ゲスト
(ka0000)
貴族の依頼、ピノの話し2
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 不明
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/08/23 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/09/01 19:00
オープニング
●
あの日、目を覚ましていれば。
あの日、倒れていなければ。
きっと、2年前の真実を話すことが出来ていただろう。
オフィスで目を覚ましたサーラは横たわったままぼんやりと天井を見上げる。
サーラが赤子をサンルームへ連れてきた時、夫人は確かに剣を取った。
しかし、その切っ先を向けながら手は震えていた。
頬を少し切るくらいで全てを許されるなんて。
愛人からの仕打ちに、まだ体中に痣を残していたサーラにはそれが優しすぎるように思えて、それすら躊躇う夫人の甘さが、ほんの少し癇に障った。
だから、
「……私が、どうぞ、って、あの赤ん坊を差し出したんです。きっと、奥様が躊躇わずに頬を切っていれば、あの子は誤解なんかすることは無かったと思うんです」
差し出した。夫人が目を見開いて、剣を向け直した。
そんな風に扱っては、酷い傷になってしまう。それが分かっても、止めなかった。
サーラの目には、モニカが立ち上がるのが見えた。控えていた他のメイドが慌てるのが見えた。
そして、モニカがサーラを突き飛ばし、赤ん坊を抱えて連れ去った。
「初めて、奥様に叱られました。私が、ちゃんと抱えてなかったからって。その通りです。私は、あの赤ん坊をちゃんと抱えてなかったんです。――でも、私はその時に思わず言い返してしまいました。……奥様が躊躇うからって、言ってしまったんです」
赤ん坊のことは諦めが付いた。
言い方は悪いけれど、所詮は愛人の子、妾腹、跡継ぎにはならない子。
けれど、巻き込んでしまったモニカは違う。目を掛けていたからといって、貴族とは関わりの無い子ども。
家柄に、立場に拘る夫人は、同じように、そこに属さない者への悪い影響を厭う。
サーラの反論に言葉を失い、その場にいたメイド達に、こう、命じた。
「……どうか、あの子を助けて、と」
●
冷えていく身体が誰かに抱き締められている。
何も知らずにいられたら、どれ程幸せだっただろう。
真っ暗な視界。思い出すのは辛いことばかり。
赤ん坊を抱えて逃げ出して、あまりに泣くものだから、幸せそうに乳母車を押した女性を脅して哺乳瓶を奪う。
モニカと赤ん坊の様子に、その行為を咎めるでも無く、彼女は幾らかの紙幣と最寄りの孤児院の場所を書き付けた紙を握らせた。
彼女に問われ、咄嗟に答えたのが、弟のピノ。
以来、モニカは赤ん坊を弟のピノと偽って連れ歩いている。
向かうには屋敷から近すぎた孤児院には行かず、人の目を避ける様に歩き続け、ひどく治安の悪い場所に流れ着く。
ピノを背に括り付け、通りすがりの人を背後から襲って財布を奪うことにも慣れた。
隠れた場所に出たコボルトを蹴り飛ばしたり、棒きれで殴り殺すことにも慣れた。
雨に遭って熱を出したピノを抱いて、朽ちた教会で祈り続けていた夜に、ポケットの中にルビーを見付けた。
ルビーを手放したのは古い質屋だった。
老人が一人で営んでいたが、目は確からしくモニカが差し出したそれを一目で見抜き、訳ありの品かと何度も聞いてきた。
こんな危ない物は勘弁だ、暫く流さずにおいてやるから取りに来い。
そう言って、彼は少なからぬ額の紙幣と、流れた安物だと言ってモニカの着替えを寄越してきた。
「……えっと」
「何だ?」
「……」
「……。ありがとうで良いんだよ。どうした、言葉も忘れたか?」
洗ったり繕ったりする暇も無いのか、汚れて解れているが良い服を着ている。
どこかの、こんな寂れた場所とは縁遠い街に住むお嬢さんだろう。
何があったかは知らない、聞きたくないが達者でな。落ち付いたらこの石ころも取りに来い。
●
「――ありがとう」
肌が色を無くし、浮き上がる血管は青から黒に変わっていく。
痙攣する手が鱗状に皮膚を変質させ、次第にその肌色を濁らせていく。
ありがとう。そう紡いだ唇は呼吸を無くして青黒い。
ゆっくりと瞬いた目に溌剌とした光は無く、天井を暫く眺めてからゆっくりと身体を起こそうとした。
変わっていく自身の手眺め、口角が僅かに上向く。
「ピノ、絶対に、守るからね」
あの日、目を覚ましていれば。
あの日、倒れていなければ。
きっと、2年前の真実を話すことが出来ていただろう。
オフィスで目を覚ましたサーラは横たわったままぼんやりと天井を見上げる。
サーラが赤子をサンルームへ連れてきた時、夫人は確かに剣を取った。
しかし、その切っ先を向けながら手は震えていた。
頬を少し切るくらいで全てを許されるなんて。
愛人からの仕打ちに、まだ体中に痣を残していたサーラにはそれが優しすぎるように思えて、それすら躊躇う夫人の甘さが、ほんの少し癇に障った。
だから、
「……私が、どうぞ、って、あの赤ん坊を差し出したんです。きっと、奥様が躊躇わずに頬を切っていれば、あの子は誤解なんかすることは無かったと思うんです」
差し出した。夫人が目を見開いて、剣を向け直した。
そんな風に扱っては、酷い傷になってしまう。それが分かっても、止めなかった。
サーラの目には、モニカが立ち上がるのが見えた。控えていた他のメイドが慌てるのが見えた。
そして、モニカがサーラを突き飛ばし、赤ん坊を抱えて連れ去った。
「初めて、奥様に叱られました。私が、ちゃんと抱えてなかったからって。その通りです。私は、あの赤ん坊をちゃんと抱えてなかったんです。――でも、私はその時に思わず言い返してしまいました。……奥様が躊躇うからって、言ってしまったんです」
赤ん坊のことは諦めが付いた。
言い方は悪いけれど、所詮は愛人の子、妾腹、跡継ぎにはならない子。
けれど、巻き込んでしまったモニカは違う。目を掛けていたからといって、貴族とは関わりの無い子ども。
家柄に、立場に拘る夫人は、同じように、そこに属さない者への悪い影響を厭う。
サーラの反論に言葉を失い、その場にいたメイド達に、こう、命じた。
「……どうか、あの子を助けて、と」
●
冷えていく身体が誰かに抱き締められている。
何も知らずにいられたら、どれ程幸せだっただろう。
真っ暗な視界。思い出すのは辛いことばかり。
赤ん坊を抱えて逃げ出して、あまりに泣くものだから、幸せそうに乳母車を押した女性を脅して哺乳瓶を奪う。
モニカと赤ん坊の様子に、その行為を咎めるでも無く、彼女は幾らかの紙幣と最寄りの孤児院の場所を書き付けた紙を握らせた。
彼女に問われ、咄嗟に答えたのが、弟のピノ。
以来、モニカは赤ん坊を弟のピノと偽って連れ歩いている。
向かうには屋敷から近すぎた孤児院には行かず、人の目を避ける様に歩き続け、ひどく治安の悪い場所に流れ着く。
ピノを背に括り付け、通りすがりの人を背後から襲って財布を奪うことにも慣れた。
隠れた場所に出たコボルトを蹴り飛ばしたり、棒きれで殴り殺すことにも慣れた。
雨に遭って熱を出したピノを抱いて、朽ちた教会で祈り続けていた夜に、ポケットの中にルビーを見付けた。
ルビーを手放したのは古い質屋だった。
老人が一人で営んでいたが、目は確からしくモニカが差し出したそれを一目で見抜き、訳ありの品かと何度も聞いてきた。
こんな危ない物は勘弁だ、暫く流さずにおいてやるから取りに来い。
そう言って、彼は少なからぬ額の紙幣と、流れた安物だと言ってモニカの着替えを寄越してきた。
「……えっと」
「何だ?」
「……」
「……。ありがとうで良いんだよ。どうした、言葉も忘れたか?」
洗ったり繕ったりする暇も無いのか、汚れて解れているが良い服を着ている。
どこかの、こんな寂れた場所とは縁遠い街に住むお嬢さんだろう。
何があったかは知らない、聞きたくないが達者でな。落ち付いたらこの石ころも取りに来い。
●
「――ありがとう」
肌が色を無くし、浮き上がる血管は青から黒に変わっていく。
痙攣する手が鱗状に皮膚を変質させ、次第にその肌色を濁らせていく。
ありがとう。そう紡いだ唇は呼吸を無くして青黒い。
ゆっくりと瞬いた目に溌剌とした光は無く、天井を暫く眺めてからゆっくりと身体を起こそうとした。
変わっていく自身の手眺め、口角が僅かに上向く。
「ピノ、絶対に、守るからね」
解説
目的 ――――
●エネミー
雑魔×1
頸部からの失血により衰弱、或いは失血死したモニカが負のマテリアルに汚染された不可逆的な変質の途中
現状、手段は問わず、宣言のみで撃破可能
ターン経過毎に形状が変化する
現在
失血により肌が青ざめている
手足の先が黒ずみ、皮膚が硬化している
視線が定まらず、整合性の無い発言をする
3ターン経過
四肢が完全に人の形ではなくなる
顔立ちが変化する
言語を失う
5ターン経過
獣のような形になる
1ターン目のみ、PCの発言に応答する
3ターン以内に撃破した場合、死体が残ることが有る
5ターン経過した場合、攻撃を行う
●店内
カウンターを隔てて店側に雑魔、カウンター内のベビーベッドにピノ(赤子)
●店外、路地、及び商店街
瓦礫を気にしながらも店は開いて、疎らながら人通りがある
今のところ、コンフォートの様子を見に来ている者はいない
●NPC
ピノ
ベビーベッドでモニカを探している
オフィスまで連れ帰った場合、一時的な保護が可能
エドガー
朝からの事件のあらましを聞き、意気消沈してオフィスで待機している
●エネミー
雑魔×1
頸部からの失血により衰弱、或いは失血死したモニカが負のマテリアルに汚染された不可逆的な変質の途中
現状、手段は問わず、宣言のみで撃破可能
ターン経過毎に形状が変化する
現在
失血により肌が青ざめている
手足の先が黒ずみ、皮膚が硬化している
視線が定まらず、整合性の無い発言をする
3ターン経過
四肢が完全に人の形ではなくなる
顔立ちが変化する
言語を失う
5ターン経過
獣のような形になる
1ターン目のみ、PCの発言に応答する
3ターン以内に撃破した場合、死体が残ることが有る
5ターン経過した場合、攻撃を行う
●店内
カウンターを隔てて店側に雑魔、カウンター内のベビーベッドにピノ(赤子)
●店外、路地、及び商店街
瓦礫を気にしながらも店は開いて、疎らながら人通りがある
今のところ、コンフォートの様子を見に来ている者はいない
●NPC
ピノ
ベビーベッドでモニカを探している
オフィスまで連れ帰った場合、一時的な保護が可能
エドガー
朝からの事件のあらましを聞き、意気消沈してオフィスで待機している
マスターより
よろしくお願いします。
幕引き。
幕引き。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/09/01 00:31
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 アウレール・V・ブラオラント(ka2531) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/08/23 01:26:16 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/17 23:22:07 |