ゲスト
(ka0000)
【血断】5時間の戦線維持
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2019/05/19 07:30
- 完成日
- 2019/05/23 15:15
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ハンターが討ったのは邪神翼だけではない。
高性能CAMに匹敵する擬人型第三種、圧倒的な数を誇る浮遊型第二種、中身が高位覚醒者かと疑いたくなるシェオル・ノドまで、それぞれ100単位で打ち倒してこの世から消滅させた。
圧倒的な戦果ではある。
しかし歪虚の戦力はそれ以上に圧倒的だった。
全滅した部隊に代わってグラウンド・ゼロに投入された部隊は、歪虚側の新規戦力苦戦を強いられている。
前任者達なら余裕をもって撃退できていた。前任者ほどの力量がないのだ。
「増援?」
薄汚れた野戦服を着た男女が困惑した視線を交わす。
半端な強さでは犬死に間違い無しの戦場だ。
クリムゾンウェスト各国には、精鋭覚醒者を大勢派遣する余裕はほとんどないはずだった。
「総勢51名、という話ですが」
諸手を挙げて歓迎して当然の話なのに、過酷すぎる戦いで心身が疲れ切っていて何も感じられない。
神経を逆撫でする警報がテントに満ちる。
無意識にそれぞれの武器を持ち飛び出すと、鉄の触手で構成された擬人型第三種が手の平からビームソードを発生させたところだった。
合計6体。
スキルも尽き、自動兵器も使い尽くした彼等では抵抗不能の戦力だ。
「第2小隊以下は撤退しろ! 第1小隊はすまんが死守だ!」
剣を構えて飛び出す。
指揮官としては下の下の行動だと分かっているが、もうまともに戦えるのは彼と数名だけだ。
ビームソードを辛うじて躱し、部下と数人がかりで脚部を切り倒して止めを刺す。
これで残り5。
そのうちの3体がいきなり消えた。
短距離跳躍だ。
撤退中小隊の至近に再出現し、歩くのが精一杯な兵士にビームソードを振り下ろした。
「痛っ」
悲鳴が何故か陽気に響く。
兵士がいた場所には古臭い甲冑(ただし迷彩塗装)が踏ん張っている。
分厚い装甲がビームで焼かれているのに、平然とした動きで特大メイスを何度も振り下ろし擬人型第三種を変形させていた。
「聖堂教会51名参陣っ」
「歪虚はどこだー!」
「死ねー!!」
やたらテンションの高い全身甲冑の群れが、飛び跳ねながら歪虚に襲いかかった。
●36時間前
履歴書の数は50を越えていた。
「貴方でなければ詐欺扱いされますよ」
ベテランのオフィス職員は苦笑しながら受け取った。
1枚1枚は薄いが全部あわせるとかなりの重さだ。
実力者だけを抜き出すつもりで目を通すと、最初の一枚から強烈だった。
「これは心強い」
現在の所属は聖堂教会事務方。昨年まで聖堂戦士団一筋の実戦派。
ハンター基準では精々中堅とはいえ一般的基準では精鋭といえる。
二枚目も負けていない。
法術研究部門所属といえば文弱な印象があるが、高度な法術を使うためには知力体力精神力の全てが必要なので当然のように高位覚醒者になる。
「この方も?」
三枚目から違和感があった。
強すぎる。
グラズヘイム王国対傲慢王の戦いは終わっていない。
クリムゾンウェスト連合軍へ精鋭多数を差し出す余裕はないはずなのだ。
四枚目以降には中堅水準未満の者も含まれてはいたが、強すぎると印象は強くなるばかりだ。
「危険な手段を使ったのですか?」
ベテラン職員が冗談めかして、内心は半ば確信して尋ねた。
「ある意味危険な手段は使いましたが」
顔色の悪い司祭が穏やかに微笑む。
「想像されてる内容とは違うと思います。ほら、以前情報技術の専門家を紹介してもらったじゃないですか」
「あれは専門家というより権威でしたねぇ」
リアルブルー凍結の際、大勢の避難民が発生した。
その中には高度な技術と知識の持ち主も含まれている。
「皆さんの協力を得て、事務が少人数で済む組織にしました」
完了形である。
旧態依然な部分が多い王国の中でも、さらに保守的な聖堂教会の改革は困難を通り越して不可能に近いはずだ。
所属派閥だけのこととはいえ偉業とすらいえる。
「ここまで追い詰めれると普段通らない話も通る様になります」
人類全体の状況は王国の状況よりなお酷い。
かつてない危機感が大勢に共有され、数十年数百年続いた伝統を無視したシステム導入という結果に結びついた。
「安心しました。貴方が亡命先を探しているという噂があって、ひょっとして逃げ出すつもりかと」
言われたイコニアが何度も瞬く。
政敵に虚偽情報を流されるのはいつものことだが、そんな噂が即座に消える程度には戦い続けているつもりだ。
「貴方の腹心でしょう? 亡命についての相談を世界中のあちこちで……あの、どうされました?」
神経性の痛みに襲われ、お腹を押さえてうずくまる。
「いえ、だいたい、事情が飲み込めました」
イコニアは作り笑いで誤魔化そうとして失敗した。
誰がどんな意図でしたかはこれ以上聞かなくても分かる。
気持ちは嬉しい。
複数の意味で手を汚した自分のため動いてくれるのは、笑み崩れるほど嬉しい。
が、本来なら無関係の組織や人物に手間を強いているのも事実であった。
「謝罪行脚したいですが」
「貴方が出向くと別の問題が起きますからねぇ」
乾いた笑い声が2つ響く。
彼女の悪評のうち6割以上は真実だ。付き合いがあると噂が立つだけでも迷惑になる可能性がある。
「いずれにせよ噂は立ち消えるはずです」
イコニアの笑みの種類が変わる。
微笑んでいるのに獰猛な、対歪虚強硬派らしい顔だ。
「ファナティックブラッド突入作戦への参加手続き、お願いしますね」
今回の戦いを生き延びても、高確率で戦死することになるのだから。
●現在
呼吸の止まった体に、禍々しく輝くマテリアルが叩き込まれた。
心臓が再開し壊死寸前だった脳も復活する。
「大丈夫。あなたはまだ生きています」
態度は聖女そのものでも纏う正マテリアルは殺意に染まりきっている。
「そうか、俺は地獄に……」
「いえそういうのいいですから。気力が萎えているならあれに乗って下がってください」
軽トラ型魔導トラックの荷台に放り込まれる。
酷い扱いだが回復した体にはかすり傷にもならない。
「5時間もたせろ、でしたか」
イコニアは命令を復唱して眉を寄せる。
50人の聖導士はハンターほどではないが強く、戦意も素晴らしい。
が、長期間戦闘任務から離れていたせいかペース配分を間違っている。
このままでは後3戦もすれば立つ体力も無くなる。
指揮官に進言して止めるのも無理だ。指揮官である司教が指揮せず最前線にいる。私がそこにいたかったのに!
「いつも通り、ハンターの皆さんに頼るしかないみたいですね」
前方に見える擬人型第三種と、後方数百メートルに見えるハンターを見比べ、聖堂教会司祭は淡いため息を吐くのだった。
高性能CAMに匹敵する擬人型第三種、圧倒的な数を誇る浮遊型第二種、中身が高位覚醒者かと疑いたくなるシェオル・ノドまで、それぞれ100単位で打ち倒してこの世から消滅させた。
圧倒的な戦果ではある。
しかし歪虚の戦力はそれ以上に圧倒的だった。
全滅した部隊に代わってグラウンド・ゼロに投入された部隊は、歪虚側の新規戦力苦戦を強いられている。
前任者達なら余裕をもって撃退できていた。前任者ほどの力量がないのだ。
「増援?」
薄汚れた野戦服を着た男女が困惑した視線を交わす。
半端な強さでは犬死に間違い無しの戦場だ。
クリムゾンウェスト各国には、精鋭覚醒者を大勢派遣する余裕はほとんどないはずだった。
「総勢51名、という話ですが」
諸手を挙げて歓迎して当然の話なのに、過酷すぎる戦いで心身が疲れ切っていて何も感じられない。
神経を逆撫でする警報がテントに満ちる。
無意識にそれぞれの武器を持ち飛び出すと、鉄の触手で構成された擬人型第三種が手の平からビームソードを発生させたところだった。
合計6体。
スキルも尽き、自動兵器も使い尽くした彼等では抵抗不能の戦力だ。
「第2小隊以下は撤退しろ! 第1小隊はすまんが死守だ!」
剣を構えて飛び出す。
指揮官としては下の下の行動だと分かっているが、もうまともに戦えるのは彼と数名だけだ。
ビームソードを辛うじて躱し、部下と数人がかりで脚部を切り倒して止めを刺す。
これで残り5。
そのうちの3体がいきなり消えた。
短距離跳躍だ。
撤退中小隊の至近に再出現し、歩くのが精一杯な兵士にビームソードを振り下ろした。
「痛っ」
悲鳴が何故か陽気に響く。
兵士がいた場所には古臭い甲冑(ただし迷彩塗装)が踏ん張っている。
分厚い装甲がビームで焼かれているのに、平然とした動きで特大メイスを何度も振り下ろし擬人型第三種を変形させていた。
「聖堂教会51名参陣っ」
「歪虚はどこだー!」
「死ねー!!」
やたらテンションの高い全身甲冑の群れが、飛び跳ねながら歪虚に襲いかかった。
●36時間前
履歴書の数は50を越えていた。
「貴方でなければ詐欺扱いされますよ」
ベテランのオフィス職員は苦笑しながら受け取った。
1枚1枚は薄いが全部あわせるとかなりの重さだ。
実力者だけを抜き出すつもりで目を通すと、最初の一枚から強烈だった。
「これは心強い」
現在の所属は聖堂教会事務方。昨年まで聖堂戦士団一筋の実戦派。
ハンター基準では精々中堅とはいえ一般的基準では精鋭といえる。
二枚目も負けていない。
法術研究部門所属といえば文弱な印象があるが、高度な法術を使うためには知力体力精神力の全てが必要なので当然のように高位覚醒者になる。
「この方も?」
三枚目から違和感があった。
強すぎる。
グラズヘイム王国対傲慢王の戦いは終わっていない。
クリムゾンウェスト連合軍へ精鋭多数を差し出す余裕はないはずなのだ。
四枚目以降には中堅水準未満の者も含まれてはいたが、強すぎると印象は強くなるばかりだ。
「危険な手段を使ったのですか?」
ベテラン職員が冗談めかして、内心は半ば確信して尋ねた。
「ある意味危険な手段は使いましたが」
顔色の悪い司祭が穏やかに微笑む。
「想像されてる内容とは違うと思います。ほら、以前情報技術の専門家を紹介してもらったじゃないですか」
「あれは専門家というより権威でしたねぇ」
リアルブルー凍結の際、大勢の避難民が発生した。
その中には高度な技術と知識の持ち主も含まれている。
「皆さんの協力を得て、事務が少人数で済む組織にしました」
完了形である。
旧態依然な部分が多い王国の中でも、さらに保守的な聖堂教会の改革は困難を通り越して不可能に近いはずだ。
所属派閥だけのこととはいえ偉業とすらいえる。
「ここまで追い詰めれると普段通らない話も通る様になります」
人類全体の状況は王国の状況よりなお酷い。
かつてない危機感が大勢に共有され、数十年数百年続いた伝統を無視したシステム導入という結果に結びついた。
「安心しました。貴方が亡命先を探しているという噂があって、ひょっとして逃げ出すつもりかと」
言われたイコニアが何度も瞬く。
政敵に虚偽情報を流されるのはいつものことだが、そんな噂が即座に消える程度には戦い続けているつもりだ。
「貴方の腹心でしょう? 亡命についての相談を世界中のあちこちで……あの、どうされました?」
神経性の痛みに襲われ、お腹を押さえてうずくまる。
「いえ、だいたい、事情が飲み込めました」
イコニアは作り笑いで誤魔化そうとして失敗した。
誰がどんな意図でしたかはこれ以上聞かなくても分かる。
気持ちは嬉しい。
複数の意味で手を汚した自分のため動いてくれるのは、笑み崩れるほど嬉しい。
が、本来なら無関係の組織や人物に手間を強いているのも事実であった。
「謝罪行脚したいですが」
「貴方が出向くと別の問題が起きますからねぇ」
乾いた笑い声が2つ響く。
彼女の悪評のうち6割以上は真実だ。付き合いがあると噂が立つだけでも迷惑になる可能性がある。
「いずれにせよ噂は立ち消えるはずです」
イコニアの笑みの種類が変わる。
微笑んでいるのに獰猛な、対歪虚強硬派らしい顔だ。
「ファナティックブラッド突入作戦への参加手続き、お願いしますね」
今回の戦いを生き延びても、高確率で戦死することになるのだから。
●現在
呼吸の止まった体に、禍々しく輝くマテリアルが叩き込まれた。
心臓が再開し壊死寸前だった脳も復活する。
「大丈夫。あなたはまだ生きています」
態度は聖女そのものでも纏う正マテリアルは殺意に染まりきっている。
「そうか、俺は地獄に……」
「いえそういうのいいですから。気力が萎えているならあれに乗って下がってください」
軽トラ型魔導トラックの荷台に放り込まれる。
酷い扱いだが回復した体にはかすり傷にもならない。
「5時間もたせろ、でしたか」
イコニアは命令を復唱して眉を寄せる。
50人の聖導士はハンターほどではないが強く、戦意も素晴らしい。
が、長期間戦闘任務から離れていたせいかペース配分を間違っている。
このままでは後3戦もすれば立つ体力も無くなる。
指揮官に進言して止めるのも無理だ。指揮官である司教が指揮せず最前線にいる。私がそこにいたかったのに!
「いつも通り、ハンターの皆さんに頼るしかないみたいですね」
前方に見える擬人型第三種と、後方数百メートルに見えるハンターを見比べ、聖堂教会司祭は淡いため息を吐くのだった。
リプレイ本文
●崩壊した戦線
魔導ママチャリの音はいつも通りに軽快だ。
反比例して暴れ馬な振動を制御しながら、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)は秀麗な顔に渋い表情を浮かべた。
酷い有様だ。
余力がある部隊は無意味に逸り、退却に全力を出すべき部隊は練度低さ故に手間取っている。
部隊間の連携は無いも当然で、総合すると泥沼の戦争でじわじわ失血死する軍隊そのものだ。
「怪我人は足手まといだ。後は任せて下がっていろ」
相手の心情に配慮する時間的余裕はない。
細心の注意を必要とされる運転と、大声での呼びかけと、敵への警戒を同時に行っているのだから。
「ムスペル! 私の近くに出るぞ。撃て!」
前方で聖堂戦士団がどよめいた。戦っていた擬人型第三種を見失ったのだ。
空気が微かに揺れ、CAMより一回り大きな触手塊にアウレールの目の前に現れた。
「この程度の頭はあるか」
左右のビームソードが大気を焼きながらアウレールに迫る。
微かにタイミングをずらした2連斬撃は酷く躱し辛い。
「だがこの程度ではな」
アウレールが口の端を釣り上げる。
聖祈剣「ノートゥング」で右のビームの柄を弾いてずれを大きくし、巨大な盾でもある聖盾剣「アレクサンダー」を軽々と振るって左のビームを受け流し右のビームを受け止める。
2剣の軌道が防御から攻撃に切り替わる。
軌道はビームソードと似てはいるが速度も正確さも明らかに上回り、それだけでなく動きの始まりも読みにくい。
鉄の触手が左右からえぐり取られる。
CAM似の体が激しく揺れて巨大な隙を晒す。
そして、2剣と同時に放たれていたとしか見えない斬撃が、擬人型第三種を腰から胸まで切断した。
「あれでもまだ生きてるんだ」
魔動冒険王『グランソード』から時音 ざくろ(ka1250)の声が聞こえる。
VOIDの傷口で蠢く触手とアウレールが庇う重軽傷者を一瞥し、聖堂戦士団主力との合流を中断し術を紡ぐ。
「吸い込め電磁の竜巻っ」
ガウスジェイルだ。
回避能力は半減し効果範囲も特に広くないという術ではあるが、重傷を負いルクシュヴァリエに迫られたVOIDは冷静さを失いグランソードを狙って防がれる。
だが敵は1体だけではない。遠くのVOIDが、ハンターの近くで戦っていた司祭にレーザー充填済みの腕部を向けた。
「私っ?」
盾を構えることはできたがどう見ても薄い。
VOIDに顔面にあたる部位に酷薄な感情が漂い、しかし司祭に向かわずねじ曲げられた負マテリアルレーザーを見て歯ぎしりする。
「超電磁☆バリアー!」
機体全体に拡大された攻性防壁がレーザーをはね飛ばす。
「そこの聖堂戦士! 周囲への警戒を絶やすな。ここは敵の間合だ」
アウレールは聖堂戦士団主力と戦う4体にも注意に注意を向けさせ。
「グランソード……縦一文字切り!」
スキルを使わなくても十分に強い斬撃が、動きの止まったVOIDの頭から腰までを切断した。
●擬人型第三種
聖堂戦士団を攻める敵主力に最初に接触したのは、2体のワイバーンと2人の守護者であった。
著名なVOIDでも歪虚軍将(歪虚王の1つ下の分類)ですらない擬人型など一瞬で蹴散らされる……という展開にはならない。
「護りながらの5時間か。なげーな」
地上からのレーザーへの対処はワイバーン・ロジャックに任せ、岩井崎 旭(ka0234)は聖堂戦士団への攻撃を防ぐことを優先する。
今回は1戦闘では終わらない。
遠くに知覚を向けると、シェオル・ノドは不在だがそれ以外のVOIDの気配が大量に……3桁後半は確実に感じられる。
「私が前に」
「任せたっ」
旭が言い終わるより速く、空色のワイバーンとドラグーンの守護者が急降下する。
巧みに速度を調節しても全てのVOIDと適度な距離を保つ難しく、2本のビームソードに限界まで力を注いだCAM風VOIDに飛びかかられた。
ワイバーン・クウが地表から2メートルでくるりと反転。
ビームソードはクウの1メートル上と1メートル下を無意味に空振りする。
クウと完璧に連携した斬撃が、CAMなら操縦席に当たる部位を切り裂いた。
「このままいこう」
クウが別れて攻撃するかと身振りで尋ねて来たので謝絶する。
敵の新たがいつ現れてもおかしくない。
単身でも速いとはいえクウの半分程度でしかなく、今は一緒に行動した方が全員のためになるはずだ。
「大丈夫」
後方の司祭と一瞬視線があったのでユウ(ka6891)力強くうなずく。
司祭はほっとして、暴走する聖堂戦士団への呼びかけを始めた。
「ここが」
私に死に場所だと言いかけた司教を、精悍なデザインの戦僧正コンフェッサーが跨いで行った。
「失礼」
血だらけでぽかんとする司教に声をかけ、聖堂教会視点では異教の戦神に仕えるアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)がコンフェッサーをさらに前進させる。
ビームソードが強烈な負の気配を撒き散らしながら右から2本、左からも2本突き込まれる。
「これほど大規模な戦闘は久しぶりなのですが……まあ、なんとかやってみましょう」
回避しきれないと判断するが受けもさほど重視しない。
耐熱仕様のマントで剣状のビームによる被害を減らした上で、多めに搭載した装甲でもってビームソードに耐え戦闘能力を維持する。
アデリシア機のかすり傷以上軽傷未満のダメージに気付き、近くの聖堂戦士が治癒術を使う。少し、傷が残っていた。
「ハンターと比べると力不足ではありますが」
アデリシアが一度マイクを切ってマイクを再起動する。
「一度に51人も必要ありません。ローテーションを」
「礼は言う。しかし」
「私達がいてもある意味あなた方が主力なんですから。言うことを聞かないのなら、私が強引にでもトラックに放り込みます」
せいぜい2メートル程度の打撃武器を強烈な勢いでVOIDに打ち付け、敵2体をその場に拘束しながらアデリシアが続ける。
「せめて前衛後衛に別れて。そこの貴方、もう息が乱れていますよ」
マテリアルをネット状にして擬人型第三種の動きを乱し、八角棍「紫電」に強固なマテリアルをまとわせ振り下ろす。
目玉が3つ以上ある頭部が胸部にめり込み、VOIDが大きく体勢を崩して数歩後ろに下がった。
並の鉄より固いはずの触手がまとめて斬り飛ばされる。
1カ所2箇所ではなく、ポロウ・てばさきが飛ぶ先全てだ。
それを為したのは東條 奏多(ka6425)と彼の手にある絶火刀「シャイターン」。
筋を担当する鉄触手だけでなく骨を担当する鉄触手も断ち切った結果、擬人型第三種はビームソードを振り回すこともレーザーの狙いをつけることもできなくなった。
「熱心なのは分かるんだが」
奏多のつぶやきは聖堂戦士団に届いていない。
「ハンターがやったぞ!」
「すげぇ、俺達も負けてられねぇぞ!」
アウレールやアデリシアに注意され多少はましになった聖導士達が、別のVOIDに襲いかかって短距離テレポートで相手を見失う。
奏多とてばさきは大きく回り込んで、アデリシアが食い止めた第三種の背を襲う。
アサルトディスタンスはこういう場面では特に良く効く。
背を向けたままのVOIDの右脚から腹までを切り裂き大破へ追い込んだ。
「俺達が思いきった作戦をできるのは、こうして事後フォローをしてくれる人達がいるお陰だ」
大きく見えないところで沢山の人に助けてもらってる。
だからこんなところで見捨てる、犠牲にするなんてあり得ない。
そうは思うのだが貴重な戦力自身が必要以上に前に出ているのを見ると一言言いたくなる。
「そこのあんたとあんたとあんただ。せめて訓練通りにしろ。連携訓練も受けているよな?」
気配の強い聖導士に強く言う。
奏多は聖導士でもなく、王国人でもなく、クリムゾンウェスト出身者ですらない。
だが歪虚と戦うハンターという要素は全てを補って余り有る。
「分かった。見せてやるぜ俺達の力をよぅ」
テンションの高すぎる聖堂戦士団を眺め、奏多とてばさきが同時にため息を吐いた。
●後送
魔導トラックが音も立てずに止まった。
アイドリング音が安定しているのは整備状態のみでは説明がつかない。
トラックに必要以上の負担をかけない運転ができているのだ。
「へーい、そこのイコちゃん、私のトラックでタンデムしなーい?」
ナンパ男風に誘いをかけるのは宵待 サクラ(ka5561)。
司祭と付き合いの長い、機会さえあれば守護者になってもおかしくない精鋭ハンターだ。
「よろしくお願いします」
イコニア司祭が深く、ただし素早く頭を下げてからサクラと合流する。
どこからVOIDが襲って来てもおかしくないので礼儀よりも警戒優先だ。
「承知した」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は軽くうなずき、新兵あるいは新人覚醒者に言い聞かせるときにように気配を剥き出しにした。
「長時間持つようにペース配分を考えてもらいたい」
こっそり出撃しようとした司教に歩み寄る。
指揮官とは別の司教だ。
歪虚に対する戦意は似たようなもので、指揮官と比べると責任が軽い分自制心が緩い。
「ここで無理をして死んだらもう歪虚を殴れないぞ」
回り込んで後ろ手に隠されたメイスを見下ろし、意識して嫌みったらしく指摘する。
司教もその賛同者も新人時代の扱きを思い出す。即座に直立不動になりアルトの説得に従った。
「動かしますね、楽にしてください」
魔導軽トラの荷台に積み込まれた負傷者を魔導トラックに荷台に移す。
魔導トラックも決して快適ではないが、狭いにもほどがある軽トラよりはずっとましだ。
「イコちゃんどんな感じ?」
助手席のドアを閉じた司祭に小声でたずねる。
発車は実に滑らかで、特に傷の重い軍人達はあまり苦しまない。
「思ったよりよくないです。私、サクラさん達を基準に考えていたみたいで」
化粧をしても目の下の隈は隠せず、髪も前に会ったときよりくすんでいる気がする。
「ハンターと戦士団じゃ色々違うだろうからねー。曲がりまーす」
ハンドルをそっと動かす。
車体で収まらず後ろに接続した追加荷台がゆっくりと曲がる。
そして、斜め前方に雲霞の如きVOIDが見えてきた。
「カインさんよろしくー。イコちゃんもかぶりつきで見てるから」
車列から離れ迎撃に向かったエクスシアが、一瞬動きを乱してすぐに元へ戻る。
「ちょっとサクラさん!」
「いいからいいから」
徐々に離れて行く機体を、緑の瞳がじっと見ていた。
「糞、こんなことじゃ」
カイン・A・A・マッコール(ka5336)は複雑な思いをため息と一緒に吐き出してから、使い切りの注射器を己の首に当てた。
精神安定剤が注入されるがほとんど効いた気がしない。
彼の身体能力が上がっているという理由もあるが、悩みの深いのが最大の理由かもしれない。
「来いよ」
殺意を向ける。
纏うマテリアルは正ではあるが触れれば斬れるようで、知性の低い浮遊型VOIDの群れの中にも引きつけられるものもいれば警戒してその場に留まるものもいる。
「陣地、聞こえるか。トラックの車列から引き離すためにVOIDをそちらに誘導する」
「了解。まだ負傷者が残っているので増援は出せない。武運を祈る」
カインはイコニアがいるはずの方向を最後に一度だけ見てから、マテリアルカーテンを発動させてVOIDの大群に攻撃を仕掛ける。
最初はプラズマライフルによる対空射撃だ。
巨大眼球とクラゲと虫を混ぜて悪意で歪めたようなVOIDは、個々でも集団でもカインから見れば雑魚だ。
だが集団が複数集まった大群になると無力ではない。
撃ち減らされながら移動に専念してカイン機に追いつき、歪虚としての格からは考えられないほど強烈な負マテリアルレーザーを発振する。
通常の負マテリアルレーザーでも多数のリアルブルー軍人とCAMが殺された。
それが強化されたものが数十本だ。陣地に何人か残るリアルブルー軍人が、悲劇を予測し奥歯を噛んだ。
「この程度」
カインの声は冷静を通り越して冷たい。
威力を除けば平凡以下でしかないレーザーなど、平均すれば1割を切る程度しか当たらず機体に直撃する数はさらに1割程度だ。
レーザーを防いだ聖機盾が熱を持ったのが現時点の最大の被害である。
「戦線維持か5時間は長いのか短いのかはわからないが、何時も通りやれることをやるしかないんだ」
斬艦刀を振れば当たって奇怪な目玉が潰れて落ちる。
浮遊能力はあっても射程の短さと移動力のなさは致命的だ。
1分が経過し、10分が経つ。
「まだだな」
自機のダメージの少なさと聖堂戦士団の混乱を見て敵の足止めに変更する。
浮遊する目玉は半減したが、イコニアが向かったのは別方向からCAMほどの高さのVOIDが走って来る。
ブラストハイロゥ展開。
最後の100メートルの跳躍直後に乱射された負マテリアルビームが光の翼に当たって火花を散らし、戦士団への被害を未然に防いだ。
「イコニアさんも引っ張りだこだな、またぶっ倒れなきゃ良いんだけど」
戻って来た魔導トラックにまだ彼女が乗っているのに気付き、カインは小さな息を吐いた。
●立て直し?
「我が神の信徒であれば1日説教するところですが」
アデリシアはあまりにも深いため息をつき、徒歩で突撃する聖堂戦士団にコンフェッサーの速度をあわせる。
光が戦乙女の形をとり、聖堂戦士に振り落とされたビームソードを盾で受けた。
「もう限界でしょう。下がって休憩をとりなさい」
己の倍近い年齢の司教に言う台詞ではないかもしれないが、言って止めなければ無駄に命が失われるし先程防がなければ司教が死んでいた。
「早く!」
マテリアルを精密に操りコンフェッサーに似たバルーンを造る。
予め言い含めていた戦士は少し驚く程度だが、力はあっても知性はそれほどでもないVOIDはあっさり引っかかり全力で迎撃のレーザーを放つ。
バルーン割れる音が重なって聞こえた。
つまり、擬人型第三種2機にそれぞれ1回の攻撃を無駄にさせたということだ。
「ずっとこの程度の攻撃なら、後10時間でも耐えられますが……」
機体を押しつける様にして前進、聖堂戦士に向かったビームソードを受け、少し離れた場所にいる別の戦士に3神の加護を与えてレーザーから守る。
「この程度では、ないのでしょうね」
少し足を伸ばして回収した遺品に目をやり、苦い笑みを浮かべた。
「歪虚見つけてから死ねと言っているうちはまだまだだな。来た、見た、殺した位のペースでないとこの先持たないぞ」
覚醒はしていても寛いだ様子のアウレールが声をかける。後半戦に備えて半分休憩中だ。
「そんなこと言われてもっ」
数名の聖堂戦士を率いるイコニアが泣き言を零す。
他の戦士を援護するための、異様に細かい指示を出されそれに従っているためふらふらだ。
「貴公の他が脳筋ばかりなのが仕方がなかろう。王国に塩を送るのもどうかと思うが緊急事態だ。身につけろ」
手を振ると、元は王国産刻令ゴーレムだった21cmSkK17ムスペルが猛烈な射撃を行う。
カインが引きつけた浮遊型百数十と第三種数体を炸裂弾が何度も襲い、2体の半壊第三種を残して全滅した。
「イコちゃ~ん。第3便出発するよー?」
サクラが軽くクラクションを鳴らす。
魔導トラックの銃架では古代銃「トニトルス」が元気に回り、見た目からは想像し辛い威力で擬人型第三種の胴部を削っている。
「前の部隊は全員後送したはずですよっ」
「スキルが空になった人が結構いるんだよね」
アウレールが無言でうなずくのを見てイコニアの表情が引きつる。
「その中の負傷者から後ろに送ろうかなって。軽トラック結構やられてるし」
もともと脆い上に運転手の技術が低いので、当然のように半分ほどやられている。
なお、運転手は分厚い鎧とそれ以上の頑丈さの持ち主なのでぴんぴんしている。
「手が離せないのでお願いしますっ」
「はいよー」
サクラは生き残りの魔導軽トラを引き連れ友軍と合流を目指す進路をとる。
運ぶ人は少なくても回収した遺品や大破した自動機械を載せているので余裕はほとんどない。
「随分と、その、慣れているのですね」
司教の1人である女性が戸惑っている。
新しい兵器、見慣れぬ歪虚、初めて目にする戦術など刺激が多すぎて心がついていけない。
「まあ詳しいことはイコちゃん……カーナボン司祭に聞いてよ。こっちの流儀に染まった王国人だから分かるように説明してくれると思うよ」
斜め前方に新たな浮遊型VOID群を見つけ、ハンドルを動かしアクセルを踏み込んだ。
●擬人型第三種
マテリアルキャノンが微かに唸り、黒と金のエクスシアが微かに揺れた。
反動が強烈な分速度は凄まじい。
400メートル近い距離を瞬く間に駆け抜け、1体のCAMに似たVOIDをエネルギー弾が貫いた。
「一撃とはいきませんか」
エンジンからマテリアルを補給し、粒子加速器を再度動かし銃身にエネルギーを注ぎ込む。
「無傷の6機とやりあうのは骨ですから」
2度目の射撃は気付かれ腕部で防がれる。
もっとも、マテリアルキャノン「タスラム」の強烈な威力を防ぐほどの防御力はなく、次の3射目で腕部ごと腹部を壊されその場に倒れた。
「向こうは苦戦していますね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は首は動かさず目だけをHMDに向ける。
小さく表示された急造陣地では、相変わらず聖堂戦士達が騒いでいる。
「装甲を直してくれるのは助かるんだけどね」
先行するざくろがつぶやき、前方のVOIDの不審な動きに気付く。
何もない箇所にビームソードを突き込む動作が始まると同時に転移が発動。
グランソードの真後ろから2連撃を突き込んだ。
「全部は躱せないけどっ」
滑るように横へ動いて1本を回避しもう1本は背中側に浮かしていたFシールド「ハイラハドム」で受ける。
本体にも十分な装甲を施しているので被害は軽微だ。
また、ざくろ機が十分に頑丈だと知っているのでエルバッハも容赦のない攻撃をVOIDに行う。
見た目はただのファイアーボールが、攻撃直後の無防備な背中を派手に壊して無数の触手片を吹き飛ばした。
「大型のVOIDはお任せしても?」
エルバッハの視線は天頂方向へ向いている。
上空の強風に流されながら、最低でも百は超えている浮遊型の群れが徐々に降下してくる。
「任せて!」
ざくろは元気にCAM風VOIDの迎撃に向かい、エルバッハは頭上以外にも意識を向け始める。
「そう来ますよね」
予想通りに擬人型第三種が転移してきた。
複数の大型砲を装備したエクスシア・ウィザードが接近戦に弱いとでも思ったのだろう。
エルバッハの技術で強力な魔法威力が振るわれるウィザードは十分強いが今は頭上の浮遊型に集中したい。
「楽を覚えてしまいそうだな」
聖盾剣「アレクサンダー」が何度も連続で振り抜かれる。
凄まじい膂力とそれ以上の技が必要なのに、奏多は軽々とこなすだけでなく走り続けていく。
エルバッハ機を狙った2体は凶悪な威力で体の後ろ側を切り刻まれ、オイルとも血ともつかないものを噴き出しながら前のめりに倒れ、薄れていった。
てばさきが鳴いた。
別の方角から陣地に近づくVOIDがまた現れたらしい。
「空は任せてください」
「分かった」
エルバッハにひとつ頷いてから、奏多はポロウの背に乗り東に見える擬人型3体の迎撃に向かう。
「このペースならスキルは余るが」
VOIDに獣程度に頭が回るなら、聖堂戦士団が疲労困憊になった状態で仕掛けてくるはずだ。
撤退開始まで残り2時間。
迎撃と同等以上に、準備してきたスキルの温存が重要になっていた。
「リオン殿! 援護をっ!」
90近い大目玉に包囲されつつあるエルバッハに救援要請が届く。
コクピットでため息をついた数秒後、圧倒的な速度で以て全ての浮遊型第二種を数十メートル引き離す。
ある程度狙いをつけていたウィザードから照準を引き継ぎ微修正。
司教他数名と激しく切り結ぶCAM風VOIDの背中にエネルギー弾を撃ち込んだ。
大目玉の群れが追って来る。
個々が保有する負マテリアルはかなりの量で、目玉から放たれるレーザーは射程こそ短いが威力は強烈だ。
だが、その程度ではウィザードには届かない。
爆風で十数体まとめてたたき落として距離をとる。
それを繰り返すだけで一方的に数を減らしていき、陣地の側についたときにはVOIDは数体しか残っていなかった。
●撤退
大規模作戦の一場面のようだ。
20を超えるCAM風VOIDが完全に同期して跳躍。
必死に逃げる聖堂戦士団の間近に出現した。
「見え見えだよっ」
待ち受けていたのはひたすらに巨大な光だ。
源は腹にざくろを収めた魔動冒険王『グランソード』。
八相に構えられた剣は本体全長をはるかに超えた長さで、刃から放たれる光がグランソードの巨体を眩く輝かせる。
「一刀両断」
4刀2対の負マテリアルビームソードが激しく突いてくる。
周囲のVOIDがレーザーを乱射し少しでもざくろとグランソードを傷つけ止めようとする。
「スーパーリヒトカイザー!」
全身を丸めて防御しようとしたVOIDを焼き尽くす。
くるりと剣を持ち替え剣の向きを横にする。
「横一文字斬りバージョン!」
剣を覆う光が伸びる。
その長さは実に45メートル。
大規模攻撃術じみた効果範囲と超高位前衛に似た攻撃を兼ね備えた斬撃が、この場の最強VOID部隊を見事に半壊させた。
「ごめん」
なのにざくろは逃げ腰だ。
前方300メートルに10体編成の擬人型第三種が2隊、その背後数百メートルに同数の集団がいるのだから仕方が無い。
もう、スキルは空なのだ。
「戦士団の殿を頼む。私は」
辛うじて生き残ったVOIDの至近をアルトが走り抜ける。
CAMに近い外観のVOIDが、己を仕留めた刃を視認すらできずに核を切り裂かれて絶命する。
「2隊は潰しておく」
車列と並走していたVolcaniusが炸裂弾を連射する。
狙うのは地面這うようして近づいていた大目玉触手の群れだ。
この時点まで気付かれなかったのは大したものだが所詮は下位のVOID。
Volcaniusの中でも重火力重装甲を誇る紅蓮の砲撃を2連射受けただけで完全に崩壊した。
「少し失敗したかも……」
ユウが珍しく気弱な言葉を口にした。
スキルが残り少ない。魔剣「バルムンク」で2体まとめで擬人型第三種を切り裂いていはするが、この技による複数体同時撃破は50秒ぶりだ。
負マテリアルの刃とレーザーがユウとクウを狙う。
飛び降りたユウは圧倒的反応速度で実質的同時攻撃をただ数が多いだけの単発攻撃に貶め、ビームソードの間合から逃れたクウは接近する浮遊型を打ち落とすことでユウを援護する。
だが敵の数が多い。
しかも増援が数体ずつやって来ているのでこの場に留まれば確実に死ぬ。
「こっちだ!」
アルトが大声で呼びかける。
まずクウがアルトに合流し、それを見届けたユウが反撃を止めてクウを追う。
移動に専念すると擬人型第三種の足ではユウに追いつけず、とにかく追いつくことを目的に全力の短距離ワープを行う。
「やれ紅蓮!」
何度も被弾しぼろぼろになったVolcaniusが雄々しく砲を向けて炸裂弾を撃ち出し、そこから別れた無数の子弾が跳躍直後のVOID隊を撃つ。
回避しづらい高威力範囲攻撃の効果は相も変わらず絶大で、2人の守護者でも手間取っていた擬人型第三種群非常に効率よく傷つけ数発で1体を全滅させていく。
「助かりました」
とはいえ基本的な攻撃力はユウ達の方が上だ。
回避が得意な個体も防御が得意な個体も、素早く動きながら斬りつけるという単純かつ極めて強力な攻撃によりあっさりと討ち取られた。
「お互い様だ」
苦笑を浮かべる。
アルトの超覚醒の効果はまだ続いている。
約5時間前に救援にやって来たときは使わなくても十分だったが、今はこれ無しでは少々厳しい。
なにしろ、この時を待っていたかのようにVOIDの増援が次々現れているのだから。
「どう手分けする?」
「そうですね……」
敵味方が限られた空間に閉じ込められているなら、鍛え抜いた力でVOIDを圧倒できる。
だが広大な空間で疲れ果てた友軍を守りながらとなると現状は難易度が非常に高い。
「あっ」
ユウが破顔した。
車列の中央、辛うじて体力を残した戦士に護衛されたエクスシアが、圧倒的な射程と十分な火力で以て少数のVOIDを次々撃破している。
本来なら予備弾倉の運搬にもリチャージにも苦労する砲ではあるが、乗り手のエルバッハがイジェクションを使って補っている。
これなら移動距離が予定より短くて済む。
戦闘に集中できる分、有利に戦える。
「後は予定通りだ。できるだけ仕留めて楽をさせてやろう」
「はい!」
ワイバーンに乗り離れて行くドラグーンを見送り、アルトは一度だけ車列の進行方向を見る。
部隊としての強さは聖堂戦士団よりは上だが、視界内にいるVOIDの4分の1に襲われただけでも全滅する。
「大精霊にも負担をかけるな」
苦く笑い、超覚醒により向上した速度と戦闘力で以て蹂躙を開始した。
●引き継ぎ
「5時間経過ぁ!」
凶悪に研がれた鋭い穂先が巨大な円を描く。
擬人型第三種が穂先から逃げようとしても無駄だ。
旭が注いだエネルギーは、凄まじい速度だけでなくVOIDの隊相手に力負けしない力を与えている。
近づきすぎた擬人型は腕や脚ごと体幹をえぐり取られ、多少離れた位置にいたVOIDも気体で構成されているかのように軽々と全身を刻まれ崩壊する。
軽やかに見えるのは目の錯覚だ。
実際はひたすら速く、そして重い。
旭が息を吐く。
超覚醒をしていても負担は大きく、息も軽く乱れ手足に疲れを感じる。
「てめぇらを全部防ぐのは無理でも」
1分間生き残ったVOIDが跳躍していく。
ある個体は逃げ、ある個体は聖堂戦士団の車列を追い、またある個体は潜んで奇襲でも仕掛けるつもりかクレーターの方向へ向かう。
その数は旭との戦闘が始まる前の2割以下だ。
「削れるだけ削ってやる」
攻撃用のスキルが尽きる。
微かな正マテリアルの変化にVOIDが気付き、周辺のVOID全てを引き寄せて世界の守護者を刈ろうと足掻く。
「へっ」
不敵に笑う。
超覚醒で名馬並の速度になった足でワイバーン・ロジャックに追いつき、そのまま跳躍して鞍の上に飛び乗る。
「ついて来いよ」
挑発する腕には細かな傷はあっても血の跡はない。
返り血はVOIDの消滅に伴い消えているし、優れた回避能力と強固な防御によりかすり傷程度の傷しか受けていないのだ。
旭が3本指を立て、1つ折り、2つ折り、3本目を折った瞬間大精霊の力を引き出す。
清らかな光が地上の覚醒者達を包み込んだ。
「地上は食い止めます!」
魔剣を両手で構えたユウが、単身で擬人型第三種の群れに飛び込んだ。
こらまで何度もハンターに蹂躙され離散集合を繰り返したVOID達は、当初は微かでに存在した連携を完全に失っている。
個々のVOIDは相変わらず強い。
特に擬人型第三種は、ビームソード2連撃という乱戦でも強い攻撃手段を持っている。
ユウの手に合っても禍々しい魔剣が光を帯びた。
「いけるっ」
切っ先を軽く動かす。
CAMであればエンジンにあたる部位を斬り、斬り、押し砕き、上半身が消滅した擬人型の腰を蹴って次の集団に襲いかかる。
「俺まで回復すれば楽だったんだがな」
旭は新たな部隊と合流した。
少しでも彼等の力を温存するため、少しでもVOIDの戦力を削るため、先頭に立ってVOIDの注意と攻撃を引きつける。
「守護者様に恥ずかしい所を見せるな! 守護者様を通じて大精霊様も見て見てらっしゃるぞっ!」
友軍の士気は適切だ。
聖堂戦士団のように逸りすぎることはなく、勇気と慎重さの調和のとれた前進と攻撃ができている。
「見てるかどうかは分からないけどよ」
スキルが尽きても超覚醒の効果は切れず、膨大な経験を積み上げて得た体力と技は旭を裏切らない。
槍でVOIDを貫き矢と銃弾の的にして、負マテリアルレーザーの集中砲火を引き受けることで友軍への被害を0へと近付ける。
「喜んではくれると思うぜ!」
擬人型の動きにはもう慣れた。
友軍の指揮官を狙って跳ぼうとしたVOIDを、胸の分厚い装甲から刺し貫いて核まで砕いて消滅させた。
「これなら」
友軍の側面でユウがつぶやく。
元々、単独でこの場を受け持つ予定だった部隊だ。ハンターの援護により最小限の消耗でVOID掃討を進めている。
「少しでも援護を……」
ユウが相談する前にクウが飛び立つ。
嬉しくなる。
ユウを妹のように思い守護してくれる態度も、歪虚相手の戦場を駆け抜け共に身につけた力も、得ようと思って得られるものではない。
だから大事にする。
決して無理はせずに進路上の浮遊型を切り捨て、5キロ飛んだ先にいた第三種の群れを背後から襲って気配の最も強い個体の首を斬り飛ばす。
「ここまでにしよう」
旭に回復して貰ったブレスを放とうとしたクウが、少しだけ残念そうな気配で急旋回。
地面すれすれを飛んで遠くのVOIDには気付かれないようしながら、速度を調節して擬人型に自らを追わせる。
5時間以上戦っているので擬人型の跳躍距離もレーザーの射程も把握できている。
驚くほど安全に引きずり回して負マテリアルを消耗させ、最後は圧倒的速度で引き離し見失わした上で安全圏まで脱出した。
その後、友軍は翌日夜明けまで粘り次の部隊に後退した。
予想された全滅という結果にはならず、戦死者は1割で済んだ。
魔導ママチャリの音はいつも通りに軽快だ。
反比例して暴れ馬な振動を制御しながら、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)は秀麗な顔に渋い表情を浮かべた。
酷い有様だ。
余力がある部隊は無意味に逸り、退却に全力を出すべき部隊は練度低さ故に手間取っている。
部隊間の連携は無いも当然で、総合すると泥沼の戦争でじわじわ失血死する軍隊そのものだ。
「怪我人は足手まといだ。後は任せて下がっていろ」
相手の心情に配慮する時間的余裕はない。
細心の注意を必要とされる運転と、大声での呼びかけと、敵への警戒を同時に行っているのだから。
「ムスペル! 私の近くに出るぞ。撃て!」
前方で聖堂戦士団がどよめいた。戦っていた擬人型第三種を見失ったのだ。
空気が微かに揺れ、CAMより一回り大きな触手塊にアウレールの目の前に現れた。
「この程度の頭はあるか」
左右のビームソードが大気を焼きながらアウレールに迫る。
微かにタイミングをずらした2連斬撃は酷く躱し辛い。
「だがこの程度ではな」
アウレールが口の端を釣り上げる。
聖祈剣「ノートゥング」で右のビームの柄を弾いてずれを大きくし、巨大な盾でもある聖盾剣「アレクサンダー」を軽々と振るって左のビームを受け流し右のビームを受け止める。
2剣の軌道が防御から攻撃に切り替わる。
軌道はビームソードと似てはいるが速度も正確さも明らかに上回り、それだけでなく動きの始まりも読みにくい。
鉄の触手が左右からえぐり取られる。
CAM似の体が激しく揺れて巨大な隙を晒す。
そして、2剣と同時に放たれていたとしか見えない斬撃が、擬人型第三種を腰から胸まで切断した。
「あれでもまだ生きてるんだ」
魔動冒険王『グランソード』から時音 ざくろ(ka1250)の声が聞こえる。
VOIDの傷口で蠢く触手とアウレールが庇う重軽傷者を一瞥し、聖堂戦士団主力との合流を中断し術を紡ぐ。
「吸い込め電磁の竜巻っ」
ガウスジェイルだ。
回避能力は半減し効果範囲も特に広くないという術ではあるが、重傷を負いルクシュヴァリエに迫られたVOIDは冷静さを失いグランソードを狙って防がれる。
だが敵は1体だけではない。遠くのVOIDが、ハンターの近くで戦っていた司祭にレーザー充填済みの腕部を向けた。
「私っ?」
盾を構えることはできたがどう見ても薄い。
VOIDに顔面にあたる部位に酷薄な感情が漂い、しかし司祭に向かわずねじ曲げられた負マテリアルレーザーを見て歯ぎしりする。
「超電磁☆バリアー!」
機体全体に拡大された攻性防壁がレーザーをはね飛ばす。
「そこの聖堂戦士! 周囲への警戒を絶やすな。ここは敵の間合だ」
アウレールは聖堂戦士団主力と戦う4体にも注意に注意を向けさせ。
「グランソード……縦一文字切り!」
スキルを使わなくても十分に強い斬撃が、動きの止まったVOIDの頭から腰までを切断した。
●擬人型第三種
聖堂戦士団を攻める敵主力に最初に接触したのは、2体のワイバーンと2人の守護者であった。
著名なVOIDでも歪虚軍将(歪虚王の1つ下の分類)ですらない擬人型など一瞬で蹴散らされる……という展開にはならない。
「護りながらの5時間か。なげーな」
地上からのレーザーへの対処はワイバーン・ロジャックに任せ、岩井崎 旭(ka0234)は聖堂戦士団への攻撃を防ぐことを優先する。
今回は1戦闘では終わらない。
遠くに知覚を向けると、シェオル・ノドは不在だがそれ以外のVOIDの気配が大量に……3桁後半は確実に感じられる。
「私が前に」
「任せたっ」
旭が言い終わるより速く、空色のワイバーンとドラグーンの守護者が急降下する。
巧みに速度を調節しても全てのVOIDと適度な距離を保つ難しく、2本のビームソードに限界まで力を注いだCAM風VOIDに飛びかかられた。
ワイバーン・クウが地表から2メートルでくるりと反転。
ビームソードはクウの1メートル上と1メートル下を無意味に空振りする。
クウと完璧に連携した斬撃が、CAMなら操縦席に当たる部位を切り裂いた。
「このままいこう」
クウが別れて攻撃するかと身振りで尋ねて来たので謝絶する。
敵の新たがいつ現れてもおかしくない。
単身でも速いとはいえクウの半分程度でしかなく、今は一緒に行動した方が全員のためになるはずだ。
「大丈夫」
後方の司祭と一瞬視線があったのでユウ(ka6891)力強くうなずく。
司祭はほっとして、暴走する聖堂戦士団への呼びかけを始めた。
「ここが」
私に死に場所だと言いかけた司教を、精悍なデザインの戦僧正コンフェッサーが跨いで行った。
「失礼」
血だらけでぽかんとする司教に声をかけ、聖堂教会視点では異教の戦神に仕えるアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)がコンフェッサーをさらに前進させる。
ビームソードが強烈な負の気配を撒き散らしながら右から2本、左からも2本突き込まれる。
「これほど大規模な戦闘は久しぶりなのですが……まあ、なんとかやってみましょう」
回避しきれないと判断するが受けもさほど重視しない。
耐熱仕様のマントで剣状のビームによる被害を減らした上で、多めに搭載した装甲でもってビームソードに耐え戦闘能力を維持する。
アデリシア機のかすり傷以上軽傷未満のダメージに気付き、近くの聖堂戦士が治癒術を使う。少し、傷が残っていた。
「ハンターと比べると力不足ではありますが」
アデリシアが一度マイクを切ってマイクを再起動する。
「一度に51人も必要ありません。ローテーションを」
「礼は言う。しかし」
「私達がいてもある意味あなた方が主力なんですから。言うことを聞かないのなら、私が強引にでもトラックに放り込みます」
せいぜい2メートル程度の打撃武器を強烈な勢いでVOIDに打ち付け、敵2体をその場に拘束しながらアデリシアが続ける。
「せめて前衛後衛に別れて。そこの貴方、もう息が乱れていますよ」
マテリアルをネット状にして擬人型第三種の動きを乱し、八角棍「紫電」に強固なマテリアルをまとわせ振り下ろす。
目玉が3つ以上ある頭部が胸部にめり込み、VOIDが大きく体勢を崩して数歩後ろに下がった。
並の鉄より固いはずの触手がまとめて斬り飛ばされる。
1カ所2箇所ではなく、ポロウ・てばさきが飛ぶ先全てだ。
それを為したのは東條 奏多(ka6425)と彼の手にある絶火刀「シャイターン」。
筋を担当する鉄触手だけでなく骨を担当する鉄触手も断ち切った結果、擬人型第三種はビームソードを振り回すこともレーザーの狙いをつけることもできなくなった。
「熱心なのは分かるんだが」
奏多のつぶやきは聖堂戦士団に届いていない。
「ハンターがやったぞ!」
「すげぇ、俺達も負けてられねぇぞ!」
アウレールやアデリシアに注意され多少はましになった聖導士達が、別のVOIDに襲いかかって短距離テレポートで相手を見失う。
奏多とてばさきは大きく回り込んで、アデリシアが食い止めた第三種の背を襲う。
アサルトディスタンスはこういう場面では特に良く効く。
背を向けたままのVOIDの右脚から腹までを切り裂き大破へ追い込んだ。
「俺達が思いきった作戦をできるのは、こうして事後フォローをしてくれる人達がいるお陰だ」
大きく見えないところで沢山の人に助けてもらってる。
だからこんなところで見捨てる、犠牲にするなんてあり得ない。
そうは思うのだが貴重な戦力自身が必要以上に前に出ているのを見ると一言言いたくなる。
「そこのあんたとあんたとあんただ。せめて訓練通りにしろ。連携訓練も受けているよな?」
気配の強い聖導士に強く言う。
奏多は聖導士でもなく、王国人でもなく、クリムゾンウェスト出身者ですらない。
だが歪虚と戦うハンターという要素は全てを補って余り有る。
「分かった。見せてやるぜ俺達の力をよぅ」
テンションの高すぎる聖堂戦士団を眺め、奏多とてばさきが同時にため息を吐いた。
●後送
魔導トラックが音も立てずに止まった。
アイドリング音が安定しているのは整備状態のみでは説明がつかない。
トラックに必要以上の負担をかけない運転ができているのだ。
「へーい、そこのイコちゃん、私のトラックでタンデムしなーい?」
ナンパ男風に誘いをかけるのは宵待 サクラ(ka5561)。
司祭と付き合いの長い、機会さえあれば守護者になってもおかしくない精鋭ハンターだ。
「よろしくお願いします」
イコニア司祭が深く、ただし素早く頭を下げてからサクラと合流する。
どこからVOIDが襲って来てもおかしくないので礼儀よりも警戒優先だ。
「承知した」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は軽くうなずき、新兵あるいは新人覚醒者に言い聞かせるときにように気配を剥き出しにした。
「長時間持つようにペース配分を考えてもらいたい」
こっそり出撃しようとした司教に歩み寄る。
指揮官とは別の司教だ。
歪虚に対する戦意は似たようなもので、指揮官と比べると責任が軽い分自制心が緩い。
「ここで無理をして死んだらもう歪虚を殴れないぞ」
回り込んで後ろ手に隠されたメイスを見下ろし、意識して嫌みったらしく指摘する。
司教もその賛同者も新人時代の扱きを思い出す。即座に直立不動になりアルトの説得に従った。
「動かしますね、楽にしてください」
魔導軽トラの荷台に積み込まれた負傷者を魔導トラックに荷台に移す。
魔導トラックも決して快適ではないが、狭いにもほどがある軽トラよりはずっとましだ。
「イコちゃんどんな感じ?」
助手席のドアを閉じた司祭に小声でたずねる。
発車は実に滑らかで、特に傷の重い軍人達はあまり苦しまない。
「思ったよりよくないです。私、サクラさん達を基準に考えていたみたいで」
化粧をしても目の下の隈は隠せず、髪も前に会ったときよりくすんでいる気がする。
「ハンターと戦士団じゃ色々違うだろうからねー。曲がりまーす」
ハンドルをそっと動かす。
車体で収まらず後ろに接続した追加荷台がゆっくりと曲がる。
そして、斜め前方に雲霞の如きVOIDが見えてきた。
「カインさんよろしくー。イコちゃんもかぶりつきで見てるから」
車列から離れ迎撃に向かったエクスシアが、一瞬動きを乱してすぐに元へ戻る。
「ちょっとサクラさん!」
「いいからいいから」
徐々に離れて行く機体を、緑の瞳がじっと見ていた。
「糞、こんなことじゃ」
カイン・A・A・マッコール(ka5336)は複雑な思いをため息と一緒に吐き出してから、使い切りの注射器を己の首に当てた。
精神安定剤が注入されるがほとんど効いた気がしない。
彼の身体能力が上がっているという理由もあるが、悩みの深いのが最大の理由かもしれない。
「来いよ」
殺意を向ける。
纏うマテリアルは正ではあるが触れれば斬れるようで、知性の低い浮遊型VOIDの群れの中にも引きつけられるものもいれば警戒してその場に留まるものもいる。
「陣地、聞こえるか。トラックの車列から引き離すためにVOIDをそちらに誘導する」
「了解。まだ負傷者が残っているので増援は出せない。武運を祈る」
カインはイコニアがいるはずの方向を最後に一度だけ見てから、マテリアルカーテンを発動させてVOIDの大群に攻撃を仕掛ける。
最初はプラズマライフルによる対空射撃だ。
巨大眼球とクラゲと虫を混ぜて悪意で歪めたようなVOIDは、個々でも集団でもカインから見れば雑魚だ。
だが集団が複数集まった大群になると無力ではない。
撃ち減らされながら移動に専念してカイン機に追いつき、歪虚としての格からは考えられないほど強烈な負マテリアルレーザーを発振する。
通常の負マテリアルレーザーでも多数のリアルブルー軍人とCAMが殺された。
それが強化されたものが数十本だ。陣地に何人か残るリアルブルー軍人が、悲劇を予測し奥歯を噛んだ。
「この程度」
カインの声は冷静を通り越して冷たい。
威力を除けば平凡以下でしかないレーザーなど、平均すれば1割を切る程度しか当たらず機体に直撃する数はさらに1割程度だ。
レーザーを防いだ聖機盾が熱を持ったのが現時点の最大の被害である。
「戦線維持か5時間は長いのか短いのかはわからないが、何時も通りやれることをやるしかないんだ」
斬艦刀を振れば当たって奇怪な目玉が潰れて落ちる。
浮遊能力はあっても射程の短さと移動力のなさは致命的だ。
1分が経過し、10分が経つ。
「まだだな」
自機のダメージの少なさと聖堂戦士団の混乱を見て敵の足止めに変更する。
浮遊する目玉は半減したが、イコニアが向かったのは別方向からCAMほどの高さのVOIDが走って来る。
ブラストハイロゥ展開。
最後の100メートルの跳躍直後に乱射された負マテリアルビームが光の翼に当たって火花を散らし、戦士団への被害を未然に防いだ。
「イコニアさんも引っ張りだこだな、またぶっ倒れなきゃ良いんだけど」
戻って来た魔導トラックにまだ彼女が乗っているのに気付き、カインは小さな息を吐いた。
●立て直し?
「我が神の信徒であれば1日説教するところですが」
アデリシアはあまりにも深いため息をつき、徒歩で突撃する聖堂戦士団にコンフェッサーの速度をあわせる。
光が戦乙女の形をとり、聖堂戦士に振り落とされたビームソードを盾で受けた。
「もう限界でしょう。下がって休憩をとりなさい」
己の倍近い年齢の司教に言う台詞ではないかもしれないが、言って止めなければ無駄に命が失われるし先程防がなければ司教が死んでいた。
「早く!」
マテリアルを精密に操りコンフェッサーに似たバルーンを造る。
予め言い含めていた戦士は少し驚く程度だが、力はあっても知性はそれほどでもないVOIDはあっさり引っかかり全力で迎撃のレーザーを放つ。
バルーン割れる音が重なって聞こえた。
つまり、擬人型第三種2機にそれぞれ1回の攻撃を無駄にさせたということだ。
「ずっとこの程度の攻撃なら、後10時間でも耐えられますが……」
機体を押しつける様にして前進、聖堂戦士に向かったビームソードを受け、少し離れた場所にいる別の戦士に3神の加護を与えてレーザーから守る。
「この程度では、ないのでしょうね」
少し足を伸ばして回収した遺品に目をやり、苦い笑みを浮かべた。
「歪虚見つけてから死ねと言っているうちはまだまだだな。来た、見た、殺した位のペースでないとこの先持たないぞ」
覚醒はしていても寛いだ様子のアウレールが声をかける。後半戦に備えて半分休憩中だ。
「そんなこと言われてもっ」
数名の聖堂戦士を率いるイコニアが泣き言を零す。
他の戦士を援護するための、異様に細かい指示を出されそれに従っているためふらふらだ。
「貴公の他が脳筋ばかりなのが仕方がなかろう。王国に塩を送るのもどうかと思うが緊急事態だ。身につけろ」
手を振ると、元は王国産刻令ゴーレムだった21cmSkK17ムスペルが猛烈な射撃を行う。
カインが引きつけた浮遊型百数十と第三種数体を炸裂弾が何度も襲い、2体の半壊第三種を残して全滅した。
「イコちゃ~ん。第3便出発するよー?」
サクラが軽くクラクションを鳴らす。
魔導トラックの銃架では古代銃「トニトルス」が元気に回り、見た目からは想像し辛い威力で擬人型第三種の胴部を削っている。
「前の部隊は全員後送したはずですよっ」
「スキルが空になった人が結構いるんだよね」
アウレールが無言でうなずくのを見てイコニアの表情が引きつる。
「その中の負傷者から後ろに送ろうかなって。軽トラック結構やられてるし」
もともと脆い上に運転手の技術が低いので、当然のように半分ほどやられている。
なお、運転手は分厚い鎧とそれ以上の頑丈さの持ち主なのでぴんぴんしている。
「手が離せないのでお願いしますっ」
「はいよー」
サクラは生き残りの魔導軽トラを引き連れ友軍と合流を目指す進路をとる。
運ぶ人は少なくても回収した遺品や大破した自動機械を載せているので余裕はほとんどない。
「随分と、その、慣れているのですね」
司教の1人である女性が戸惑っている。
新しい兵器、見慣れぬ歪虚、初めて目にする戦術など刺激が多すぎて心がついていけない。
「まあ詳しいことはイコちゃん……カーナボン司祭に聞いてよ。こっちの流儀に染まった王国人だから分かるように説明してくれると思うよ」
斜め前方に新たな浮遊型VOID群を見つけ、ハンドルを動かしアクセルを踏み込んだ。
●擬人型第三種
マテリアルキャノンが微かに唸り、黒と金のエクスシアが微かに揺れた。
反動が強烈な分速度は凄まじい。
400メートル近い距離を瞬く間に駆け抜け、1体のCAMに似たVOIDをエネルギー弾が貫いた。
「一撃とはいきませんか」
エンジンからマテリアルを補給し、粒子加速器を再度動かし銃身にエネルギーを注ぎ込む。
「無傷の6機とやりあうのは骨ですから」
2度目の射撃は気付かれ腕部で防がれる。
もっとも、マテリアルキャノン「タスラム」の強烈な威力を防ぐほどの防御力はなく、次の3射目で腕部ごと腹部を壊されその場に倒れた。
「向こうは苦戦していますね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は首は動かさず目だけをHMDに向ける。
小さく表示された急造陣地では、相変わらず聖堂戦士達が騒いでいる。
「装甲を直してくれるのは助かるんだけどね」
先行するざくろがつぶやき、前方のVOIDの不審な動きに気付く。
何もない箇所にビームソードを突き込む動作が始まると同時に転移が発動。
グランソードの真後ろから2連撃を突き込んだ。
「全部は躱せないけどっ」
滑るように横へ動いて1本を回避しもう1本は背中側に浮かしていたFシールド「ハイラハドム」で受ける。
本体にも十分な装甲を施しているので被害は軽微だ。
また、ざくろ機が十分に頑丈だと知っているのでエルバッハも容赦のない攻撃をVOIDに行う。
見た目はただのファイアーボールが、攻撃直後の無防備な背中を派手に壊して無数の触手片を吹き飛ばした。
「大型のVOIDはお任せしても?」
エルバッハの視線は天頂方向へ向いている。
上空の強風に流されながら、最低でも百は超えている浮遊型の群れが徐々に降下してくる。
「任せて!」
ざくろは元気にCAM風VOIDの迎撃に向かい、エルバッハは頭上以外にも意識を向け始める。
「そう来ますよね」
予想通りに擬人型第三種が転移してきた。
複数の大型砲を装備したエクスシア・ウィザードが接近戦に弱いとでも思ったのだろう。
エルバッハの技術で強力な魔法威力が振るわれるウィザードは十分強いが今は頭上の浮遊型に集中したい。
「楽を覚えてしまいそうだな」
聖盾剣「アレクサンダー」が何度も連続で振り抜かれる。
凄まじい膂力とそれ以上の技が必要なのに、奏多は軽々とこなすだけでなく走り続けていく。
エルバッハ機を狙った2体は凶悪な威力で体の後ろ側を切り刻まれ、オイルとも血ともつかないものを噴き出しながら前のめりに倒れ、薄れていった。
てばさきが鳴いた。
別の方角から陣地に近づくVOIDがまた現れたらしい。
「空は任せてください」
「分かった」
エルバッハにひとつ頷いてから、奏多はポロウの背に乗り東に見える擬人型3体の迎撃に向かう。
「このペースならスキルは余るが」
VOIDに獣程度に頭が回るなら、聖堂戦士団が疲労困憊になった状態で仕掛けてくるはずだ。
撤退開始まで残り2時間。
迎撃と同等以上に、準備してきたスキルの温存が重要になっていた。
「リオン殿! 援護をっ!」
90近い大目玉に包囲されつつあるエルバッハに救援要請が届く。
コクピットでため息をついた数秒後、圧倒的な速度で以て全ての浮遊型第二種を数十メートル引き離す。
ある程度狙いをつけていたウィザードから照準を引き継ぎ微修正。
司教他数名と激しく切り結ぶCAM風VOIDの背中にエネルギー弾を撃ち込んだ。
大目玉の群れが追って来る。
個々が保有する負マテリアルはかなりの量で、目玉から放たれるレーザーは射程こそ短いが威力は強烈だ。
だが、その程度ではウィザードには届かない。
爆風で十数体まとめてたたき落として距離をとる。
それを繰り返すだけで一方的に数を減らしていき、陣地の側についたときにはVOIDは数体しか残っていなかった。
●撤退
大規模作戦の一場面のようだ。
20を超えるCAM風VOIDが完全に同期して跳躍。
必死に逃げる聖堂戦士団の間近に出現した。
「見え見えだよっ」
待ち受けていたのはひたすらに巨大な光だ。
源は腹にざくろを収めた魔動冒険王『グランソード』。
八相に構えられた剣は本体全長をはるかに超えた長さで、刃から放たれる光がグランソードの巨体を眩く輝かせる。
「一刀両断」
4刀2対の負マテリアルビームソードが激しく突いてくる。
周囲のVOIDがレーザーを乱射し少しでもざくろとグランソードを傷つけ止めようとする。
「スーパーリヒトカイザー!」
全身を丸めて防御しようとしたVOIDを焼き尽くす。
くるりと剣を持ち替え剣の向きを横にする。
「横一文字斬りバージョン!」
剣を覆う光が伸びる。
その長さは実に45メートル。
大規模攻撃術じみた効果範囲と超高位前衛に似た攻撃を兼ね備えた斬撃が、この場の最強VOID部隊を見事に半壊させた。
「ごめん」
なのにざくろは逃げ腰だ。
前方300メートルに10体編成の擬人型第三種が2隊、その背後数百メートルに同数の集団がいるのだから仕方が無い。
もう、スキルは空なのだ。
「戦士団の殿を頼む。私は」
辛うじて生き残ったVOIDの至近をアルトが走り抜ける。
CAMに近い外観のVOIDが、己を仕留めた刃を視認すらできずに核を切り裂かれて絶命する。
「2隊は潰しておく」
車列と並走していたVolcaniusが炸裂弾を連射する。
狙うのは地面這うようして近づいていた大目玉触手の群れだ。
この時点まで気付かれなかったのは大したものだが所詮は下位のVOID。
Volcaniusの中でも重火力重装甲を誇る紅蓮の砲撃を2連射受けただけで完全に崩壊した。
「少し失敗したかも……」
ユウが珍しく気弱な言葉を口にした。
スキルが残り少ない。魔剣「バルムンク」で2体まとめで擬人型第三種を切り裂いていはするが、この技による複数体同時撃破は50秒ぶりだ。
負マテリアルの刃とレーザーがユウとクウを狙う。
飛び降りたユウは圧倒的反応速度で実質的同時攻撃をただ数が多いだけの単発攻撃に貶め、ビームソードの間合から逃れたクウは接近する浮遊型を打ち落とすことでユウを援護する。
だが敵の数が多い。
しかも増援が数体ずつやって来ているのでこの場に留まれば確実に死ぬ。
「こっちだ!」
アルトが大声で呼びかける。
まずクウがアルトに合流し、それを見届けたユウが反撃を止めてクウを追う。
移動に専念すると擬人型第三種の足ではユウに追いつけず、とにかく追いつくことを目的に全力の短距離ワープを行う。
「やれ紅蓮!」
何度も被弾しぼろぼろになったVolcaniusが雄々しく砲を向けて炸裂弾を撃ち出し、そこから別れた無数の子弾が跳躍直後のVOID隊を撃つ。
回避しづらい高威力範囲攻撃の効果は相も変わらず絶大で、2人の守護者でも手間取っていた擬人型第三種群非常に効率よく傷つけ数発で1体を全滅させていく。
「助かりました」
とはいえ基本的な攻撃力はユウ達の方が上だ。
回避が得意な個体も防御が得意な個体も、素早く動きながら斬りつけるという単純かつ極めて強力な攻撃によりあっさりと討ち取られた。
「お互い様だ」
苦笑を浮かべる。
アルトの超覚醒の効果はまだ続いている。
約5時間前に救援にやって来たときは使わなくても十分だったが、今はこれ無しでは少々厳しい。
なにしろ、この時を待っていたかのようにVOIDの増援が次々現れているのだから。
「どう手分けする?」
「そうですね……」
敵味方が限られた空間に閉じ込められているなら、鍛え抜いた力でVOIDを圧倒できる。
だが広大な空間で疲れ果てた友軍を守りながらとなると現状は難易度が非常に高い。
「あっ」
ユウが破顔した。
車列の中央、辛うじて体力を残した戦士に護衛されたエクスシアが、圧倒的な射程と十分な火力で以て少数のVOIDを次々撃破している。
本来なら予備弾倉の運搬にもリチャージにも苦労する砲ではあるが、乗り手のエルバッハがイジェクションを使って補っている。
これなら移動距離が予定より短くて済む。
戦闘に集中できる分、有利に戦える。
「後は予定通りだ。できるだけ仕留めて楽をさせてやろう」
「はい!」
ワイバーンに乗り離れて行くドラグーンを見送り、アルトは一度だけ車列の進行方向を見る。
部隊としての強さは聖堂戦士団よりは上だが、視界内にいるVOIDの4分の1に襲われただけでも全滅する。
「大精霊にも負担をかけるな」
苦く笑い、超覚醒により向上した速度と戦闘力で以て蹂躙を開始した。
●引き継ぎ
「5時間経過ぁ!」
凶悪に研がれた鋭い穂先が巨大な円を描く。
擬人型第三種が穂先から逃げようとしても無駄だ。
旭が注いだエネルギーは、凄まじい速度だけでなくVOIDの隊相手に力負けしない力を与えている。
近づきすぎた擬人型は腕や脚ごと体幹をえぐり取られ、多少離れた位置にいたVOIDも気体で構成されているかのように軽々と全身を刻まれ崩壊する。
軽やかに見えるのは目の錯覚だ。
実際はひたすら速く、そして重い。
旭が息を吐く。
超覚醒をしていても負担は大きく、息も軽く乱れ手足に疲れを感じる。
「てめぇらを全部防ぐのは無理でも」
1分間生き残ったVOIDが跳躍していく。
ある個体は逃げ、ある個体は聖堂戦士団の車列を追い、またある個体は潜んで奇襲でも仕掛けるつもりかクレーターの方向へ向かう。
その数は旭との戦闘が始まる前の2割以下だ。
「削れるだけ削ってやる」
攻撃用のスキルが尽きる。
微かな正マテリアルの変化にVOIDが気付き、周辺のVOID全てを引き寄せて世界の守護者を刈ろうと足掻く。
「へっ」
不敵に笑う。
超覚醒で名馬並の速度になった足でワイバーン・ロジャックに追いつき、そのまま跳躍して鞍の上に飛び乗る。
「ついて来いよ」
挑発する腕には細かな傷はあっても血の跡はない。
返り血はVOIDの消滅に伴い消えているし、優れた回避能力と強固な防御によりかすり傷程度の傷しか受けていないのだ。
旭が3本指を立て、1つ折り、2つ折り、3本目を折った瞬間大精霊の力を引き出す。
清らかな光が地上の覚醒者達を包み込んだ。
「地上は食い止めます!」
魔剣を両手で構えたユウが、単身で擬人型第三種の群れに飛び込んだ。
こらまで何度もハンターに蹂躙され離散集合を繰り返したVOID達は、当初は微かでに存在した連携を完全に失っている。
個々のVOIDは相変わらず強い。
特に擬人型第三種は、ビームソード2連撃という乱戦でも強い攻撃手段を持っている。
ユウの手に合っても禍々しい魔剣が光を帯びた。
「いけるっ」
切っ先を軽く動かす。
CAMであればエンジンにあたる部位を斬り、斬り、押し砕き、上半身が消滅した擬人型の腰を蹴って次の集団に襲いかかる。
「俺まで回復すれば楽だったんだがな」
旭は新たな部隊と合流した。
少しでも彼等の力を温存するため、少しでもVOIDの戦力を削るため、先頭に立ってVOIDの注意と攻撃を引きつける。
「守護者様に恥ずかしい所を見せるな! 守護者様を通じて大精霊様も見て見てらっしゃるぞっ!」
友軍の士気は適切だ。
聖堂戦士団のように逸りすぎることはなく、勇気と慎重さの調和のとれた前進と攻撃ができている。
「見てるかどうかは分からないけどよ」
スキルが尽きても超覚醒の効果は切れず、膨大な経験を積み上げて得た体力と技は旭を裏切らない。
槍でVOIDを貫き矢と銃弾の的にして、負マテリアルレーザーの集中砲火を引き受けることで友軍への被害を0へと近付ける。
「喜んではくれると思うぜ!」
擬人型の動きにはもう慣れた。
友軍の指揮官を狙って跳ぼうとしたVOIDを、胸の分厚い装甲から刺し貫いて核まで砕いて消滅させた。
「これなら」
友軍の側面でユウがつぶやく。
元々、単独でこの場を受け持つ予定だった部隊だ。ハンターの援護により最小限の消耗でVOID掃討を進めている。
「少しでも援護を……」
ユウが相談する前にクウが飛び立つ。
嬉しくなる。
ユウを妹のように思い守護してくれる態度も、歪虚相手の戦場を駆け抜け共に身につけた力も、得ようと思って得られるものではない。
だから大事にする。
決して無理はせずに進路上の浮遊型を切り捨て、5キロ飛んだ先にいた第三種の群れを背後から襲って気配の最も強い個体の首を斬り飛ばす。
「ここまでにしよう」
旭に回復して貰ったブレスを放とうとしたクウが、少しだけ残念そうな気配で急旋回。
地面すれすれを飛んで遠くのVOIDには気付かれないようしながら、速度を調節して擬人型に自らを追わせる。
5時間以上戦っているので擬人型の跳躍距離もレーザーの射程も把握できている。
驚くほど安全に引きずり回して負マテリアルを消耗させ、最後は圧倒的速度で引き離し見失わした上で安全圏まで脱出した。
その後、友軍は翌日夜明けまで粘り次の部隊に後退した。
予想された全滅という結果にはならず、戦死者は1割で済んだ。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/05/19 06:09:55 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/05/18 20:09:25 |
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質問卓 東條 奏多(ka6425) 人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/05/16 23:50:00 |