ゲスト
(ka0000)
暗闇の底で
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/02/22 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/03/03 09:00
オープニング
クリームヒルトは夜よりも暗い暗黒の径を歩いていた。ランタンの明かりが全てだ。
アドランケン鉱山。国有鉱山でありながら一度は旧政権の革命のゴタゴタにまぎれ、採掘権利書が失われて誰とも知らぬ闇商人のような輩の財を築く糧になり果てていたが、今は権利書は元に戻され活動は国に戻っている。はずであった。
クリームヒルトがこの坑道を歩いているのには、現在も魔導車などの開発を主に援助している実業家、旧帝国貴族のベント伯の元を訪れたのが発端だった。ベントの娘は地方内務課に勤め、地方をよく知っているという話を聞いていた。
「ねぇ、メルツェーデスさん。地図ってある?」
「姫様、メルと呼び捨ててくださいっ。地図、あります! 早速、超速で持ってまいります!!」
旧帝国の王族の末裔であるクリームヒルトに声をかけられたベントの娘、メルツェーデスは最敬礼の上でそう言うと慌てて地図を準備した。
「年明けに更新された最新の地図です」
クリームヒルトはその地図をじっと見つめた。確かに最新の地図なのだろう。新たな集落が記載されていたり、また彼女の知った村の名前がいくつか消えていた。彼女が地方再生として手掛けた羊のブランド、ヘルトシープの主産地であった羊飼いの集落の名前も消えていた。ゾンビに襲われ消えた村。
「ここ、消えたんだ……」
「はい、あの、歪虚に襲われて集落として機能しなくなったと……聞いております」
知ってる。
クリームヒルトは口の中で呟いた。その調査をハンターに依頼したのは他でもないクリームヒルトなのだから。
しかし口には出さず、彼女はじっと地図を見つめた。この地図の中にゾンビに襲われて失踪した羊飼いや羊達がどこかにいるはずなのだ。消えたのはおおよそ人間と羊を合わせておおよそ100。遠くに運べば必ず誰かに見られているはずだ。だが、それはないということは村の周辺に……。
クリームヒルトは消えた名前の周辺に指を走らせ、ふとあることに気が付いた。
「あれ……ここ、アドランケンの名前は?」
「アドランケン? せ、浅学で申し訳ございません」
「鉱山よ。この山のあたり。違法採掘してて私がハンターにお願いしてそれを暴いたんだけど……結局、廃坑にしたのかしら?」
クリームヒルトは地図の何も書かれていない山の一つを指さしたが、メルツェーデスは首をかしげるばかりだった。
「そんなところに鉱山があるということは初めて聞きました」
消えた集落は反映されているのに、アドランケンの事は載っていない? いや、初めて聞くって……存在すら認識されていない?
頭の中で、疑念の霧の中に小さな電光が駆け抜けた。
消えた集落とアドランケン鉱山は近い。その線を結ぶ間には目だった他の集落も存在していない。
「あの、メルツェーデスさん。ベント伯やアウグストに内緒でお願いしたい事があるんだけど……」
「はいっ、クリームヒルト様の御命とあらばっ! そしてメルと呼び捨てで結構です!」
クリームヒルトはこそりと耳打ちした。ハンターに依頼してアドランケン鉱山を一緒に調査してほしいと。
そしてアウグストにはピースホライズンの商人の元に魔導車で出かけたように口裏を合わせてほしいと。
クリームヒルトは頭が良く働くわけでもなければ、運動に秀でているところもなかった。血の貴さを拭えば顔もどちらかといえば平凡な部類だ。だけど多少の事では折れない心と、そして直観力はそれなりに自信があった。
闇の坑道の向こうから、岩を削るピッケルの音が聞こえる。とてもとてもか細く、単調で。まるで時計の針が進むような音だった。だがそれでも採掘が進められている事実は間違いなく、クリームヒルトの胸は早鐘のように打った。
鉱山の表は無人であり、ここは活動していないように見えたが、やはり。
ランタンの明かりを持ち上げて遠くを見やった。
「あれは……」
後ろ姿であったが、その服装や背格好には確かに見覚えがあった。アドランケンで不当な労働を強いられて這う這うの体で助けを求めてきた男だ。
クリームヒルトが駆けつけようとして、手前にいた何かに盛大にぶつかってしまう。腰より下でノロノロと動いていたのは。
羊。いや、羊の死骸だった。ボロボロになった毛に、肉が見えている。顔は歪みただれていた。腐汁が白濁した目から骨の見える口から垂れ落ちる。
もんどりうって倒れたクリームヒルトには目もくれず、四肢がおかしな方向に曲がりながらもヨタヨタと歩く羊は男が掘った鉱石を積んだ荷車を曳いていた。後に残るのは肉の腐った臭いばかり。男もそんなことをまるで聞こえていないかのように黙々と掘り進めていた。よく見れば彼の頭の黒いのは、髪の毛ではない。乾いた血と垂れ落ちた脳の一部。
見知ったものがいまや別の何者かになり果てた姿を見てクリームヒルトは奈落に吸い込まれるような気持ちであった。
クリームヒルトは走った。とにかく走った。星明かりが、冷たい空気が。生きている草木のそよぐ音が聞きたい。不気味なサイレンが鳴り響く中、とにかく出口へ向かって懸命に足をばたつかせた。
わかっていた。頭では理解していた。でも。それでも間近で見ると理性では抑えられない何かが溢れだしてくるのだ。
遠くに坑道の出口が見えた。小さな希望が胸に光った。が、小さな振動でクリームヒルトはまた転んだ。
小石が天井からバラバラと振り落ちてくる。そしてまもなくやってくる轟音に彼女は反射的に身を丸くした。
長い長い時間が過ぎて、全てが静まり返った時に頭を上げた時、生の世界に通じる道はすっかり消えてなくなっていた。
その向こう側からくぐもった声が、小さく小さく聞こえる。
「入り口潰したのか。もったいない。主要なものはもう移動したとはいえ……」
「道なんて後でいくらでも開けられるさ。侵入者も一か月ほど放っておけば死ぬだろうし、マテリアル汚染もさっさと済むだろ。ゾンビにした時に腕や足が欠けてたら戦力にならねぇからなぁ」
ゾンビに……?
口が渇いて声すら出せない。
愚かだったと打ちひしがれたクリームヒルトはランタンの光を見つめるばかりだった。先の入り口の封鎖に伴い落ちてきた石でランタンのガラスが割れ、もう今にも消えそうにして火が揺らいでいる。
……? 揺らぐ? 風が動いているのか。
まだ絶望の中で死に絶えると決めるのは早そうだ。
アドランケン鉱山。国有鉱山でありながら一度は旧政権の革命のゴタゴタにまぎれ、採掘権利書が失われて誰とも知らぬ闇商人のような輩の財を築く糧になり果てていたが、今は権利書は元に戻され活動は国に戻っている。はずであった。
クリームヒルトがこの坑道を歩いているのには、現在も魔導車などの開発を主に援助している実業家、旧帝国貴族のベント伯の元を訪れたのが発端だった。ベントの娘は地方内務課に勤め、地方をよく知っているという話を聞いていた。
「ねぇ、メルツェーデスさん。地図ってある?」
「姫様、メルと呼び捨ててくださいっ。地図、あります! 早速、超速で持ってまいります!!」
旧帝国の王族の末裔であるクリームヒルトに声をかけられたベントの娘、メルツェーデスは最敬礼の上でそう言うと慌てて地図を準備した。
「年明けに更新された最新の地図です」
クリームヒルトはその地図をじっと見つめた。確かに最新の地図なのだろう。新たな集落が記載されていたり、また彼女の知った村の名前がいくつか消えていた。彼女が地方再生として手掛けた羊のブランド、ヘルトシープの主産地であった羊飼いの集落の名前も消えていた。ゾンビに襲われ消えた村。
「ここ、消えたんだ……」
「はい、あの、歪虚に襲われて集落として機能しなくなったと……聞いております」
知ってる。
クリームヒルトは口の中で呟いた。その調査をハンターに依頼したのは他でもないクリームヒルトなのだから。
しかし口には出さず、彼女はじっと地図を見つめた。この地図の中にゾンビに襲われて失踪した羊飼いや羊達がどこかにいるはずなのだ。消えたのはおおよそ人間と羊を合わせておおよそ100。遠くに運べば必ず誰かに見られているはずだ。だが、それはないということは村の周辺に……。
クリームヒルトは消えた名前の周辺に指を走らせ、ふとあることに気が付いた。
「あれ……ここ、アドランケンの名前は?」
「アドランケン? せ、浅学で申し訳ございません」
「鉱山よ。この山のあたり。違法採掘してて私がハンターにお願いしてそれを暴いたんだけど……結局、廃坑にしたのかしら?」
クリームヒルトは地図の何も書かれていない山の一つを指さしたが、メルツェーデスは首をかしげるばかりだった。
「そんなところに鉱山があるということは初めて聞きました」
消えた集落は反映されているのに、アドランケンの事は載っていない? いや、初めて聞くって……存在すら認識されていない?
頭の中で、疑念の霧の中に小さな電光が駆け抜けた。
消えた集落とアドランケン鉱山は近い。その線を結ぶ間には目だった他の集落も存在していない。
「あの、メルツェーデスさん。ベント伯やアウグストに内緒でお願いしたい事があるんだけど……」
「はいっ、クリームヒルト様の御命とあらばっ! そしてメルと呼び捨てで結構です!」
クリームヒルトはこそりと耳打ちした。ハンターに依頼してアドランケン鉱山を一緒に調査してほしいと。
そしてアウグストにはピースホライズンの商人の元に魔導車で出かけたように口裏を合わせてほしいと。
クリームヒルトは頭が良く働くわけでもなければ、運動に秀でているところもなかった。血の貴さを拭えば顔もどちらかといえば平凡な部類だ。だけど多少の事では折れない心と、そして直観力はそれなりに自信があった。
闇の坑道の向こうから、岩を削るピッケルの音が聞こえる。とてもとてもか細く、単調で。まるで時計の針が進むような音だった。だがそれでも採掘が進められている事実は間違いなく、クリームヒルトの胸は早鐘のように打った。
鉱山の表は無人であり、ここは活動していないように見えたが、やはり。
ランタンの明かりを持ち上げて遠くを見やった。
「あれは……」
後ろ姿であったが、その服装や背格好には確かに見覚えがあった。アドランケンで不当な労働を強いられて這う這うの体で助けを求めてきた男だ。
クリームヒルトが駆けつけようとして、手前にいた何かに盛大にぶつかってしまう。腰より下でノロノロと動いていたのは。
羊。いや、羊の死骸だった。ボロボロになった毛に、肉が見えている。顔は歪みただれていた。腐汁が白濁した目から骨の見える口から垂れ落ちる。
もんどりうって倒れたクリームヒルトには目もくれず、四肢がおかしな方向に曲がりながらもヨタヨタと歩く羊は男が掘った鉱石を積んだ荷車を曳いていた。後に残るのは肉の腐った臭いばかり。男もそんなことをまるで聞こえていないかのように黙々と掘り進めていた。よく見れば彼の頭の黒いのは、髪の毛ではない。乾いた血と垂れ落ちた脳の一部。
見知ったものがいまや別の何者かになり果てた姿を見てクリームヒルトは奈落に吸い込まれるような気持ちであった。
クリームヒルトは走った。とにかく走った。星明かりが、冷たい空気が。生きている草木のそよぐ音が聞きたい。不気味なサイレンが鳴り響く中、とにかく出口へ向かって懸命に足をばたつかせた。
わかっていた。頭では理解していた。でも。それでも間近で見ると理性では抑えられない何かが溢れだしてくるのだ。
遠くに坑道の出口が見えた。小さな希望が胸に光った。が、小さな振動でクリームヒルトはまた転んだ。
小石が天井からバラバラと振り落ちてくる。そしてまもなくやってくる轟音に彼女は反射的に身を丸くした。
長い長い時間が過ぎて、全てが静まり返った時に頭を上げた時、生の世界に通じる道はすっかり消えてなくなっていた。
その向こう側からくぐもった声が、小さく小さく聞こえる。
「入り口潰したのか。もったいない。主要なものはもう移動したとはいえ……」
「道なんて後でいくらでも開けられるさ。侵入者も一か月ほど放っておけば死ぬだろうし、マテリアル汚染もさっさと済むだろ。ゾンビにした時に腕や足が欠けてたら戦力にならねぇからなぁ」
ゾンビに……?
口が渇いて声すら出せない。
愚かだったと打ちひしがれたクリームヒルトはランタンの光を見つめるばかりだった。先の入り口の封鎖に伴い落ちてきた石でランタンのガラスが割れ、もう今にも消えそうにして火が揺らいでいる。
……? 揺らぐ? 風が動いているのか。
まだ絶望の中で死に絶えると決めるのは早そうだ。
解説
●状況
クリームヒルトと共にアドランケン鉱山の坑道の調査に入りましたが、侵入は検知されていたらしく、入り口を壊されてしまいました。
参加される皆様も閉じ込められた鉱山の中にいるものとします。
●目的とその手段
ここから無事脱出するが目的です。
脱出経路は大きく分かれて3つ
1.埋められた入り口を掘り起こす。
入り口は直径5mほどの幅ですが、土砂崩れを起こされて完全に閉じてしまっています。スコップなどは坑道内を探せば見つかります。
2.空気穴兼、鉱石の引き上げ口として作られている山頂部に続く穴を登る。
穴は幅10mほど。縦は50m程度あります。引き上げ用にホイスターが設置されていましたが、そのワイヤーは山頂部で切断されています。
山頂部には鉄材が井形に組まれています。
3.鉱山内に流れる川から下る。
自然にできた地下水脈みたいなものです。水深最大1.5mです。天井が低く潜水して進まなくてはならなかったりする場所や落差のある場所もあります。
距離は不明。冷たいです。
●障害
あちこちにゾンビが徘徊しています。採掘しているゾンビは基本的に攻撃してきませんが、攻撃してくる者もいます。
人間(羊飼い・農民・鉱夫)の他にも、羊型のゾンビもいます。坑道内どころか川の中、山頂部を警戒しているなどあちこちにおり、巡回もしています。
●利用できるアイテム
鉱山でありそうな道具は、あちこちに散乱しております。スコップ、ピッケル、ロープ、トロッコなど。探せば必要な量はだいたい見つかるでしょう。
坑道内は一部トロッコが走っています。レールも敷かれています。
●その他
質問にはクリームヒルトが答えます。しかし、鉱山全体の地図だとか警備状況など彼女が知りえないこともたくさんありますので、全てに正確にお答えしかねることもあります。
クリームヒルトと共にアドランケン鉱山の坑道の調査に入りましたが、侵入は検知されていたらしく、入り口を壊されてしまいました。
参加される皆様も閉じ込められた鉱山の中にいるものとします。
●目的とその手段
ここから無事脱出するが目的です。
脱出経路は大きく分かれて3つ
1.埋められた入り口を掘り起こす。
入り口は直径5mほどの幅ですが、土砂崩れを起こされて完全に閉じてしまっています。スコップなどは坑道内を探せば見つかります。
2.空気穴兼、鉱石の引き上げ口として作られている山頂部に続く穴を登る。
穴は幅10mほど。縦は50m程度あります。引き上げ用にホイスターが設置されていましたが、そのワイヤーは山頂部で切断されています。
山頂部には鉄材が井形に組まれています。
3.鉱山内に流れる川から下る。
自然にできた地下水脈みたいなものです。水深最大1.5mです。天井が低く潜水して進まなくてはならなかったりする場所や落差のある場所もあります。
距離は不明。冷たいです。
●障害
あちこちにゾンビが徘徊しています。採掘しているゾンビは基本的に攻撃してきませんが、攻撃してくる者もいます。
人間(羊飼い・農民・鉱夫)の他にも、羊型のゾンビもいます。坑道内どころか川の中、山頂部を警戒しているなどあちこちにおり、巡回もしています。
●利用できるアイテム
鉱山でありそうな道具は、あちこちに散乱しております。スコップ、ピッケル、ロープ、トロッコなど。探せば必要な量はだいたい見つかるでしょう。
坑道内は一部トロッコが走っています。レールも敷かれています。
●その他
質問にはクリームヒルトが答えます。しかし、鉱山全体の地図だとか警備状況など彼女が知りえないこともたくさんありますので、全てに正確にお答えしかねることもあります。
マスターより
ゾンビの徘徊する鉱山から無事脱出をするのは皆様の知恵と勇気とコンビネーションです。
華麗な大脱出を決めて、是非閉じ込めた敵に一泡吹かせてやりましょう。
華麗な大脱出を決めて、是非閉じ込めた敵に一泡吹かせてやりましょう。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/02/28 00:56
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 フレデリク・リンドバーグ(ka2490) エルフ|16才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/02/20 00:32:46 |
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脱出の算段 ダリオ・パステリ(ka2363) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/02/22 01:00:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/18 20:50:57 |