ゲスト
(ka0000)
【碧剣】其は地の獄か、はたまた――
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2018/04/28 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/05/07 19:00
オープニング
●
今でも、覚えている。
寒い寒い雪の日のことだった。冬将軍の息吹――否、ここは当地の伝承に則って、北の魔女の揺籃と呼ぶべきか。目まぐるしく変化し、森と山々を抜けた雪風は、それに抗う術の無いヒトの営みを容易く閉じ込めた。
それに驚くでもなく粛々と受け入れた村人たちの姿と、めまぐるしく変わった天候の激しさを、覚えている。
とある寒村を襲った、ささやかな事件。
村人たちにとっては歪虚の脅威に曝されてもなお、人的被害なく乗り越えて迎えた誇るべき一日。
それからの数日は。
私にとって、忘れられない日になった。
●
雪村を包む寒気も、今ばかりは鳴りを潜めていた。村に一つしか無い宿屋は宴の場と化し、薄い蓄えを吐き出しながらの大賑わい。勿論、日中の歪虚被害を退けたことによる熱気であった。刺激の少ない田舎、それも雪に閉ざされた冬の暮らしにとっては、この上ない酒の肴となる。嘘か誠かも解らぬ武勇伝を交わしながら、掲げられたグラスが打ち合わされている。
「勝利にィィ!」
バリトンボイスが宴会場を貫く。エステルと共にこの場に来ていた、パルムのイェスパーの声であった。ジェントルな装いに髭を蓄えた奇怪なパルムの声に、すかさず合いの手が入る。即ち。
「「「カンパァァァァイ!!」」」
そんな、喝采である。
●
「うるさい……」
階下での狂騒。当然ながら、宿をとっているエステル・マジェスティとしてはたまったものではない。幾人かのハンターは我関せずな上に見張りにまで立っているので、今この場で純粋に睡魔と戦っているのは自分だけという負い目は、たしかにある。
しかし、眺めていただけとは言え戦闘を目の当たりにしたことに、疲労もあった。眠いものは、眠い。
最小限の被害で済んだ安堵で打ち消そうにも、あまりに深い疲労があった。
それは、この村に訪れる可能性が高い――そしてそれが現実のものとなった――脅威について黙していたことによる、心労ともいうべきもの。自身に闘う力が無いために出来得ることが無い現状。にも関わらず、エステル自身の欲求に任せてこの村を危険に晒していること。それに加えて――さらなる危機が訪れようとしていることが、重くのしかかっている。
エゴだと、認識している。
「………………」
普段であれば本を読みながら気絶するように眠っているものだったが、生憎、書物のアテもない。こんな田舎では数冊の書物があれば良いくらいだ。人気があるわけでもないので望めば借りることもできるだろうが――むしろ、あの狂乱に呑み込まれる公算のほうが強い。となれば、騒音に慣れるまで寝床を温めるくらいしか、少女にできることは残されていないのだった。
「……シュリ」
ぽつり、と。言葉をこぼす。ハンターたちの多くが、少年を案じているのが伝わった。それに引き換え、自分はどうだろう。
凄まじき武勇の担い手として数多の伝承に残る騎士"たち"。言い換えればそれらは、聖剣にまつわる伝説だ。
あまりに類似した――そしてその多くが公式記録にも残る――逸話は、剣の担い手がいずれも万夫不当の勇者であったから――"ではない"のではないか。自分自身も、その武威を目の当たりにできるのではないか。
シュリ・エルキンズが振るっていた碧色の剣を最初に目にしたエステルは、そんな期待を抱いた。……結果的にそれはすぐに裏切られることとなったのだが、事実はともかくとして、背景の事情は透けてみえた。剣の出処は本物に違いない。しかし、それが機能しないのであれば、それは――。
彼女なりの自制心をもって、シュリと碧剣に踏み込みすぎないようにしたのは、そのためだった。
だが――。
その後エステルが聞いた事象は、碧剣の尋常ならざる特異性を顕していた。
そこで起こった悲劇は、理解している。
けれど、伝承の現身とも言うべきものに、心が震えない訳がない。
――見たい、と。そう望んで、何が悪い。
自問した。
だから――これは、罰なのだ。
眠りに身を任せることが……こんなにも、苦しいのは。
●
走る。走る。走る。強烈な雪に視界が染め上げられる中、気配だけを頼りに追う。
"敵"は、逃げ続けている。ヘラジカの姿をした――それを元にしたらしい歪虚は、全速力で山間を駆けている。雪の重みで倒木となった不規則な足場をものともせずに、野生らしい躍動ぶり。
でも、その顔に生気が宿っていないことを、僕は知っている。追い続けるうちに、そこに共通する気配が解るようになってきたからか、追跡自体は容易になってきた。当然、交戦機会も増えてきた。
茨と目玉の歪虚たち。死体を元にした歪虚。何者かが生み出し、操っていると思しき歪虚。奴らはときに包囲をし、伏撃をし、散開をする。今日は逃げ出したようだった。
こうやって、追い続けて。殺し続けて。どのくらいだ。解らない。解らない、けど。
ほら。
追いついた。
さん、と落とした首と、遺された胴体が山風に運ばれるように消えていく。
次は。
どこだ。
頭の奥で、ちりちりと何かが疼く。すぐに、"剣"に意識を凝らす。
――遠い。遠い、けど。
見つけた。
大群だ。
●
「……ちっ」
ハンターの舌打ちが、響く。
夜明けを迎えるにつれて吹き荒ぶようになった風を厭うて探索の足を伸ばしたのは――果たして、正解だったか。
眼前に響く、雪崩のようなそれ。
視界は不良。しかし、大小入り混じった足音と、"声無き"獣の気配を見誤るほど、疎くない。
足並みはバラバラだ。軽い足音は近く、重い気配は遠くから響く。
敵襲、だった。
今でも、覚えている。
寒い寒い雪の日のことだった。冬将軍の息吹――否、ここは当地の伝承に則って、北の魔女の揺籃と呼ぶべきか。目まぐるしく変化し、森と山々を抜けた雪風は、それに抗う術の無いヒトの営みを容易く閉じ込めた。
それに驚くでもなく粛々と受け入れた村人たちの姿と、めまぐるしく変わった天候の激しさを、覚えている。
とある寒村を襲った、ささやかな事件。
村人たちにとっては歪虚の脅威に曝されてもなお、人的被害なく乗り越えて迎えた誇るべき一日。
それからの数日は。
私にとって、忘れられない日になった。
●
雪村を包む寒気も、今ばかりは鳴りを潜めていた。村に一つしか無い宿屋は宴の場と化し、薄い蓄えを吐き出しながらの大賑わい。勿論、日中の歪虚被害を退けたことによる熱気であった。刺激の少ない田舎、それも雪に閉ざされた冬の暮らしにとっては、この上ない酒の肴となる。嘘か誠かも解らぬ武勇伝を交わしながら、掲げられたグラスが打ち合わされている。
「勝利にィィ!」
バリトンボイスが宴会場を貫く。エステルと共にこの場に来ていた、パルムのイェスパーの声であった。ジェントルな装いに髭を蓄えた奇怪なパルムの声に、すかさず合いの手が入る。即ち。
「「「カンパァァァァイ!!」」」
そんな、喝采である。
●
「うるさい……」
階下での狂騒。当然ながら、宿をとっているエステル・マジェスティとしてはたまったものではない。幾人かのハンターは我関せずな上に見張りにまで立っているので、今この場で純粋に睡魔と戦っているのは自分だけという負い目は、たしかにある。
しかし、眺めていただけとは言え戦闘を目の当たりにしたことに、疲労もあった。眠いものは、眠い。
最小限の被害で済んだ安堵で打ち消そうにも、あまりに深い疲労があった。
それは、この村に訪れる可能性が高い――そしてそれが現実のものとなった――脅威について黙していたことによる、心労ともいうべきもの。自身に闘う力が無いために出来得ることが無い現状。にも関わらず、エステル自身の欲求に任せてこの村を危険に晒していること。それに加えて――さらなる危機が訪れようとしていることが、重くのしかかっている。
エゴだと、認識している。
「………………」
普段であれば本を読みながら気絶するように眠っているものだったが、生憎、書物のアテもない。こんな田舎では数冊の書物があれば良いくらいだ。人気があるわけでもないので望めば借りることもできるだろうが――むしろ、あの狂乱に呑み込まれる公算のほうが強い。となれば、騒音に慣れるまで寝床を温めるくらいしか、少女にできることは残されていないのだった。
「……シュリ」
ぽつり、と。言葉をこぼす。ハンターたちの多くが、少年を案じているのが伝わった。それに引き換え、自分はどうだろう。
凄まじき武勇の担い手として数多の伝承に残る騎士"たち"。言い換えればそれらは、聖剣にまつわる伝説だ。
あまりに類似した――そしてその多くが公式記録にも残る――逸話は、剣の担い手がいずれも万夫不当の勇者であったから――"ではない"のではないか。自分自身も、その武威を目の当たりにできるのではないか。
シュリ・エルキンズが振るっていた碧色の剣を最初に目にしたエステルは、そんな期待を抱いた。……結果的にそれはすぐに裏切られることとなったのだが、事実はともかくとして、背景の事情は透けてみえた。剣の出処は本物に違いない。しかし、それが機能しないのであれば、それは――。
彼女なりの自制心をもって、シュリと碧剣に踏み込みすぎないようにしたのは、そのためだった。
だが――。
その後エステルが聞いた事象は、碧剣の尋常ならざる特異性を顕していた。
そこで起こった悲劇は、理解している。
けれど、伝承の現身とも言うべきものに、心が震えない訳がない。
――見たい、と。そう望んで、何が悪い。
自問した。
だから――これは、罰なのだ。
眠りに身を任せることが……こんなにも、苦しいのは。
●
走る。走る。走る。強烈な雪に視界が染め上げられる中、気配だけを頼りに追う。
"敵"は、逃げ続けている。ヘラジカの姿をした――それを元にしたらしい歪虚は、全速力で山間を駆けている。雪の重みで倒木となった不規則な足場をものともせずに、野生らしい躍動ぶり。
でも、その顔に生気が宿っていないことを、僕は知っている。追い続けるうちに、そこに共通する気配が解るようになってきたからか、追跡自体は容易になってきた。当然、交戦機会も増えてきた。
茨と目玉の歪虚たち。死体を元にした歪虚。何者かが生み出し、操っていると思しき歪虚。奴らはときに包囲をし、伏撃をし、散開をする。今日は逃げ出したようだった。
こうやって、追い続けて。殺し続けて。どのくらいだ。解らない。解らない、けど。
ほら。
追いついた。
さん、と落とした首と、遺された胴体が山風に運ばれるように消えていく。
次は。
どこだ。
頭の奥で、ちりちりと何かが疼く。すぐに、"剣"に意識を凝らす。
――遠い。遠い、けど。
見つけた。
大群だ。
●
「……ちっ」
ハンターの舌打ちが、響く。
夜明けを迎えるにつれて吹き荒ぶようになった風を厭うて探索の足を伸ばしたのは――果たして、正解だったか。
眼前に響く、雪崩のようなそれ。
視界は不良。しかし、大小入り混じった足音と、"声無き"獣の気配を見誤るほど、疎くない。
足並みはバラバラだ。軽い足音は近く、重い気配は遠くから響く。
敵襲、だった。
解説
●解説
前シナリオ後、歪虚襲撃を撃退した、"翌朝"に、歪虚の大群による襲撃がありました。
エステルの安全を確保しつつ、これを撃破してください。
▼地理情報
村:700メートル四方程度の村。最低限の歪虚や亜人への備えとして、木板による塀が張り巡らされている。一部強化済。住民は200名程度。周辺地図あり。
男衆は深酒により酒場兼宿屋のホールで寝ているよう。叩き起こして何かしらの対応に中たるのは可能。
他:南方は雪原。西部は山脈があり、北部、東部は森。隣村は北部の森を抜けた先に存在。
敵は山脈側より出現している。
現在、視界不良につき、有効射程は半減程度まで低下。
(※ただし、観測者などのプレイング次第では通常通りの射程でも判定可能です。場合によって命中などに適宜修正は加わります)
▼敵情報
小型:機動力・回避力に優れた小型獣。ウサギやたぬきなど。
中型:機動力に優れ、バランス型の中型獣。狐や狼、鹿など。
大型:防御・攻撃性能に優れた大型獣。熊や大型のヘラジカを中心。
それぞれ30-150の幅で襲撃中だが、"足並みは揃ってはいない"。
▼人物
エステル・マジェスティ:アークエルス生まれの孤児で、各伝承に詳しい少女。非覚醒者。村の宿屋にいる。
イェスパー:エステルとよく行動しているキノコ。二日酔い中のため静か。
▼その他PL情報など(プレイング/相談等で留意していただきたいこと)
1.前回の結果を受け、リプレイ中に【シュリ】は必ず現れます。
どのように対応するかによって、以降の展開が変化します。
2.周囲からの敵の増援はありません。
3.ハンターの初期位置は自由です。が、最低1名は偵察に出してください。なお、村から戦闘開始位置までの最大距離は連絡手段の有効射程に依存します。
4.夜間から朝に掛けて、実現可能な準備があれば採用&村からの資材提供も可能です。
前シナリオ後、歪虚襲撃を撃退した、"翌朝"に、歪虚の大群による襲撃がありました。
エステルの安全を確保しつつ、これを撃破してください。
▼地理情報
村:700メートル四方程度の村。最低限の歪虚や亜人への備えとして、木板による塀が張り巡らされている。一部強化済。住民は200名程度。周辺地図あり。
男衆は深酒により酒場兼宿屋のホールで寝ているよう。叩き起こして何かしらの対応に中たるのは可能。
他:南方は雪原。西部は山脈があり、北部、東部は森。隣村は北部の森を抜けた先に存在。
敵は山脈側より出現している。
現在、視界不良につき、有効射程は半減程度まで低下。
(※ただし、観測者などのプレイング次第では通常通りの射程でも判定可能です。場合によって命中などに適宜修正は加わります)
▼敵情報
小型:機動力・回避力に優れた小型獣。ウサギやたぬきなど。
中型:機動力に優れ、バランス型の中型獣。狐や狼、鹿など。
大型:防御・攻撃性能に優れた大型獣。熊や大型のヘラジカを中心。
それぞれ30-150の幅で襲撃中だが、"足並みは揃ってはいない"。
▼人物
エステル・マジェスティ:アークエルス生まれの孤児で、各伝承に詳しい少女。非覚醒者。村の宿屋にいる。
イェスパー:エステルとよく行動しているキノコ。二日酔い中のため静か。
▼その他PL情報など(プレイング/相談等で留意していただきたいこと)
1.前回の結果を受け、リプレイ中に【シュリ】は必ず現れます。
どのように対応するかによって、以降の展開が変化します。
2.周囲からの敵の増援はありません。
3.ハンターの初期位置は自由です。が、最低1名は偵察に出してください。なお、村から戦闘開始位置までの最大距離は連絡手段の有効射程に依存します。
4.夜間から朝に掛けて、実現可能な準備があれば採用&村からの資材提供も可能です。
マスターより
シリーズシナリオリリース、大変ご無沙汰しております。
漸くの第二弾です。大変おまたせしてしまいまして、申し訳ありません……。
年度末はいつも地獄を見るのですが、今年は稀に見る地獄ぶりでした……いまは地獄から片手を出してこれを書いています。
【血が出るならば●せる】の精神で、書き進めたいと思っております。
お許しいただけるのであれば、もう少しお付き合いくだされば幸いです。
これからの物語は、登場人物だけでは決して安穏なだけのものには成りえないので――どうか、善き流れを迎えられるよう、お力添えをお願いします。
漸くの第二弾です。大変おまたせしてしまいまして、申し訳ありません……。
年度末はいつも地獄を見るのですが、今年は稀に見る地獄ぶりでした……いまは地獄から片手を出してこれを書いています。
【血が出るならば●せる】の精神で、書き進めたいと思っております。
お許しいただけるのであれば、もう少しお付き合いくだされば幸いです。
これからの物語は、登場人物だけでは決して安穏なだけのものには成りえないので――どうか、善き流れを迎えられるよう、お力添えをお願いします。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/05/07 18:52
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦卓 カイン・シュミート(ka6967) ドラグーン|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/04/28 17:27:06 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/24 07:54:38 |