ゲスト
(ka0000)
【東幕】誓いの記し
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2019/01/17 07:30
- 完成日
- 2019/01/25 00:15
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●登箭城下町
憤怒火口からの勢いは徐々に弱まりつつある。
しかし、東方各地に飛散した歪虚や雑魔は残ったままだ。
苦戦を続ける幕府軍に対し、日に日に、公家の圧力が高まる。すなわち、防衛という役目を、公家に渡せと。
「前回、ハンター達が調べた内容は、一見するとバラバラの情報ですが、繋ぎ合わせると、重要な情報へと繋がります」
登箭城内のとある屋敷の中でタチバナが静かに告げる。
「やはり、『安武城』に“それ”があると」
「そう推測するのが妥当でしょう」
側近の台詞に、タチバナは頷いた。
『安武城』の警備は、この登箭城と同等かそれ以上かもしれない。
それほど、重要な“もの”があるという事ともいえる。
「城の警備は極めて厳重です。忍び込もうとしたのですが、断念しました」
「仕方ありません。無理をする時期ではありませんからね」
万が一でも忍びが捕まり、それが立花院家の手の者と分かれば、ただでさえ、混乱を続ける武家の関係に大きな溝を作る事になる。
「では、いかがなさいますか? 公家に賛同する中小武家も多いと聞きます。あまり、時間的猶予もありません」
「あまり、使いたく手段なのですが、仕方ありません。“私自身”が直接、出向きましょう」
「よろしいのですか?」
確認するように尋ねる側近に対して、タチバナは微笑を浮かべる。
「忍び込むのが難しいのであれば、正面から堂々と乗り込むだけです」
「如何に大将軍といえども……」
「心配に及びません。『安武城』は廃城として届け出が出ているのです。それが運用されているとなれば、幕府としては見逃す訳にはいきません」
城というのは国防上、極めて重要なものだ。
特に憤怒との戦いにおいては、あるかないかで戦術にも戦略にも、大きな影響を及ぼす。
それにも関わらず、廃城と届けている城が、実際は使われているのであれば、本来は厳罰になる可能性もあるのだ。
「なるほど……その手がありましたか」
「既に到着しているハンター達と共に、一足先に『安武城』に入って、諸々と話をつけてきます。秘宝があるなら、ハンター達の立ち会いは必須ですからね」
「畏まりました」
深々と頭を下げた側近の肩をトンと叩きながら、タチバナは立ち上がった。
●推測を
急報が入ってきたのは、タチバナと先行したハンター達が出発した後の事だった。
もう少し、タイミングがズレれば……もっと事態は変わっていたかもしれないと側近は屋敷に到着したハンター達に言った。
「『安武城』周辺で多数の憤怒が目撃されています。理由は分かりませんが……」
目撃されているのは、登箭城に襲い掛かってきた憤怒と同様だという。
「先行しているハンター達が倒してしまうのでは?」
「とんでもないです! 目撃されている数は相当の数だと。指揮官級だっているかもしれません」
ハンターの質問に側近は状況を説明した。
『安武城』の警備は厳重だが、覚醒者は少なく、憤怒の数が多いと防衛しきれない恐れがある事。
先行しているハンターとタチバナは、この情報を知り得ない事。
恐らく、『安武城』に到着した後に知る事になるだろう。
「場合によっては、援軍を出す必要も生じます……ですが、ここは、御登箭家領内。必然的に、この話を御登箭家にしなければなりません」
「そりゃ……一筋縄ではいかないな。というか、判断に迷うな」
苦笑を浮かべるハンター。
『安武城』に憤怒が迫っている――が、御登箭家からすれば廃城なので、本来、守る必要はない。
ハンターが援軍を要請しても、要請に応える“理由”が存在しないのだ。
また、タチバナが、大将軍であるという事も伏せてある以上、援軍を出す為の説得材料にはなり得ない。
「……いや、あるんじゃないか。援軍を出させる理由が」
「それは、なんでしょうか?」
「要は、前回も含め、これまで得られた情報を纏めて推測し、真相を明らかにした上でなら、守る理由ができるんじゃねぇ?」
「それができれば苦労はしません……私にはとても……」
側近はうな垂れた。
優秀な人材が多い立花院家の側近も、色々な人がいるという事だろう。
「そ、そうだ。皆さんで“推測”して貰えませんか? これまで得られた多くの情報から“秘宝”の真相を。御登箭家に援軍を出すように説得しに、私が行きますので!」
必死に懇願する側近に、ハンター達は互いの顔を見合わせた。
●安武城
元々、打ち捨てられた城であるので、所々、城壁は崩れていたり、脆くなっていた。
その隙を憤怒が狙わない訳がない。安武城の警備の厳しさは、憤怒に対してではなく、武家の忍びに対してだったからだ。
「話は後です。今は憤怒を迎撃しましょう……一応、確認しますが、抜け穴の類もないのですね?」
タチバナが城に詰めていた御登箭家の武士に言った。
城の中に入る直前、憤怒が攻め寄せてきたのだ。現場の責任者は想定外の襲撃に狼狽え、まともな指揮が取れそうになかった。
タチバナは自身が大将軍である事を告げた。幸いな事に、御登箭家の武士の中に直接面識があった者がいたので、すぐに信用は得られた。
「廃城の際に塞いでおりますゆえ、通れないです」
「それでいいです。敵がそこから湧いて出てきても困りますからね」
「しかし、退路も断たれた事になります。ここは我らが討って出ますので、その隙に、大将軍様は退避を」
面識があった若武者が畏まりながら言った。
勇ましい若武者にタチバナは微笑を浮かべたまま、愛刀を抜き放つ。
「心配は無用。将軍たる者が、仲間を犠牲にして敵に背を向けるなど、あり得ない事ですから」
「し、しかし、あの数は……」
ひしめくように迫ってくる憤怒。
既に外城を囲う城壁は突破され、所々で戦闘が開始されていた。
防衛する侍へ兵の士気は低い。このままでは総崩れになるだろう。
タチバナは愛刀をだらりと下げたまま、内城の櫓から外に出ると、迫ってくる憤怒数体を斬り伏せた。
「さて、久々の死地ですね……行きますよ、皆さん。後続のハンター達が援軍に来るまでの辛抱です」
高々と挙げた刀先が太陽の光を反射した。
憤怒火口からの勢いは徐々に弱まりつつある。
しかし、東方各地に飛散した歪虚や雑魔は残ったままだ。
苦戦を続ける幕府軍に対し、日に日に、公家の圧力が高まる。すなわち、防衛という役目を、公家に渡せと。
「前回、ハンター達が調べた内容は、一見するとバラバラの情報ですが、繋ぎ合わせると、重要な情報へと繋がります」
登箭城内のとある屋敷の中でタチバナが静かに告げる。
「やはり、『安武城』に“それ”があると」
「そう推測するのが妥当でしょう」
側近の台詞に、タチバナは頷いた。
『安武城』の警備は、この登箭城と同等かそれ以上かもしれない。
それほど、重要な“もの”があるという事ともいえる。
「城の警備は極めて厳重です。忍び込もうとしたのですが、断念しました」
「仕方ありません。無理をする時期ではありませんからね」
万が一でも忍びが捕まり、それが立花院家の手の者と分かれば、ただでさえ、混乱を続ける武家の関係に大きな溝を作る事になる。
「では、いかがなさいますか? 公家に賛同する中小武家も多いと聞きます。あまり、時間的猶予もありません」
「あまり、使いたく手段なのですが、仕方ありません。“私自身”が直接、出向きましょう」
「よろしいのですか?」
確認するように尋ねる側近に対して、タチバナは微笑を浮かべる。
「忍び込むのが難しいのであれば、正面から堂々と乗り込むだけです」
「如何に大将軍といえども……」
「心配に及びません。『安武城』は廃城として届け出が出ているのです。それが運用されているとなれば、幕府としては見逃す訳にはいきません」
城というのは国防上、極めて重要なものだ。
特に憤怒との戦いにおいては、あるかないかで戦術にも戦略にも、大きな影響を及ぼす。
それにも関わらず、廃城と届けている城が、実際は使われているのであれば、本来は厳罰になる可能性もあるのだ。
「なるほど……その手がありましたか」
「既に到着しているハンター達と共に、一足先に『安武城』に入って、諸々と話をつけてきます。秘宝があるなら、ハンター達の立ち会いは必須ですからね」
「畏まりました」
深々と頭を下げた側近の肩をトンと叩きながら、タチバナは立ち上がった。
●推測を
急報が入ってきたのは、タチバナと先行したハンター達が出発した後の事だった。
もう少し、タイミングがズレれば……もっと事態は変わっていたかもしれないと側近は屋敷に到着したハンター達に言った。
「『安武城』周辺で多数の憤怒が目撃されています。理由は分かりませんが……」
目撃されているのは、登箭城に襲い掛かってきた憤怒と同様だという。
「先行しているハンター達が倒してしまうのでは?」
「とんでもないです! 目撃されている数は相当の数だと。指揮官級だっているかもしれません」
ハンターの質問に側近は状況を説明した。
『安武城』の警備は厳重だが、覚醒者は少なく、憤怒の数が多いと防衛しきれない恐れがある事。
先行しているハンターとタチバナは、この情報を知り得ない事。
恐らく、『安武城』に到着した後に知る事になるだろう。
「場合によっては、援軍を出す必要も生じます……ですが、ここは、御登箭家領内。必然的に、この話を御登箭家にしなければなりません」
「そりゃ……一筋縄ではいかないな。というか、判断に迷うな」
苦笑を浮かべるハンター。
『安武城』に憤怒が迫っている――が、御登箭家からすれば廃城なので、本来、守る必要はない。
ハンターが援軍を要請しても、要請に応える“理由”が存在しないのだ。
また、タチバナが、大将軍であるという事も伏せてある以上、援軍を出す為の説得材料にはなり得ない。
「……いや、あるんじゃないか。援軍を出させる理由が」
「それは、なんでしょうか?」
「要は、前回も含め、これまで得られた情報を纏めて推測し、真相を明らかにした上でなら、守る理由ができるんじゃねぇ?」
「それができれば苦労はしません……私にはとても……」
側近はうな垂れた。
優秀な人材が多い立花院家の側近も、色々な人がいるという事だろう。
「そ、そうだ。皆さんで“推測”して貰えませんか? これまで得られた多くの情報から“秘宝”の真相を。御登箭家に援軍を出すように説得しに、私が行きますので!」
必死に懇願する側近に、ハンター達は互いの顔を見合わせた。
●安武城
元々、打ち捨てられた城であるので、所々、城壁は崩れていたり、脆くなっていた。
その隙を憤怒が狙わない訳がない。安武城の警備の厳しさは、憤怒に対してではなく、武家の忍びに対してだったからだ。
「話は後です。今は憤怒を迎撃しましょう……一応、確認しますが、抜け穴の類もないのですね?」
タチバナが城に詰めていた御登箭家の武士に言った。
城の中に入る直前、憤怒が攻め寄せてきたのだ。現場の責任者は想定外の襲撃に狼狽え、まともな指揮が取れそうになかった。
タチバナは自身が大将軍である事を告げた。幸いな事に、御登箭家の武士の中に直接面識があった者がいたので、すぐに信用は得られた。
「廃城の際に塞いでおりますゆえ、通れないです」
「それでいいです。敵がそこから湧いて出てきても困りますからね」
「しかし、退路も断たれた事になります。ここは我らが討って出ますので、その隙に、大将軍様は退避を」
面識があった若武者が畏まりながら言った。
勇ましい若武者にタチバナは微笑を浮かべたまま、愛刀を抜き放つ。
「心配は無用。将軍たる者が、仲間を犠牲にして敵に背を向けるなど、あり得ない事ですから」
「し、しかし、あの数は……」
ひしめくように迫ってくる憤怒。
既に外城を囲う城壁は突破され、所々で戦闘が開始されていた。
防衛する侍へ兵の士気は低い。このままでは総崩れになるだろう。
タチバナは愛刀をだらりと下げたまま、内城の櫓から外に出ると、迫ってくる憤怒数体を斬り伏せた。
「さて、久々の死地ですね……行きますよ、皆さん。後続のハンター達が援軍に来るまでの辛抱です」
高々と挙げた刀先が太陽の光を反射した。
リプレイ本文
●女狐とハンター
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が魔導バイクで疾走する。
狐卯猾を迂回して【先行組】の援軍に向かう為だ。
「憤怒どもの動きに最近あるような計画性が薄いな。女狐のヤツが慌てて動いたのか?」
「秘宝の在処もすぐそこだからこそかと。そういう意味では抜かりのない事だ」
護衛するように戦馬を走らせながら銀 真白(ka4128)が応えた。
ハンター達を迎え撃とうとしているのは狐卯猾だけだった。
チラっと狐卯猾を見た。ハンター達と接敵する直前なのだが、視線は自分を見ている――そんな気がした直後。
大音響と共に大地が爆発した。
吹き飛ばされるレイオスと真白。幸いにも致命傷にはならなかったが止まるしかなかった。
「折角、私が出てきているのに無視するのは如何なものかしら」
狐卯猾が冷たい微笑みを二人に向けながら炎を両手に作り出した。
「まぁ、先に行きたければ行けばいいわ。私のマテリアルを幾つか埋めておいた地雷原をね」
「爆発したのはそれか」
舌打ちしてレイオスは闘旋剣を抜き放つ。
「この後、御登箭家の援軍も通る事を考えれば倒すしかないだろうか」
レイオスが戦う様子を見せたので、真白も蒼機剣を構える。
狐卯猾の台詞が嘘か本当か見分ける術はないが、追い払えれば援軍の邪魔にならないのは確かな事なのだから。
「簡単には通してくれなさそうだな」
仲間達の影に隠れるようにして七葵(ka4740)が狐卯猾との距離を見定める。
その狐卯猾が一瞬、溜め込んだ負のマテリアルを全周囲に向かって噴き出した。
「精神汚染ッ!」
内側から込み上げてくる怒りの感情に七葵は抵抗する。
周囲を見れば、抵抗に失敗したハンターの姿もある。今にも無策に狐卯猾へと突撃してしまいそうな勢いだ。
だが、それよりも早く、符が舞った。
「そろそろ、此奴の本当の狙いなんかも、ハッキリさせておきたい所だが……」
浄化結界を構築したのは歩夢(ka5975)だった。
ハンター達が散開する前だったのは幸運であった。おかげで精神汚染に抵抗できなかったハンター達はすぐに回復する。
「そう簡単に好き勝手させないぜ」
「教えてあげるわ。憤怒は、まずは厄介な符術師から片付けるのよ!」
轟々と渦巻く炎を作り出すと、それを歩夢に打ち出した。
しかし、それが歩夢に直撃する事は無かった。マテリアルの光を放って、盾を構えるアウレール・V・ブラオラント(ka2531)へと吸い込まれた。
相当な衝撃がアウレールを襲い、爆発で土煙が上がる。
「貴公は脱皮すると聞いた。最近寒くてな、狐の皮なら襟巻に丁度良いと考えて間違いないか」
土煙が流れ、ほぼ無傷のアウレールが不敵に口元を緩める。
「残念だけど、人間が手にする程、安くはないわよ」
「なら、幾らでも出してやろう――ゲシュペンスタ・イェーガー!」
聖祈剣にマテリアルが集る。
間合いを一気に詰め斬りかかるアウレールだったが、僅かに狐卯猾を掠めただけだった。
「どこを狙っているのかしらね」
「そうでもないですよ」
避けた先に待っていたのは着物姿のハンス・ラインフェルト(ka6750)の強力な一撃だった。
斬撃の直前、負のマテリアルを噴き出してバリア代わりにされた為、深手にはなっていないようだ。
狐卯猾は自身の周囲に炎を巻き起こしハンスの接近を排除しようとしたが、彼は構わず攻撃を続ける。
「多少防御が厚くなったところで狐卯猾の攻撃は防げない。ならば、こちらも相応の無茶が必要、そういうことですよ」
「そう言う割には、炎の力を秘めた着物を着てくるのね」
執拗なハンスの攻撃に狐卯猾は高く跳躍すると間合いを確保した。
即座にフィロ(ka6966)が魔導銃を放って牽制する。
「少しでも気を逸らす事ができれば……」
「これは、厄介なのがいるわね」
狐卯猾の視線はフィロが持つ魔導銃――ではなく、指先から手首までを覆う格闘武器だった。
武器から発せられる雰囲気かマテリアルかに何か感じたのだろう。
そういう意味でいうと、一瞬だったが、気を逸らした事は出来た。
隙を突いて側背面に回ったユリアン(ka1664)とヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)が同時に攻撃を仕掛ける。
「どうしても私の耳が気になるようね?」
二人の攻撃を受け止めた狐卯猾がそんな言葉を口にする。
ユリアンは爽やかな微笑を浮かべながら深追いはせずに下がった。
「結構人間の女性っぽい所があるから 乱されるのは嫌かなと」
「単なる髪に人間は変なこだわりがあるのね」
「こだわっているのは髪だけじゃねぇんだぜ」
体内からマテリアルの光を放つヴォーイ。
強制的に注意を引き付ける魔法だ。
「魅力ある光を出したいのなら、もっと光ってみなさい」
余裕の表情で狐卯猾は言った。
ヴォーイが行使したマッスルトーチの強度はそれなりに高い。
少なくとも、並みのハンターなら効果が発揮される程に。
「攻撃が通じるまで幾度も繰り出すだけです」
「そういう事じゃん」
「本当に、人間は無駄な事をするのが好きね」
狐卯猾の頭上に幾個にも炎球が出現した。
不気味な光を発しながらグルグルと回るそれは、数を増やしていく。
「――攻撃はこうして行うのよ!」
一斉に火球が飛んだ瞬間、大爆発が起こる。
その衝撃は後ろに控えていたハンターをも巻き込むものだ。
何人ものハンターが大きなダメージを受けるが……。
「誰も重体になんてさせないの!」
ディーナ・フェルミ(ka5843)が回復魔法を唱える。
一帯は狐卯猾が放った負のマテリアルの影響により、魔法による回復力が低下しているが、それでも、仲間達を回復できたのは、魔法威力が高かったからだろう。
「まだまだ回復魔法は使えるの」
「だったら、一番先に、倒してあげるわ」
ダメージを受けて回復薬に手を伸ばすハンターもいるが、やはり魔法による回復が早い。
狐卯猾もそれはすぐに分かった。それなら、回復役を先に倒すだけだ。
幾つもの火球が再び、狐卯猾の頭上を回る――が、唐突に消えてなくなった。
「その仕掛け、分かったわ」
夢路 まよい(ka1328)がカウンターマジックで打ち消したのだ。
消されるとは思っていなかったようで、狐卯猾が驚いた表情を見せる。
「まよいさん、あの術は?」
「きっと、ダブルキャストに似た魔法だと思うの。違うとすれば“別々”ではなくて“複数を一つ”に、かな」
ユウ(ka6891)の質問に、首を傾げながら、まよいは推測した。
これまでも、魔術師がいれば仕組みの見当がついただろうが……。
「威力を合わせる事ができれば、倍になりますね」
それがあの大爆発の正体だろう。
まよいが消したのは狐卯猾の“複数の魔法を合わせる”魔法だったのだ。
その狐卯猾は怒りの表情を浮かべていた。自分がやろうとした事を唐突に止められたからだろう。
「後悔するといいわ! この私を本当に怒らせた事をね!」
犬歯が異様に伸び、全身が灰色の毛に覆われ、巨大な狐のような姿へと狐卯猾は変貌した。
●防衛戦
「城外に増援が来て、敵と交戦中っす!」
神楽(ka2032)の檄に安武城を守る兵士達の表情が変わる。
高い実力を持つハンター達が居ても迫ってくる敵の数は膨大なのだ。戦いで不安になるのも仕方ないだろう。
「皆、増援が来るまで落ち着いて敵を防ぐっす! 俺の周りで戦えば少し強くなるっすよ!」
ファミリアズアイで全体の戦況を見ていた彼は、大型犬の姿をした幻獣の首根っこを掴みながら、霊闘士の力は放つ。
相棒を通じて引き出した霊呪が周囲の兵達に力を分け与えるのだ。
その援護を受けて兵達が一斉に槍を構えて敵の一団に向かって突撃する。
「今がチャンスだぜェ」
兵達に告げながら、シガレット=ウナギパイ(ka2884)が魔法を行使する。
出現した無数の闇の刃は憤泥共の移動を不能とさせる。列が乱れた所に兵達の槍が次々と突き刺さった。
「どうやら、火災の心配はしなくても良いみてぇだなァ」
憤泥の攻撃で大怪我を負った兵に回復魔法を唱えてシガレットは言った。
火災対策を準備したハンターも多かったが……。
「準備が無駄という事はない。どんな拍子で火災が起こるか分からないしな」
そう答えたのは龍崎・カズマ(ka0178)だった。
カズマは前線で鎮魂歌や歌舞を演じて兵士達を支援していた。ハンター達、一人ひとりは非覚醒者と比べれば強い。
だが、膨大な敵から広い範囲を防衛するには、やはり、兵達への協力が必要だ。
「西側で敵の攻勢が強くなっている。二隊ほど向かってくれ。あちらは最悪、廃城ごと破壊してもいいんだからな」
通信機から援軍要請を受け、カズマは兵士達に告げた。
ヴァイス(ka0364)が兵士達よりも前に進み出ると、魔鎌を高々と掲げる。
放たれる光の矢が次々と憤泥に直撃する。
「皆、ここが踏ん張り時だ!」
敵は数に任せて押し潰す勢いで次から次へと進んで来る。
盾に持ち替えつつ、眼前の憤泥を足蹴りで追い返した。
「気持ちが守りに入ると潰される。仲間を信じ、絶対に諦めるな!」
一人の兵士が受けるはずだった攻撃を、ベクトルを捻じ曲げて自身で受けるヴァイス。
防衛戦というのは難しいものだ。“守り切る”には攻勢に出る必要がある。
兵と共に戦っているのはニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)も同様だった。
魔剣の鋭い先端が煌めいたかと思った次の瞬間、憤泥が斬り崩れていく。
「私のような湿気た炭の破片のような者に来られてもお邪魔でしょうが……」
ブレる事のないネガティブな気持ちを呟きながら、ニャンゴは魔剣を構え直した。
体内のマテリアルを燃やし、敵の注意を引きつける。
憤泥は数が多いが細かく指揮をする者がいないようなので、こうした誘引には掛かり易いようだ。
「こんな私が猫の左手ほどのお力にでもなれれば幸いです」
集まって来た所でマテリアルを込めた魔剣を振って衝撃波を放つ。
それでも続々と押し寄せる波のように迫る憤泥共。
「ボードの謎を解き明かし、ざくろが目にする迄は、歪虚の好きにはさせやしない!」
勇ましく最前線に躍り出たのは時音 ざくろ(ka1250)だった。
マーキス・ソングで敵の能力を低下させつつ、機導術と堅い防御を活かし戦線を支えている。
城の建物配置や瓦礫の隙間などを有効に使って守りやすくしつつ――
「そっちが炎なら……全て凍てつけフリージングレイ!」
憤泥が吐いた炎に対し、ざくろは青白く輝く冷凍光線を放つ。
ダメージを与えた所に兵士達の弓矢が撃たれ、敵を倒し続けるのであった。
「溶岩にファイアスローワーって多分効かないですよね?」
「俺もそう思いますね。憤怒火口から出現しただけあって、炎の属性は持っていると」
穂積 智里(ka6819)の疑問に鳳城 錬介(ka6053)が答えた。
憤泥は元々、憤怒火口が噴火した際に放出されたものだ。
だとすれば、炎の属性が通じにくいと考えるのは妥当なところだろう。
「面攻撃できるので効きそうなら使いたかったですが……これで行きます」
智里は味方の兵士達を巻き込まないように機導術を放つ。
無数に迫る敵から城を守るには、攻撃を繰り返すしかない。
当然の事ながら、敵も黙っている訳ではないので、攻撃を受ける事にもなる。
「皆さん、無理はしないで下さいね」
プルガトリオで敵を足止めしつつ、魔法で兵士達を支援する錬介。
重装の甲冑に身を包み、聖盾剣を構えて壁の如く立つ。
「これなら、持ち堪えられるぞ!」
機杖を構えて八島 陽(ka1442)はマテリアルを集中させる。
スキルアシストとチャージャーを合わせて放つアイシクルコフィンの強度は高い。
防衛戦では漸減も有効な戦術だ。敵に有効な遠距離攻撃が無ければ、前に進む事も引く事も出来ずに、ジワジワと弱らせられる。
「隙間から入ってくるなら、そこがねらい目だ」
そう兵士達に呼び掛けた。物理的に狭路に存在できる敵の数は限られる。
非覚醒者だとしても、多数の兵士達が幾本も矢を放てば、敵はただでは済まないだろう。
戦いは徐々に防衛側に有利となってきた。
半壊している門から雪崩れ込んでくる憤泥を迎撃する区域が一番の激戦地となっていた。
敵の攻撃を受けて倒れる侍をアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は下がらせた。
「……ふむ、多いな」
如何に優れた戦士であっても無敵ではない。アルトも急所に入った傷を受けていた。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)が敵に向かって叫ぶ。
「番犬舐めないでくださいですよ!」
戦意剥き出しな様子は番犬というか猟犬だ。
ハンター達の中でも特に二人の活躍は目立つ所だった。
「死なない限りはどんな大怪我でも治してあげるからね!」
そう宣言した天竜寺 詩(ka0396)が魔法で仲間を支援する。
回復だけではなく、同士討ちを引き起こす攻撃魔法も使う。
「これだけ戦力が充実していると……なんとかなりそうですね」
タチバナ――立花院 紫草(kz0126)――が微笑を浮かべて振り返った。
紫草の背を守り続けていたカイ(ka3770)は、視線に気が付いて頷いた。
「後ろは任せてくれていいぞ」
もっとも、紫草は守る必要がないほどの強さだったが。
大事なのは背後を託せる仲間がいるという意識だろう。背後だけではない。
この城四方をハンター達が守っているからこそ、戦いに集中できるというものだ。
「纏めて倒した方が、効率がいいか」
カイの提案にアルトが愛刀を最上段に構える。
守勢に回っていた状況が好転してきたのだ。逆襲するなら今がチャンスだ。
「タチバナさんより多く倒したらボーナスとか出たりしないか? そっちは指揮もあるだろうけど。それはハンデってことで」
「いいですよ。私に勝てたのなら……ですが。アルマもやりますよね」
余裕の表情を浮かべた紫草の台詞にアルマが脊髄反射で手を挙げる。
広範囲を薙ぎ払える術を持っている彼はアルトと紫草よりか有利かもしれない。
「わふっ! 勿論です!」
憤怒側にとって運が無かった事は、この3人がそれぞれ可笑しい程の強者だったという事だろう。
誰が一番になるか想像もできないし、誰も負けるつもりもなさそうな雰囲気の中、詩が3人に回復魔法を掛ける。
「でも、無茶しない程度、だからね」
詩の言葉に3人は頷くと、それぞれ駆け出したのであった。
●狐卯猾撃退
圧倒的な範囲攻撃と支援能力を低下させる負のマテリアル。
元の姿といっていいか分からないが、巨大な狐のような姿となった狐卯猾は恐るべき力を発揮していた。
「守りに徹したらそのまま押される。ここは攻めないと」
向かって来た炎を打ち払うレイオス。
憤怒という眷属を体現しているかのように、怒りで攻撃力が増しているような気もする。
もし、狐卯猾が元憤怒王蓬生と同じではなくとも、同様の力量を持っているとしたら……この場にいる十数人のハンターだけで戦い切らなければならない。
「攻撃の起点となるものが必要だろう」
残ったマテリアルを絞り出しながら、最後の浄化結界を張る歩夢。
ハンター達の攻撃は届いているが、巨体にも関わらず、避けたり肉質が硬そうな所で受け止められたりと決定打に至らないからだ。
「回復魔法にはまだゆとりがあるの。攻撃するなら今のうちなの!」
ディーナの台詞に狐卯猾がピクっと耳を動かした。
直接的な攻撃はアウレールが庇っているので、届かない……ならば――。
「この一帯の怒り、全て注ぎ込んであげるわ!」
負のマテリアルが渦を巻いてディーナに集い始める。
咄嗟にアウレールが前面に立って盾を掲げたが、すぐに分かった。
「これは直接的な攻撃じゃない。精神汚染だ!」
「手遅れよ」
残酷に言い放った狐卯猾。
だが、渦巻く黒い渦の中にマテリアルが色濃く光った。光っているのは星神器――ウコンバサラ――だった。
「……天より貫く巨大なる石斧。私に破壊と再生の力を授けたえ、なの!」
轟音と共に稲妻が渦を吹き飛ばし、電撃模様のオーラがディーナを包み込んだ。
星神器の持つ力で雷を纏い、不屈の肉体を得るのだ。
絶対的な自信を持って精神汚染を狙った狐卯猾の奥の手が失敗した。
チャンス到来と感じたまよいが精神を集中させる。それを見たアウレールとフィロが顔を見合わせて頷く。
「今だ。攻撃を合わせるぞ」
「分かりました。皆様の道を開きます」
それまで純白の格闘武器がフィロのマテリアルに反応し、金属色を放った。
無敗の剣聖の力、極限の武の力を解放し、拳から全身に眩いマテリアルのオーラが包む。それは、星神器――角力――の力だ。
「徹し白虎神拳!」
一気に間合いを詰めて放った強力無比な一撃いや、二撃。
星神器の力を借りて打った白虎神拳だったが、行動不能までは与えられなかった。
しかし、無駄打ちではない。問題は、その強度なだけで、より強い強度であれば相手は防ぐ手段がないと分かったからだ。
「……怒涛なる水の流れ、揺ぎ無き大地の力、我らの敵を打ち砕け! アブソリュートゼロぉ!」
高めたマテリアルと共にまよいが必殺の魔法を唱える。
ただの攻撃魔法ではない。高位の魔術師が扱える魔法の中でも、まよいが鍛錬に鍛錬を重ねた魔法だ。
「逃がしません。絶対に当たらせます!」
タイミングを合わすようにユウが鞭を振るって牽制する。
ユウだけではない。敵の回避スペースを潰す為、虚を突くように七葵が飛び出すと、抜刀する。
鶺鴒の構えで機会を狙っていたのだ。
「そこだ!」
放たれたのは空間を切り裂く斬撃。
狐卯猾が巨大化したおかげで仲間には当たらない。絶妙のタイミングだった。
成すすべもなく狐卯猾は魔法と斬撃、その両方の直撃を受けた。
「今こそ!」
「ご注目じゃ~ん」
ビシっとマテリアルが真白とヴォーイに集中した。
今一度のアブソリュート・ポーズ。即席ではあるが二人で一つのポーズは、眩いばかりの光を放ち――。
「狙い通り、技を封じた」
「後はタコ殴りじゃん」
炎を出現させた狐卯猾だったが、糸が解けるように掻き消えた。
「攻撃の手は緩めません」
「そろそろお帰りいただけますか、狐卯猾様」
ユウとフィロが攻撃を放つとすぐに散開。
二人が抜けた所で、確りと獲物を見つめながら、ハンスが突貫する。
「待っていましたよ、この一撃を与えるチャンスが来る事を」
残ったマテリアルを絞り出した技。
苦し紛れに狐卯猾は前脚を強引に振るったが、それはアウレールの堅い守りに阻まれる。
「今頃になって悪あがきはみっともないぞ」
勿論、受け止めたアウレールもただでは済まない。
盾を持つ腕が折れるのではないかと思う程の衝撃だ。
「一撃で死なない限り、大丈夫なの」
すぐさま、ディーナの回復魔法が飛ぶ。
不利と悟ったのか下がろうとした狐卯猾の周囲に符が舞って結界を構築した。
「五方の理を持って、千里を束ね、東よ、西よ、南よ、北よ、ここに光と成れ! 五色光符陣!」
歩夢が放った符術だ。続けて、重力波を伴った紫色の光が狐卯猾を中心に広がる。
その魔法は接近戦を挑むハンター達も巻き込んだものだったが、あっという間に中央の狐卯猾に凝縮された。
「……全てを無に帰せ、ブラックホールカノン!」
先程、大掛かりな魔法を使った直後というのに、まよいが再び攻撃魔法を行使する。
本来は敵味方関係なく広範囲に影響を及ぼすものであるが、集束魔法により狐卯猾だけに効果が発揮されるのだ。
さしもの狐卯猾もハンター達の連続攻撃の前に、その巨体を大地に落とした。
こうなれば、あとは攻撃、そしてその攻撃が当たるように援護、反撃には回復という流れを繰り返すだけだ。
「あれは……御登箭家からの援軍が到着したのかな」
幾度もなく精霊刀で狐卯猾を斬り、ワイヤーウィップで仲間の攻撃を支援していたユリアンが、ふと、風が運ぶ音を聴き、その方角に視線を向けた。
長く続く土煙が迫ってくる。
それだけでも、かなりの数の軍勢が援軍として駆けつけてくるのが分かった。
ハンター達の推理を紫草の側近が御登箭家に告げた結果、これほどの軍勢が向かってくるという事は、推理した内容が適切だったのか、あるいは、御登箭家の中で“今、動いた方が良い”という決断に至ったのだろう。
そうでなければ、最悪、御家取り潰しだってあり得る事の程をしでかしているのだから。
「……どうやらここまでのようね」
軍勢を確認して弱々しく狐卯猾が言葉を発するとググっと顔を挙げる。
ユリアンは油断なく刀先を狐卯猾へと向けた。
「今まで高みの見物をしてたのに、此処に来て立ちはだかるのは何か意味が?」
「秘宝を滅する事も将軍を抹殺する事も出来なかったけど、まぁ、いいわ」
幕府と公家の仲違いを決定的にさせるには“本物の秘宝”が邪魔だった。
場所を特定するのに時間が掛かったが、そのついでに将軍を抹殺するには実に良い機会だった。
武に秀でる将軍を倒せなくとも、大怪我を負わす事ができれば“次の作戦”が多少、有利に運ぶと考えていたのだが、あれだけの援軍が憤泥の背後を突けば、一気に瓦解してしまうだろう。
細かい指示を出せる幹部級が他にいれば違う結果になっていただろうが、それが出来た堕落者の憤怒は、随分前にハンター達に討たれている。
「ここは決着の場では無いよね?」
「もうすでに、決着はついているわよ。フフフ……アハハハハ!」
ユリアンの台詞に狂ったように笑う狐卯猾。
そこにレイオスがトドメの斬撃を見舞う。
「自殺願望が強い女狐だな」
「さぁ、どうかしら。それじゃ、人間ども」
不気味な笑みを浮かべて風船の空気が抜けたような音と共にボロボロと崩れ落ちる狐卯猾。
ハンター達は分かっていた。それは狐卯猾を倒した事になっていないと。
再出現した所を狙っていたハンターもいたが、狐卯猾はそれよりも遠くに向かって消えていってしまうのであった。
●誓いの記し
御登箭家からの援軍は、領内の戦力ほぼ全てと言っても過言ではない程だった。
それに狐卯猾と戦っていたハンター達も加わり、安武城を攻め寄せていた憤怒勢力を粉砕する。
「残党処理は援軍に任せて、私達は秘宝の確保でしょうか?」
「全員で案内されているという事は立ち会いという意味もあるかもな」
智里とカイの会話の通り、紫草と共に戦っていた先発組のハンター達は安武城の中心部に向かっていた。
国家権力からは離れているハンターズソサエティ所属のハンターが複数人で立ち合うという事の意味は、政治的に客観的な事実がある事を示すものと見ている武家もいるという事だ。
城の中を案内していた黄土色の羽織を身に着けた老侍が足を止めた。
「……この先に、秘宝を保管しております」
「なぜ、ここに秘宝があるのですか?」
錬介の疑問に老侍は首を横に振る。
「詳しい事は何も……ただ、前当主から、万が一の時はと言われておりました」
二重三重の重々しい扉を開くと、広い部屋の中心に“秘宝”エトファリカ・ボードが置かれていた。
形や大きさは嘉義城の地下施設で見つかった物と同じなようだ。
「……五芒星が描かれていないか」
「地図の内容も違うようだなァ」
ヴァイスとシガレットが秘宝に描かれた内容を見て、そう言った。
嘉義城の地下施設で見つかったのは五芒星術式と上位武家による諸藩統一が記されていたのだ。
「これが本物の秘宝なのかな?」
首を傾げる詩の台詞に全員の視線が紫草に集まった。
“秘宝”へと静かに近づいた紫草は、ジッと秘宝を見つめる。
「本物――ですね。私の記憶が間違っていなければ、ですが」
「……という事は、紫草さんは秘宝の事を知っていたんですね!」
ガシっと将軍の胴体にしがみつくアルマ。
偽物か本物か。それを分かるには本物を知っている事が必要だ。
以前に紫草と会話した時の内容を思い出しながらアルトがフっと口元を緩める。
「なるほど。実は秘宝の事は最初から知っていた……だが、記憶に確信が無かったという事か。タチバナさんでもそういう事があるんだね」
「私も人の子ですから、完全無欠ではありませんよ」
微笑を浮かべつつ、紫草は秘宝の枠に慎重に触れる。
何かを確かめているようだ。その様子を見守りつつ、ざくろが疑問を呟いた。
「これが本物だとして、なんで、ここにあるんだろう?」
「経緯とその動機……がありそうですね」
秘宝に描かれた東方地図をジッと見つめる智里が“謎”を整理した。
「これは龍尾城の宝物庫から運ばれたもので間違いはないのですね?」
「そのように聞いています」
錬介の問いに老侍は深々と頭を下げながら肯定する。
すると、紛失の原因は、御登箭家が持ち出したという事なのだろう。
「持ち出す程の理由だが……確か、以前見つかったのは……」
カズマは秘宝に描かれた東方地図を観察する。彼が探した武家はその当時から大きく書かれていた。
東方地図には細かい領地まで書いてあり、小さすぎて番号だけを振っているのもある。
アルマがまだしがみつきながらパッと表情を変える。
「分かりました! 以前見つかった秘宝は『上位武家による共同統治』。それなら、これは――」
「東方に本来あるべき姿を描いたもの……という事です」
台詞を続けて言ったのは、額縁を調べている紫草だった。
「本来あるべき……それは勢力を失う前という事、ですか」
感心しながらニャンゴは東方地図をよく見る。
今は憤怒勢力になっている所にも細かく領地と何かの記号が記してあった。
「領地を証明するものっすかね」
「そういうものは台帳に記してありそうだけど……」
神楽と詩の会話に、調べものが終わった紫草が振り返った。
額縁の一部を持つ手を慎重に引っ張ると、二重になっていた部分が引き出てきた。
「勿論、登記されています。その上で“秘宝”である理由が存在するのでしょう」
引き出てきたものをハンター達は見た。
「これは……血判かァ。すげぇ数だぜェ」
「登記が書き換わっていない証明も兼ねているって事か」
シガレットとカイの言葉にハンター達は頷いた。
調べてみないと分からないが……全ての武家の名が記してあるのではないかという程、ビッシリと書かれている。
それは“秘宝”に描かれている領地と繋がっているようだ。誰がどこの領地か分かるようになっている。
「国難の後に役に立つというのは、戦後に領地回復する際に役に立つという事か」
血判された武家名を一つひとつ確認しながらアルトが言った。
登記を遡るのは大変だが、登記と紐づけされているこれなら、一目瞭然だ。
憤怒によって奪われた後、強い汚染で地形が変わっている場所もあるかもしれない。秘宝に記されている内容は登記より分かり易いだろう。
「となると、憤怒撃退後に領地拡大を目論んでいたら、秘宝の存在は邪魔になるっすよね」
「憤怒との戦いが終わると見て、御登箭家は秘宝を持ち出した。御登箭領内で作製された贋作は、龍尾城の宝物庫に戻る前に何者かに奪われた。そして、それが嘉義城で見つかった」
神楽と八島の推測に紫草は深く頷く。
「恐らく、それが真相でしょう。私もそのように考えています」
贋作が宝物庫に戻れば、紛失した事も分からなかったはずだ。
そもそも、宝の数が合っていれば、事件が明るみになる事は無かった。別の贋作を用意すればいいだけだろうが、出来なかったのは、何か致命的な事が『作る側』であったのだろう。
また、もう一つ疑問があるとすれば、どうして贋作が憤怒の手に渡ったのか……という事だ。
もしかして、偶然にも憤怒が手にしたのかもしれない。
完全な真相は調査や推測した情報の中からは得られないだろうが……凶術――五芒星術式――は憤怒が用いた術である事を考えれば、贋作に後から付け加えたものだろう。
それなら、偽秘宝が負のマテリアルで汚染されていた理由にもなる。
「……この血判から皆さんも分かると思いますが、この“秘宝”は全ての武家の誓いが込められているのではないでしょうか」
「“秘宝”に特別な力は無い……けれど、人々の結束を示す、大事な物だったんだ」
ざくろが神霊樹で過去にダイブした時の事を思い出しながら、しみじみと言った。
これが制作された当時は憤怒勢力によって、次々と人々の勢力域が攻め立てられていた頃だろう。
戦力を集中させる為に手放さなければならなかった故郷もあったはずだ。
そう考えれば、人々の強い決意と結束が込められていたのに違いない。いつになるか分からなくとも、必ず憤怒との戦いに勝つという想いと共に。
「いわば“未来への誓いの記し”……東方子孫に残した『責任』か」
「憤怒との戦いを決して諦めないという覚悟ともいえるな」
そう言ったカズマとヴァイスも、集まったハンター達も秘宝を見つめる。
“秘宝”を作った人達は、血判した人達は、それを見守った人達は、“秘宝”にそれぞれの想いを残したのだろうか。
紫草は二重になっていた血判を“秘宝”に丁寧に戻すと、ニャンゴがサッと“秘宝”に布を掛けた。
これから龍尾城まで運び出すのだ。その途中で破損してしまったら意味がない。
「『紫草殿の指揮で難局を乗り切った』という風聞を広めなくてはなりません」
「そうですね。でも、ニャンゴさん。付け加えさせて下さい。私の名前の前に『ハンターの皆さんと』という言葉を」
ハンター達に、いつもの微笑ではなく、満面の笑みを浮かべた紫草であった。
ハンター達は安武城の防衛に成功。また、増援の邪魔に入った狐卯猾も退ける事が出来た。
また、安武城が無事だった為、保管されていた本物の“秘宝”エトファリカ・ボードを発見する事が出来たのであった。
おしまい
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が魔導バイクで疾走する。
狐卯猾を迂回して【先行組】の援軍に向かう為だ。
「憤怒どもの動きに最近あるような計画性が薄いな。女狐のヤツが慌てて動いたのか?」
「秘宝の在処もすぐそこだからこそかと。そういう意味では抜かりのない事だ」
護衛するように戦馬を走らせながら銀 真白(ka4128)が応えた。
ハンター達を迎え撃とうとしているのは狐卯猾だけだった。
チラっと狐卯猾を見た。ハンター達と接敵する直前なのだが、視線は自分を見ている――そんな気がした直後。
大音響と共に大地が爆発した。
吹き飛ばされるレイオスと真白。幸いにも致命傷にはならなかったが止まるしかなかった。
「折角、私が出てきているのに無視するのは如何なものかしら」
狐卯猾が冷たい微笑みを二人に向けながら炎を両手に作り出した。
「まぁ、先に行きたければ行けばいいわ。私のマテリアルを幾つか埋めておいた地雷原をね」
「爆発したのはそれか」
舌打ちしてレイオスは闘旋剣を抜き放つ。
「この後、御登箭家の援軍も通る事を考えれば倒すしかないだろうか」
レイオスが戦う様子を見せたので、真白も蒼機剣を構える。
狐卯猾の台詞が嘘か本当か見分ける術はないが、追い払えれば援軍の邪魔にならないのは確かな事なのだから。
「簡単には通してくれなさそうだな」
仲間達の影に隠れるようにして七葵(ka4740)が狐卯猾との距離を見定める。
その狐卯猾が一瞬、溜め込んだ負のマテリアルを全周囲に向かって噴き出した。
「精神汚染ッ!」
内側から込み上げてくる怒りの感情に七葵は抵抗する。
周囲を見れば、抵抗に失敗したハンターの姿もある。今にも無策に狐卯猾へと突撃してしまいそうな勢いだ。
だが、それよりも早く、符が舞った。
「そろそろ、此奴の本当の狙いなんかも、ハッキリさせておきたい所だが……」
浄化結界を構築したのは歩夢(ka5975)だった。
ハンター達が散開する前だったのは幸運であった。おかげで精神汚染に抵抗できなかったハンター達はすぐに回復する。
「そう簡単に好き勝手させないぜ」
「教えてあげるわ。憤怒は、まずは厄介な符術師から片付けるのよ!」
轟々と渦巻く炎を作り出すと、それを歩夢に打ち出した。
しかし、それが歩夢に直撃する事は無かった。マテリアルの光を放って、盾を構えるアウレール・V・ブラオラント(ka2531)へと吸い込まれた。
相当な衝撃がアウレールを襲い、爆発で土煙が上がる。
「貴公は脱皮すると聞いた。最近寒くてな、狐の皮なら襟巻に丁度良いと考えて間違いないか」
土煙が流れ、ほぼ無傷のアウレールが不敵に口元を緩める。
「残念だけど、人間が手にする程、安くはないわよ」
「なら、幾らでも出してやろう――ゲシュペンスタ・イェーガー!」
聖祈剣にマテリアルが集る。
間合いを一気に詰め斬りかかるアウレールだったが、僅かに狐卯猾を掠めただけだった。
「どこを狙っているのかしらね」
「そうでもないですよ」
避けた先に待っていたのは着物姿のハンス・ラインフェルト(ka6750)の強力な一撃だった。
斬撃の直前、負のマテリアルを噴き出してバリア代わりにされた為、深手にはなっていないようだ。
狐卯猾は自身の周囲に炎を巻き起こしハンスの接近を排除しようとしたが、彼は構わず攻撃を続ける。
「多少防御が厚くなったところで狐卯猾の攻撃は防げない。ならば、こちらも相応の無茶が必要、そういうことですよ」
「そう言う割には、炎の力を秘めた着物を着てくるのね」
執拗なハンスの攻撃に狐卯猾は高く跳躍すると間合いを確保した。
即座にフィロ(ka6966)が魔導銃を放って牽制する。
「少しでも気を逸らす事ができれば……」
「これは、厄介なのがいるわね」
狐卯猾の視線はフィロが持つ魔導銃――ではなく、指先から手首までを覆う格闘武器だった。
武器から発せられる雰囲気かマテリアルかに何か感じたのだろう。
そういう意味でいうと、一瞬だったが、気を逸らした事は出来た。
隙を突いて側背面に回ったユリアン(ka1664)とヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)が同時に攻撃を仕掛ける。
「どうしても私の耳が気になるようね?」
二人の攻撃を受け止めた狐卯猾がそんな言葉を口にする。
ユリアンは爽やかな微笑を浮かべながら深追いはせずに下がった。
「結構人間の女性っぽい所があるから 乱されるのは嫌かなと」
「単なる髪に人間は変なこだわりがあるのね」
「こだわっているのは髪だけじゃねぇんだぜ」
体内からマテリアルの光を放つヴォーイ。
強制的に注意を引き付ける魔法だ。
「魅力ある光を出したいのなら、もっと光ってみなさい」
余裕の表情で狐卯猾は言った。
ヴォーイが行使したマッスルトーチの強度はそれなりに高い。
少なくとも、並みのハンターなら効果が発揮される程に。
「攻撃が通じるまで幾度も繰り出すだけです」
「そういう事じゃん」
「本当に、人間は無駄な事をするのが好きね」
狐卯猾の頭上に幾個にも炎球が出現した。
不気味な光を発しながらグルグルと回るそれは、数を増やしていく。
「――攻撃はこうして行うのよ!」
一斉に火球が飛んだ瞬間、大爆発が起こる。
その衝撃は後ろに控えていたハンターをも巻き込むものだ。
何人ものハンターが大きなダメージを受けるが……。
「誰も重体になんてさせないの!」
ディーナ・フェルミ(ka5843)が回復魔法を唱える。
一帯は狐卯猾が放った負のマテリアルの影響により、魔法による回復力が低下しているが、それでも、仲間達を回復できたのは、魔法威力が高かったからだろう。
「まだまだ回復魔法は使えるの」
「だったら、一番先に、倒してあげるわ」
ダメージを受けて回復薬に手を伸ばすハンターもいるが、やはり魔法による回復が早い。
狐卯猾もそれはすぐに分かった。それなら、回復役を先に倒すだけだ。
幾つもの火球が再び、狐卯猾の頭上を回る――が、唐突に消えてなくなった。
「その仕掛け、分かったわ」
夢路 まよい(ka1328)がカウンターマジックで打ち消したのだ。
消されるとは思っていなかったようで、狐卯猾が驚いた表情を見せる。
「まよいさん、あの術は?」
「きっと、ダブルキャストに似た魔法だと思うの。違うとすれば“別々”ではなくて“複数を一つ”に、かな」
ユウ(ka6891)の質問に、首を傾げながら、まよいは推測した。
これまでも、魔術師がいれば仕組みの見当がついただろうが……。
「威力を合わせる事ができれば、倍になりますね」
それがあの大爆発の正体だろう。
まよいが消したのは狐卯猾の“複数の魔法を合わせる”魔法だったのだ。
その狐卯猾は怒りの表情を浮かべていた。自分がやろうとした事を唐突に止められたからだろう。
「後悔するといいわ! この私を本当に怒らせた事をね!」
犬歯が異様に伸び、全身が灰色の毛に覆われ、巨大な狐のような姿へと狐卯猾は変貌した。
●防衛戦
「城外に増援が来て、敵と交戦中っす!」
神楽(ka2032)の檄に安武城を守る兵士達の表情が変わる。
高い実力を持つハンター達が居ても迫ってくる敵の数は膨大なのだ。戦いで不安になるのも仕方ないだろう。
「皆、増援が来るまで落ち着いて敵を防ぐっす! 俺の周りで戦えば少し強くなるっすよ!」
ファミリアズアイで全体の戦況を見ていた彼は、大型犬の姿をした幻獣の首根っこを掴みながら、霊闘士の力は放つ。
相棒を通じて引き出した霊呪が周囲の兵達に力を分け与えるのだ。
その援護を受けて兵達が一斉に槍を構えて敵の一団に向かって突撃する。
「今がチャンスだぜェ」
兵達に告げながら、シガレット=ウナギパイ(ka2884)が魔法を行使する。
出現した無数の闇の刃は憤泥共の移動を不能とさせる。列が乱れた所に兵達の槍が次々と突き刺さった。
「どうやら、火災の心配はしなくても良いみてぇだなァ」
憤泥の攻撃で大怪我を負った兵に回復魔法を唱えてシガレットは言った。
火災対策を準備したハンターも多かったが……。
「準備が無駄という事はない。どんな拍子で火災が起こるか分からないしな」
そう答えたのは龍崎・カズマ(ka0178)だった。
カズマは前線で鎮魂歌や歌舞を演じて兵士達を支援していた。ハンター達、一人ひとりは非覚醒者と比べれば強い。
だが、膨大な敵から広い範囲を防衛するには、やはり、兵達への協力が必要だ。
「西側で敵の攻勢が強くなっている。二隊ほど向かってくれ。あちらは最悪、廃城ごと破壊してもいいんだからな」
通信機から援軍要請を受け、カズマは兵士達に告げた。
ヴァイス(ka0364)が兵士達よりも前に進み出ると、魔鎌を高々と掲げる。
放たれる光の矢が次々と憤泥に直撃する。
「皆、ここが踏ん張り時だ!」
敵は数に任せて押し潰す勢いで次から次へと進んで来る。
盾に持ち替えつつ、眼前の憤泥を足蹴りで追い返した。
「気持ちが守りに入ると潰される。仲間を信じ、絶対に諦めるな!」
一人の兵士が受けるはずだった攻撃を、ベクトルを捻じ曲げて自身で受けるヴァイス。
防衛戦というのは難しいものだ。“守り切る”には攻勢に出る必要がある。
兵と共に戦っているのはニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)も同様だった。
魔剣の鋭い先端が煌めいたかと思った次の瞬間、憤泥が斬り崩れていく。
「私のような湿気た炭の破片のような者に来られてもお邪魔でしょうが……」
ブレる事のないネガティブな気持ちを呟きながら、ニャンゴは魔剣を構え直した。
体内のマテリアルを燃やし、敵の注意を引きつける。
憤泥は数が多いが細かく指揮をする者がいないようなので、こうした誘引には掛かり易いようだ。
「こんな私が猫の左手ほどのお力にでもなれれば幸いです」
集まって来た所でマテリアルを込めた魔剣を振って衝撃波を放つ。
それでも続々と押し寄せる波のように迫る憤泥共。
「ボードの謎を解き明かし、ざくろが目にする迄は、歪虚の好きにはさせやしない!」
勇ましく最前線に躍り出たのは時音 ざくろ(ka1250)だった。
マーキス・ソングで敵の能力を低下させつつ、機導術と堅い防御を活かし戦線を支えている。
城の建物配置や瓦礫の隙間などを有効に使って守りやすくしつつ――
「そっちが炎なら……全て凍てつけフリージングレイ!」
憤泥が吐いた炎に対し、ざくろは青白く輝く冷凍光線を放つ。
ダメージを与えた所に兵士達の弓矢が撃たれ、敵を倒し続けるのであった。
「溶岩にファイアスローワーって多分効かないですよね?」
「俺もそう思いますね。憤怒火口から出現しただけあって、炎の属性は持っていると」
穂積 智里(ka6819)の疑問に鳳城 錬介(ka6053)が答えた。
憤泥は元々、憤怒火口が噴火した際に放出されたものだ。
だとすれば、炎の属性が通じにくいと考えるのは妥当なところだろう。
「面攻撃できるので効きそうなら使いたかったですが……これで行きます」
智里は味方の兵士達を巻き込まないように機導術を放つ。
無数に迫る敵から城を守るには、攻撃を繰り返すしかない。
当然の事ながら、敵も黙っている訳ではないので、攻撃を受ける事にもなる。
「皆さん、無理はしないで下さいね」
プルガトリオで敵を足止めしつつ、魔法で兵士達を支援する錬介。
重装の甲冑に身を包み、聖盾剣を構えて壁の如く立つ。
「これなら、持ち堪えられるぞ!」
機杖を構えて八島 陽(ka1442)はマテリアルを集中させる。
スキルアシストとチャージャーを合わせて放つアイシクルコフィンの強度は高い。
防衛戦では漸減も有効な戦術だ。敵に有効な遠距離攻撃が無ければ、前に進む事も引く事も出来ずに、ジワジワと弱らせられる。
「隙間から入ってくるなら、そこがねらい目だ」
そう兵士達に呼び掛けた。物理的に狭路に存在できる敵の数は限られる。
非覚醒者だとしても、多数の兵士達が幾本も矢を放てば、敵はただでは済まないだろう。
戦いは徐々に防衛側に有利となってきた。
半壊している門から雪崩れ込んでくる憤泥を迎撃する区域が一番の激戦地となっていた。
敵の攻撃を受けて倒れる侍をアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は下がらせた。
「……ふむ、多いな」
如何に優れた戦士であっても無敵ではない。アルトも急所に入った傷を受けていた。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)が敵に向かって叫ぶ。
「番犬舐めないでくださいですよ!」
戦意剥き出しな様子は番犬というか猟犬だ。
ハンター達の中でも特に二人の活躍は目立つ所だった。
「死なない限りはどんな大怪我でも治してあげるからね!」
そう宣言した天竜寺 詩(ka0396)が魔法で仲間を支援する。
回復だけではなく、同士討ちを引き起こす攻撃魔法も使う。
「これだけ戦力が充実していると……なんとかなりそうですね」
タチバナ――立花院 紫草(kz0126)――が微笑を浮かべて振り返った。
紫草の背を守り続けていたカイ(ka3770)は、視線に気が付いて頷いた。
「後ろは任せてくれていいぞ」
もっとも、紫草は守る必要がないほどの強さだったが。
大事なのは背後を託せる仲間がいるという意識だろう。背後だけではない。
この城四方をハンター達が守っているからこそ、戦いに集中できるというものだ。
「纏めて倒した方が、効率がいいか」
カイの提案にアルトが愛刀を最上段に構える。
守勢に回っていた状況が好転してきたのだ。逆襲するなら今がチャンスだ。
「タチバナさんより多く倒したらボーナスとか出たりしないか? そっちは指揮もあるだろうけど。それはハンデってことで」
「いいですよ。私に勝てたのなら……ですが。アルマもやりますよね」
余裕の表情を浮かべた紫草の台詞にアルマが脊髄反射で手を挙げる。
広範囲を薙ぎ払える術を持っている彼はアルトと紫草よりか有利かもしれない。
「わふっ! 勿論です!」
憤怒側にとって運が無かった事は、この3人がそれぞれ可笑しい程の強者だったという事だろう。
誰が一番になるか想像もできないし、誰も負けるつもりもなさそうな雰囲気の中、詩が3人に回復魔法を掛ける。
「でも、無茶しない程度、だからね」
詩の言葉に3人は頷くと、それぞれ駆け出したのであった。
●狐卯猾撃退
圧倒的な範囲攻撃と支援能力を低下させる負のマテリアル。
元の姿といっていいか分からないが、巨大な狐のような姿となった狐卯猾は恐るべき力を発揮していた。
「守りに徹したらそのまま押される。ここは攻めないと」
向かって来た炎を打ち払うレイオス。
憤怒という眷属を体現しているかのように、怒りで攻撃力が増しているような気もする。
もし、狐卯猾が元憤怒王蓬生と同じではなくとも、同様の力量を持っているとしたら……この場にいる十数人のハンターだけで戦い切らなければならない。
「攻撃の起点となるものが必要だろう」
残ったマテリアルを絞り出しながら、最後の浄化結界を張る歩夢。
ハンター達の攻撃は届いているが、巨体にも関わらず、避けたり肉質が硬そうな所で受け止められたりと決定打に至らないからだ。
「回復魔法にはまだゆとりがあるの。攻撃するなら今のうちなの!」
ディーナの台詞に狐卯猾がピクっと耳を動かした。
直接的な攻撃はアウレールが庇っているので、届かない……ならば――。
「この一帯の怒り、全て注ぎ込んであげるわ!」
負のマテリアルが渦を巻いてディーナに集い始める。
咄嗟にアウレールが前面に立って盾を掲げたが、すぐに分かった。
「これは直接的な攻撃じゃない。精神汚染だ!」
「手遅れよ」
残酷に言い放った狐卯猾。
だが、渦巻く黒い渦の中にマテリアルが色濃く光った。光っているのは星神器――ウコンバサラ――だった。
「……天より貫く巨大なる石斧。私に破壊と再生の力を授けたえ、なの!」
轟音と共に稲妻が渦を吹き飛ばし、電撃模様のオーラがディーナを包み込んだ。
星神器の持つ力で雷を纏い、不屈の肉体を得るのだ。
絶対的な自信を持って精神汚染を狙った狐卯猾の奥の手が失敗した。
チャンス到来と感じたまよいが精神を集中させる。それを見たアウレールとフィロが顔を見合わせて頷く。
「今だ。攻撃を合わせるぞ」
「分かりました。皆様の道を開きます」
それまで純白の格闘武器がフィロのマテリアルに反応し、金属色を放った。
無敗の剣聖の力、極限の武の力を解放し、拳から全身に眩いマテリアルのオーラが包む。それは、星神器――角力――の力だ。
「徹し白虎神拳!」
一気に間合いを詰めて放った強力無比な一撃いや、二撃。
星神器の力を借りて打った白虎神拳だったが、行動不能までは与えられなかった。
しかし、無駄打ちではない。問題は、その強度なだけで、より強い強度であれば相手は防ぐ手段がないと分かったからだ。
「……怒涛なる水の流れ、揺ぎ無き大地の力、我らの敵を打ち砕け! アブソリュートゼロぉ!」
高めたマテリアルと共にまよいが必殺の魔法を唱える。
ただの攻撃魔法ではない。高位の魔術師が扱える魔法の中でも、まよいが鍛錬に鍛錬を重ねた魔法だ。
「逃がしません。絶対に当たらせます!」
タイミングを合わすようにユウが鞭を振るって牽制する。
ユウだけではない。敵の回避スペースを潰す為、虚を突くように七葵が飛び出すと、抜刀する。
鶺鴒の構えで機会を狙っていたのだ。
「そこだ!」
放たれたのは空間を切り裂く斬撃。
狐卯猾が巨大化したおかげで仲間には当たらない。絶妙のタイミングだった。
成すすべもなく狐卯猾は魔法と斬撃、その両方の直撃を受けた。
「今こそ!」
「ご注目じゃ~ん」
ビシっとマテリアルが真白とヴォーイに集中した。
今一度のアブソリュート・ポーズ。即席ではあるが二人で一つのポーズは、眩いばかりの光を放ち――。
「狙い通り、技を封じた」
「後はタコ殴りじゃん」
炎を出現させた狐卯猾だったが、糸が解けるように掻き消えた。
「攻撃の手は緩めません」
「そろそろお帰りいただけますか、狐卯猾様」
ユウとフィロが攻撃を放つとすぐに散開。
二人が抜けた所で、確りと獲物を見つめながら、ハンスが突貫する。
「待っていましたよ、この一撃を与えるチャンスが来る事を」
残ったマテリアルを絞り出した技。
苦し紛れに狐卯猾は前脚を強引に振るったが、それはアウレールの堅い守りに阻まれる。
「今頃になって悪あがきはみっともないぞ」
勿論、受け止めたアウレールもただでは済まない。
盾を持つ腕が折れるのではないかと思う程の衝撃だ。
「一撃で死なない限り、大丈夫なの」
すぐさま、ディーナの回復魔法が飛ぶ。
不利と悟ったのか下がろうとした狐卯猾の周囲に符が舞って結界を構築した。
「五方の理を持って、千里を束ね、東よ、西よ、南よ、北よ、ここに光と成れ! 五色光符陣!」
歩夢が放った符術だ。続けて、重力波を伴った紫色の光が狐卯猾を中心に広がる。
その魔法は接近戦を挑むハンター達も巻き込んだものだったが、あっという間に中央の狐卯猾に凝縮された。
「……全てを無に帰せ、ブラックホールカノン!」
先程、大掛かりな魔法を使った直後というのに、まよいが再び攻撃魔法を行使する。
本来は敵味方関係なく広範囲に影響を及ぼすものであるが、集束魔法により狐卯猾だけに効果が発揮されるのだ。
さしもの狐卯猾もハンター達の連続攻撃の前に、その巨体を大地に落とした。
こうなれば、あとは攻撃、そしてその攻撃が当たるように援護、反撃には回復という流れを繰り返すだけだ。
「あれは……御登箭家からの援軍が到着したのかな」
幾度もなく精霊刀で狐卯猾を斬り、ワイヤーウィップで仲間の攻撃を支援していたユリアンが、ふと、風が運ぶ音を聴き、その方角に視線を向けた。
長く続く土煙が迫ってくる。
それだけでも、かなりの数の軍勢が援軍として駆けつけてくるのが分かった。
ハンター達の推理を紫草の側近が御登箭家に告げた結果、これほどの軍勢が向かってくるという事は、推理した内容が適切だったのか、あるいは、御登箭家の中で“今、動いた方が良い”という決断に至ったのだろう。
そうでなければ、最悪、御家取り潰しだってあり得る事の程をしでかしているのだから。
「……どうやらここまでのようね」
軍勢を確認して弱々しく狐卯猾が言葉を発するとググっと顔を挙げる。
ユリアンは油断なく刀先を狐卯猾へと向けた。
「今まで高みの見物をしてたのに、此処に来て立ちはだかるのは何か意味が?」
「秘宝を滅する事も将軍を抹殺する事も出来なかったけど、まぁ、いいわ」
幕府と公家の仲違いを決定的にさせるには“本物の秘宝”が邪魔だった。
場所を特定するのに時間が掛かったが、そのついでに将軍を抹殺するには実に良い機会だった。
武に秀でる将軍を倒せなくとも、大怪我を負わす事ができれば“次の作戦”が多少、有利に運ぶと考えていたのだが、あれだけの援軍が憤泥の背後を突けば、一気に瓦解してしまうだろう。
細かい指示を出せる幹部級が他にいれば違う結果になっていただろうが、それが出来た堕落者の憤怒は、随分前にハンター達に討たれている。
「ここは決着の場では無いよね?」
「もうすでに、決着はついているわよ。フフフ……アハハハハ!」
ユリアンの台詞に狂ったように笑う狐卯猾。
そこにレイオスがトドメの斬撃を見舞う。
「自殺願望が強い女狐だな」
「さぁ、どうかしら。それじゃ、人間ども」
不気味な笑みを浮かべて風船の空気が抜けたような音と共にボロボロと崩れ落ちる狐卯猾。
ハンター達は分かっていた。それは狐卯猾を倒した事になっていないと。
再出現した所を狙っていたハンターもいたが、狐卯猾はそれよりも遠くに向かって消えていってしまうのであった。
●誓いの記し
御登箭家からの援軍は、領内の戦力ほぼ全てと言っても過言ではない程だった。
それに狐卯猾と戦っていたハンター達も加わり、安武城を攻め寄せていた憤怒勢力を粉砕する。
「残党処理は援軍に任せて、私達は秘宝の確保でしょうか?」
「全員で案内されているという事は立ち会いという意味もあるかもな」
智里とカイの会話の通り、紫草と共に戦っていた先発組のハンター達は安武城の中心部に向かっていた。
国家権力からは離れているハンターズソサエティ所属のハンターが複数人で立ち合うという事の意味は、政治的に客観的な事実がある事を示すものと見ている武家もいるという事だ。
城の中を案内していた黄土色の羽織を身に着けた老侍が足を止めた。
「……この先に、秘宝を保管しております」
「なぜ、ここに秘宝があるのですか?」
錬介の疑問に老侍は首を横に振る。
「詳しい事は何も……ただ、前当主から、万が一の時はと言われておりました」
二重三重の重々しい扉を開くと、広い部屋の中心に“秘宝”エトファリカ・ボードが置かれていた。
形や大きさは嘉義城の地下施設で見つかった物と同じなようだ。
「……五芒星が描かれていないか」
「地図の内容も違うようだなァ」
ヴァイスとシガレットが秘宝に描かれた内容を見て、そう言った。
嘉義城の地下施設で見つかったのは五芒星術式と上位武家による諸藩統一が記されていたのだ。
「これが本物の秘宝なのかな?」
首を傾げる詩の台詞に全員の視線が紫草に集まった。
“秘宝”へと静かに近づいた紫草は、ジッと秘宝を見つめる。
「本物――ですね。私の記憶が間違っていなければ、ですが」
「……という事は、紫草さんは秘宝の事を知っていたんですね!」
ガシっと将軍の胴体にしがみつくアルマ。
偽物か本物か。それを分かるには本物を知っている事が必要だ。
以前に紫草と会話した時の内容を思い出しながらアルトがフっと口元を緩める。
「なるほど。実は秘宝の事は最初から知っていた……だが、記憶に確信が無かったという事か。タチバナさんでもそういう事があるんだね」
「私も人の子ですから、完全無欠ではありませんよ」
微笑を浮かべつつ、紫草は秘宝の枠に慎重に触れる。
何かを確かめているようだ。その様子を見守りつつ、ざくろが疑問を呟いた。
「これが本物だとして、なんで、ここにあるんだろう?」
「経緯とその動機……がありそうですね」
秘宝に描かれた東方地図をジッと見つめる智里が“謎”を整理した。
「これは龍尾城の宝物庫から運ばれたもので間違いはないのですね?」
「そのように聞いています」
錬介の問いに老侍は深々と頭を下げながら肯定する。
すると、紛失の原因は、御登箭家が持ち出したという事なのだろう。
「持ち出す程の理由だが……確か、以前見つかったのは……」
カズマは秘宝に描かれた東方地図を観察する。彼が探した武家はその当時から大きく書かれていた。
東方地図には細かい領地まで書いてあり、小さすぎて番号だけを振っているのもある。
アルマがまだしがみつきながらパッと表情を変える。
「分かりました! 以前見つかった秘宝は『上位武家による共同統治』。それなら、これは――」
「東方に本来あるべき姿を描いたもの……という事です」
台詞を続けて言ったのは、額縁を調べている紫草だった。
「本来あるべき……それは勢力を失う前という事、ですか」
感心しながらニャンゴは東方地図をよく見る。
今は憤怒勢力になっている所にも細かく領地と何かの記号が記してあった。
「領地を証明するものっすかね」
「そういうものは台帳に記してありそうだけど……」
神楽と詩の会話に、調べものが終わった紫草が振り返った。
額縁の一部を持つ手を慎重に引っ張ると、二重になっていた部分が引き出てきた。
「勿論、登記されています。その上で“秘宝”である理由が存在するのでしょう」
引き出てきたものをハンター達は見た。
「これは……血判かァ。すげぇ数だぜェ」
「登記が書き換わっていない証明も兼ねているって事か」
シガレットとカイの言葉にハンター達は頷いた。
調べてみないと分からないが……全ての武家の名が記してあるのではないかという程、ビッシリと書かれている。
それは“秘宝”に描かれている領地と繋がっているようだ。誰がどこの領地か分かるようになっている。
「国難の後に役に立つというのは、戦後に領地回復する際に役に立つという事か」
血判された武家名を一つひとつ確認しながらアルトが言った。
登記を遡るのは大変だが、登記と紐づけされているこれなら、一目瞭然だ。
憤怒によって奪われた後、強い汚染で地形が変わっている場所もあるかもしれない。秘宝に記されている内容は登記より分かり易いだろう。
「となると、憤怒撃退後に領地拡大を目論んでいたら、秘宝の存在は邪魔になるっすよね」
「憤怒との戦いが終わると見て、御登箭家は秘宝を持ち出した。御登箭領内で作製された贋作は、龍尾城の宝物庫に戻る前に何者かに奪われた。そして、それが嘉義城で見つかった」
神楽と八島の推測に紫草は深く頷く。
「恐らく、それが真相でしょう。私もそのように考えています」
贋作が宝物庫に戻れば、紛失した事も分からなかったはずだ。
そもそも、宝の数が合っていれば、事件が明るみになる事は無かった。別の贋作を用意すればいいだけだろうが、出来なかったのは、何か致命的な事が『作る側』であったのだろう。
また、もう一つ疑問があるとすれば、どうして贋作が憤怒の手に渡ったのか……という事だ。
もしかして、偶然にも憤怒が手にしたのかもしれない。
完全な真相は調査や推測した情報の中からは得られないだろうが……凶術――五芒星術式――は憤怒が用いた術である事を考えれば、贋作に後から付け加えたものだろう。
それなら、偽秘宝が負のマテリアルで汚染されていた理由にもなる。
「……この血判から皆さんも分かると思いますが、この“秘宝”は全ての武家の誓いが込められているのではないでしょうか」
「“秘宝”に特別な力は無い……けれど、人々の結束を示す、大事な物だったんだ」
ざくろが神霊樹で過去にダイブした時の事を思い出しながら、しみじみと言った。
これが制作された当時は憤怒勢力によって、次々と人々の勢力域が攻め立てられていた頃だろう。
戦力を集中させる為に手放さなければならなかった故郷もあったはずだ。
そう考えれば、人々の強い決意と結束が込められていたのに違いない。いつになるか分からなくとも、必ず憤怒との戦いに勝つという想いと共に。
「いわば“未来への誓いの記し”……東方子孫に残した『責任』か」
「憤怒との戦いを決して諦めないという覚悟ともいえるな」
そう言ったカズマとヴァイスも、集まったハンター達も秘宝を見つめる。
“秘宝”を作った人達は、血判した人達は、それを見守った人達は、“秘宝”にそれぞれの想いを残したのだろうか。
紫草は二重になっていた血判を“秘宝”に丁寧に戻すと、ニャンゴがサッと“秘宝”に布を掛けた。
これから龍尾城まで運び出すのだ。その途中で破損してしまったら意味がない。
「『紫草殿の指揮で難局を乗り切った』という風聞を広めなくてはなりません」
「そうですね。でも、ニャンゴさん。付け加えさせて下さい。私の名前の前に『ハンターの皆さんと』という言葉を」
ハンター達に、いつもの微笑ではなく、満面の笑みを浮かべた紫草であった。
ハンター達は安武城の防衛に成功。また、増援の邪魔に入った狐卯猾も退ける事が出来た。
また、安武城が無事だった為、保管されていた本物の“秘宝”エトファリカ・ボードを発見する事が出来たのであった。
おしまい
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 21人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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【後続組】相談卓 銀 真白(ka4128) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/01/16 23:23:50 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/15 00:00:09 |
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【相談】安武城防衛 カイ(ka3770) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/01/15 00:10:00 |
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【先行組】相談用 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/01/16 22:50:59 |
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【秘宝推測卓】 立花院 紫草(kz0126) 人間(クリムゾンウェスト)|34才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2019/01/17 02:50:31 |