない。
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
わかってる。頭ではわかってる。
彼らが歪虚、ゾンビであること。こんな雑魔など雑作もなく倒せること。
だが、知った顔が喋り迫ってくることが、そして自分の手で彼らを砕き、見るも無残な姿にしなければならないのかと思うと、緊張は吐き気に置き換わり、闘争心と慈悲心はせめぎ合って狂気に変貌する。
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
「あああああ!!!!? ああああああああああああ!!!!!」
取り囲まれるサイアはもうどうしていいのかわからない。
それを歓ぶ邪笑が響いていても、それが憎き仇のものであるなどと、とても理解できるわけもなかった。
「魂ナンカコモッテオランヨ。単ナル雑魚ジャ。遠慮ナク壊セ。血モ涙モナク、ヤッチマエー。アヒャヒャヒャ」
「仕事はちゃんとやってるんじゃろうなぁ?」
「もちろんよ。ファルバウティちゃんが這いつくばって靴を舐めて、玄関先の飾りになってくれるっていうものだから張り切っちゃったわ」
「誰もそんなこといっとらんわ!!」
薄暗い。そこにいる者の姿も影法師としか思えない部屋の中でそんな会話が漏れた。
「エルフ共の死骸なら飾るのも好いなぁっつったんじゃ。あいつらの容姿はお前さん好みのようだしの」
そうして薄ら闇の中、僅かな光を集めて真っ赤に輝く瞳がぐるりと闇を見渡した。
彼女の部屋の趣味は相変わらず最高に最悪だ。ファルバウティが持ち寄った人間の残骸を美しく飾り付けられている。人間で作った帽子掛け。四つん這いにして薔薇のツタで固定された椅子。壁掛けの動物のように飾られた男女の首。頭蓋骨で作ったワイン入れ。
「あーあー、もったいねぇなぁ。ゾンビにするんじゃなかったのか」
「ふふふ、愛でていたら途中でバラバラになっちゃったんだもの。この脆さがたまらないのよね」
身じろぎもしない愛玩用の少年の胸をつう、と撫でて女は嗤った後、思い出したかのようにパンパン。と手を打ち鳴らした。
やおら後ろの扉が開いて、物言わぬ下僕が運んでくるのは棺桶だ。上蓋はなく、中身はすぐ見える。長い耳、痩身の男だ。
「これも脆くて肉付けは大変だったわ。仕上がりはいかが?」
「ひゃははは。さすがの造形眼してんなぁ。ワシが想像していた生前そっくりそのままじゃ」
ファルバウティはそれを間近に覗き込んで、満足そうな声を上げた。
「こんなの何に使うの?」
「いひひ、意趣返しってやつじゃ。歪虚許さざる、死すべしとうるせぇのがいてよぉ」
「ははぁ、関係者の遺骸なのね。解ってて自分たちの手で分解させる。ファルバウティちゃん。素敵だわ。シャンデリアに吊るしたいくらい」
「こいつが細切れになっても痛むのは相手の胸ばかりじゃ。あひゃひゃ。何回やれば心砕けるかのぉ。抗うことをやめるかのぉ。観念違えて手下になるかなぁ」
げたげたと笑いながらファルバウティは屍の口に不気味に光る機械を滑り込ませた。
●
「よく頑張っているね」
エルフハイムの長老であるヨハネからの一言は、浄化の巫女としての修行に励むサイアにとっては最大の賛辞であった。
「エルフハイムは多くの精霊に守られている土地。不浄と戦うには外も良く知らねばならない」
かつては外など危険と歪みに満ちていると思い込んでいたサイアであったが、ピースホライズンでハンター達と誤解を解き、新たな交流ができるようになった。
その上で奇遇にも言葉を受ける機会のあったヨハネからいただいた言葉は、ちゃんと壁を乗り越えられるよう精霊が導いてくれているのかもしれない。
「私、頑張ります」
サイアは初めて独りで森の外へ。浄化の巫女として森の外へ出ることになった。
せっかくの外を旅する機会だ。ハンターに警護をお願いしつつ、ついでに外の事をもっと教えてもらおうと彼女は決めていた。
が。
目の前に現れたそれに、サイアは運命や精霊の試練というものの過酷さをかみしめるしかできなかった。
「サイア……サイア……」
雑木林の中。
その屍の呼び声はサイアの胸を打った。
樹に手をかけて、苦しそうに。それでもしっかりとこちらを向いて呼ぶその姿は父親であった。
違う。父親は死んだ。
歪虚病に冒されて、体内のマテリアルのバランスを崩してもう何年も前に。サイアがまだ小さいころに森の一部に戻ったのだ。
ここにいるわけがない。いるとするならそれは、歪虚によって眠りを暴かれ、その手先に堕とされた、命のなれの果てだ。
よくよく見れば、肉を貼り付けて、人間の皮でつぎはぎしているのがわかる。風貌が父親に似ているだけで詳細は醜悪極まりない。
「歪虚よ、不浄なる存在よ!」
サイアはぐっと歯をかみしめて、ポシェットから浄化用の楔を取り出した。まだ1点浄化の、しかも初歩しかできないが、それでも今彼を浄化しないという選択肢はない。彼こそ浄化が必要な人物だ。
「サイア……サイア……」
だが、そんな固い決意も。
名前を呼ばれるだけで胸が苦しくなった。
周りが眩しくなり、楔を持つ手が震える。息が苦しくなる。
「お父さんはもういない。居たとしても、居たとしても……」
相手はゾンビだ。声はどこかで作り上げた音を魔導機械で再生しているだけ。躊躇する理由はどこにもない。
「コロシテ……コロシテ……」
「!!?」
金属的な声が響いた。改めて声のする方向を見れば、木立の向こうから別のエルフの姿が見える。それもまたサイアの知った顔だ。
また草むらから、また横から。
ずるりずるり。
次々と姿を現す故人たち。
「ああ、あ、ああああ!!!! 消え去れ、不浄よっ!!!」
サイアは弾かれたように楔を投げつけると、大地に力を集中させた。
「じょう……」
パァァァン。
それより先に一人が爆ぜた。
楔の間近にいたそれは楔を吹き飛ばし、投げつけたサイアの腕に叩き返すと同時に、枯れ枝のような頭の一部を浴びせかけられた。
苦しいを通り越えて、息が詰まる。呼吸ができない。
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
わかってる。頭ではわかってる。
彼らが歪虚、ゾンビであること。こんな雑魔など雑作もなく倒せること。
だが、知った顔が喋り迫ってくることが、そして自分の手で彼らを砕き、見るも無残な姿にしなければならないのかと思うと、緊張は吐き気に置き換わり、闘争心と慈悲心はせめぎ合って狂気に変貌する。
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
「サイア……サイア……」
「コロシテ……コロシテ……」
「あああああ!!!!? ああああああああああああ!!!!!」
取り囲まれるサイアはもうどうしていいのかわからない。
それを歓ぶ邪笑が響いていても、それが憎き仇のものであるなどと、とても理解できるわけもなかった。
「魂ナンカコモッテオランヨ。単ナル雑魚ジャ。遠慮ナク壊セ。血モ涙モナク、ヤッチマエー。アヒャヒャヒャ」
解説
エルフハイムを出て浄化の巫女として修行に出ていたサイアの護衛としてPCは雇われています。
とある帝国の林にてゾンビ15体が現れました。
これらの素体は全てサイアの知己らしく、彼女は相手がゾンビであることを承知しながらも感情と理性のバランスを取れず、錯乱状態に陥りました。
彼女を守るべく、ゾンビを討伐してください。
●敵情報
ゾンビ
エルフの屍に魔導機械を埋め込んで強化しています。
攻撃方法は、爪でひっかく、噛みつく、腹部に内臓された銃で射撃する、自爆する。となっています。
林に散開する形でサイア及びPCを包囲しています。
知能はほぼありません。
また喋っている様子も見受けられますが、明らかな合成音声で、OPで使った以上の言葉は話しません。
全部で15体います。
ファルバウティ
歪虚
屍や遺骨を収集するなど行為をしていると報告のある歪虚です。
PCが覚醒状態になれば、雑魔のゾンビ以外に近くにこれと思われる歪虚が潜んでいることは直感的に理解できるようになります。
正確な場所の特定には相応の行動が必要です。
●舞台
帝国南部の雑木林とします。(エルフハイムからは離れています)
時刻は昼。
とある帝国の林にてゾンビ15体が現れました。
これらの素体は全てサイアの知己らしく、彼女は相手がゾンビであることを承知しながらも感情と理性のバランスを取れず、錯乱状態に陥りました。
彼女を守るべく、ゾンビを討伐してください。
●敵情報
ゾンビ
エルフの屍に魔導機械を埋め込んで強化しています。
攻撃方法は、爪でひっかく、噛みつく、腹部に内臓された銃で射撃する、自爆する。となっています。
林に散開する形でサイア及びPCを包囲しています。
知能はほぼありません。
また喋っている様子も見受けられますが、明らかな合成音声で、OPで使った以上の言葉は話しません。
全部で15体います。
ファルバウティ
歪虚
屍や遺骨を収集するなど行為をしていると報告のある歪虚です。
PCが覚醒状態になれば、雑魔のゾンビ以外に近くにこれと思われる歪虚が潜んでいることは直感的に理解できるようになります。
正確な場所の特定には相応の行動が必要です。
●舞台
帝国南部の雑木林とします。(エルフハイムからは離れています)
時刻は昼。
マスターより
DoLLerの敵は見方によっては悪いとはいえない所もあって。みたいなのが多かったと思いますが、ファルバウティは人間にそもそも共感しない設定です。それを邪悪と呼ぶか怪物と呼ぶのかなと思っております。思う存分に闘志を燃やしていただければ幸いです。
依頼概要には書きませんでしたが、ゾンビ全滅させただけでは普通成功止まりです。サイアのフォローもよろしくお願いいたします。
依頼概要には書きませんでしたが、ゾンビ全滅させただけでは普通成功止まりです。サイアのフォローもよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/07/14 20:02
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/27 17:53:54 |
|
![]() |
相談卓 ティア・ユスティース(ka5635) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/07/01 22:46:30 |