ゲスト
(ka0000)
【HW】ピノの依頼
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/11/07 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/11/16 09:00
オープニング
※このシナリオは夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。
●
穏やかな昼下がり、コンフォートの店内にノックの音が響いた。
それはドアを一つ隔てた工房へも届き、モニカは作業の手を止めずに声を張り上げる。
「ピーノー。お客さーん。出てあげてー」
「は――――い」
長く伸ばされるボーイソプラノ。更に奥の狭い居住スペース、テーブルに参考書を広げていたピノは軽い足音を立てて工房を走り抜け、カウンターの仕切りを潜って、店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ!……あ! 母さま。モニカ―、かあさま、きたよー」
癖毛を跳ねさせて頭を下げたピノは、来客を見上げて満面の笑みを浮かべた。
「はーい、今行きまーす」
工房からモニカの声が聞こえると、母様と呼ばれた女性は表情を綻ばせた。
お茶をお出しします。言葉遣いを正して、ピノがキッチンへ。
同行のメイドを店の外に待たせ、女性は大きなハンドバッグを手に店内の椅子に掛ける。
5分と経たずに金属片と埃にまみれたエプロンを外したモニカが店に顔を出した。
「いらっしゃいませ、お久しぶりです、奥様。……あの、ピノに母様って呼ばれる度に感慨に耽るの、どうにかなりません?」
女性は顔を手で覆ってふるふると小刻みに肩を震わせている。
色々あった。
一度は手元に置こうとした子どもが、重なった誤解により連れ去られ。
生存すら諦めていながら、ふとした切欠が与えられ、藁にも縋る思いで数年後しにその足跡を追い。
彼女の立場や周囲の状況が如何にそれを許さなくとも、連れ去った少女と子どもの生存と暮らし向きを知って、どこか吹っ切れたのだろう。
彼女は2人を見守ると言い、体調の回復を待ってそれまで以上に仕事に打ち込むようになった。
子どもに課せられるはずだった役目を、今は彼女が、ピノの父親であり彼女の夫でもある或る貴族から奪うように担っている。
まだ蟠りが解けず、けれど、彼女の傍も離れられないメイドはドアの近くで耳を欹てているのだろう。
「奥様、今日はどういったご用件で?」
ピノから受け取ったティーカップに嬉しそうに相好を崩し。
美味しいと言われればピノも盆を抱いてはにかんでいる。
モニカが声を掛けると彼女はお土産を持って来たと言う。
●
ハンドバッグから天鵞絨張りの箱と大判の封筒を取り出す。
箱は彼女の家が持つアクセサリーショップの物。封筒のサインはモニカの師でもある伯父の物だ。
モニカは箱を開けて、すぐに封筒の中身を検めた。
「あの時のルビーが見付かったの……あなたが随分なことを言って手放したようだから、酷い曰くが付いてしまって……頼むから引き取ってくれって言われたわ。――フィオリーノからあなたが身に着けるなら差し上げても良いと言われているのだけど……細工の一つでも剥がそうものなら許さない。だそうよ」
封筒の中にはネックレスのデザイン画だった。
箱に収められている、ルビーを中心に置いた対照的で華やかなデザインを紙面に起こした物。
緻密な細工を拡大した図案や、何色もの石の大きさと配置が全て記されている。
「こっちは?」
「差し上げるそうよ」
モニカはデザイン画を抱き締めて拳を突き上げる。
その喜びように、女性は溜息を零した。
ネックレスはと尋ねれば、モニカは首を横に揺らす。これで十分とデザイン画を示し、けれど、後でじっくり見たいという。
好きなだけどうぞ、と、トレイの上にネックレスを置き、封筒をもう1つ取りだした。
「――ピノの大切な話しをしに来たの」
ピノは、今は商店街近くの学校に通っているが、進学先のあては無い。
女性が差し出したのは、彼女の家の執事と、彼と親しかったピノの亡き叔父が通っていたという全寮制の学校の案内。
ピノの卒業まではまだ2年。
けれど。
もし、ピノがこの学校へ進学を考えるなら。
そう言って彼女は壁に飾った絵を見詰めた。
庭の花を描いた物。商店街の街並みを描いた物。モニカと友人の並んでいる笑顔を描いた物。
鉛筆の濃淡だけで繊細に描かれたそれは、何れもピノの作品だった。
この学校ならピノが絵を学べる環境を今から十分に整えることが出来る。
ピノがもう少しだけ幼い頃、実家の運営する美術館へ招いた事がある。
モニカに手を引かれながら円らな瞳は一つ一つの絵をじっと見詰め、透明な涙をぽろぽろと零しては、手の甲に躙るように拭っていた。
きらきらした物が好きなところは、モニカに似たのね。
女性がそう言うと、モニカは困ったように笑って、ピノは元気よく頷いていた。
懐かしそうに思い出を語り、女性は学校の資料とネックレスを置いて店を出た。
何れの返事も、次に来た時にと言って、メイドと共に馬車に乗り込む。
●
馬車が商店街を駆け抜けていった。
その後、暫くしてから少年が1枚の絵を握って走ってくる。
肩がぶつかり蹌踉けながら、商店街を抜けた少年は目の前に広がった分かれ道に立ち尽くす。
「あの……っ」
人見知りをしているのだろう、白い頬を赤らめて、潤んだ瞳を泳がせながら道行く人を呼び止めた。
「このあたりを、ばしゃが、通って、行きませんでしたか?」
ピノが以前描いた絵を手に彼女を追って行った。
その絵を探す際に、出しっ放しになった絵は今の絵に変えるまでの数ヶ月、店を彩っていた物だ。
それらを整えて片付け直し、モニカは小さく溜息を零した。
ピノはどうするつもりだろう。
もう近い内に、彼の手を離す時が来るのかも知れない。
あと5年もすれば、ピノはあの日、ピノを抱えて飛び出した自分と同じ年にだってなるのだから。
工房へ戻ると来客を知らせるベルが鳴った。
●
穏やかな昼下がり、コンフォートの店内にノックの音が響いた。
それはドアを一つ隔てた工房へも届き、モニカは作業の手を止めずに声を張り上げる。
「ピーノー。お客さーん。出てあげてー」
「は――――い」
長く伸ばされるボーイソプラノ。更に奥の狭い居住スペース、テーブルに参考書を広げていたピノは軽い足音を立てて工房を走り抜け、カウンターの仕切りを潜って、店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ!……あ! 母さま。モニカ―、かあさま、きたよー」
癖毛を跳ねさせて頭を下げたピノは、来客を見上げて満面の笑みを浮かべた。
「はーい、今行きまーす」
工房からモニカの声が聞こえると、母様と呼ばれた女性は表情を綻ばせた。
お茶をお出しします。言葉遣いを正して、ピノがキッチンへ。
同行のメイドを店の外に待たせ、女性は大きなハンドバッグを手に店内の椅子に掛ける。
5分と経たずに金属片と埃にまみれたエプロンを外したモニカが店に顔を出した。
「いらっしゃいませ、お久しぶりです、奥様。……あの、ピノに母様って呼ばれる度に感慨に耽るの、どうにかなりません?」
女性は顔を手で覆ってふるふると小刻みに肩を震わせている。
色々あった。
一度は手元に置こうとした子どもが、重なった誤解により連れ去られ。
生存すら諦めていながら、ふとした切欠が与えられ、藁にも縋る思いで数年後しにその足跡を追い。
彼女の立場や周囲の状況が如何にそれを許さなくとも、連れ去った少女と子どもの生存と暮らし向きを知って、どこか吹っ切れたのだろう。
彼女は2人を見守ると言い、体調の回復を待ってそれまで以上に仕事に打ち込むようになった。
子どもに課せられるはずだった役目を、今は彼女が、ピノの父親であり彼女の夫でもある或る貴族から奪うように担っている。
まだ蟠りが解けず、けれど、彼女の傍も離れられないメイドはドアの近くで耳を欹てているのだろう。
「奥様、今日はどういったご用件で?」
ピノから受け取ったティーカップに嬉しそうに相好を崩し。
美味しいと言われればピノも盆を抱いてはにかんでいる。
モニカが声を掛けると彼女はお土産を持って来たと言う。
●
ハンドバッグから天鵞絨張りの箱と大判の封筒を取り出す。
箱は彼女の家が持つアクセサリーショップの物。封筒のサインはモニカの師でもある伯父の物だ。
モニカは箱を開けて、すぐに封筒の中身を検めた。
「あの時のルビーが見付かったの……あなたが随分なことを言って手放したようだから、酷い曰くが付いてしまって……頼むから引き取ってくれって言われたわ。――フィオリーノからあなたが身に着けるなら差し上げても良いと言われているのだけど……細工の一つでも剥がそうものなら許さない。だそうよ」
封筒の中にはネックレスのデザイン画だった。
箱に収められている、ルビーを中心に置いた対照的で華やかなデザインを紙面に起こした物。
緻密な細工を拡大した図案や、何色もの石の大きさと配置が全て記されている。
「こっちは?」
「差し上げるそうよ」
モニカはデザイン画を抱き締めて拳を突き上げる。
その喜びように、女性は溜息を零した。
ネックレスはと尋ねれば、モニカは首を横に揺らす。これで十分とデザイン画を示し、けれど、後でじっくり見たいという。
好きなだけどうぞ、と、トレイの上にネックレスを置き、封筒をもう1つ取りだした。
「――ピノの大切な話しをしに来たの」
ピノは、今は商店街近くの学校に通っているが、進学先のあては無い。
女性が差し出したのは、彼女の家の執事と、彼と親しかったピノの亡き叔父が通っていたという全寮制の学校の案内。
ピノの卒業まではまだ2年。
けれど。
もし、ピノがこの学校へ進学を考えるなら。
そう言って彼女は壁に飾った絵を見詰めた。
庭の花を描いた物。商店街の街並みを描いた物。モニカと友人の並んでいる笑顔を描いた物。
鉛筆の濃淡だけで繊細に描かれたそれは、何れもピノの作品だった。
この学校ならピノが絵を学べる環境を今から十分に整えることが出来る。
ピノがもう少しだけ幼い頃、実家の運営する美術館へ招いた事がある。
モニカに手を引かれながら円らな瞳は一つ一つの絵をじっと見詰め、透明な涙をぽろぽろと零しては、手の甲に躙るように拭っていた。
きらきらした物が好きなところは、モニカに似たのね。
女性がそう言うと、モニカは困ったように笑って、ピノは元気よく頷いていた。
懐かしそうに思い出を語り、女性は学校の資料とネックレスを置いて店を出た。
何れの返事も、次に来た時にと言って、メイドと共に馬車に乗り込む。
●
馬車が商店街を駆け抜けていった。
その後、暫くしてから少年が1枚の絵を握って走ってくる。
肩がぶつかり蹌踉けながら、商店街を抜けた少年は目の前に広がった分かれ道に立ち尽くす。
「あの……っ」
人見知りをしているのだろう、白い頬を赤らめて、潤んだ瞳を泳がせながら道行く人を呼び止めた。
「このあたりを、ばしゃが、通って、行きませんでしたか?」
ピノが以前描いた絵を手に彼女を追って行った。
その絵を探す際に、出しっ放しになった絵は今の絵に変えるまでの数ヶ月、店を彩っていた物だ。
それらを整えて片付け直し、モニカは小さく溜息を零した。
ピノはどうするつもりだろう。
もう近い内に、彼の手を離す時が来るのかも知れない。
あと5年もすれば、ピノはあの日、ピノを抱えて飛び出した自分と同じ年にだってなるのだから。
工房へ戻ると来客を知らせるベルが鳴った。
解説
●ピノ
10才の少年。
ふわふわの巻き毛と雀斑が特徴の、小柄で丸い頬が愛らしい容貌。
絵が得意だが、喋るのは少し苦手。
人見知りの癖があるが、懐いた相手には全力で甘える。
学校での成績は中くらい。友人は多い方。
商店街では看板息子として評判、絵に描かれていたモニカの友人からは猫可愛がりされている。
美術館には、女性が思い出として語った以降も数度訪れており、知人の学芸員がいる。
持っていった絵には女性の横顔が描かれている。
●モニカ
20代半ば。
見習いは脱し、修理以外も引き受けるようになった。
商品の売れ行きはそこそこ、若い女性が日常的に身に着けるようなデザインの作品が多い。
オーダーメイドでエンゲージリングなども年に数回引き受けている。
回復した伯父にはとても怒られた。
気に掛けていたルビーの発見と、ネックレスの完成はとても嬉しく思っている。
荒れた暮らしの頃に身に着けたコボルト撃退術は健在。
※
ピノの学校での友人や、モニカの客、唯の通行人、向かいの店の店主等々
お好きな立場、年齢でご参加下さい。
PCのプロフィールから大きく逸脱する場合は、プレイングに記述をお願いします。
※
「貴族の依頼」における最初の依頼の発生以前に分岐した結末の先となりますので、
一連の依頼の内容や正否については、この夢には影響を与えません。
妾腹の赤子を傷付けようとした正妻の女性と、
彼女に赤子を殺させようとしていたメイドと、
その赤子を連れ去ったモニカが、
色々あって和解した8年後。
和解の際にハンターの手を借りたとか、何とか。と言った塩梅です。
10才の少年。
ふわふわの巻き毛と雀斑が特徴の、小柄で丸い頬が愛らしい容貌。
絵が得意だが、喋るのは少し苦手。
人見知りの癖があるが、懐いた相手には全力で甘える。
学校での成績は中くらい。友人は多い方。
商店街では看板息子として評判、絵に描かれていたモニカの友人からは猫可愛がりされている。
美術館には、女性が思い出として語った以降も数度訪れており、知人の学芸員がいる。
持っていった絵には女性の横顔が描かれている。
●モニカ
20代半ば。
見習いは脱し、修理以外も引き受けるようになった。
商品の売れ行きはそこそこ、若い女性が日常的に身に着けるようなデザインの作品が多い。
オーダーメイドでエンゲージリングなども年に数回引き受けている。
回復した伯父にはとても怒られた。
気に掛けていたルビーの発見と、ネックレスの完成はとても嬉しく思っている。
荒れた暮らしの頃に身に着けたコボルト撃退術は健在。
※
ピノの学校での友人や、モニカの客、唯の通行人、向かいの店の店主等々
お好きな立場、年齢でご参加下さい。
PCのプロフィールから大きく逸脱する場合は、プレイングに記述をお願いします。
※
「貴族の依頼」における最初の依頼の発生以前に分岐した結末の先となりますので、
一連の依頼の内容や正否については、この夢には影響を与えません。
妾腹の赤子を傷付けようとした正妻の女性と、
彼女に赤子を殺させようとしていたメイドと、
その赤子を連れ去ったモニカが、
色々あって和解した8年後。
和解の際にハンターの手を借りたとか、何とか。と言った塩梅です。
マスターより
よろしくお願いします。
あり得たかも知れない幸せな結末の数年後。
特に目的もありませんので、ピノを案内しても、モニカの店を覗いても。
あり得たかも知れない幸せな結末の数年後。
特に目的もありませんので、ピノを案内しても、モニカの店を覗いても。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/11/15 00:55
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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【質問卓】 Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/11/03 12:00:59 |
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![]() |
・夢の中で会いましょう・ Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/11/07 08:37:23 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/05 16:06:30 |