ゲスト
(ka0000)
【MN】総員転進せよ
マスター:KINUTA

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在25人 / 1~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 8日
- プレイング締切
- 2016/08/20 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/09/01 19:00
オープニング
※このシナリオは夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。
炭鉱を有する辺境の町に攻め込んできた侵略者たちは、一日の内に守備隊を全滅させ、行政権を奪い、市民たちを支配下においた。
彼らは市民へ、自分たちのために働くことを要求した。
食料は配給となり、従順なもの以外には配られなくなった。不平不満を口にするものは弾圧され、恐るべき虐待を受けた。
銃と鉄の規律を持つ集団に対し、平和に慣れた市民たちは、あまりにも無力かと思われた。
――しかし一年を経た今、すっかり状況は変わっていた。
この地とほかの地を結ぶ鉄道は、不審な爆発により、さいさい破壊された。
戦闘機が町の上空に現れ、爆撃を行うようになった。爆撃はなかなかの精度で炭鉱を狙うのだが、その時には決まって誰かが付近で明かりを灯し、場所を知らせているのだ。
報復として占領軍は、怪しいと思われる人間を次々処刑した。だが、そんなことで事態は少しも改善しなかった。
占領軍はとうとう、一瞬たりと気を抜けなくなった。もし少しでも一人出歩こうものなら、たちまちその姿が消えてなくなった。酒に酔っても行方が分からなくなった。そして決まって数日後に、死体となって発見されるのだ。
兵士たちには故国から便りが来た。それはいつもいい便りばかりだった。征服された国々は我が国の新秩序を大歓迎している。戦果は上がり続けている――という。
初めのうちは誰もがそれを信じていた。しかしほどなくして、全く信じなくなった。
敵中のただ中にあるという認識によって、神経は擦り減らされた。風の音や影に脅え、発砲するようになった。その挙げ句発狂する兵士が出て来た。
そういう者たちはすぐさま、本国に送り返された。送り返された彼らを待ち受けている運命が、安楽死であるということを知っていなかったならば、もっと大勢の兵士が発狂していただろう。
事態が刻一刻坂を転げ落ちて行くように悪化していることは、誰の目にも明らかだった。
しかし誰もが、それを止める手立てを持たなかった。
●
本営として接収されている市庁舎の市長室。
中央にある大きなテーブルの上にはガソリンランプの灯火が燃えている。
現在部屋の中にいるのはアレックス・バンダー少佐とスペット中尉だけだ。
バンダー少佐は窓の外を見ていた。スペット中尉はひっきりなし無線機をいじっていた。
一兵卒であるカチャ・タホが、そこに入ってくる。
「バンダー少佐、増援部隊はいつ来るんですか」
部屋の外を眺めていた少佐は穏やかな調子で答える。
「そんなことは分からないな」
「じゃあ、私たちはまだここにいなきゃならないんですか?」
「当分はな」
カチャはちょっと黙ってから、抑揚の狂った声で言った。
「バンダー少佐、私たちは本当にこの町を征服しているんですか?」
スペット中尉は、うんざりしたような顔をする。
「泣き言ならよそで言うてくれへんかな。うちは将校の数が少ないのや。あらゆることに手が回らんのや」
少佐はそれを無視する形で、カチャの質問に答えた。
「勿論だ」
カチャは笑い出した。
「そうですか。それなら、じゃあ、こちらが始終ビクビクしてなきゃならないのはなんででしょうね。昼も夜も誰かが私たちの命を付け狙ってるんですよ」
笑い声がどんどん甲高くなってきた。
「多分、多分ね、私たちここから出られないんですよ、死ぬまで出られないんですよ」
むせてなお笑い続けるカチャの様子に異常を感じた少佐は、彼女の肩を掴んで揺すぶった。
「おい、止めろ! おい!」
しかし笑いは全く止まらなかった。少佐は眉間に皺を寄せ、彼女の頬を思い切り張る。
笑いが急に止まり、部屋の中が静まり返った。
尻餅をついたカチャは呆然と自分の手を見下ろした。そして、小さな声で呟いた。
「私は家に帰りたいです」
「帰れるさ、そのうちな」
「そうですか……」
カチャが部屋から出て行った後スペット中尉は、喉元を掻いた。
「あれはやばいで。瓦解寸前やぞ。本国に送り返さんといかんかもな」
少佐は彼とも目を合わせなかった。暗い窓の外ばかりを見ていた。闇の中、雪が降りしきっている。
「その必要はないさ。送り返したからって、補充要員が来るわけじゃなし」
「……まあ、それもそうや」
●
夜中降り続いた雪により、朝の空気は冷えきっていた。
八橋杏子少尉は数名の部下と共に陰鬱な目で、カチャの死体を見下ろす。
雪溜りに埋められていたそれは、血がすっかり流れ出ていることもあって青白かった。
喉元に大きな切り口が開いている。鋭利な刃物で掻き切られたようだ。
同僚の話を聞くに、どうやら夜中に一人で、ふらふらどこかへ出かけていったらしい。数日前から様子がおかしくなっていたとか。
占領軍としては、この死に対する報復をしなければならない。
いつものことだが1人では終わるまい。芋づる式に4人か5人、あるいはもっと殺すことになるのだ。
新たな憎しみをあおり立てるだけだと分かっていても、自分たちは、それをやらざるを得ない。やらなければ、組織が崩壊する。
「……怪しいと思われる人間を、連行してこなきゃいけないわね……」
●
スペットは無線機を乱暴に置く。
彼の口元は引きつっていた。
朝一番、本国から緊急連絡が入ってきたのだ。『首都付近まで敵軍が迫ってきている。各都市占領部隊は急ぎ転進し、本隊に合流せよ。背後から敵軍を叩け』と。
無茶を言うな。首都にまで迫られている時点で、すでに勝敗は決しているではないか。
一軍団が一斉に移動を始めたら、住民に怪しまれる。本国の敗北必至を悟られたらおしまいだ。大規模な反乱が起きる。自分たちは一人残らず殺される……。
炭鉱を有する辺境の町に攻め込んできた侵略者たちは、一日の内に守備隊を全滅させ、行政権を奪い、市民たちを支配下においた。
彼らは市民へ、自分たちのために働くことを要求した。
食料は配給となり、従順なもの以外には配られなくなった。不平不満を口にするものは弾圧され、恐るべき虐待を受けた。
銃と鉄の規律を持つ集団に対し、平和に慣れた市民たちは、あまりにも無力かと思われた。
――しかし一年を経た今、すっかり状況は変わっていた。
この地とほかの地を結ぶ鉄道は、不審な爆発により、さいさい破壊された。
戦闘機が町の上空に現れ、爆撃を行うようになった。爆撃はなかなかの精度で炭鉱を狙うのだが、その時には決まって誰かが付近で明かりを灯し、場所を知らせているのだ。
報復として占領軍は、怪しいと思われる人間を次々処刑した。だが、そんなことで事態は少しも改善しなかった。
占領軍はとうとう、一瞬たりと気を抜けなくなった。もし少しでも一人出歩こうものなら、たちまちその姿が消えてなくなった。酒に酔っても行方が分からなくなった。そして決まって数日後に、死体となって発見されるのだ。
兵士たちには故国から便りが来た。それはいつもいい便りばかりだった。征服された国々は我が国の新秩序を大歓迎している。戦果は上がり続けている――という。
初めのうちは誰もがそれを信じていた。しかしほどなくして、全く信じなくなった。
敵中のただ中にあるという認識によって、神経は擦り減らされた。風の音や影に脅え、発砲するようになった。その挙げ句発狂する兵士が出て来た。
そういう者たちはすぐさま、本国に送り返された。送り返された彼らを待ち受けている運命が、安楽死であるということを知っていなかったならば、もっと大勢の兵士が発狂していただろう。
事態が刻一刻坂を転げ落ちて行くように悪化していることは、誰の目にも明らかだった。
しかし誰もが、それを止める手立てを持たなかった。
●
本営として接収されている市庁舎の市長室。
中央にある大きなテーブルの上にはガソリンランプの灯火が燃えている。
現在部屋の中にいるのはアレックス・バンダー少佐とスペット中尉だけだ。
バンダー少佐は窓の外を見ていた。スペット中尉はひっきりなし無線機をいじっていた。
一兵卒であるカチャ・タホが、そこに入ってくる。
「バンダー少佐、増援部隊はいつ来るんですか」
部屋の外を眺めていた少佐は穏やかな調子で答える。
「そんなことは分からないな」
「じゃあ、私たちはまだここにいなきゃならないんですか?」
「当分はな」
カチャはちょっと黙ってから、抑揚の狂った声で言った。
「バンダー少佐、私たちは本当にこの町を征服しているんですか?」
スペット中尉は、うんざりしたような顔をする。
「泣き言ならよそで言うてくれへんかな。うちは将校の数が少ないのや。あらゆることに手が回らんのや」
少佐はそれを無視する形で、カチャの質問に答えた。
「勿論だ」
カチャは笑い出した。
「そうですか。それなら、じゃあ、こちらが始終ビクビクしてなきゃならないのはなんででしょうね。昼も夜も誰かが私たちの命を付け狙ってるんですよ」
笑い声がどんどん甲高くなってきた。
「多分、多分ね、私たちここから出られないんですよ、死ぬまで出られないんですよ」
むせてなお笑い続けるカチャの様子に異常を感じた少佐は、彼女の肩を掴んで揺すぶった。
「おい、止めろ! おい!」
しかし笑いは全く止まらなかった。少佐は眉間に皺を寄せ、彼女の頬を思い切り張る。
笑いが急に止まり、部屋の中が静まり返った。
尻餅をついたカチャは呆然と自分の手を見下ろした。そして、小さな声で呟いた。
「私は家に帰りたいです」
「帰れるさ、そのうちな」
「そうですか……」
カチャが部屋から出て行った後スペット中尉は、喉元を掻いた。
「あれはやばいで。瓦解寸前やぞ。本国に送り返さんといかんかもな」
少佐は彼とも目を合わせなかった。暗い窓の外ばかりを見ていた。闇の中、雪が降りしきっている。
「その必要はないさ。送り返したからって、補充要員が来るわけじゃなし」
「……まあ、それもそうや」
●
夜中降り続いた雪により、朝の空気は冷えきっていた。
八橋杏子少尉は数名の部下と共に陰鬱な目で、カチャの死体を見下ろす。
雪溜りに埋められていたそれは、血がすっかり流れ出ていることもあって青白かった。
喉元に大きな切り口が開いている。鋭利な刃物で掻き切られたようだ。
同僚の話を聞くに、どうやら夜中に一人で、ふらふらどこかへ出かけていったらしい。数日前から様子がおかしくなっていたとか。
占領軍としては、この死に対する報復をしなければならない。
いつものことだが1人では終わるまい。芋づる式に4人か5人、あるいはもっと殺すことになるのだ。
新たな憎しみをあおり立てるだけだと分かっていても、自分たちは、それをやらざるを得ない。やらなければ、組織が崩壊する。
「……怪しいと思われる人間を、連行してこなきゃいけないわね……」
●
スペットは無線機を乱暴に置く。
彼の口元は引きつっていた。
朝一番、本国から緊急連絡が入ってきたのだ。『首都付近まで敵軍が迫ってきている。各都市占領部隊は急ぎ転進し、本隊に合流せよ。背後から敵軍を叩け』と。
無茶を言うな。首都にまで迫られている時点で、すでに勝敗は決しているではないか。
一軍団が一斉に移動を始めたら、住民に怪しまれる。本国の敗北必至を悟られたらおしまいだ。大規模な反乱が起きる。自分たちは一人残らず殺される……。
解説
補足説明
いいことなんか一つも無さそうな仮想世界へようこそこんにちは。
占領軍は今『住民に敗北を悟られないようにしつつ転進しろ』という無理難題を敗北寸前の祖国から申し使ったところです。
彼らの一員となって共に無理ゲーに挑むか、市民の一人となってレジスタンスか。それはPCの自由です。
行動は自由です。もうやってらんねえ!と逃亡兵になるもよし。帰る祖国があるかどうかは別として。
内容上、PCが死ぬ(夢の中ですけど)可能性もありますので、そのあたりご注意くださいませ。
いいことなんか一つも無さそうな仮想世界へようこそこんにちは。
占領軍は今『住民に敗北を悟られないようにしつつ転進しろ』という無理難題を敗北寸前の祖国から申し使ったところです。
彼らの一員となって共に無理ゲーに挑むか、市民の一人となってレジスタンスか。それはPCの自由です。
行動は自由です。もうやってらんねえ!と逃亡兵になるもよし。帰る祖国があるかどうかは別として。
内容上、PCが死ぬ(夢の中ですけど)可能性もありますので、そのあたりご注意くださいませ。
マスターより
KINUTAです。
いやな夢を見た後ほど、現実の素晴らしさが再認識される。はず。
いやな夢を見た後ほど、現実の素晴らしさが再認識される。はず。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/08/30 03:22
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓兼雑談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/08/20 08:23:56 |
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▼質問卓 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/08/18 19:49:57 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/20 17:44:32 |