ゲスト
(ka0000)
【転臨】ここは私達に任せて先に行け
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/09/22 07:30
- 完成日
- 2017/09/28 22:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「“落とします”。イスルダを、わたくしたちの手に戻しましょう」
――システィーナ王女が口にした言葉を現実のものとすべく、王国より出征した勇士達は今まさに、イスルダ島内にて激戦の最中にあった。
目指すは黒大公ベリアルの本拠地だったという『黒羊神殿』、その深部――
神殿内、進路の一つを進む王国より出発した一団は、行く手を阻む巨大な歪虚と今まさに切り結んでいた。
熊、狼、山羊、梟、狒狒……種々雑多の首を無数に持つ巨大な獣……否、もはやそれは獣を超えたモノであった。四本の脚と四本の腕を備え、複数の首から炎やガス、雷を吐き出し、または巨大な鉤爪を備えた腕を振るい、挑む戦士達を大いに傷つける。
しかしながら戦士達はこれまで幾多の歪虚を撃滅せしめてきた一騎当千の強者達である。
眼前の敵は恐るべき存在ではあったが、その攻撃に耐え、果敢に攻撃を続け……ついにその巨体を打ち倒した。
力により道を切り開く――
イスルダの奪還は、その先にある。
だがそれもここ黒羊神殿内部で無数にある戦いの一つに過ぎない。
かれらの後方に歪虚の集団が現れた。
ここで対処すれば進軍の速度を遅らせてしまう。かといって放置して進めば後先脅威になる……
一行は歩みを止めた。
「迷うことは無い!」
一行が行動を決めかねる中、その中の1人が声を上げた。
「ここは私達に任せて先に行け!!!」
声の主は、へザー・スクロヴェーニ(kz0061)。
「ここは私と『愉愚泥羅』が引き受ける!
君達は先に行け!」
幸いそこは少数の人数で進行を阻止できる地形だった。
へザーの言葉に勇士達は、
あるものは無事を祈り、あるものは敬礼し――
黒羊神殿の奥へと進んでいった。
「さて……修行の成果を見せるぞ、皆!」
へザーは彼女とともに残った、ギルド『愉愚泥羅』の面々に呼びかける。
「ああ、ヘッド!」
「あの日々を――」
「無駄にしていいわきゃないからな」
「我々の力、見せてやろうぞ!」
口々に応える仲間達……フロッグ、アハズヤ、ヤーグ、閃姫。
他のメンバーも頷く。
歪虚はもうすぐそこまで迫っていた。
「行くぞ! 王女殿下の為に!」
――そして戦いは始まった。
ヴィオラとプラトニスの指導のもと、夏に修行の日々を過ごした愉愚泥羅……
その集大成と言わんばかりに大挙する歪虚達を屠っていく。
「ヴィオラは教えてくれた……
日々の鍛錬こそが事を為すと!」
へザーは敵の攻撃を避けつつクローを繰り出す。
その一撃は夏を経て、各段に鋭さを増していた。
へザーだけではない。
「受けやがれ! ファイヤスローワー!」
機導師フロッグは巨大な魔導機械より吹き出す炎で歪虚を焼き払い――
「ヴィオラやプラトニスと比べりゃ……
ぜんぜん怖くないぜ」
「セッセェェェェェイ!」
「はっはっはァ! これぞ戦略よ!」
ヤーグ達闘狩人も的確な防御と反撃で敵をいなし――
「わらわは感じる……あのハンター達との戦いで己が高まったことを!」
猟撃士・閃姫は弓矢を持って敵を射抜き、また敵の行動を阻害し――
「――それだけじゃない。
私達は大勢に支えられて立っている……王女様、王国のみんな、ハンターの仲間達」
聖導師アハズヤは後衛で味方の回復、支援を行いつつも状況に応じて射撃を行い――
「世界を滅ぼす巨悪であろうと、人の『繋がりの力』――決して滅ぼすことはできないぞ!」
魔術師の男が雷で一気に複数の敵を葬り去る。
嗚呼、歪虚達は見たかもしれない。
かれらの背後に立つ、
幾千、幾万の『人』の姿を。
だが――
「クックックッ……『繋がり』が力などと……都合のいい妄想に過ぎないのだよ」
新たに歪虚の一団が現れた。それを率いる、鎧を纏った騎馬の男――鉄色の肌と青銅色の癖毛が悪趣味な金属工芸を思わせる――が不適に笑う。
「イスルダを落とす、か?
傲慢とは、我々よりお前達に相応しい言葉であるな」
その歪虚は嘲笑する。
「お前達には何も為せん。屈辱にまみれて死んで頂こう。
……やれ!」
そして、歪虚はへザー達に攻撃を開始した。
へザー達はなおも戦ったが、歪虚は倒しても倒しても次々と襲いかかって来る。
「へザー。このままでは不味い」
後方からアハズヤが告げた。
「皆、頑張るんだ! あの修行の日々は何のためだ!?」
へザーは戦いながらも味方を鼓舞する。
「ああ……だがこれはちょっと、プラトニスでも想定外かもな」
「やっぱり俺達にゃあ……ハードルが高かったかねぇ……」
ヤーグ、フロッグも口にする。悲観しているというよりは、客観的な事実を述べたに近い。
「だが、ここからでは退くに退けぬな」
閃姫の言葉。へザーは返答に詰まった。
(私は諦めないぞ! 最後まで王女殿下の為に戦う!
だが……これまでなのか……?)
へザーは思う。言葉に出さなかったのがせめてもの強がりだった。
(エリオット……ダンテ……お前達は最後まで戦い抜けよ……
ハンターの皆、必ず勝ってくれ……
王女殿下………………申し訳ありません………………)
次第にその心は諦めに傾いていく。
(ん……待て。あれは?)
しかし、次の瞬間、へザーはあるものを見た。
それは、諦めの気持ちを一気に吹っ飛ばし、再び希望の火を心に灯した――。
(あれは……!)
――システィーナ王女が口にした言葉を現実のものとすべく、王国より出征した勇士達は今まさに、イスルダ島内にて激戦の最中にあった。
目指すは黒大公ベリアルの本拠地だったという『黒羊神殿』、その深部――
神殿内、進路の一つを進む王国より出発した一団は、行く手を阻む巨大な歪虚と今まさに切り結んでいた。
熊、狼、山羊、梟、狒狒……種々雑多の首を無数に持つ巨大な獣……否、もはやそれは獣を超えたモノであった。四本の脚と四本の腕を備え、複数の首から炎やガス、雷を吐き出し、または巨大な鉤爪を備えた腕を振るい、挑む戦士達を大いに傷つける。
しかしながら戦士達はこれまで幾多の歪虚を撃滅せしめてきた一騎当千の強者達である。
眼前の敵は恐るべき存在ではあったが、その攻撃に耐え、果敢に攻撃を続け……ついにその巨体を打ち倒した。
力により道を切り開く――
イスルダの奪還は、その先にある。
だがそれもここ黒羊神殿内部で無数にある戦いの一つに過ぎない。
かれらの後方に歪虚の集団が現れた。
ここで対処すれば進軍の速度を遅らせてしまう。かといって放置して進めば後先脅威になる……
一行は歩みを止めた。
「迷うことは無い!」
一行が行動を決めかねる中、その中の1人が声を上げた。
「ここは私達に任せて先に行け!!!」
声の主は、へザー・スクロヴェーニ(kz0061)。
「ここは私と『愉愚泥羅』が引き受ける!
君達は先に行け!」
幸いそこは少数の人数で進行を阻止できる地形だった。
へザーの言葉に勇士達は、
あるものは無事を祈り、あるものは敬礼し――
黒羊神殿の奥へと進んでいった。
「さて……修行の成果を見せるぞ、皆!」
へザーは彼女とともに残った、ギルド『愉愚泥羅』の面々に呼びかける。
「ああ、ヘッド!」
「あの日々を――」
「無駄にしていいわきゃないからな」
「我々の力、見せてやろうぞ!」
口々に応える仲間達……フロッグ、アハズヤ、ヤーグ、閃姫。
他のメンバーも頷く。
歪虚はもうすぐそこまで迫っていた。
「行くぞ! 王女殿下の為に!」
――そして戦いは始まった。
ヴィオラとプラトニスの指導のもと、夏に修行の日々を過ごした愉愚泥羅……
その集大成と言わんばかりに大挙する歪虚達を屠っていく。
「ヴィオラは教えてくれた……
日々の鍛錬こそが事を為すと!」
へザーは敵の攻撃を避けつつクローを繰り出す。
その一撃は夏を経て、各段に鋭さを増していた。
へザーだけではない。
「受けやがれ! ファイヤスローワー!」
機導師フロッグは巨大な魔導機械より吹き出す炎で歪虚を焼き払い――
「ヴィオラやプラトニスと比べりゃ……
ぜんぜん怖くないぜ」
「セッセェェェェェイ!」
「はっはっはァ! これぞ戦略よ!」
ヤーグ達闘狩人も的確な防御と反撃で敵をいなし――
「わらわは感じる……あのハンター達との戦いで己が高まったことを!」
猟撃士・閃姫は弓矢を持って敵を射抜き、また敵の行動を阻害し――
「――それだけじゃない。
私達は大勢に支えられて立っている……王女様、王国のみんな、ハンターの仲間達」
聖導師アハズヤは後衛で味方の回復、支援を行いつつも状況に応じて射撃を行い――
「世界を滅ぼす巨悪であろうと、人の『繋がりの力』――決して滅ぼすことはできないぞ!」
魔術師の男が雷で一気に複数の敵を葬り去る。
嗚呼、歪虚達は見たかもしれない。
かれらの背後に立つ、
幾千、幾万の『人』の姿を。
だが――
「クックックッ……『繋がり』が力などと……都合のいい妄想に過ぎないのだよ」
新たに歪虚の一団が現れた。それを率いる、鎧を纏った騎馬の男――鉄色の肌と青銅色の癖毛が悪趣味な金属工芸を思わせる――が不適に笑う。
「イスルダを落とす、か?
傲慢とは、我々よりお前達に相応しい言葉であるな」
その歪虚は嘲笑する。
「お前達には何も為せん。屈辱にまみれて死んで頂こう。
……やれ!」
そして、歪虚はへザー達に攻撃を開始した。
へザー達はなおも戦ったが、歪虚は倒しても倒しても次々と襲いかかって来る。
「へザー。このままでは不味い」
後方からアハズヤが告げた。
「皆、頑張るんだ! あの修行の日々は何のためだ!?」
へザーは戦いながらも味方を鼓舞する。
「ああ……だがこれはちょっと、プラトニスでも想定外かもな」
「やっぱり俺達にゃあ……ハードルが高かったかねぇ……」
ヤーグ、フロッグも口にする。悲観しているというよりは、客観的な事実を述べたに近い。
「だが、ここからでは退くに退けぬな」
閃姫の言葉。へザーは返答に詰まった。
(私は諦めないぞ! 最後まで王女殿下の為に戦う!
だが……これまでなのか……?)
へザーは思う。言葉に出さなかったのがせめてもの強がりだった。
(エリオット……ダンテ……お前達は最後まで戦い抜けよ……
ハンターの皆、必ず勝ってくれ……
王女殿下………………申し訳ありません………………)
次第にその心は諦めに傾いていく。
(ん……待て。あれは?)
しかし、次の瞬間、へザーはあるものを見た。
それは、諦めの気持ちを一気に吹っ飛ばし、再び希望の火を心に灯した――。
(あれは……!)
リプレイ本文
●急展開
――突如として歪虚の後方から火の手が上がった。
歪虚達が悲鳴を、あるいは怒声をあげている。ある者は火に焼かれ、ある者は投具を突き立てられ、ある者は長柄武器でなぎ倒される。
「おのれ! 何奴!」
異変に気づいた歪虚の指揮官がようやく問うた――
「ふはははははははっ! 正・義・光・臨!!」
返答は大砲のごとき大音声で轟いた。
堂々たる態度で名乗りをあげたのは煌々たる姿――久我・御言(ka4137)は機杖よりファイアスローワーで緋炎を発し、不浄たる歪虚を焼き払う。
「馬鹿な! 援軍だと! 戦術的に有り得ぬ――」
「ところが、ご覧戴いとるウチら援軍にございます……あんさんらシバくためのな」
口元を黒布で覆い、長いマフラーをはためかせ、そして足元には倒れた歪虚――彼女の蹴りを喰らったのだ――。
琴吹 琉那(ka6082)は颯爽と宣言する。
――その姿たるや。
――まさに忍者。
指揮官は息を呑んだ。
「何奴、だって?」
別の方向には、呪術の才により毒の効果を与えた広角投射で複数の歪虚に打撃を与えた仁川 リア(ka3483)がいる。
彼は投擲の姿勢から帽子へと右手を持っていき、流れるようにその手で歪虚達を指さす。そして言った。
「繋がりの力を信じてくれた友のため、旅するハンターただいま参上!
さぁ、ここからは僕達のステージだよ!」
「……ええい、その程度の数脅威ではないわ! 叩き潰せ!」
歪虚指揮官は苛立たしげに吐き捨て、援軍の方に憤怒の歪虚を差し向けた。
複数の獣、あるいは人間の混じった大小様々な異形がハンター達に迫る。
「たとえ数で劣っていていも……負けはしない!」
ハルバードを振るい高瀬 未悠(ka3199)が迎え撃つ。その姿は凛とした黒い獅子のようであった。
今や彼女は仲間を護るために戦う高貴な獅子――。
「誰1人、絶対に死なせはしないわ!」
頭上からの爪の一撃をハルバードで弾き、回転とともに一撃を見舞う。
別の歪虚が未悠に迫った。長い腕の先にある、鋭い牙が並んだ顎で噛みつこうとする。
その首を斧が両断した。
斧の魔力により、落ちた首は凍てついて活動を止める。
「――ヒーローとして」
斧の持ち主は威嚇するように構え直す。
「助けに参上しましたっ!」
へザーと目が合う。そこで険しい顔から一転、笑顔になる。
「へザーさんっ! 皆さんっ!」
そのヒーローの名は、ミコト=S=レグルス(ka3953)。
さらに別の一角で、複数の歪虚が倒れた。歪虚によって塞がれていた視界が開き、へザー達からその姿が明らかになる。
「やれやれ、若もんが死に急ぐでない」
バリトン(ka5112)が次元斬で斬り伏せたのだ。彼は落ち着いた口調だが、よく通る声で語りかける。
「死を迎えるその瞬間まで足掻き続けよ。
一手でも一秒でもあがけば、その分生き残る可能性が増える」
傲慢の歪虚が斬りかかった。いなして反撃を見舞う。
次の瞬間、歪虚の首が虚空を舞った。
「……今日のようにの」
そして、バリトンは敵を見据える。
「私! 参上!」
そして、へザーの隣には、親指で自分を差して強気に笑うリツカ=R=ウラノス(ka3955)がいる。
もう1人。ルドルフ・デネボラ(ka3749)の姿もあった。
「ふう、抜けれて良かった。ヘザーさんお久しぶりです。遅くなってすみません」
ルドルフはへザーにポーションを渡す。その中には未悠が託したものもある。
リツカも渡した。こちらはトマーゾの怪しい薬だったが。
二人は愉愚泥羅の戦列に加わった。二人はランナウトやジェットブーツで敵陣をくぐり抜け、あるいは跳び越えてきたのだ。
「行くよルドっち! まずはこいつらを一掃だ!」
「解った! 皆さん、俺の後ろに!」
2人はへザー達に攻撃している歪虚に向かう。
リツカはアクロバティックな動きとともに拳銃を射撃して敵を牽制、ルドルフは防御障壁を展開し味方の盾となるべく前に出た。
「皆……!」
へザーは歓喜の声をあげた。体の内側から新たな闘志が湧き上がってくるのを感じる。
「仲間が助けに来てくれたぞ! もう少しの辛抱だ!」
愉愚泥羅の面々に呼びかけると、歓声が応えた。士気も回復したようだ。
「行くぞ! リツカ、ルドルフ、共に戦ってくれ。この戦いに勝って……みんなで王国に帰るんだ!」
「「「おう!!!」」」
●反撃開始!
「どうやら向こうは持ち直したようね」
未悠はハルバードを振るう手を止めず、へザー達を確認していた。
「わしらも行くぞ」
バリトンは敵を斬り伏せるとともに、前へと進み始める。
「これ以上貴様らの好きにさせるものか!
奴らを止めろ!」
歪虚指揮官は新手への警戒を強め、さらなる手勢を差し向けた。今度は憤怒だけではなく傲慢も加わっている。
「やらせるものかね!」
御言が颯爽とそれに立ち向かった。
「二度ネタですまないがね、あえて言わせてもらおう。
――この場は任せたまえ!」
御言は大仰な動作で両腕を広げた。背後には薔薇の幻影が咲き乱れ、ひとつの完成された形を作っていく――アブソリュート・ポーズ!
謎の衝撃が起こり、向かってきた歪虚達の何体かが吹っ飛んだ。
「もひとつ! これ、今日初めて使うわ……」
琉那が力強く足を踏み込み、腰を落として両手を合わせた。
「初モノやけど貰うてくれはる? 青龍翔咬波!」
突き出した両手から、マテリアルの波動が迸る。それは直線上にいた歪虚を焼いた。
「さあっ! 今やで!」
「行き給えッ!」
歪虚の集団の中に通り道ができていた。琉那と御言は促す。
「ありがとう!」
「恩に着る!」
未悠とバリトンは二人に礼を言い、その中へと駆け出す。
その左右から、歪虚が攻撃を仕掛ける。何重もの刃や獣の爪が、雨あられと二人に襲い掛かった。
「くっ……立ち止まってる暇はないわ!」
未悠は攻撃を受けながらも駆ける。へザー達の元へ。
それを追おうと歪虚の一体が首を返す。
その後頭部に刃が突き刺さった。
「おっと、僕達を忘れてもらっては困るね!」
リアが投げた投具だ。その刃は一投で複数を射抜く。
「やぁぁぁぁーーーーッ!」
ミコトが肉迫し、片っ端から斧で薙払っていく。
「好きにはさせんで? 飛翔撃ーッ!」
「私とて居るのだよ、かかって来たまえ!」
さらに攻撃に移る琉那と御言。
かれら四人は、その場に止まり戦うことを選んだ。
へザーは息を吹き返したように戦っていた。スキルが枯渇したとしても、覚醒時間の続く限りまだ戦える。
襲い来る傲慢の懐に踏み込み、拳を打ち込む。
(今ならばプラトニスでも倒せる気がする……もう何も怖くない!)
へザーの士気は頂点に達していた。
「へザーさん! 危ない!」
不意にリツカの声。
自身を狙うクロスボウが目に入った。
(しまったッ……!)
へザーは反応できない。疲労していた。
矢が放たれる音を聞く――
「……はッ!?」
一瞬死を覚悟したへザー。
だが、矢は当たっていない。
その矢は、割り込んだ未悠の背に刺さっていたからだ。
「……やっと近くで守れるわね」
痛みに歪んだ顔を一瞬だけ見せてから、へザーに微笑んでみせる。
「ぬぅんッ!」
バリトンの刀が、クロスボウごと歪虚を両断した。
だが複数の歪虚が狙いを定めていた。バリトンは的になる。
一瞬遅れて複数の矢がバリトンに突き刺さった。
「ぬぅッ……ぬおおおおおおおお!」
バリトンは構えを崩さず、防御に入ることもせずに次元斬を放った。
複数の歪虚が一斉に斬り裂かれ、血液や体の組織を散らしながら仰け反る。
「これ以上は進ませぬ……!」
そして刀を構える。地面を踏みしめる。
鬼気迫る表情が歪虚達に向けられていた。
「すまない! 私のせいで……」
へザーは反射的に謝罪していた。
「気にしないで、この程度……どうってことないわ」
未悠は矢を抜いてハルバードを構え、敵に向かう。
――守るべきものがいる限り、私は戦う。
「それより気合いを入れなさい、ここが正念場よ!」
死はいつも傍にある。
圧倒的なそれに立ち向かう姿を、未悠は自ら示す。あくまでも凛と、勇ましく。
●ヒーローの資格
一方、その場に留まった四人は不吉な音を聞いた。
不気味なうなり声と足音……
新たな歪虚が背後から現れた。
不思議はない。ここは歪虚の本拠地なのだから……。
「おお、よいところに……!
これで貴様等も終わりだな」
歪虚指揮官は嗜虐的な笑みを浮かべる。
そんな中、ミコトは1人新たに現れた敵に向かった。
「負けるもんか……うちは諦めないよ!
どんなに敵が多くとも最後まで戦う……」
そして大音声で叫んだ。
「なぜなら、それがヒーローだからっ!」
見よ、その迫力に歪虚達が押され、その場にしばし留まったではないか。
「さあ……来ないのならこっちから行くよっ!」
ミコトは斧をかかげ、果敢に斬り込んだ。
体ごと回転させるラウンドスイングで、多くの敵を相手取る。
「この状況では……一対多もやむなし、か」
御言は機杖を握る手に力を入れる。
その先に炎が灯る。回すと軌跡が赤々と残った。
「食らいたまえ!」
背景に薔薇を咲かせ、新たに現れた敵に向かって華麗に駆ける。
そして舞うような動きで機杖を振るう。炎の緋色が尾を引いて飛んだかと思うと、それは一気に広がって歪虚達を飲み込んだ。
「せいっ! 竜巻返し!」
琉那は初期配置の歪虚の多くを相手にしていた。投げ飛ばしたのも何体目か。
状況に応じて手裏剣も使い、柔軟に戦っている。
「ええね。ほな何人捌けるか試そか……
技も試し放題やし、よりどりみどり」
格闘士の気と言うべきものが、彼女の周りに漂っていた。
「ハンター・オブ・忍者の戦い……とくとご覧あれっ!」
リアは敢えて敵陣に切り込んでいた。敵の注意を惹きつけるためだ。例えば敵の戦力が一点に集中すればすぐに落ちる。
だから、注意を多方向に向けて戦力の集中を防ぐという試みだ。
金色のオーラを纏ったリアが駆ける。それは指揮官を目にするまでに至った。
「『繋がりの力など都合の良い妄想に過ぎぬ』と君は言ったね」
動きながら指揮官に聞こえるよう言う。
「何だと?!」
指揮官は苛立ち気味に言った。
「だったら見せてあげよう……その『都合の良い妄想』が、繋がりの力が本物になる瞬間を!」
「何なのだお前達は……不可解だッ!」
「隊長を守れ!」
指揮官を守らんと、歪虚がリアの前に立ちはだかる。
繰り出された槍を、リアは金色の残像を残して避ける。
そして牽制の一撃を振るうにとどめ、あえて打ち合わずに後退した。
その姿に歪虚達は翻弄される……。
●『繋がりの力』
ハンター達がとった行動は『耐える』戦いだった。
積極的に敵を倒すのではなく持ちこたえることを念頭に置いた戦法をとった。
傷ついたへザー達は薬や未悠のライフコンバートで回復させ、身を守ることに専念させた。
また傲慢を優先して倒した。これは強制対策であり、へザー達が強制の標的となることを防ぎ、守ることに繋がった。
懲罰への対策も考えられていた。意図的に発動させることで被害をコントロールできることを知っていた。
加えて憤怒の自爆についても注意がなされており、死んでも体が残る個体などをミコトや未悠がファントムハンドで移動させる事で被害を抑え、運が良ければ敵を爆発に巻き込むこともできた。
人員を二手に分け挟撃する方針は、敵の援軍のため乱戦になったが、おおむね目的は果たせていたと言えるだろう……。
……とはいえ容易く対応できるというものではない。ハンター達を相手にするものだけでなく、奥へ続く通路へ突破を図ろうとするものもいる。へザー達のうち戦える者は遠距離攻撃を中心に対応していたが、やはりハンター達が対応しなければ追いつかない部分もあった。
ルドルフはそういった歪虚を銃で応戦していた。自分に襲いかかってくる歪虚もおり、そういったものは盾で凌ぐしかなかった。
今、彼の眼前には大柄な歪虚がいた。亀を直立させ首が梟といった体の憤怒だ。それが口から炎を吐きかけてくる。ルドルフは反撃のきっかけをつかめないでいた。
「まずいね……こうなったら、アレをやるよルドっち!」
「えっ、アレ本当にやるんだ?」
唐突に提案したのはリツカ。ルドルフはやや驚いた顔で応じる。
炎の息が止んだ、僅かな隙を狙ってリツカはランナウトでルドルフに向かって駆ける。ルドルフは盾をやや上向きに構える。
リツカが跳び、ルドルフの盾に足を合わせる。
「キエエエエエエーーーーッ!」
雄叫びとともにルドルフの盾を蹴った。
その勢いで跳び、クローを歪虚の首筋に叩きつける。
リツカは転がって着地。歪虚は轟音とともに地に臥した。
「名付けて、ジャクドー流・手刀・D」
「おお……いつもながら手の込んだ通常攻撃だ」
へザーが感心する。派手な演出だが、別にスキル攻撃というわけではない。
「ん……敵の攻撃が止んだ?」
ルドルフは今の一体を最後に、敵が向かってこないことに気がついた。
「撤退! 撤退だ……こんな所で時間と戦力を無駄にするわけにはいかん!」
指揮官は撤退の決断を下した。それからは早かった。歪虚は一目散に通路の向こう側に消えていったのである……。
「勝った……」
へザーは周囲に敵がいないことを確認してから、一気に体の力を抜いた。
「私達は勝ったんだ!」
そして仲間達と喜びを分かち合った。
「頑張ったな、嬢ちゃん」
バリトンがへザーの肩に手をおいて労う。
「バリトン、私は、私は……」
「もう、ほら、泣かないの」
未悠も思わず優しい口調になった。
「へザー! 皆!」
リアが駆け寄った。リアも他の面子も全員無事だ。
「前の特訓の時よりずっと強くなったんじゃない?」
「リア! お前さんにゃ助けられたぜ」
「あの金色の、格好良いな」
フロッグとヤーグをはじめ、愉愚泥羅の面々とも健闘を讃え合う。
「三度目になるが――
ここは私達に任せたまえ」
御言が言った。この場の守備のことである。
「天丼言うやつやな……ちなみにウチ関西やけどお笑いは専門外やで?」
琉那が、聞かれても居ないのに念を押した。
「さ、へザーさん。拠点に帰りましょう」
「そして勝利の報告をするんだ」
「みんなでヒーローですねっ!」
ルドルフ、リツカ、ミコトがへザーを囲んだ。
「どこかで信じていた。君達が助けにきてくれると……」
へザーがやっとのことで顔を上げて言った。
「皆……」
改まったように、来てくれた全員に向けて言った。
「本当に、ありがとう。
君達は最高の仲間だ」
――ヘザー・スクロヴェーニ他9名。
黒羊神殿より、無事帰還を果たす。
――突如として歪虚の後方から火の手が上がった。
歪虚達が悲鳴を、あるいは怒声をあげている。ある者は火に焼かれ、ある者は投具を突き立てられ、ある者は長柄武器でなぎ倒される。
「おのれ! 何奴!」
異変に気づいた歪虚の指揮官がようやく問うた――
「ふはははははははっ! 正・義・光・臨!!」
返答は大砲のごとき大音声で轟いた。
堂々たる態度で名乗りをあげたのは煌々たる姿――久我・御言(ka4137)は機杖よりファイアスローワーで緋炎を発し、不浄たる歪虚を焼き払う。
「馬鹿な! 援軍だと! 戦術的に有り得ぬ――」
「ところが、ご覧戴いとるウチら援軍にございます……あんさんらシバくためのな」
口元を黒布で覆い、長いマフラーをはためかせ、そして足元には倒れた歪虚――彼女の蹴りを喰らったのだ――。
琴吹 琉那(ka6082)は颯爽と宣言する。
――その姿たるや。
――まさに忍者。
指揮官は息を呑んだ。
「何奴、だって?」
別の方向には、呪術の才により毒の効果を与えた広角投射で複数の歪虚に打撃を与えた仁川 リア(ka3483)がいる。
彼は投擲の姿勢から帽子へと右手を持っていき、流れるようにその手で歪虚達を指さす。そして言った。
「繋がりの力を信じてくれた友のため、旅するハンターただいま参上!
さぁ、ここからは僕達のステージだよ!」
「……ええい、その程度の数脅威ではないわ! 叩き潰せ!」
歪虚指揮官は苛立たしげに吐き捨て、援軍の方に憤怒の歪虚を差し向けた。
複数の獣、あるいは人間の混じった大小様々な異形がハンター達に迫る。
「たとえ数で劣っていていも……負けはしない!」
ハルバードを振るい高瀬 未悠(ka3199)が迎え撃つ。その姿は凛とした黒い獅子のようであった。
今や彼女は仲間を護るために戦う高貴な獅子――。
「誰1人、絶対に死なせはしないわ!」
頭上からの爪の一撃をハルバードで弾き、回転とともに一撃を見舞う。
別の歪虚が未悠に迫った。長い腕の先にある、鋭い牙が並んだ顎で噛みつこうとする。
その首を斧が両断した。
斧の魔力により、落ちた首は凍てついて活動を止める。
「――ヒーローとして」
斧の持ち主は威嚇するように構え直す。
「助けに参上しましたっ!」
へザーと目が合う。そこで険しい顔から一転、笑顔になる。
「へザーさんっ! 皆さんっ!」
そのヒーローの名は、ミコト=S=レグルス(ka3953)。
さらに別の一角で、複数の歪虚が倒れた。歪虚によって塞がれていた視界が開き、へザー達からその姿が明らかになる。
「やれやれ、若もんが死に急ぐでない」
バリトン(ka5112)が次元斬で斬り伏せたのだ。彼は落ち着いた口調だが、よく通る声で語りかける。
「死を迎えるその瞬間まで足掻き続けよ。
一手でも一秒でもあがけば、その分生き残る可能性が増える」
傲慢の歪虚が斬りかかった。いなして反撃を見舞う。
次の瞬間、歪虚の首が虚空を舞った。
「……今日のようにの」
そして、バリトンは敵を見据える。
「私! 参上!」
そして、へザーの隣には、親指で自分を差して強気に笑うリツカ=R=ウラノス(ka3955)がいる。
もう1人。ルドルフ・デネボラ(ka3749)の姿もあった。
「ふう、抜けれて良かった。ヘザーさんお久しぶりです。遅くなってすみません」
ルドルフはへザーにポーションを渡す。その中には未悠が託したものもある。
リツカも渡した。こちらはトマーゾの怪しい薬だったが。
二人は愉愚泥羅の戦列に加わった。二人はランナウトやジェットブーツで敵陣をくぐり抜け、あるいは跳び越えてきたのだ。
「行くよルドっち! まずはこいつらを一掃だ!」
「解った! 皆さん、俺の後ろに!」
2人はへザー達に攻撃している歪虚に向かう。
リツカはアクロバティックな動きとともに拳銃を射撃して敵を牽制、ルドルフは防御障壁を展開し味方の盾となるべく前に出た。
「皆……!」
へザーは歓喜の声をあげた。体の内側から新たな闘志が湧き上がってくるのを感じる。
「仲間が助けに来てくれたぞ! もう少しの辛抱だ!」
愉愚泥羅の面々に呼びかけると、歓声が応えた。士気も回復したようだ。
「行くぞ! リツカ、ルドルフ、共に戦ってくれ。この戦いに勝って……みんなで王国に帰るんだ!」
「「「おう!!!」」」
●反撃開始!
「どうやら向こうは持ち直したようね」
未悠はハルバードを振るう手を止めず、へザー達を確認していた。
「わしらも行くぞ」
バリトンは敵を斬り伏せるとともに、前へと進み始める。
「これ以上貴様らの好きにさせるものか!
奴らを止めろ!」
歪虚指揮官は新手への警戒を強め、さらなる手勢を差し向けた。今度は憤怒だけではなく傲慢も加わっている。
「やらせるものかね!」
御言が颯爽とそれに立ち向かった。
「二度ネタですまないがね、あえて言わせてもらおう。
――この場は任せたまえ!」
御言は大仰な動作で両腕を広げた。背後には薔薇の幻影が咲き乱れ、ひとつの完成された形を作っていく――アブソリュート・ポーズ!
謎の衝撃が起こり、向かってきた歪虚達の何体かが吹っ飛んだ。
「もひとつ! これ、今日初めて使うわ……」
琉那が力強く足を踏み込み、腰を落として両手を合わせた。
「初モノやけど貰うてくれはる? 青龍翔咬波!」
突き出した両手から、マテリアルの波動が迸る。それは直線上にいた歪虚を焼いた。
「さあっ! 今やで!」
「行き給えッ!」
歪虚の集団の中に通り道ができていた。琉那と御言は促す。
「ありがとう!」
「恩に着る!」
未悠とバリトンは二人に礼を言い、その中へと駆け出す。
その左右から、歪虚が攻撃を仕掛ける。何重もの刃や獣の爪が、雨あられと二人に襲い掛かった。
「くっ……立ち止まってる暇はないわ!」
未悠は攻撃を受けながらも駆ける。へザー達の元へ。
それを追おうと歪虚の一体が首を返す。
その後頭部に刃が突き刺さった。
「おっと、僕達を忘れてもらっては困るね!」
リアが投げた投具だ。その刃は一投で複数を射抜く。
「やぁぁぁぁーーーーッ!」
ミコトが肉迫し、片っ端から斧で薙払っていく。
「好きにはさせんで? 飛翔撃ーッ!」
「私とて居るのだよ、かかって来たまえ!」
さらに攻撃に移る琉那と御言。
かれら四人は、その場に止まり戦うことを選んだ。
へザーは息を吹き返したように戦っていた。スキルが枯渇したとしても、覚醒時間の続く限りまだ戦える。
襲い来る傲慢の懐に踏み込み、拳を打ち込む。
(今ならばプラトニスでも倒せる気がする……もう何も怖くない!)
へザーの士気は頂点に達していた。
「へザーさん! 危ない!」
不意にリツカの声。
自身を狙うクロスボウが目に入った。
(しまったッ……!)
へザーは反応できない。疲労していた。
矢が放たれる音を聞く――
「……はッ!?」
一瞬死を覚悟したへザー。
だが、矢は当たっていない。
その矢は、割り込んだ未悠の背に刺さっていたからだ。
「……やっと近くで守れるわね」
痛みに歪んだ顔を一瞬だけ見せてから、へザーに微笑んでみせる。
「ぬぅんッ!」
バリトンの刀が、クロスボウごと歪虚を両断した。
だが複数の歪虚が狙いを定めていた。バリトンは的になる。
一瞬遅れて複数の矢がバリトンに突き刺さった。
「ぬぅッ……ぬおおおおおおおお!」
バリトンは構えを崩さず、防御に入ることもせずに次元斬を放った。
複数の歪虚が一斉に斬り裂かれ、血液や体の組織を散らしながら仰け反る。
「これ以上は進ませぬ……!」
そして刀を構える。地面を踏みしめる。
鬼気迫る表情が歪虚達に向けられていた。
「すまない! 私のせいで……」
へザーは反射的に謝罪していた。
「気にしないで、この程度……どうってことないわ」
未悠は矢を抜いてハルバードを構え、敵に向かう。
――守るべきものがいる限り、私は戦う。
「それより気合いを入れなさい、ここが正念場よ!」
死はいつも傍にある。
圧倒的なそれに立ち向かう姿を、未悠は自ら示す。あくまでも凛と、勇ましく。
●ヒーローの資格
一方、その場に留まった四人は不吉な音を聞いた。
不気味なうなり声と足音……
新たな歪虚が背後から現れた。
不思議はない。ここは歪虚の本拠地なのだから……。
「おお、よいところに……!
これで貴様等も終わりだな」
歪虚指揮官は嗜虐的な笑みを浮かべる。
そんな中、ミコトは1人新たに現れた敵に向かった。
「負けるもんか……うちは諦めないよ!
どんなに敵が多くとも最後まで戦う……」
そして大音声で叫んだ。
「なぜなら、それがヒーローだからっ!」
見よ、その迫力に歪虚達が押され、その場にしばし留まったではないか。
「さあ……来ないのならこっちから行くよっ!」
ミコトは斧をかかげ、果敢に斬り込んだ。
体ごと回転させるラウンドスイングで、多くの敵を相手取る。
「この状況では……一対多もやむなし、か」
御言は機杖を握る手に力を入れる。
その先に炎が灯る。回すと軌跡が赤々と残った。
「食らいたまえ!」
背景に薔薇を咲かせ、新たに現れた敵に向かって華麗に駆ける。
そして舞うような動きで機杖を振るう。炎の緋色が尾を引いて飛んだかと思うと、それは一気に広がって歪虚達を飲み込んだ。
「せいっ! 竜巻返し!」
琉那は初期配置の歪虚の多くを相手にしていた。投げ飛ばしたのも何体目か。
状況に応じて手裏剣も使い、柔軟に戦っている。
「ええね。ほな何人捌けるか試そか……
技も試し放題やし、よりどりみどり」
格闘士の気と言うべきものが、彼女の周りに漂っていた。
「ハンター・オブ・忍者の戦い……とくとご覧あれっ!」
リアは敢えて敵陣に切り込んでいた。敵の注意を惹きつけるためだ。例えば敵の戦力が一点に集中すればすぐに落ちる。
だから、注意を多方向に向けて戦力の集中を防ぐという試みだ。
金色のオーラを纏ったリアが駆ける。それは指揮官を目にするまでに至った。
「『繋がりの力など都合の良い妄想に過ぎぬ』と君は言ったね」
動きながら指揮官に聞こえるよう言う。
「何だと?!」
指揮官は苛立ち気味に言った。
「だったら見せてあげよう……その『都合の良い妄想』が、繋がりの力が本物になる瞬間を!」
「何なのだお前達は……不可解だッ!」
「隊長を守れ!」
指揮官を守らんと、歪虚がリアの前に立ちはだかる。
繰り出された槍を、リアは金色の残像を残して避ける。
そして牽制の一撃を振るうにとどめ、あえて打ち合わずに後退した。
その姿に歪虚達は翻弄される……。
●『繋がりの力』
ハンター達がとった行動は『耐える』戦いだった。
積極的に敵を倒すのではなく持ちこたえることを念頭に置いた戦法をとった。
傷ついたへザー達は薬や未悠のライフコンバートで回復させ、身を守ることに専念させた。
また傲慢を優先して倒した。これは強制対策であり、へザー達が強制の標的となることを防ぎ、守ることに繋がった。
懲罰への対策も考えられていた。意図的に発動させることで被害をコントロールできることを知っていた。
加えて憤怒の自爆についても注意がなされており、死んでも体が残る個体などをミコトや未悠がファントムハンドで移動させる事で被害を抑え、運が良ければ敵を爆発に巻き込むこともできた。
人員を二手に分け挟撃する方針は、敵の援軍のため乱戦になったが、おおむね目的は果たせていたと言えるだろう……。
……とはいえ容易く対応できるというものではない。ハンター達を相手にするものだけでなく、奥へ続く通路へ突破を図ろうとするものもいる。へザー達のうち戦える者は遠距離攻撃を中心に対応していたが、やはりハンター達が対応しなければ追いつかない部分もあった。
ルドルフはそういった歪虚を銃で応戦していた。自分に襲いかかってくる歪虚もおり、そういったものは盾で凌ぐしかなかった。
今、彼の眼前には大柄な歪虚がいた。亀を直立させ首が梟といった体の憤怒だ。それが口から炎を吐きかけてくる。ルドルフは反撃のきっかけをつかめないでいた。
「まずいね……こうなったら、アレをやるよルドっち!」
「えっ、アレ本当にやるんだ?」
唐突に提案したのはリツカ。ルドルフはやや驚いた顔で応じる。
炎の息が止んだ、僅かな隙を狙ってリツカはランナウトでルドルフに向かって駆ける。ルドルフは盾をやや上向きに構える。
リツカが跳び、ルドルフの盾に足を合わせる。
「キエエエエエエーーーーッ!」
雄叫びとともにルドルフの盾を蹴った。
その勢いで跳び、クローを歪虚の首筋に叩きつける。
リツカは転がって着地。歪虚は轟音とともに地に臥した。
「名付けて、ジャクドー流・手刀・D」
「おお……いつもながら手の込んだ通常攻撃だ」
へザーが感心する。派手な演出だが、別にスキル攻撃というわけではない。
「ん……敵の攻撃が止んだ?」
ルドルフは今の一体を最後に、敵が向かってこないことに気がついた。
「撤退! 撤退だ……こんな所で時間と戦力を無駄にするわけにはいかん!」
指揮官は撤退の決断を下した。それからは早かった。歪虚は一目散に通路の向こう側に消えていったのである……。
「勝った……」
へザーは周囲に敵がいないことを確認してから、一気に体の力を抜いた。
「私達は勝ったんだ!」
そして仲間達と喜びを分かち合った。
「頑張ったな、嬢ちゃん」
バリトンがへザーの肩に手をおいて労う。
「バリトン、私は、私は……」
「もう、ほら、泣かないの」
未悠も思わず優しい口調になった。
「へザー! 皆!」
リアが駆け寄った。リアも他の面子も全員無事だ。
「前の特訓の時よりずっと強くなったんじゃない?」
「リア! お前さんにゃ助けられたぜ」
「あの金色の、格好良いな」
フロッグとヤーグをはじめ、愉愚泥羅の面々とも健闘を讃え合う。
「三度目になるが――
ここは私達に任せたまえ」
御言が言った。この場の守備のことである。
「天丼言うやつやな……ちなみにウチ関西やけどお笑いは専門外やで?」
琉那が、聞かれても居ないのに念を押した。
「さ、へザーさん。拠点に帰りましょう」
「そして勝利の報告をするんだ」
「みんなでヒーローですねっ!」
ルドルフ、リツカ、ミコトがへザーを囲んだ。
「どこかで信じていた。君達が助けにきてくれると……」
へザーがやっとのことで顔を上げて言った。
「皆……」
改まったように、来てくれた全員に向けて言った。
「本当に、ありがとう。
君達は最高の仲間だ」
――ヘザー・スクロヴェーニ他9名。
黒羊神殿より、無事帰還を果たす。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談 ルドルフ・デネボラ(ka3749) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/09/21 21:13:47 |
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質問卓 未悠(ka3199) 人間(リアルブルー)|21才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/09/20 23:10:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/17 18:53:35 |