ゲスト
(ka0000)
狼雑魔討伐作戦5:群れを率いるボス
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/03 22:00
- 完成日
- 2016/11/09 06:29
みんなの思い出
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オープニング
●ボス狼の力とは……
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、雑魔と成り果ててどす黒く、大きく体躯を膨らませたオオカミから襲われる事件が起こっている。
ここしばらく、ハンターによって狼の討伐が行われているが、なかなか状況が改善しない。
そこで、聖堂教会がようやく重い腰を上げた。巡礼者を再び呼び戻すべく、狼討伐に当たり始めたのだ。
その結果……。
「現状、ボスの居場所2箇所にまで絞り込んでいます」
そこは、イルダーナのハンターズソサエティ。
聖堂戦士団の一員であるファリーナ・リッジウェイ(kz0182)がこの一連の事件に興味を持つハンター達へと告げる。
これまでの依頼で、ハンター達からは狼が出没する目撃証言、そして、討伐情報などを提供してもらい、さらにそれらの地点の記された地図を提供してもらっていた。いずれも、グラズヘイム王国東部に集中している。
狼達はどうやら、いくつかの休息場所を持っている。この影響からか、これまで雑魔狼を率いるボスを確認できずにいた。非常に警戒心が強く、それでいて非常に大きな群れを率いるボス。こいつさえ倒せば、狼達のネットワークは瓦解していくはずなのだが……。
「1つは、街道沿いの物陰……。盲点でしたが、敢えて襲撃をしやすい場所で身を潜めているようです」
この近辺は、襲撃が起こっていない。だが、ここはこれまで、事件が起こった場所と線で繋げてもそれほど外れてもいない。
「もう1つは、序盤の作戦で狼の群れを見かけた場所ですね」
とある作戦で狼を深追いをした際、狼の大群に囲まれた場所があった。
あの1回だけは、あちらから威嚇するようにやってはこなかったか。これまで指摘があまりなかったが、この場所こそ、可能性が高いのではないか。
ただ、この場所はハンター達の予測場所からはややずれている。しかし、ここ以外でのボスの目撃証言はほぼ皆無というのが、裏づけとして大きい。
「ボスの居場所として可能性が高いのは、我々の盲点を突いた場所……。あるいは、常に群れとなる場所を転々としているか、私達はそう予測を立てています」
場所、作戦の都合で、今回は1箇所だけを攻めたい。
「また、仮に、ボスと対面したとして……、その能力が未知なものであるのが困ったところです」
これまで、かなりの数の作戦を行ってきてはいるが、ボスとの交戦例はない。
「1度交戦さえできれば、例え逃げられても今度の対策に弾みがつくはずです」
もし、ボスの居場所は前者だったならば、敵の安息の地を潰すことが出来る。
後者だったなら、またローラー作戦で1つずつ群れを潰さねばならないだろうが、その数も少しずつ減ってきているので、悲観的になることもない。
「ともあれ、今回の作戦が狼雑魔のボスを打つ為の、決定的な一手となるはずです。……皆様、ご協力を願います」
ファリーナはそうして、ハンター達へと頭を下げるのだった。
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、雑魔と成り果ててどす黒く、大きく体躯を膨らませたオオカミから襲われる事件が起こっている。
ここしばらく、ハンターによって狼の討伐が行われているが、なかなか状況が改善しない。
そこで、聖堂教会がようやく重い腰を上げた。巡礼者を再び呼び戻すべく、狼討伐に当たり始めたのだ。
その結果……。
「現状、ボスの居場所2箇所にまで絞り込んでいます」
そこは、イルダーナのハンターズソサエティ。
聖堂戦士団の一員であるファリーナ・リッジウェイ(kz0182)がこの一連の事件に興味を持つハンター達へと告げる。
これまでの依頼で、ハンター達からは狼が出没する目撃証言、そして、討伐情報などを提供してもらい、さらにそれらの地点の記された地図を提供してもらっていた。いずれも、グラズヘイム王国東部に集中している。
狼達はどうやら、いくつかの休息場所を持っている。この影響からか、これまで雑魔狼を率いるボスを確認できずにいた。非常に警戒心が強く、それでいて非常に大きな群れを率いるボス。こいつさえ倒せば、狼達のネットワークは瓦解していくはずなのだが……。
「1つは、街道沿いの物陰……。盲点でしたが、敢えて襲撃をしやすい場所で身を潜めているようです」
この近辺は、襲撃が起こっていない。だが、ここはこれまで、事件が起こった場所と線で繋げてもそれほど外れてもいない。
「もう1つは、序盤の作戦で狼の群れを見かけた場所ですね」
とある作戦で狼を深追いをした際、狼の大群に囲まれた場所があった。
あの1回だけは、あちらから威嚇するようにやってはこなかったか。これまで指摘があまりなかったが、この場所こそ、可能性が高いのではないか。
ただ、この場所はハンター達の予測場所からはややずれている。しかし、ここ以外でのボスの目撃証言はほぼ皆無というのが、裏づけとして大きい。
「ボスの居場所として可能性が高いのは、我々の盲点を突いた場所……。あるいは、常に群れとなる場所を転々としているか、私達はそう予測を立てています」
場所、作戦の都合で、今回は1箇所だけを攻めたい。
「また、仮に、ボスと対面したとして……、その能力が未知なものであるのが困ったところです」
これまで、かなりの数の作戦を行ってきてはいるが、ボスとの交戦例はない。
「1度交戦さえできれば、例え逃げられても今度の対策に弾みがつくはずです」
もし、ボスの居場所は前者だったならば、敵の安息の地を潰すことが出来る。
後者だったなら、またローラー作戦で1つずつ群れを潰さねばならないだろうが、その数も少しずつ減ってきているので、悲観的になることもない。
「ともあれ、今回の作戦が狼雑魔のボスを打つ為の、決定的な一手となるはずです。……皆様、ご協力を願います」
ファリーナはそうして、ハンター達へと頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●ようやくボスの尻尾を……
グラズヘイム王国東部に現れる、狼雑魔の群れ。
多数のハンター達と末端の聖堂戦士団達がその討伐に当たっていたが、その戦いもようやく大きな転換期を迎えようとしている。
王都イルダーナ東の街道。これは、比較的最初の事件において、狼が目撃された場所でもある。
その付近の草原地帯を、ハンター達がゆく。ここは、序盤に依頼で深追いしたメンバーが狼の群れに囲まれた場所でもある。
「ようやっと、群れの頭が顔を出してきやがったか」
「こっそりどこかでボスさんが見ていると思うと、緊張しますね」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は、風の噂でボスが三つ首だと聞いている。それが目を光らせていると考えると、アシェ-ル(ka2983) は思わず身を引き締めてしまう。
「オオカミのボス……ですか?」
「長く、人々を苦しませる歪虚、ですか。これだけ本腰を入れての討伐をかわし続けるのですから、ただの雑魔の枠では収まらなさそうな――」
天央 観智(ka0896)が唸りこむのに、言葉を返すレイ・T・ベッドフォード(ka2398)は辺りを見回し、風を見る。
「肌寒くなってきましたね……」
「……あれだけの狼雑魔を作っている存在なら、歪虚の可能性もありますね」
観智は代弁するように、自らの考えを語る。もっとも、どの眷属かまでは分からないとはしていたが。
「そろそろ、出てきたのをやっつける対症療法もめんどくさくなってきたから、いい加減終わらせたいけど……」
「ここ以外でも狼が暴れ回ってるみたいだし、とっとと『頭』を切り落として一網打尽といきたいところだな」
数々の狼雑魔と交戦してきたアルスレーテ・フュラー(ka6148)は、末端を叩く状況に飽き飽きしている。エヴァンスもそれに同意はしたが……。
「だがまぁ、生存本能の高い奴らの事だ……。最悪倒せないまでも、奴の戦法ぐらいは持ち帰らないとな」
「次に繋ぐ為にも……皆さん、命は持って帰りますよ……。また、来る為に」
エヴァンスの言葉に、観智は首肯する。ここで、確実にボスを倒す為の一手を打ち、次に繋げたいところだ。
ただ、このチームには懸念材料もある。
応援として駆けつけた、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)。盾の重要性を教えてくれたハンター達に対し、彼女はその準備が追いついていなかったらしい。
「本当にすみません……」
「リーナさんも忙しいでしょうから、装備は仕方ない事です」
アシェ-ルはしょげる彼女を慰めつつ、自身の傍での支援を頼んでいた。
「やれやれ、やっちまったのう」
そして、もう1人。バリトン(ka5112)はこの依頼受注後、別の依頼で大怪我を負ってしまっていた。依頼料を断ろうとする彼だったが、ファリーナもそれは悪いからと、半額ということで手を打ったようである。
「しかし、やっとボスの尻尾の先ぐらいは見えてきたか」
狼の事件が増えている状況。同じグループかはわからないが、早めに何とかせねばならないと、バリトンは考えているようだった。
●交戦の最中に……
現場に向かうハンター達。
出現予定地点から数キロ離れた地点で、観智は軍用双眼鏡を使い、逐次敵の正確な動向を確認する。見通しは非常に良い場所であることは、良くも悪くもある。こちらが発見されることも懸念しての行動だ。
最初はかなりの数の狼がいたように見えたが、近づくにつれて狼が遠くへと走り去っていくのが見えた。
メンバー達はさらに進むと、高台にいるそいつらを目視する。大小様々だが、雑魔と化したどす黒い狼達だ。
「わあ、狼雑魔がわらわらいる~」
新しく覚えた魔法を試したいと考える、夢路 まよい(ka1328)が目にした狼の数は10体あまり。ただ、最初に観智が確認した数に比べるとずっと少ない上、何といっても、ボスらしき姿がない。彼女は慎重に、魔法を使うタイミングを見計らう。
「とりあえず、目の前の狼を片付ければいいのよね」
アルスレーテとしては、ボスを倒してこの面倒な騒動を終結させたかったのだが、割りきって大小の狼雑魔討伐に臨んでいた。
高台から飛び降り、ゆらりと近づいてくる狼達。レイは覚醒しながらも、仲間が態勢を整えるのを待つ。
「ナイトって柄じゃないが、しっかり守ってやるぜ、まよい!」
エヴァンスはまよいの前に出る。琥珀色の瞳で近づく狼へとグレートソードを振るい、向かい来る小型狼に叩き付ける。
合わせてレイも最前線へと走っていき、大身槍「蜻蛉切」を使って狼を薙ぎ払う。彼はできるだけ、飛びかかってくる狼の爪を回避しようと立ち回っていた。
エヴァンスに守られるまよいは鋭敏視覚を駆使し、強く輝かせた瞳で周囲を見渡す。彼女は先ほど『そいつ』を目にしている。だから、この場にいるはずと再確認していた。そんな前列メンバーの体を、ファリーナが光で包み込むことで支援する。
その後ろには、紅蓮のオーラを纏ったヴァイス(ka0364)の姿がある。彼はロングボウを手にし、近づいてくる狼を射抜いていた。
同列にいる観智も雷撃を呼び出し、近づく狼らを撃ち抜いて行く。それによって、小型の狼がかき消えるように姿を消していった。
桃色の幾何学模様の小さい魔法陣を浮かび上がらせ、アシェ-ルは覚醒する。
前に立つメンバーが範囲にいないことを確認し、彼女は七色に輝かせた魔法陣を展開させ、魔導拳銃から桃色のマテリアル銃弾を撃ち出す。敵陣に打ち込んだ銃弾を中心にして、冷気と氷の爆発が巻き起こった。
アルスレーテも疾走してくる敵を蒼く変色した瞳で見据えていた。とにかく、敵の数を減らしたい。練り上げたマテリアルを放出し、彼女は狼の体を貫通させていく。
同時に、アルスレーテはさらに後ろのバリトンを気がける。覚醒しても力がまるで出せない彼は、出来る限り戦いに参加しない場所に下がっていた。彼はその立ち位置にて双眼鏡を覗きこみ、仲間達に立ち位置の指示などを出す。
空に舞わせたイヌワシが一声鳴く。バリトンも、まよいも、その威容を捉えていた。
狼の後方でこちらを注視する巨大な影。他の狼と同じ色の毛並みだが、3つ首の狼。そいつは狼雑魔を統率するボスに違いないと、ハンター達は確信するのだった。
●ボスとの交戦を……!
これまで、狼雑魔のボスがハンター達や聖導士達のいる戦場に近づいてきたことは、ほぼない。
だが、狼の絶対数が少なくなっていることが影響しているのか、連絡役が少なくなっており、近づかざるを得ないのだろう。ハンターや聖堂戦士団による、地道な雑魔狼討伐が功を奏していると言える。
そのボスの打倒を目指し、覚醒したハンター達は戦いに臨む。
「悪いが、ここから先は通行止めだ」
前線を突破してくる狼。狙いは後のバリトンだろうか。ヴァイスは獲物を魔導符剣「インストーラー」に持ち替え、蒼き炎を纏わせてからその狼を貫いていく。襲い来る敵を抑えるヴァイスへ、すかさずファリーナがヒールによる援護を行う。
「やはり、狼どもの統率がとれておるのう」
バリトンは戦況を冷静な目で眺め、狼達の動きを把握する。
今までは比較的バラバラに動いていた感もあったが、今回は群れ全体で効果的な動きをしているようにも見える。特に、戦いに参加していない狼までも連絡役として使っていたのに気づいたのは、収穫として大きい。
(見てくれ的にはわかりにくいが、血の臭い等は隠しようもないしの)
バリトンは、自身を狙う狼がいることにも気づいている。自身を守ってくれる仲間を信じながらも、バリトンは仲間への指示出しと、敵の観察に当たっていく。
「三つ首の狼とはまた、蒼の歴史に出てくる地獄の番犬にそっくりじゃねぇか」
名前は何と言ったかと思い出そうとしたが、バリトンが敵の姿を魔導カメラに収めていることを確認し、エヴァンスは狼との戦いに集中する。
魔法の発動に集中するまよいを守る為にも。エヴァンスは自身の生体マテリアルをグレートソードに込めて強化する。そして、彼はそれを正面へと横薙ぎに振りぬき、発生する衝撃波を狼達へと浴びせかける。
ボスを視界に収めたまよいは今ならばと、詠唱を始めた。
(このコンボは4回しか使えない……)
やや慎重になった為に先制の一発とはならなかったが、それでも、彼女は絶好のタイミングで2つの魔法を同時に詠唱していた。
その発動の順番は、まよいの任意で行える。前にいた彼女はまず、出来る限り多くの狼を巻き込んで冷気の嵐を巻き起こす。
凍える狼達を、今度は紫に輝く重力波が襲う。耐えられぬ狼がそれに潰されて圧壊していく。
ダブルキャスト。同時に複数の魔法を詠唱、発動させるスキル。だが、それには高い集中力のマテリアルを必要とし、本人の消耗も大きい。
たった1度の発動で、まよいはそれを思い知る。下手をすれば、魔法すらも発動しない可能性すらあるのだ。だからこそ彼女は慎重に、次の発動のタイミングを計る。
レイは大型の噛み付きを鎧で受け止めつつ、『少しだけ早く』槍を操る。槍によって連続して貫かれた大型1体が、鳴き声すら上げずに霧散してしまった。
「立派な体躯ですが、毛皮は今一つ、でしょうか……」
そもそも、討伐した雑魔が跡形も残らず消え失せてしまい、レイは毛皮を土産にすることができぬとしょんぼりというか、しょんもりとしていたようだ。
そんな彼の隙を狙い、前線を突破する狼。身を滑らせようとするレイだが、敵の動きは素早い。
「硬さには自信はありますから」
接近する敵を、アシェ-ルが盾となって抑える。傍では、敵から距離を保って戦っていたアルスレーテもすぐに敵の前へと移動し、鉄扇「北斗」を使い、抉る様にして突きを繰り出して手前の狼を撃破する。
「ご老体は労わりましょう」
彼女はそのまま再び敵の数を減らすべく、正面を向いて投具「コウモリ」を投げ飛ばす。
敵陣に向かい、観智も冷気の嵐を呼び起こし、敵を凍らせる。凍りつくことなく消え去る敵もおり、気づけば、狼は片手で数えるほどにまで減ってきていた。
前列メンバーはついに、ボスの姿を間近に捉える。倍以上もある巨大な体躯を見上げ、攻撃に乗り出そうとしたとき、そいつは天に向けて咆哮した。
それにより、この場へと駆けつけてくる新手の大型狼。それがさらに小型を引き連れてくる。
「ボスが大型を呼んで、大型が小型を呼ぶ……。数が増えると厄介な感じです」
この状況に、アシェ-ルは数に押されて劣勢となるのを懸念する。合流する前に撃破をと、彼女は重力波を放ってそいつらを押さえつけようとした。
「合流されなければ、盾替わりにもできないはずです」
そう考えるアシェ-ルだが。すぐに、思った以上の数の狼が駆けつけてきたのだった。
●接敵はすれど……
前線メンバーは高台に登り、徐々にボス狼の元へと攻め入る。
再び、まよいはダブルキャストの発動を行う中、それが危険と判断したボスが狼達にまよいを優先して狙うよう指示を行っていたようだ。
エヴァンスはそのボスの様子を見ながら、残る大小の狼からまよいを守るべく立ち塞がる。
「試してみるか」
エヴァンスは敵の周囲を散らそうと、獣の角笛を吹き鳴らしてみせる。心が昂ぶるのを感じはするが、だからといって角笛で敵の注意を引き付けるには至らず。彼は舌打ちをし、果敢に大剣を振り回した。
迫る援軍の狼。アシェ-ルは射線上の狼に向け、桃色が混じった光の雷撃を撃ち出す。
「今です! リーナさん!」
「はい、行きます!」
ファリーナがアシェ-ルの言葉に続いて聖なる光を飛ばし、やってきた狼にトドメを刺し、その体を霧散させた。
その間に、まよいは再び連続して魔法を放つ。だが、やはり、負担が大きいのか、氷の嵐が起きない。それでも、重力波は発生し、狼を潰していたようだ。
観智も続く。これ以上仲間を傷つけさせぬ為に、彼もまた重力波をはっせいさせて狼の動きを鈍らせようとしていた。
ヴァイスもまた、増援に接敵することでボスとの交戦時間を稼ぐ。
そうして、仲間が増援を抑えている間に。数人のメンバーが三つ首のボスを狙う。
(できるだけ頭を……)
アルスレーテは一つずつ潰そうと、投具「コウモリ」を投げつけ、向かって右の顔を傷つける。
ボスもさすがに黙っていられぬと判断し、その3つの口から炎を吐き出す。アルスレーテは想定した攻撃だったが、いざそれが来ると対処が遅れ、服の一部が燃え上がってしまう。
「止められんか……!」
エヴァンスもブレスを想定しており、それを中断させられればと思ったが、若干間に合わず、炎を浴びながら衝撃波での反撃を返すこととなる。
三つ首からの攻撃に注意を払っていたレイは炎を回避し、すぐボスへと連撃を浴びせかけた。
これに再び咆哮をあげ、狼を呼び寄せるボス。呼び出した狼らを前にし、自らは後方へと下がっていく。
「敵が引き上げそうじゃぞ」
反転するボスの動きを、バリトンがすぐに仲間達へと伝える。ボスを守るように、さらに増援の狼達がこの場へと出現してくる。
「逃しませんし、行かせません。貴方がたの爪牙が、人を傷つけるのであれば――」
レイは敵の背を見つめた後、自身の足元へと衝撃を与える。
「此処で、果てなさい」
巻き起こる地震が周囲全ての者を足止めするが、それは追おうとする仲間の足を止めることにもなる。
その為、ヴァイスは敵の脚を狙って弓を射抜き、さらにまよいが最後のダブルキャストでボスに氷の嵐を、そして重力波を浴びせかけた。
だが、次の瞬間、ボスが呼んだ大型、そして、小型が邪魔をする。率先して戦うわけではない。これも、逃げる為のボスが講じる一つの手段なのだろう。
「繰り返しで思うが、あまりにも王国各地で狼歪虚による被害が多すぎる」
双眼鏡でさえも見えぬ位置までボスが去っていったのを見て、バリトンは呟く。本当にボスは1体しかいないのかと。
ともあれ、メンバー達は今の戦いでわかったボスに関する情報を交換する。その攻撃方法、行動、群れの統率方法。今後の対策を立てるに当たってはなかなかの成果を上げたと言えた。
「それにしても、なんで、巡礼路なのかが気になりますね」
意見が飛び交う仲間達の間、アシェ-ルがそんな疑問を口にする。
「単に狙いやすい獲物が居たからとか……では、なさそうな気もしますし」
アシェ-ルの言うとおり、狼達には目的があるのか。さすがにそこまでは分からなかったが、何か目論見があるにしろ、それを止めるのはそう遠くはないとハンター達は考えていた。
グラズヘイム王国東部に現れる、狼雑魔の群れ。
多数のハンター達と末端の聖堂戦士団達がその討伐に当たっていたが、その戦いもようやく大きな転換期を迎えようとしている。
王都イルダーナ東の街道。これは、比較的最初の事件において、狼が目撃された場所でもある。
その付近の草原地帯を、ハンター達がゆく。ここは、序盤に依頼で深追いしたメンバーが狼の群れに囲まれた場所でもある。
「ようやっと、群れの頭が顔を出してきやがったか」
「こっそりどこかでボスさんが見ていると思うと、緊張しますね」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は、風の噂でボスが三つ首だと聞いている。それが目を光らせていると考えると、アシェ-ル(ka2983) は思わず身を引き締めてしまう。
「オオカミのボス……ですか?」
「長く、人々を苦しませる歪虚、ですか。これだけ本腰を入れての討伐をかわし続けるのですから、ただの雑魔の枠では収まらなさそうな――」
天央 観智(ka0896)が唸りこむのに、言葉を返すレイ・T・ベッドフォード(ka2398)は辺りを見回し、風を見る。
「肌寒くなってきましたね……」
「……あれだけの狼雑魔を作っている存在なら、歪虚の可能性もありますね」
観智は代弁するように、自らの考えを語る。もっとも、どの眷属かまでは分からないとはしていたが。
「そろそろ、出てきたのをやっつける対症療法もめんどくさくなってきたから、いい加減終わらせたいけど……」
「ここ以外でも狼が暴れ回ってるみたいだし、とっとと『頭』を切り落として一網打尽といきたいところだな」
数々の狼雑魔と交戦してきたアルスレーテ・フュラー(ka6148)は、末端を叩く状況に飽き飽きしている。エヴァンスもそれに同意はしたが……。
「だがまぁ、生存本能の高い奴らの事だ……。最悪倒せないまでも、奴の戦法ぐらいは持ち帰らないとな」
「次に繋ぐ為にも……皆さん、命は持って帰りますよ……。また、来る為に」
エヴァンスの言葉に、観智は首肯する。ここで、確実にボスを倒す為の一手を打ち、次に繋げたいところだ。
ただ、このチームには懸念材料もある。
応援として駆けつけた、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)。盾の重要性を教えてくれたハンター達に対し、彼女はその準備が追いついていなかったらしい。
「本当にすみません……」
「リーナさんも忙しいでしょうから、装備は仕方ない事です」
アシェ-ルはしょげる彼女を慰めつつ、自身の傍での支援を頼んでいた。
「やれやれ、やっちまったのう」
そして、もう1人。バリトン(ka5112)はこの依頼受注後、別の依頼で大怪我を負ってしまっていた。依頼料を断ろうとする彼だったが、ファリーナもそれは悪いからと、半額ということで手を打ったようである。
「しかし、やっとボスの尻尾の先ぐらいは見えてきたか」
狼の事件が増えている状況。同じグループかはわからないが、早めに何とかせねばならないと、バリトンは考えているようだった。
●交戦の最中に……
現場に向かうハンター達。
出現予定地点から数キロ離れた地点で、観智は軍用双眼鏡を使い、逐次敵の正確な動向を確認する。見通しは非常に良い場所であることは、良くも悪くもある。こちらが発見されることも懸念しての行動だ。
最初はかなりの数の狼がいたように見えたが、近づくにつれて狼が遠くへと走り去っていくのが見えた。
メンバー達はさらに進むと、高台にいるそいつらを目視する。大小様々だが、雑魔と化したどす黒い狼達だ。
「わあ、狼雑魔がわらわらいる~」
新しく覚えた魔法を試したいと考える、夢路 まよい(ka1328)が目にした狼の数は10体あまり。ただ、最初に観智が確認した数に比べるとずっと少ない上、何といっても、ボスらしき姿がない。彼女は慎重に、魔法を使うタイミングを見計らう。
「とりあえず、目の前の狼を片付ければいいのよね」
アルスレーテとしては、ボスを倒してこの面倒な騒動を終結させたかったのだが、割りきって大小の狼雑魔討伐に臨んでいた。
高台から飛び降り、ゆらりと近づいてくる狼達。レイは覚醒しながらも、仲間が態勢を整えるのを待つ。
「ナイトって柄じゃないが、しっかり守ってやるぜ、まよい!」
エヴァンスはまよいの前に出る。琥珀色の瞳で近づく狼へとグレートソードを振るい、向かい来る小型狼に叩き付ける。
合わせてレイも最前線へと走っていき、大身槍「蜻蛉切」を使って狼を薙ぎ払う。彼はできるだけ、飛びかかってくる狼の爪を回避しようと立ち回っていた。
エヴァンスに守られるまよいは鋭敏視覚を駆使し、強く輝かせた瞳で周囲を見渡す。彼女は先ほど『そいつ』を目にしている。だから、この場にいるはずと再確認していた。そんな前列メンバーの体を、ファリーナが光で包み込むことで支援する。
その後ろには、紅蓮のオーラを纏ったヴァイス(ka0364)の姿がある。彼はロングボウを手にし、近づいてくる狼を射抜いていた。
同列にいる観智も雷撃を呼び出し、近づく狼らを撃ち抜いて行く。それによって、小型の狼がかき消えるように姿を消していった。
桃色の幾何学模様の小さい魔法陣を浮かび上がらせ、アシェ-ルは覚醒する。
前に立つメンバーが範囲にいないことを確認し、彼女は七色に輝かせた魔法陣を展開させ、魔導拳銃から桃色のマテリアル銃弾を撃ち出す。敵陣に打ち込んだ銃弾を中心にして、冷気と氷の爆発が巻き起こった。
アルスレーテも疾走してくる敵を蒼く変色した瞳で見据えていた。とにかく、敵の数を減らしたい。練り上げたマテリアルを放出し、彼女は狼の体を貫通させていく。
同時に、アルスレーテはさらに後ろのバリトンを気がける。覚醒しても力がまるで出せない彼は、出来る限り戦いに参加しない場所に下がっていた。彼はその立ち位置にて双眼鏡を覗きこみ、仲間達に立ち位置の指示などを出す。
空に舞わせたイヌワシが一声鳴く。バリトンも、まよいも、その威容を捉えていた。
狼の後方でこちらを注視する巨大な影。他の狼と同じ色の毛並みだが、3つ首の狼。そいつは狼雑魔を統率するボスに違いないと、ハンター達は確信するのだった。
●ボスとの交戦を……!
これまで、狼雑魔のボスがハンター達や聖導士達のいる戦場に近づいてきたことは、ほぼない。
だが、狼の絶対数が少なくなっていることが影響しているのか、連絡役が少なくなっており、近づかざるを得ないのだろう。ハンターや聖堂戦士団による、地道な雑魔狼討伐が功を奏していると言える。
そのボスの打倒を目指し、覚醒したハンター達は戦いに臨む。
「悪いが、ここから先は通行止めだ」
前線を突破してくる狼。狙いは後のバリトンだろうか。ヴァイスは獲物を魔導符剣「インストーラー」に持ち替え、蒼き炎を纏わせてからその狼を貫いていく。襲い来る敵を抑えるヴァイスへ、すかさずファリーナがヒールによる援護を行う。
「やはり、狼どもの統率がとれておるのう」
バリトンは戦況を冷静な目で眺め、狼達の動きを把握する。
今までは比較的バラバラに動いていた感もあったが、今回は群れ全体で効果的な動きをしているようにも見える。特に、戦いに参加していない狼までも連絡役として使っていたのに気づいたのは、収穫として大きい。
(見てくれ的にはわかりにくいが、血の臭い等は隠しようもないしの)
バリトンは、自身を狙う狼がいることにも気づいている。自身を守ってくれる仲間を信じながらも、バリトンは仲間への指示出しと、敵の観察に当たっていく。
「三つ首の狼とはまた、蒼の歴史に出てくる地獄の番犬にそっくりじゃねぇか」
名前は何と言ったかと思い出そうとしたが、バリトンが敵の姿を魔導カメラに収めていることを確認し、エヴァンスは狼との戦いに集中する。
魔法の発動に集中するまよいを守る為にも。エヴァンスは自身の生体マテリアルをグレートソードに込めて強化する。そして、彼はそれを正面へと横薙ぎに振りぬき、発生する衝撃波を狼達へと浴びせかける。
ボスを視界に収めたまよいは今ならばと、詠唱を始めた。
(このコンボは4回しか使えない……)
やや慎重になった為に先制の一発とはならなかったが、それでも、彼女は絶好のタイミングで2つの魔法を同時に詠唱していた。
その発動の順番は、まよいの任意で行える。前にいた彼女はまず、出来る限り多くの狼を巻き込んで冷気の嵐を巻き起こす。
凍える狼達を、今度は紫に輝く重力波が襲う。耐えられぬ狼がそれに潰されて圧壊していく。
ダブルキャスト。同時に複数の魔法を詠唱、発動させるスキル。だが、それには高い集中力のマテリアルを必要とし、本人の消耗も大きい。
たった1度の発動で、まよいはそれを思い知る。下手をすれば、魔法すらも発動しない可能性すらあるのだ。だからこそ彼女は慎重に、次の発動のタイミングを計る。
レイは大型の噛み付きを鎧で受け止めつつ、『少しだけ早く』槍を操る。槍によって連続して貫かれた大型1体が、鳴き声すら上げずに霧散してしまった。
「立派な体躯ですが、毛皮は今一つ、でしょうか……」
そもそも、討伐した雑魔が跡形も残らず消え失せてしまい、レイは毛皮を土産にすることができぬとしょんぼりというか、しょんもりとしていたようだ。
そんな彼の隙を狙い、前線を突破する狼。身を滑らせようとするレイだが、敵の動きは素早い。
「硬さには自信はありますから」
接近する敵を、アシェ-ルが盾となって抑える。傍では、敵から距離を保って戦っていたアルスレーテもすぐに敵の前へと移動し、鉄扇「北斗」を使い、抉る様にして突きを繰り出して手前の狼を撃破する。
「ご老体は労わりましょう」
彼女はそのまま再び敵の数を減らすべく、正面を向いて投具「コウモリ」を投げ飛ばす。
敵陣に向かい、観智も冷気の嵐を呼び起こし、敵を凍らせる。凍りつくことなく消え去る敵もおり、気づけば、狼は片手で数えるほどにまで減ってきていた。
前列メンバーはついに、ボスの姿を間近に捉える。倍以上もある巨大な体躯を見上げ、攻撃に乗り出そうとしたとき、そいつは天に向けて咆哮した。
それにより、この場へと駆けつけてくる新手の大型狼。それがさらに小型を引き連れてくる。
「ボスが大型を呼んで、大型が小型を呼ぶ……。数が増えると厄介な感じです」
この状況に、アシェ-ルは数に押されて劣勢となるのを懸念する。合流する前に撃破をと、彼女は重力波を放ってそいつらを押さえつけようとした。
「合流されなければ、盾替わりにもできないはずです」
そう考えるアシェ-ルだが。すぐに、思った以上の数の狼が駆けつけてきたのだった。
●接敵はすれど……
前線メンバーは高台に登り、徐々にボス狼の元へと攻め入る。
再び、まよいはダブルキャストの発動を行う中、それが危険と判断したボスが狼達にまよいを優先して狙うよう指示を行っていたようだ。
エヴァンスはそのボスの様子を見ながら、残る大小の狼からまよいを守るべく立ち塞がる。
「試してみるか」
エヴァンスは敵の周囲を散らそうと、獣の角笛を吹き鳴らしてみせる。心が昂ぶるのを感じはするが、だからといって角笛で敵の注意を引き付けるには至らず。彼は舌打ちをし、果敢に大剣を振り回した。
迫る援軍の狼。アシェ-ルは射線上の狼に向け、桃色が混じった光の雷撃を撃ち出す。
「今です! リーナさん!」
「はい、行きます!」
ファリーナがアシェ-ルの言葉に続いて聖なる光を飛ばし、やってきた狼にトドメを刺し、その体を霧散させた。
その間に、まよいは再び連続して魔法を放つ。だが、やはり、負担が大きいのか、氷の嵐が起きない。それでも、重力波は発生し、狼を潰していたようだ。
観智も続く。これ以上仲間を傷つけさせぬ為に、彼もまた重力波をはっせいさせて狼の動きを鈍らせようとしていた。
ヴァイスもまた、増援に接敵することでボスとの交戦時間を稼ぐ。
そうして、仲間が増援を抑えている間に。数人のメンバーが三つ首のボスを狙う。
(できるだけ頭を……)
アルスレーテは一つずつ潰そうと、投具「コウモリ」を投げつけ、向かって右の顔を傷つける。
ボスもさすがに黙っていられぬと判断し、その3つの口から炎を吐き出す。アルスレーテは想定した攻撃だったが、いざそれが来ると対処が遅れ、服の一部が燃え上がってしまう。
「止められんか……!」
エヴァンスもブレスを想定しており、それを中断させられればと思ったが、若干間に合わず、炎を浴びながら衝撃波での反撃を返すこととなる。
三つ首からの攻撃に注意を払っていたレイは炎を回避し、すぐボスへと連撃を浴びせかけた。
これに再び咆哮をあげ、狼を呼び寄せるボス。呼び出した狼らを前にし、自らは後方へと下がっていく。
「敵が引き上げそうじゃぞ」
反転するボスの動きを、バリトンがすぐに仲間達へと伝える。ボスを守るように、さらに増援の狼達がこの場へと出現してくる。
「逃しませんし、行かせません。貴方がたの爪牙が、人を傷つけるのであれば――」
レイは敵の背を見つめた後、自身の足元へと衝撃を与える。
「此処で、果てなさい」
巻き起こる地震が周囲全ての者を足止めするが、それは追おうとする仲間の足を止めることにもなる。
その為、ヴァイスは敵の脚を狙って弓を射抜き、さらにまよいが最後のダブルキャストでボスに氷の嵐を、そして重力波を浴びせかけた。
だが、次の瞬間、ボスが呼んだ大型、そして、小型が邪魔をする。率先して戦うわけではない。これも、逃げる為のボスが講じる一つの手段なのだろう。
「繰り返しで思うが、あまりにも王国各地で狼歪虚による被害が多すぎる」
双眼鏡でさえも見えぬ位置までボスが去っていったのを見て、バリトンは呟く。本当にボスは1体しかいないのかと。
ともあれ、メンバー達は今の戦いでわかったボスに関する情報を交換する。その攻撃方法、行動、群れの統率方法。今後の対策を立てるに当たってはなかなかの成果を上げたと言えた。
「それにしても、なんで、巡礼路なのかが気になりますね」
意見が飛び交う仲間達の間、アシェ-ルがそんな疑問を口にする。
「単に狙いやすい獲物が居たからとか……では、なさそうな気もしますし」
アシェ-ルの言うとおり、狼達には目的があるのか。さすがにそこまでは分からなかったが、何か目論見があるにしろ、それを止めるのはそう遠くはないとハンター達は考えていた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/03 10:45:41 |
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相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/11/03 20:20:45 |