ゲスト
(ka0000)
【王戦】虚無に向かうacademia再蠢
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2019/02/08 22:00
- 完成日
- 2019/02/16 17:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●王国歴1018年のいつか
「ドクター・レッドバック。
貴公はこんな所で死ぬべきではない」
そんな声を聞いた気がした。
――レッドバックは何処かで目覚めた。
目覚めた、という事実から自分が生きていることを確認。
次に、理由を推測する。
(……ハンターが仕留め損なっただけでは、ここに居る理由にならない。ここは建築物の中で、私はベッドに寝かされている。
何者かの手によって救助されたというところか。では、その何者かとは誰だ)
今のレッドバックに後ろ盾はない。
メフィストはとうに滅んだ。
どこの歪虚か。あるいは可能性は低いが人間か……。
(有り得ない。この環境は、歪虚でなくては用意できない)
ヘクス・シャルシェレットがベリアルを匿ったケースがあるが、周囲の状況からそれとは考えられない。
ここは、歪虚の領域だ。
レッドバックは考察にのめり込んだ。
それから何時間かして……。
レッドバックの前に姿を現したものがある。
幼ささえ感じさせるような少年の顔をしていたが、角と尾が歪虚であることを示していた。そして強気な眼差しと上品ではあるが傲岸不遜な態度を備えていた。
「イヴ様の手の者か?」
レッドバックはその歪虚が視界に入るなり、相手よりに先じて聞いた。
「……いかにも、そうだ」
歪虚は突如言い当てられ、戸惑いを隠しつつ、答えた。
「私の動向を観察していたのか。ハンターどもと戦い、敗れる可能性を見越していたな。私を助け、私を使うことでイヴ様のお役に立ち、自らの有能さを示そうという気だな」
「……目覚めるなり下らん推測は止めてもらおうか」
レッドバックは自らを助けたのが目の前の相手だと確信していたが、礼の一つも言わずに考えを述べた。
そして、全て考えを見抜かれ動揺しつつも、かろうじて威厳を保ちその歪虚は言い返した。
「私の名はアドナヴァ。察しの通り、イヴ様に仕えている。
ドクター・レッドバック、貴公はこれからイヴ様の役に立ってもらう……選択肢はない。全てのものはイヴ様のものだからだ」
「私とて傲慢のはしくれ、それには同意しよう。……ただし君の名声を上げるのに協力する気はないが」
「……推測を確信するのはよしてもらおうか?」
アドナヴァは未だ本格的に活動していないイヴの勢力に先行して、グラズヘイム王国での状勢を調査、記録、情報の共有を謀るため活動していた。
メフィストが直接契約した歪虚であるレッドバックは動向を見守るに値する存在であり、またみすみす死なせるには惜しいと彼は捉えていた――ミュールなどの実力者と張り合うための助けという期待も無くも無かったが。
●新たなる暗黒の学術的世界
何日かして、アドナヴァはレッドバックをイヴの本拠地に連れて行き、イヴと引き合わせた。
「素晴らしい……」
イヴの居城にある資材保管庫はレッドバックにとって極上の素材の宝庫であった。
レッドバックはイヴから、これらを好きに使ってよいと言われた――彼自身『持てる者』であるがゆえに。
「イヴ様の気前の良さに感謝するがいい」
アドナヴァは誇らしげに言う。彼はレッドバックとイヴの間の連絡役という新たな役職を与えられていた。
レッドバックは正式にイヴの配下となったのだ。イヴは指令は特に下さなかった。
ただ、大いに研究し、大いに試せ、とだけ言った。レッドバックの好きにしていいということである。
「言われずとも。これでさらなる力を求めることができる」
「忘れるな。貴公が作りあげた力もまたイヴ様のもの。貴公がそれを用いて奪ったものもイヴ様のもの。究極的には――」
アドナヴァは間を置いて、言った。
「全てのものはイヴ様のものだ」
●そして王国歴1019年の今
レッドバックはイヴ配下の歪虚達とともに、ハルトフォート近郊に侵攻するべく集結していた。レッドバックはこの戦場に、自らが強化を施した歪虚を投入した。
「我々は派手に暴れまわって敵の注意を惹く」
「それはいいが――」
アドナヴァは疑問を口にする。
「なぜ貴公や私まで戦場に?」
「知れた事。研究の結果は自ら見届けねばならん。そうして初めて問題点や改修点がわかるというもの」
「それがポリシーというなら口は出さないが」
レッドバックは研究室に籠もりきりではなく、必要であれば外に出る性格だった。
「ドクター! ドクターじゃねえか! 生きてたんだな!」
レッドバックのもとに、飛んできたコウモリ型の歪虚がいる。
「考察のもととなるのは観察だ。君も私と関わろうというのならそれくらいは知っておけ。一般に……」
「安定の無視かよちきしょう」
「……おいドクター。貴公の知り合いか?」
レッドバックが無視したので、アドナヴァが話を遮る形で聞いた。
「ん? ……こいつはパダギエだ。それがどうかしたのか」
「再会の驚きとか感動とかちょっとでもあんたに期待した俺がバカでした!」
「どういう性格なんだ……」
アドナヴァの言葉は、双方に向けられていた。
「ま、必要以上に見下したり馬鹿にしたりしない分付き合い易くはあるんだけどね。で、あんたは? 俺はドクターの助手・兼・護衛・兼・乗り物のパダギエだけど」
「私はアドナヴァ、イヴ様よりドクター・レッドバックとの間の連絡役を仰せつかっている」
「イヴ様だって?! どういうことよ!」
アドナヴァはこれまでの経緯をパダギエに話した。
「そうだったのか! 実は俺にも幾多の危険をくぐり抜ける壮大な冒険の日々を――」
「アドナヴァ、そろそろ作戦の時間だ。移動するぞ」
アドナヴァはパダギエに少し気の毒そうな視線を向けてから、レッドバックに頷いた。
「待って! 俺も行ってもいい?!」
「無論だ。働け」
「良かった! よし、そうと決まれば人間どもに一泡吹かせてやろうぜ! おい新入り、足引っ張んなよ!」
パダギエは得意気になって、アドナヴァに言う。
「……戦うのは我々じゃないぞ」
アドナヴァは、未知の状況に面食らいつつも、それだけは辛うじて言えた。
●冥き愉悦
イヴが保有する古代文明の機械兵器を、レッドバックは生身の歪虚と一体化させた。
キャタピラーで戦場を走破し、戦闘時には人型形態を取って戦闘を行うこれは、『ヴァリオラス』と名づけられた。この名はレッドバックと同じく毒蜘蛛を由来とする。
かつて歪虚にマテリアルを含有させすぎると制御不能になり、やがて自壊するという事態が発生したが、これは機械の併用により、許容量を超えてマテリアルを含有させたに匹敵する出力を可能にするという試みだった。言わば外付けの増幅器である。
そして機械化した武装だけでなく、機械によって歪虚自身の力も増幅されていた。
(さあ、人間達よ。どう戦う?)
レッドバックにとっては、改造から結果におけるまでが、知的遊戯であり生き甲斐であった。
ゆえに悦びをもって敵を迎えるのだ。
「ドクター・レッドバック。
貴公はこんな所で死ぬべきではない」
そんな声を聞いた気がした。
――レッドバックは何処かで目覚めた。
目覚めた、という事実から自分が生きていることを確認。
次に、理由を推測する。
(……ハンターが仕留め損なっただけでは、ここに居る理由にならない。ここは建築物の中で、私はベッドに寝かされている。
何者かの手によって救助されたというところか。では、その何者かとは誰だ)
今のレッドバックに後ろ盾はない。
メフィストはとうに滅んだ。
どこの歪虚か。あるいは可能性は低いが人間か……。
(有り得ない。この環境は、歪虚でなくては用意できない)
ヘクス・シャルシェレットがベリアルを匿ったケースがあるが、周囲の状況からそれとは考えられない。
ここは、歪虚の領域だ。
レッドバックは考察にのめり込んだ。
それから何時間かして……。
レッドバックの前に姿を現したものがある。
幼ささえ感じさせるような少年の顔をしていたが、角と尾が歪虚であることを示していた。そして強気な眼差しと上品ではあるが傲岸不遜な態度を備えていた。
「イヴ様の手の者か?」
レッドバックはその歪虚が視界に入るなり、相手よりに先じて聞いた。
「……いかにも、そうだ」
歪虚は突如言い当てられ、戸惑いを隠しつつ、答えた。
「私の動向を観察していたのか。ハンターどもと戦い、敗れる可能性を見越していたな。私を助け、私を使うことでイヴ様のお役に立ち、自らの有能さを示そうという気だな」
「……目覚めるなり下らん推測は止めてもらおうか」
レッドバックは自らを助けたのが目の前の相手だと確信していたが、礼の一つも言わずに考えを述べた。
そして、全て考えを見抜かれ動揺しつつも、かろうじて威厳を保ちその歪虚は言い返した。
「私の名はアドナヴァ。察しの通り、イヴ様に仕えている。
ドクター・レッドバック、貴公はこれからイヴ様の役に立ってもらう……選択肢はない。全てのものはイヴ様のものだからだ」
「私とて傲慢のはしくれ、それには同意しよう。……ただし君の名声を上げるのに協力する気はないが」
「……推測を確信するのはよしてもらおうか?」
アドナヴァは未だ本格的に活動していないイヴの勢力に先行して、グラズヘイム王国での状勢を調査、記録、情報の共有を謀るため活動していた。
メフィストが直接契約した歪虚であるレッドバックは動向を見守るに値する存在であり、またみすみす死なせるには惜しいと彼は捉えていた――ミュールなどの実力者と張り合うための助けという期待も無くも無かったが。
●新たなる暗黒の学術的世界
何日かして、アドナヴァはレッドバックをイヴの本拠地に連れて行き、イヴと引き合わせた。
「素晴らしい……」
イヴの居城にある資材保管庫はレッドバックにとって極上の素材の宝庫であった。
レッドバックはイヴから、これらを好きに使ってよいと言われた――彼自身『持てる者』であるがゆえに。
「イヴ様の気前の良さに感謝するがいい」
アドナヴァは誇らしげに言う。彼はレッドバックとイヴの間の連絡役という新たな役職を与えられていた。
レッドバックは正式にイヴの配下となったのだ。イヴは指令は特に下さなかった。
ただ、大いに研究し、大いに試せ、とだけ言った。レッドバックの好きにしていいということである。
「言われずとも。これでさらなる力を求めることができる」
「忘れるな。貴公が作りあげた力もまたイヴ様のもの。貴公がそれを用いて奪ったものもイヴ様のもの。究極的には――」
アドナヴァは間を置いて、言った。
「全てのものはイヴ様のものだ」
●そして王国歴1019年の今
レッドバックはイヴ配下の歪虚達とともに、ハルトフォート近郊に侵攻するべく集結していた。レッドバックはこの戦場に、自らが強化を施した歪虚を投入した。
「我々は派手に暴れまわって敵の注意を惹く」
「それはいいが――」
アドナヴァは疑問を口にする。
「なぜ貴公や私まで戦場に?」
「知れた事。研究の結果は自ら見届けねばならん。そうして初めて問題点や改修点がわかるというもの」
「それがポリシーというなら口は出さないが」
レッドバックは研究室に籠もりきりではなく、必要であれば外に出る性格だった。
「ドクター! ドクターじゃねえか! 生きてたんだな!」
レッドバックのもとに、飛んできたコウモリ型の歪虚がいる。
「考察のもととなるのは観察だ。君も私と関わろうというのならそれくらいは知っておけ。一般に……」
「安定の無視かよちきしょう」
「……おいドクター。貴公の知り合いか?」
レッドバックが無視したので、アドナヴァが話を遮る形で聞いた。
「ん? ……こいつはパダギエだ。それがどうかしたのか」
「再会の驚きとか感動とかちょっとでもあんたに期待した俺がバカでした!」
「どういう性格なんだ……」
アドナヴァの言葉は、双方に向けられていた。
「ま、必要以上に見下したり馬鹿にしたりしない分付き合い易くはあるんだけどね。で、あんたは? 俺はドクターの助手・兼・護衛・兼・乗り物のパダギエだけど」
「私はアドナヴァ、イヴ様よりドクター・レッドバックとの間の連絡役を仰せつかっている」
「イヴ様だって?! どういうことよ!」
アドナヴァはこれまでの経緯をパダギエに話した。
「そうだったのか! 実は俺にも幾多の危険をくぐり抜ける壮大な冒険の日々を――」
「アドナヴァ、そろそろ作戦の時間だ。移動するぞ」
アドナヴァはパダギエに少し気の毒そうな視線を向けてから、レッドバックに頷いた。
「待って! 俺も行ってもいい?!」
「無論だ。働け」
「良かった! よし、そうと決まれば人間どもに一泡吹かせてやろうぜ! おい新入り、足引っ張んなよ!」
パダギエは得意気になって、アドナヴァに言う。
「……戦うのは我々じゃないぞ」
アドナヴァは、未知の状況に面食らいつつも、それだけは辛うじて言えた。
●冥き愉悦
イヴが保有する古代文明の機械兵器を、レッドバックは生身の歪虚と一体化させた。
キャタピラーで戦場を走破し、戦闘時には人型形態を取って戦闘を行うこれは、『ヴァリオラス』と名づけられた。この名はレッドバックと同じく毒蜘蛛を由来とする。
かつて歪虚にマテリアルを含有させすぎると制御不能になり、やがて自壊するという事態が発生したが、これは機械の併用により、許容量を超えてマテリアルを含有させたに匹敵する出力を可能にするという試みだった。言わば外付けの増幅器である。
そして機械化した武装だけでなく、機械によって歪虚自身の力も増幅されていた。
(さあ、人間達よ。どう戦う?)
レッドバックにとっては、改造から結果におけるまでが、知的遊戯であり生き甲斐であった。
ゆえに悦びをもって敵を迎えるのだ。
リプレイ本文
●新たな敵の出現
ハルトフォート付近に出現した歪虚の軍勢……それを迎撃するべくハンター達は出撃した。
特別、精強というわけでもなく、始めは何事もなく勝利を収められるかと思われたが……
突如、先頭で歪虚をドリルランスで貫いて倒していた仁川 リア(ka3483)が搭乗するスピニオンOver-Zが、強い衝撃を受けて大きくよろめいた。
「くっ……! 損傷は……肩パーツを貫通?!」
攻撃を正面から受け止め殴り返すのがコンセプトの機体の装甲である。
リアはすぐさま視界を巡らす。
近くにはそれらしい敵影は確認できない。周囲の敵のはるか後方に、砲塔のようなものを備えた敵が確認できた。
「皆、気を付けて! 今までのと違う奴がいる」
スピニオンの装甲を貫いたというのもあったが、直感で感じていた。
「後方?! なら、あたしが行くよ!
おいで! オトート!」
セレス・フュラー(ka6276)はすぐさま目標を確認し対応に行く。騎乗するのは魔導ママチャリ『銀嶺』、瞬く間に彼女は風になった。それに続くのはオトートソルジャー――誤字に非ず。兄弟感覚かと思われる相棒とともに敵に向かう。
スカートにも関わらず立ちこぎで銀嶺を走らせる(しかし、めくれあがる気配はまるでない)セレスに反応したのか、その敵は後退を始める。
「このあたしが追いつけない?!」
通常の魔導バイクの1.5倍の速さを誇る危険なマシーンをもってして、距離が縮まらない。
味方から離れるのは危険と感じ、セレスが一旦戻ろうとした時、突如としてその身体が引き戻された。
すぐさま強烈な旋風が通り過ぎていくのを感じる。
砲弾だ。
「助かったよ、ありがと」
オトートソルジャーが相棒の危険を察知し、セレスを避難させたのだった。
「しかし、あれは厄介だね」
「奴の動きを見たか? 只事ではない。すぐさま雑魚を片付けて対応に当たるのじゃ!」
「了解しましたっ!」
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)の判断。あれこそが『本命』に違いない……それに異論はなく、ミコト=S=レグルス(ka3953)も魔導型デュミナスのコクピットから返答した。ミコト機は斧で周囲の歪虚を凪払うと、残りの敵へと向かった。
「冒険に危険はつきものさ! そして、それを乗り越えてこその……冒険家だよ!」
時音 ざくろ(ka1250)は気持ちを昂揚させ、相対している歪虚を斬り伏せる。そして、新手の敵へと向かった。
「行くよ! X桜姫! まずはあいつに追いつくんだ!」
駆るバイクの名はナグルファル。相棒とするオートソルジャーとともに敵へと向かう。
「聞いたかレグルス。強敵のようだ」
一方、鞍馬 真(ka5819)は冷静な口調で、相棒とするイェジドに語りかける。
レグルスと呼ばれたイェジドは主の気持ちがそのまま伝わっているかのように一声鳴いた。
「行かなくては。あいつを倒すんだ」
己の戦場での責務を果たすため……
今日も一等星は駆ける。
●暗黒科学技術評価試験
少し離れた場所から、戦闘を見守っている一団がいる。皆、双眼鏡を覗きこんでいた。
「へえ……! すげえな、あのチャリを引き離したぜ!」
パダギエはセレスと歪虚……機械化歪虚兵士ヴァリオラスを見比べて言った。実は追いかけられたことがある。
「うむ。想定通りだ。人間どもの移動速度は相当に速くなっているが……我々が決して追いつけないものではない」
レッドバックは双眼鏡を離さずに言った。
「イヴ様の秘蔵の品々なのだ。人間ごときに遅れをとるはずがない」
アドナヴァはそう言ってニヤリと笑う。
「……いいや」
陣営を同じくするレッドバックだが、アドナヴァの言葉を打ち消した。
「この程度の問題、たやすく乗り越える。人間はそういうものだ。
場所を変えるぞ。あいつらに挨拶といこう」
レッドバックの言葉に戸惑いを覚える同行者二人。レッドバックは説明もせずハンター達の前へと出て行く。
●研究者の矜持
「新手か?!」
最初にそれを発見したのはざくろだった。その言葉に応じて他の面々も姿を見つける。
「……やっぱりそうだったか。王国でこんなデカ物作れる歪虚なんて一人ぐらいしかいやしない。
そうだろう、レッドバック」
「いかにも」
相手を確かめるよりも早く、投げかけられたリアの言葉は、向けられた当の本人によって肯定された。
レッドバックは一行の前に姿を表したのだ。
(何でわざわざ姿を晒すのだ?!)
(さあな。ドクターの考えることはさっぱりわかんねえよ)
そして、その後ろで小声で言葉を交わす同行者二人。
「あー! やっぱり生きてたしパダギエと合流してるしなんか助手が増えてる!」
セレスが指を指して叫んだ。セレスもまた、リアと同じく何度も戦場でレッドバックと相対した相手だ。
「助手ではない。我が名はアドナヴァ!
イヴ様に仕える者だ!」
アドナヴァが真っ先に反論した。
「イヴじゃと……?」
その言葉にヴィルマが反応を示す。
「では、此度の侵攻はイヴの意志によるものなのか」
「全てのものはイヴ様のものだ! ゆえに、この地を我らが支配するも必然!」
アドナヴァは最初姿を現すことを渋ってはいたが、もう見つかってしまった以上、自らの主張を示すことにためらいは無かった。
「やいパダギエ! 何『ドクターならバドニクスと出撃してから帰ってきてない』とか言ってたくせにシレッと合流してんのさ!」
セレスは最初の間違いなどお構いなしにパダギエに問いただす。
「いつの話してやがる! ホントだよありゃあ! あの時点ではな!
だがもう合流しちまったもんね。これからは俺達の時代だぜ!」
パダギエは飛膜のついた長い腕と脚を伸ばして、ポーズをつけつつ言った。
「さて……ではテストを開始するとしよう」
「テストっ?!」
ハンターになる直前まで学生だったミコトが、反射的にレッドバックの言葉に反応する。
「我が『ヴァリオラス』が君達に対し、どれだけの成果をあげるのか……私は後ろで見物させてもらうとしよう」
それだけ言ってレッドバックは背を向け、離れた。パダギエとアドナヴァも後に続く。
「言いたいことだけ言って帰った……?」
真は不思議そうにレッドバック達が離れていくのを見る。
この間、歪虚からの攻撃は一切無かった。パダギエとアドナヴァはハンター達を時々振り返っていたが。
「レッドバックはそういう奴なんだよね。あたし達を倒すこと自体が目的じゃないみたいな感じなんだ」
セレスは客観的な感想を述べた。
「うん。『敵』というよりは、実験に協力してくれる相手という意味で、礼を尽くしているかのようにすら見える」
リアが引き継いで言う。彼は明確にレッドバックを『宿敵』と捉えていた。だからこそ感じていた。相手は敵という立場でいながら、個人としては敵意を向けてきていないと。
だから、挨拶もする。実験の協力者として。
「敵意も悪気もなくとも、高見の見物はむかっ腹が立つわ。だが、まあよい。そなたの研究成果に勝てる自信はあるからのう」
ヴィルマは、レッドバックに聞こえるように言ってやった。
「そうでなくては困る」
そしてレッドバックははっきりと聞いていた。背中を向けたまま返答とも言えぬ独り言を口にする。
「私が負けなくては成長の機会がないからな」
「勝つことを目標としていないのか、貴公は」
それを聞いたアドナヴァは問うてやった。返答はこうだった。
「勝利の美酒は君が味わえばいい。私が欲しいのはさらなる知識と力だ」
●戦闘再開
「見られながら戦うのは落ち着かないなあ……」
真はそう感じた。
だが、やることに変わりはない。
「逃げるのならより早いスピードで追えばいい。行くよ、レグルス」
「皆で包囲して追い詰めよう!」
「心得た!」
ざくろの呼びかけにヴィルマが応じ、一行は目標へと向かった。
ヴァリオラスは、今度は逃げなかった。
身体を構成するパーツが場所を変え、そのフォルムを大きく変える。──人型へと。
「変型した?!」
先頭の真がそれを確認するや否や、変型した歪虚の正面で光の三角形が形成された。
とっさに回避行動をとるハンター達。三方向に伸びた光線が真、ざくろ、ヴィルマを貫かんとする。
真を乗せて走るレグルスは横に飛びつつも体の表面を焼かれ、煙をあげる。ざくろのバイクとヴィルマのヴェルターも光に焼かれる。
「好きにはさせないよ!」
別の方向から、セレスが自転車で迫る。
だが、歪虚はすぐに変形し、戦車のようなフォルムに戻った。キャタピラーで走破し、猛スピードで迫るセレスをも突き放す。
「周り込むんだ!」
リアの声。アクティブスラスターをもってしてもスピニオンの速度では到底追いつけない。代わりにミサイルを進行方向に向けて撃つ。
驚くべき機動性で、敵はそれらを全て避けた。
だが、移動の妨害には繋がった。多方面からハンター達が迫る。それでも囲まれる度に囲みを抜けて距離を取る。
「おおー速え! あれなら囲まれてボコられるってことはねえな!」
「遠距離であれば攻撃手段が限られる。そうすることで数の有利を打ち消すのが狙いだ」
遠くからパダギエとレッドバックが届ける実況と解説。
いまだ追いつかれないのを見て強気になっていた。
だが、それは長くは続かなかった。
「レグルス」
真が呼びかけると、レグルスは高く鳴いた。
そして、大地を駆ける。
その躍動は力強く、
速い。
「フェンリルライズか」
「知っているのかドクター!」
「ああ……幻獣の力を解放する技法だ。あの男、ああまでイェジドを使いこなすか」
レッドバック一行はその様に驚愕した。
「獣には獣以上のことはできぬと思っていたが、しかし……」
獣ならば、獲物を追いかけて、狩ることが出来る。
「追いついた」
真は短く言う。それで十分だった。
跳躍するレグルス。一瞬で高みへ。
そして落下。走行するヴァリオラスを真上から押さえつける。
マウントロックの体勢。車両型の相手を転倒させることは叶わなかったが、それでも移動を阻害することは、出来た。
「だが、追いつかれたことが敗北を意味するのでは、無い!」
レッドバックの言葉に応えるように、押さえつけられた状態でヴァリオラスは人型に変形する。
現れた無機質な顔面についた目が真とレグルスを見据える。
術が、発動した。
真とレグルスを紅蓮の炎が包む。
苦悶の表情を見せる両者。だが離れようとはしない。
「残念じゃが手遅れじゃ!」
ヴィルマの言葉。
グラビティフォールが発動し、ヴァリオラスを凄まじい重力が押し潰した。土煙をあげて地面にめり込んでいく。
真とレグルスにはかかっていない。集束魔が働いているのだ。
「これ以上の走行は許さぬよ!」
「そして変形も封じさせてもらうよ!」
セレスが機械パーツの間に挟まるよう武器を投擲する。
精密機械の欠点を狙った戦法だ。
さらには残りのハンター達が包囲するように周囲を固めてゆく。
「ヴェルター、ブロッキングじゃ!」
「X桜姫、相手の進路を塞いで!」
「オトートソルジャー、エリアキープだ!」
ヴィルマ、ざくろ、セレスがそれぞれの相棒に呼びかける。幻獣・機械の差こそあれ頼れる相棒達は期待に応えてみせる。
「おい、これでは集中攻撃を受けてしまうぞ!」
さすがに劣勢と感じたのかアドナヴァがレッドバックに呼びかけた。
「ふむ。では耐久性を観察しよう」
「おい!」
アドナヴァが聞きたい応えではなかったが、レッドバックは気にもせずに観察に戻った。
「ここから──」
真はヒーリングポーションをレグルスに与えると自らは飛び降り、地面を蹴ると同時に斬りかかった。
光の軌跡を描いて刃が閃く。
だが、それは歪虚の前に生じた光の壁のようなものに阻まれた。
「……一度で駄目ならば、二度」
真はすぐさま刃を戻す。反対側の手に握る剣の束から、光の刃が形成される。
間もなく、それは歪虚の体に食い込んだ。
さらに、そこから真の動作は加速した。
「そして、三度」
三度目の斬撃がオーラとなって打ち込まれた。
「あんなの有りなのかよ!?」
パダギエが驚愕した。
「アスラトゥーリだ。実際に見るのは初めてだが……不可能を可能にする技術というのはある程度のレベルでは確かに存在する。
そして……あのレベルの剣士であれば、剣心一如とソウルエッジも使われているとみていいだろう。
重い一撃が三連で来るが、マテリアルカーテンで防げるのは一度に一撃までだ」
「それはつまり──」
アドナヴァが思案顔で言った。
「あとは無防備ということか?」
「……」
「おい何とか言え、ドクター」
「間髪を入れず射撃を集中っ! 蜂の巣にしてやります!」
ミコト機の装備するガトリングガンが、真の後方から狙いを定めていた。華麗な剣の連撃が終わってすぐのことだった。紫電を帯びた弾丸が雨霰と歪虚に降り注いだ。
歪虚は反射的に反撃に応じ、デルタレイを撃つ。
三条の光線が、ミコト機の両脚、そしてガトリングガンを持つ腕を貫いた。
「くっ……! まだですっ!」
ミコト機は体勢を崩すも、背部ブースターに点火。そしてフライトシステムを機動。脚など飾りにすぎない。地上から浮いた状態で肉薄する。
そして、無事な方の腕で振り上げる魔斧モレク。そこに確かに存在する、祖霊の力。
「このっ……負けてられないんですよーっ!」
振り下ろす。ヴァリオラスはとっさに腕で庇った。凄まじい勢いの刃も腕を斬り落とすには至らないが、それでも腕部装甲を切り裂いた。
一瞬ミコトは見た。腕で庇われる一瞬前に、腹部に、妙に厚い装甲に覆われた機械があると……。
「お腹に大事そうなものを抱えてますっ!」
「了解した。では、それを狙いやすい状況を作るとしようか」
ミコトの発見はすぐに仲間にもたらされた。ヴィルマは返事を返し敵を見据える。
「――霧の魔女ヴィルマ・ネーベルの名の下に、凍てつかせ噴舞せよ、霧裂け氷乱の嵐!」
一瞬にしてヴァリオラスの周囲は白く染まる。それは全てのものを凍てつかせる極低温の世界。
エーイスクリスタル。
「これで変形は出来まい?」
動きが鈍くなるのは生者たらざる歪虚であろうと例外はない。
絶対なる霧の魔女の前には、ただ何者も凍りつくのみ。
されど、その力は敵にのみ及ぶ。
「輝け、雷虹剣!」
ヴィルマの術により極低温の世界となった歪虚の周辺を、セレスが駆け抜ける。収束魔が働いているため、冷気はセレスを害することはない。
その剣は虹色に閃く雷光。荒れ狂う稲光。
雷虹剣カラドボルグ。
「疾風迅雷! ご覧あれ!」
その担い手が腰まで届く髪を靡かせて舞うごとに、ヴァリオラスの傷は増えていく。
さらには周辺をヴェルター、オトートソルジャー、X桜姫が固め、ヴァリオラスに距離を取らせない。
「なんか見た目でも負けてないかドクター!」
「派手さが足りんと? そんなことはない」
パダギエの問いかけにレッドバックは、あくまで静かに答えた。
それに応じるように……
ヴァリオラスの周囲で爆発的に光が広がった。
さながら花火のようなマテリアルの光、プラズマクラッカー。
周囲を固めていた者達は爆発に巻き込まれる。
「攻められていようと『火力』は健在だ」
「おい、ドクター」
「ヴァリオラス止まってるぞ!」
「なに?」
「残念だったね!」
声をあげたのは時音 ざくろ。
ヴィルマから受け取ったポーションを一気飲みし、高らかに言う。
「範囲攻撃に巻き込まれたざくろの攻性防壁! 相手は動けなくなる! そして……
バディフォースだX桜姫!」
X桜姫は武器を構え、力強く頷く。
「今ざくろ達の絆は結ばれた! 行くよX桜姫!」
超重練成+解放錬成。ざくろの剣はマテリアルを解放し、刀身を巨大化した。同じタイミングでX桜姫の持つ槍から、巨大なマテリアルの刃が形成される。
両者は同時に地を蹴り、左右から斬りかからんとする──
「「魔剣解放、超超重斬・縦一文字斬り!!!」」
巨大な刃と、マテリアルの刃が、
ほぼ同じタイミングで、左右から襲いかかった。
ヴァリオラスは為す術もなく、斬撃の奔流に身を任せる。
「今オートソルジャーも喋らなかったか?!」
「そんな筈はない。幻聴だ」
信じられないようなものを見て慌てるパダギエ、否定するレッドバック。
確かに錯覚だったが、錯覚させるだけの何かがあった。
そんな二人に応えるかのように、こんな言葉が紡ぐものがある。
「鋼の身体にも魂は宿るのさ……」
仁川 リア。
スピニオンOver-Zは、ドリルランスの間合いにヴァリオラスを収める。
「ようやくここまで接近できた……
ここから先はドリルの時間だよ!」
ガゴォ! グワキィィィン!
重厚な金属音を立てて攻撃の動作へと移る。
逃れる術は、ない。
「超、必殺……!」
ギュウイイイイイイイン!
甲高い回転音をあげて回る、ランスの穂先の二つのドリル。
二股に分かれたドリルの刃は覚醒者のマテリアルを帯びてそれぞれ赤と青に発光し、二重回転の力はVOIDを粉砕する小宇宙を生み出す!
「オーバードリルスティンガーーーーーー!!!」
キュオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
接触したドリルはヴァリオラスの腹部を穿ち、内部へと入っていく!
そこはミコトが報告した場所──マテリアル制御装置がある場所だ。
ほどなくして回転するドリルが、反対側から突き出る。
途端、ヴァリオラスの全身は不自然に光り、肥大化した。
スピニオンはスラスターに点火し後ろに下がる。
ほどなくしておびただしい光がヴァリオラスから発され、それは先程のプラズマクラッカーの何倍もの規模で大爆発を起こした!
……そして。
機械化歪虚兵士ヴァリオラスは、塵一つ残さず爆散した。
●試験終了
「……ドクター」
「言ったはずだ。この程度の問題、人間は乗り越えていくと」
「それでは駄目ではないか!」
あまり悔しそうでないレッドバックを、アドナヴァは責める。
「これは試験。勝負ではない。
勝ち負けに拘るな」
「しかしドクター……!」
アドナヴァはそれだけ言うと冷静になったのか、黙った。
(損失は少ない。気に病むことではないか……)
「聞こえるか? レッドバック!」
離れたレッドバックにもよく聞こえる声で、リアの声が響いた。ソニックフォンブラスターである。技名を叫ぶときにも勿論使っていた。
「1年以上もどっかに籠もってこんなの作ってたわけ? それにしては前のより随分小さかったね、あいつ」
「拍子抜けか? だが一年間の成果はあれだけではないぞ。数も質も、今日のは小手調べと知るがいい」
レッドバックはどこからともなく拡声器を取り出して、負けない大きさの声で言った。
「人間よ!」
アドナヴァが拡声器をひったくった。
「我らが全力で戦う戦場はここではない!
ゆえに今日の勝利が次も続くとは思わぬことだ。
全てはイヴ様のために!」
「敵に注意を喚起させてどーする……」
そして呆れ顔のパダギエ。三者三様であった。
アドナヴァの言葉を捨て台詞にした形で、三者は去って行った。
「暇なのかな……?」
真はそんな三者に容赦のない言葉を送る。わざわざこんな前線まで戦闘を見に来る必要は果たしてあったのかと……そう思いを馳せながら寄ってきたレグルスの背中を撫でる。
戦闘は終わった。
「今回の敵は何だかお試し版って感じだから、このテストの結果がまた返ってくるのか気になりますね」
コクピットを開けて、外の風を感じながらミコトが言った。
戦闘の中で得られた弱点や特性を、データとして残しておこうと考えていた。ちょうど、テストでわからなかった所を復習する学生のように……。
平和だった時代、それはもう遠い過去のことだ。そう感じられる程度には色々な出来事が通り過ぎた。
「何度来ても返り討ちにしてやるさ!」
そんなミコトの言葉を受けて、ざくろは強気に言った。
「機械との融合なんかよりももっと凄い、友情の力でね!」
そしてX桜姫とハイタッチを交わす。
人と機械の、物理的な接続とはまた違った繋がりが、そこには確かにあった。
「ほんに研究者気質な歪虚は……もっと別の研究に精を出して欲しいもんじゃのぅこういう物騒なのでなく」
「花火とか!」
「そうそう、爆発とか得意そうじゃ」
ヴィルマとセレスが軽口を叩く。
そして「平和に花火を上げるレッドバック」を想像してみる……。
「違和感しかない」
「そだね」
「へっきし! また誰かがドクターのことを噂してやがる!」
「なんでドクターの噂をすると貴公がくしゃみをするのだ……?」
パダギエとアドナヴァ。飛行とバイクを駆使して拠点へ帰還中であった。
割と賑やかな二人だったがレッドバックは無言である。彼女の頭の中にはすでに今回の試験のレポートへと変貌する予定の文章が渦巻きはじめていた。
「そう、暗闇に蠢く毒蜘蛛のように……」
「どうした突然?」
パダギエは地の文と調和しようと試みた。もちろん深い意味はない。
そんな風に二人が好き勝手やってもレッドバックは無言のままだ。
──たとえ戦いに負けたとて、次も戦える。
そのことを思うと、レッドバックは昏い悦びを感じるのだ。
ハルトフォート付近に出現した歪虚の軍勢……それを迎撃するべくハンター達は出撃した。
特別、精強というわけでもなく、始めは何事もなく勝利を収められるかと思われたが……
突如、先頭で歪虚をドリルランスで貫いて倒していた仁川 リア(ka3483)が搭乗するスピニオンOver-Zが、強い衝撃を受けて大きくよろめいた。
「くっ……! 損傷は……肩パーツを貫通?!」
攻撃を正面から受け止め殴り返すのがコンセプトの機体の装甲である。
リアはすぐさま視界を巡らす。
近くにはそれらしい敵影は確認できない。周囲の敵のはるか後方に、砲塔のようなものを備えた敵が確認できた。
「皆、気を付けて! 今までのと違う奴がいる」
スピニオンの装甲を貫いたというのもあったが、直感で感じていた。
「後方?! なら、あたしが行くよ!
おいで! オトート!」
セレス・フュラー(ka6276)はすぐさま目標を確認し対応に行く。騎乗するのは魔導ママチャリ『銀嶺』、瞬く間に彼女は風になった。それに続くのはオトートソルジャー――誤字に非ず。兄弟感覚かと思われる相棒とともに敵に向かう。
スカートにも関わらず立ちこぎで銀嶺を走らせる(しかし、めくれあがる気配はまるでない)セレスに反応したのか、その敵は後退を始める。
「このあたしが追いつけない?!」
通常の魔導バイクの1.5倍の速さを誇る危険なマシーンをもってして、距離が縮まらない。
味方から離れるのは危険と感じ、セレスが一旦戻ろうとした時、突如としてその身体が引き戻された。
すぐさま強烈な旋風が通り過ぎていくのを感じる。
砲弾だ。
「助かったよ、ありがと」
オトートソルジャーが相棒の危険を察知し、セレスを避難させたのだった。
「しかし、あれは厄介だね」
「奴の動きを見たか? 只事ではない。すぐさま雑魚を片付けて対応に当たるのじゃ!」
「了解しましたっ!」
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)の判断。あれこそが『本命』に違いない……それに異論はなく、ミコト=S=レグルス(ka3953)も魔導型デュミナスのコクピットから返答した。ミコト機は斧で周囲の歪虚を凪払うと、残りの敵へと向かった。
「冒険に危険はつきものさ! そして、それを乗り越えてこその……冒険家だよ!」
時音 ざくろ(ka1250)は気持ちを昂揚させ、相対している歪虚を斬り伏せる。そして、新手の敵へと向かった。
「行くよ! X桜姫! まずはあいつに追いつくんだ!」
駆るバイクの名はナグルファル。相棒とするオートソルジャーとともに敵へと向かう。
「聞いたかレグルス。強敵のようだ」
一方、鞍馬 真(ka5819)は冷静な口調で、相棒とするイェジドに語りかける。
レグルスと呼ばれたイェジドは主の気持ちがそのまま伝わっているかのように一声鳴いた。
「行かなくては。あいつを倒すんだ」
己の戦場での責務を果たすため……
今日も一等星は駆ける。
●暗黒科学技術評価試験
少し離れた場所から、戦闘を見守っている一団がいる。皆、双眼鏡を覗きこんでいた。
「へえ……! すげえな、あのチャリを引き離したぜ!」
パダギエはセレスと歪虚……機械化歪虚兵士ヴァリオラスを見比べて言った。実は追いかけられたことがある。
「うむ。想定通りだ。人間どもの移動速度は相当に速くなっているが……我々が決して追いつけないものではない」
レッドバックは双眼鏡を離さずに言った。
「イヴ様の秘蔵の品々なのだ。人間ごときに遅れをとるはずがない」
アドナヴァはそう言ってニヤリと笑う。
「……いいや」
陣営を同じくするレッドバックだが、アドナヴァの言葉を打ち消した。
「この程度の問題、たやすく乗り越える。人間はそういうものだ。
場所を変えるぞ。あいつらに挨拶といこう」
レッドバックの言葉に戸惑いを覚える同行者二人。レッドバックは説明もせずハンター達の前へと出て行く。
●研究者の矜持
「新手か?!」
最初にそれを発見したのはざくろだった。その言葉に応じて他の面々も姿を見つける。
「……やっぱりそうだったか。王国でこんなデカ物作れる歪虚なんて一人ぐらいしかいやしない。
そうだろう、レッドバック」
「いかにも」
相手を確かめるよりも早く、投げかけられたリアの言葉は、向けられた当の本人によって肯定された。
レッドバックは一行の前に姿を表したのだ。
(何でわざわざ姿を晒すのだ?!)
(さあな。ドクターの考えることはさっぱりわかんねえよ)
そして、その後ろで小声で言葉を交わす同行者二人。
「あー! やっぱり生きてたしパダギエと合流してるしなんか助手が増えてる!」
セレスが指を指して叫んだ。セレスもまた、リアと同じく何度も戦場でレッドバックと相対した相手だ。
「助手ではない。我が名はアドナヴァ!
イヴ様に仕える者だ!」
アドナヴァが真っ先に反論した。
「イヴじゃと……?」
その言葉にヴィルマが反応を示す。
「では、此度の侵攻はイヴの意志によるものなのか」
「全てのものはイヴ様のものだ! ゆえに、この地を我らが支配するも必然!」
アドナヴァは最初姿を現すことを渋ってはいたが、もう見つかってしまった以上、自らの主張を示すことにためらいは無かった。
「やいパダギエ! 何『ドクターならバドニクスと出撃してから帰ってきてない』とか言ってたくせにシレッと合流してんのさ!」
セレスは最初の間違いなどお構いなしにパダギエに問いただす。
「いつの話してやがる! ホントだよありゃあ! あの時点ではな!
だがもう合流しちまったもんね。これからは俺達の時代だぜ!」
パダギエは飛膜のついた長い腕と脚を伸ばして、ポーズをつけつつ言った。
「さて……ではテストを開始するとしよう」
「テストっ?!」
ハンターになる直前まで学生だったミコトが、反射的にレッドバックの言葉に反応する。
「我が『ヴァリオラス』が君達に対し、どれだけの成果をあげるのか……私は後ろで見物させてもらうとしよう」
それだけ言ってレッドバックは背を向け、離れた。パダギエとアドナヴァも後に続く。
「言いたいことだけ言って帰った……?」
真は不思議そうにレッドバック達が離れていくのを見る。
この間、歪虚からの攻撃は一切無かった。パダギエとアドナヴァはハンター達を時々振り返っていたが。
「レッドバックはそういう奴なんだよね。あたし達を倒すこと自体が目的じゃないみたいな感じなんだ」
セレスは客観的な感想を述べた。
「うん。『敵』というよりは、実験に協力してくれる相手という意味で、礼を尽くしているかのようにすら見える」
リアが引き継いで言う。彼は明確にレッドバックを『宿敵』と捉えていた。だからこそ感じていた。相手は敵という立場でいながら、個人としては敵意を向けてきていないと。
だから、挨拶もする。実験の協力者として。
「敵意も悪気もなくとも、高見の見物はむかっ腹が立つわ。だが、まあよい。そなたの研究成果に勝てる自信はあるからのう」
ヴィルマは、レッドバックに聞こえるように言ってやった。
「そうでなくては困る」
そしてレッドバックははっきりと聞いていた。背中を向けたまま返答とも言えぬ独り言を口にする。
「私が負けなくては成長の機会がないからな」
「勝つことを目標としていないのか、貴公は」
それを聞いたアドナヴァは問うてやった。返答はこうだった。
「勝利の美酒は君が味わえばいい。私が欲しいのはさらなる知識と力だ」
●戦闘再開
「見られながら戦うのは落ち着かないなあ……」
真はそう感じた。
だが、やることに変わりはない。
「逃げるのならより早いスピードで追えばいい。行くよ、レグルス」
「皆で包囲して追い詰めよう!」
「心得た!」
ざくろの呼びかけにヴィルマが応じ、一行は目標へと向かった。
ヴァリオラスは、今度は逃げなかった。
身体を構成するパーツが場所を変え、そのフォルムを大きく変える。──人型へと。
「変型した?!」
先頭の真がそれを確認するや否や、変型した歪虚の正面で光の三角形が形成された。
とっさに回避行動をとるハンター達。三方向に伸びた光線が真、ざくろ、ヴィルマを貫かんとする。
真を乗せて走るレグルスは横に飛びつつも体の表面を焼かれ、煙をあげる。ざくろのバイクとヴィルマのヴェルターも光に焼かれる。
「好きにはさせないよ!」
別の方向から、セレスが自転車で迫る。
だが、歪虚はすぐに変形し、戦車のようなフォルムに戻った。キャタピラーで走破し、猛スピードで迫るセレスをも突き放す。
「周り込むんだ!」
リアの声。アクティブスラスターをもってしてもスピニオンの速度では到底追いつけない。代わりにミサイルを進行方向に向けて撃つ。
驚くべき機動性で、敵はそれらを全て避けた。
だが、移動の妨害には繋がった。多方面からハンター達が迫る。それでも囲まれる度に囲みを抜けて距離を取る。
「おおー速え! あれなら囲まれてボコられるってことはねえな!」
「遠距離であれば攻撃手段が限られる。そうすることで数の有利を打ち消すのが狙いだ」
遠くからパダギエとレッドバックが届ける実況と解説。
いまだ追いつかれないのを見て強気になっていた。
だが、それは長くは続かなかった。
「レグルス」
真が呼びかけると、レグルスは高く鳴いた。
そして、大地を駆ける。
その躍動は力強く、
速い。
「フェンリルライズか」
「知っているのかドクター!」
「ああ……幻獣の力を解放する技法だ。あの男、ああまでイェジドを使いこなすか」
レッドバック一行はその様に驚愕した。
「獣には獣以上のことはできぬと思っていたが、しかし……」
獣ならば、獲物を追いかけて、狩ることが出来る。
「追いついた」
真は短く言う。それで十分だった。
跳躍するレグルス。一瞬で高みへ。
そして落下。走行するヴァリオラスを真上から押さえつける。
マウントロックの体勢。車両型の相手を転倒させることは叶わなかったが、それでも移動を阻害することは、出来た。
「だが、追いつかれたことが敗北を意味するのでは、無い!」
レッドバックの言葉に応えるように、押さえつけられた状態でヴァリオラスは人型に変形する。
現れた無機質な顔面についた目が真とレグルスを見据える。
術が、発動した。
真とレグルスを紅蓮の炎が包む。
苦悶の表情を見せる両者。だが離れようとはしない。
「残念じゃが手遅れじゃ!」
ヴィルマの言葉。
グラビティフォールが発動し、ヴァリオラスを凄まじい重力が押し潰した。土煙をあげて地面にめり込んでいく。
真とレグルスにはかかっていない。集束魔が働いているのだ。
「これ以上の走行は許さぬよ!」
「そして変形も封じさせてもらうよ!」
セレスが機械パーツの間に挟まるよう武器を投擲する。
精密機械の欠点を狙った戦法だ。
さらには残りのハンター達が包囲するように周囲を固めてゆく。
「ヴェルター、ブロッキングじゃ!」
「X桜姫、相手の進路を塞いで!」
「オトートソルジャー、エリアキープだ!」
ヴィルマ、ざくろ、セレスがそれぞれの相棒に呼びかける。幻獣・機械の差こそあれ頼れる相棒達は期待に応えてみせる。
「おい、これでは集中攻撃を受けてしまうぞ!」
さすがに劣勢と感じたのかアドナヴァがレッドバックに呼びかけた。
「ふむ。では耐久性を観察しよう」
「おい!」
アドナヴァが聞きたい応えではなかったが、レッドバックは気にもせずに観察に戻った。
「ここから──」
真はヒーリングポーションをレグルスに与えると自らは飛び降り、地面を蹴ると同時に斬りかかった。
光の軌跡を描いて刃が閃く。
だが、それは歪虚の前に生じた光の壁のようなものに阻まれた。
「……一度で駄目ならば、二度」
真はすぐさま刃を戻す。反対側の手に握る剣の束から、光の刃が形成される。
間もなく、それは歪虚の体に食い込んだ。
さらに、そこから真の動作は加速した。
「そして、三度」
三度目の斬撃がオーラとなって打ち込まれた。
「あんなの有りなのかよ!?」
パダギエが驚愕した。
「アスラトゥーリだ。実際に見るのは初めてだが……不可能を可能にする技術というのはある程度のレベルでは確かに存在する。
そして……あのレベルの剣士であれば、剣心一如とソウルエッジも使われているとみていいだろう。
重い一撃が三連で来るが、マテリアルカーテンで防げるのは一度に一撃までだ」
「それはつまり──」
アドナヴァが思案顔で言った。
「あとは無防備ということか?」
「……」
「おい何とか言え、ドクター」
「間髪を入れず射撃を集中っ! 蜂の巣にしてやります!」
ミコト機の装備するガトリングガンが、真の後方から狙いを定めていた。華麗な剣の連撃が終わってすぐのことだった。紫電を帯びた弾丸が雨霰と歪虚に降り注いだ。
歪虚は反射的に反撃に応じ、デルタレイを撃つ。
三条の光線が、ミコト機の両脚、そしてガトリングガンを持つ腕を貫いた。
「くっ……! まだですっ!」
ミコト機は体勢を崩すも、背部ブースターに点火。そしてフライトシステムを機動。脚など飾りにすぎない。地上から浮いた状態で肉薄する。
そして、無事な方の腕で振り上げる魔斧モレク。そこに確かに存在する、祖霊の力。
「このっ……負けてられないんですよーっ!」
振り下ろす。ヴァリオラスはとっさに腕で庇った。凄まじい勢いの刃も腕を斬り落とすには至らないが、それでも腕部装甲を切り裂いた。
一瞬ミコトは見た。腕で庇われる一瞬前に、腹部に、妙に厚い装甲に覆われた機械があると……。
「お腹に大事そうなものを抱えてますっ!」
「了解した。では、それを狙いやすい状況を作るとしようか」
ミコトの発見はすぐに仲間にもたらされた。ヴィルマは返事を返し敵を見据える。
「――霧の魔女ヴィルマ・ネーベルの名の下に、凍てつかせ噴舞せよ、霧裂け氷乱の嵐!」
一瞬にしてヴァリオラスの周囲は白く染まる。それは全てのものを凍てつかせる極低温の世界。
エーイスクリスタル。
「これで変形は出来まい?」
動きが鈍くなるのは生者たらざる歪虚であろうと例外はない。
絶対なる霧の魔女の前には、ただ何者も凍りつくのみ。
されど、その力は敵にのみ及ぶ。
「輝け、雷虹剣!」
ヴィルマの術により極低温の世界となった歪虚の周辺を、セレスが駆け抜ける。収束魔が働いているため、冷気はセレスを害することはない。
その剣は虹色に閃く雷光。荒れ狂う稲光。
雷虹剣カラドボルグ。
「疾風迅雷! ご覧あれ!」
その担い手が腰まで届く髪を靡かせて舞うごとに、ヴァリオラスの傷は増えていく。
さらには周辺をヴェルター、オトートソルジャー、X桜姫が固め、ヴァリオラスに距離を取らせない。
「なんか見た目でも負けてないかドクター!」
「派手さが足りんと? そんなことはない」
パダギエの問いかけにレッドバックは、あくまで静かに答えた。
それに応じるように……
ヴァリオラスの周囲で爆発的に光が広がった。
さながら花火のようなマテリアルの光、プラズマクラッカー。
周囲を固めていた者達は爆発に巻き込まれる。
「攻められていようと『火力』は健在だ」
「おい、ドクター」
「ヴァリオラス止まってるぞ!」
「なに?」
「残念だったね!」
声をあげたのは時音 ざくろ。
ヴィルマから受け取ったポーションを一気飲みし、高らかに言う。
「範囲攻撃に巻き込まれたざくろの攻性防壁! 相手は動けなくなる! そして……
バディフォースだX桜姫!」
X桜姫は武器を構え、力強く頷く。
「今ざくろ達の絆は結ばれた! 行くよX桜姫!」
超重練成+解放錬成。ざくろの剣はマテリアルを解放し、刀身を巨大化した。同じタイミングでX桜姫の持つ槍から、巨大なマテリアルの刃が形成される。
両者は同時に地を蹴り、左右から斬りかからんとする──
「「魔剣解放、超超重斬・縦一文字斬り!!!」」
巨大な刃と、マテリアルの刃が、
ほぼ同じタイミングで、左右から襲いかかった。
ヴァリオラスは為す術もなく、斬撃の奔流に身を任せる。
「今オートソルジャーも喋らなかったか?!」
「そんな筈はない。幻聴だ」
信じられないようなものを見て慌てるパダギエ、否定するレッドバック。
確かに錯覚だったが、錯覚させるだけの何かがあった。
そんな二人に応えるかのように、こんな言葉が紡ぐものがある。
「鋼の身体にも魂は宿るのさ……」
仁川 リア。
スピニオンOver-Zは、ドリルランスの間合いにヴァリオラスを収める。
「ようやくここまで接近できた……
ここから先はドリルの時間だよ!」
ガゴォ! グワキィィィン!
重厚な金属音を立てて攻撃の動作へと移る。
逃れる術は、ない。
「超、必殺……!」
ギュウイイイイイイイン!
甲高い回転音をあげて回る、ランスの穂先の二つのドリル。
二股に分かれたドリルの刃は覚醒者のマテリアルを帯びてそれぞれ赤と青に発光し、二重回転の力はVOIDを粉砕する小宇宙を生み出す!
「オーバードリルスティンガーーーーーー!!!」
キュオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
接触したドリルはヴァリオラスの腹部を穿ち、内部へと入っていく!
そこはミコトが報告した場所──マテリアル制御装置がある場所だ。
ほどなくして回転するドリルが、反対側から突き出る。
途端、ヴァリオラスの全身は不自然に光り、肥大化した。
スピニオンはスラスターに点火し後ろに下がる。
ほどなくしておびただしい光がヴァリオラスから発され、それは先程のプラズマクラッカーの何倍もの規模で大爆発を起こした!
……そして。
機械化歪虚兵士ヴァリオラスは、塵一つ残さず爆散した。
●試験終了
「……ドクター」
「言ったはずだ。この程度の問題、人間は乗り越えていくと」
「それでは駄目ではないか!」
あまり悔しそうでないレッドバックを、アドナヴァは責める。
「これは試験。勝負ではない。
勝ち負けに拘るな」
「しかしドクター……!」
アドナヴァはそれだけ言うと冷静になったのか、黙った。
(損失は少ない。気に病むことではないか……)
「聞こえるか? レッドバック!」
離れたレッドバックにもよく聞こえる声で、リアの声が響いた。ソニックフォンブラスターである。技名を叫ぶときにも勿論使っていた。
「1年以上もどっかに籠もってこんなの作ってたわけ? それにしては前のより随分小さかったね、あいつ」
「拍子抜けか? だが一年間の成果はあれだけではないぞ。数も質も、今日のは小手調べと知るがいい」
レッドバックはどこからともなく拡声器を取り出して、負けない大きさの声で言った。
「人間よ!」
アドナヴァが拡声器をひったくった。
「我らが全力で戦う戦場はここではない!
ゆえに今日の勝利が次も続くとは思わぬことだ。
全てはイヴ様のために!」
「敵に注意を喚起させてどーする……」
そして呆れ顔のパダギエ。三者三様であった。
アドナヴァの言葉を捨て台詞にした形で、三者は去って行った。
「暇なのかな……?」
真はそんな三者に容赦のない言葉を送る。わざわざこんな前線まで戦闘を見に来る必要は果たしてあったのかと……そう思いを馳せながら寄ってきたレグルスの背中を撫でる。
戦闘は終わった。
「今回の敵は何だかお試し版って感じだから、このテストの結果がまた返ってくるのか気になりますね」
コクピットを開けて、外の風を感じながらミコトが言った。
戦闘の中で得られた弱点や特性を、データとして残しておこうと考えていた。ちょうど、テストでわからなかった所を復習する学生のように……。
平和だった時代、それはもう遠い過去のことだ。そう感じられる程度には色々な出来事が通り過ぎた。
「何度来ても返り討ちにしてやるさ!」
そんなミコトの言葉を受けて、ざくろは強気に言った。
「機械との融合なんかよりももっと凄い、友情の力でね!」
そしてX桜姫とハイタッチを交わす。
人と機械の、物理的な接続とはまた違った繋がりが、そこには確かにあった。
「ほんに研究者気質な歪虚は……もっと別の研究に精を出して欲しいもんじゃのぅこういう物騒なのでなく」
「花火とか!」
「そうそう、爆発とか得意そうじゃ」
ヴィルマとセレスが軽口を叩く。
そして「平和に花火を上げるレッドバック」を想像してみる……。
「違和感しかない」
「そだね」
「へっきし! また誰かがドクターのことを噂してやがる!」
「なんでドクターの噂をすると貴公がくしゃみをするのだ……?」
パダギエとアドナヴァ。飛行とバイクを駆使して拠点へ帰還中であった。
割と賑やかな二人だったがレッドバックは無言である。彼女の頭の中にはすでに今回の試験のレポートへと変貌する予定の文章が渦巻きはじめていた。
「そう、暗闇に蠢く毒蜘蛛のように……」
「どうした突然?」
パダギエは地の文と調和しようと試みた。もちろん深い意味はない。
そんな風に二人が好き勝手やってもレッドバックは無言のままだ。
──たとえ戦いに負けたとて、次も戦える。
そのことを思うと、レッドバックは昏い悦びを感じるのだ。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/02/03 11:25:10 |
|
![]() |
相談卓 通りすがりのSさん(ka6276) エルフ|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/02/03 18:43:50 |